16世紀の西洋の本の題名は,鬱陶しさと手っ取り早さを併せ持っていた.本書の正式名称は“De Optimo Reipublicae Statu deque Nova Insula Utopia”(『社会の最善政体とユートピア新島についての楽しく有益な小著』)と説明されることも多いが,厳密ではない.ラテン語の原文はもっと長いし,その訳は『社会の最善の政体と新しい島ユートピアに関しての楽しく同時に有益な黄金の小著,もっとも有名で,雄弁な人物,トマス・モア,卓越したロンドンの市長,司政長官著』という.当時の題名には本を要約する意味もあり,著者の名前をそこに含めることも一般的だった.