goo blog サービス終了のお知らせ 

ファンタジー工房 八角堂

オリジナルの小説、イラスト、詩など。
ここではないどこかの物語。
その他、マンガや本のレビューもあります。

小説「SWEET BITE」・1(長編)…未完結

2008-09-21 22:18:35 | Weblog
 のどが渇く。
 とてものどが渇く。
 目の前が赤い。
 この赤さは、窓から強烈に差し込む秋の夕日のせいだろうか。
 そう思いたい。不吉な赤。気分が悪い。
 どく、どく、と脈打つ心臓の鼓動にあわせて、廊下の色が赤から深紅へと色を変えている。
 体も息も熱い。
 落とした視線の先に、四角いタイルをしきつめた床の上を歩く、白い上ぐつの先の赤いゴムが見える。赤。赤。赤。
(早く、帰らなきゃ)
 だれか知り合いに会わないうちに。
 こんな自分を見られないうちに。
 いまだれかに会ってしまったら、自分が何をするか分からない。怖い。怖い。
(教室のカバンを取って、それから)
 のどがひりひりする。
 ああ、目の前が赤い。
(早く帰らなきゃ)                          (続く)

ブックレビュー・1

2008-08-24 20:17:28 | Weblog
《臨死!江古田ちゃん①②③》瀧沢ユカリ

 マンガ。主人公の江古田ちゃんはこんな女の子。
 24歳、独身。東京在住。自宅アパートでは常に全裸で過ごす。
 職業・ヌードモデル、ホステス、保険テレフォンアポインター、トップレスダンサーなど。
 恋愛・なぜかいつも彼女もちの男とつきあっている。すんごいないがしろに扱われても気にしない。(っていうか、ダメ男を渡り歩くうちにその辺の感覚がマヒしてる模様)自分を安売りしているというより、もはや安い押し売り的なおつきあい。
 読後感想。
とにかく濃い!濃くってしかもリアル!!
 これ、どこまで実体験なの?ってくらいリアル!
 全部?…いやまさか…でも…これは経験者じゃないと描けない気がする…。
 とにかくすべてのキャラクターが!エピソードが!とても強烈です。
 生々しくたくましい、人間の生き様がここにある!
 面白いのでおすすめです。



《GENTE~リストランテの人々~》
オノ・ナツメ
 マンガ。
 ローマにあるレストランに勤める年配の男性たちにまつわる物語がオムニバス形式で描かれます。
 …と書くと、ほのぼのとか、哀愁とか、とにかく人生終わりに来た人たちの、「枯れた」味わいの物語を想像しがちですが、
 それが違う!
 色っぽいんです!孫もいるようなおじいちゃんたちが、とっても魅力的で色っぽいんですうーー!!ジタバタ、ジタバタ。
 おじいちゃんたち、ステキすぎ。
 立派に恋の現役張ってくれちゃってます。
 わたしはこれを読んで、いい人生って、こーゆーのを言うのかも知れない…とか、考えました。
 なんつーか、こう…人生重ねたからこその深みが、とてもセクシーなんです。そういう風に年齢を重ねられたら最高です。
 もちろん、出てくる女の人たちもみんなステキ。年配のマダムも、二十の女の子も、主婦も、離婚したシングル女性も。力まず、あるがままの、すごくその人らしい生き方がいいんです。
 物語を描きだす、絵もセリフも、ムダなものを一切省いたセンスのいい、端正な美しさがあって…オノ・ナツメさん、この人タダモノじゃない。
 とても上質な外国映画を観てるみたいな、おいしいワインを飲んでるみたいな、心地よい作品。
 こういう作品に出会うと、「生きてて良かった…!!」って思います。