中立であるということによって新しい別の問題をひきおこすことになる.というのは,どの民族語を母語にする人でも,これまでの言語の知識をそのまま使うわけには行かないから,特別に学ばなければならないという問題である.別の言い方をすれば,そのような新言語はすべての人にとって外国語だということである.つまり,誰もその言語に対して「生まれながらの特権」がない
ザメンホフは,決して,これこれの言語に何パーセント割り当てるかなどと前もって計算してジビキをつくったのではないから,エスペラントの単語の出自をこまかく知っていたのではない.それでいろいろな人が計算してみたところ,ロマンス諸語(フランス語,スペイン語,イタリア語などから)75パーセント,ゲルマン語(英,ドイツ語など)から20パーセント,スラヴ諸国(ロシア語,ポーランド語など)から5パーセントと見るのが妥当だろうと言われている
私は人類人である.それは私が次の原則により生きていくことを意味する. (1)私は人間である.私は全人類は一家であると見なす.私は人類が分離して民族的および宗教的集団をなしているのは,最大の不幸であると考える.それは早晩,消滅しなければならない.その消滅を早からしめんがために,私たちはでき得る限りの努力をすべきである. (2) 私はすべての人間を単に人間であると考えるのみである.そして,すべての人間を評価するには,単にその人の人物的価値および行為によるのみである.彼が自分より以外の民族,言語,宗教,階級に属するとの理由で,人を侮辱し圧迫することは野蛮的であると私は考える(部分抜粋) *1
ザメンホフが偉かったのは,彼がエスペラントを発明したからだとか,それをひろめる運動をはじめたからだ,という点だけではない.それよりも,まず,彼は新しく力強い社会の要求をはっきりと示したのであった.時代が人類をゆさぶっている深い熱望を彼は読みとったのだ.この点が偉かったのだと思う.自分たちを一つにつなぎ合わせてくれる炎が燃え上がるのを,全世界に散らばっているたくさんの人びとが『今やおそし』と待ちこがれていたちょうどその時に,エスペラントが現れて活動し始めたというのも,エスペラントが成功した一つの理由である *2