日本経済新聞朝刊に『「脱ドル」決済網 中ロ拡大』(2022/8/17)という記事が掲載された。BRICS首脳会議に先立つテレビ演説で、ロシアのプーチン大統領が、「新興5カ国(BRICS)は、通貨バスケットに基づく準備通貨の開発で作業を進めている」(「プーチン大統領、BRICSでバスケット方式の準備通貨開発を作業」 2022/6/22 Bloomberg)記事も引用していた。その会議の後まもなくロシアの報道官がイランとアルゼンチンがBRICSに加盟申請したと述べたが(『ロシア、「イランとアルゼンチンがBRICSに加盟申請」』 2022/6/28 Pars Today)、この準備通貨開発の動きが両国をBRICS加盟へ向かわせたのではないだろうか?先の日本経済新聞の記事では、日本の通貨当局幹部がBRICSの通貨バスケットはIMF体制を脅かすような存在になり得ないと言明するが、ロシアから天然ガスの供給が大幅に減少している欧州をはじめ旧西側諸国が経済危機に陥る中、IMF体制は維持できるのだろうか?
ドイツと南欧を結ぶパイプラインを建設し、アルジェリア産の天然ガスを引き込む計画が明らかになった(『ドイツ、南欧と新ガス管計画 脱ロシア依存の切り札に』 2022/8/19 日本経済新聞WEB版)。しかし、アルジェリアはロシアとカタールが主導するガス輸出国フォーラムのメンバーで、大統領はBRICS加盟を希望している(「アルジェリアが、真剣にBRICS加盟望む」 2022/8/2 Pars Today)。オーストラリアでも天然ガスの輸出規制を検討しているという(「豪、ガス輸出規制を検討 世界需給さらに逼迫も」 2022/8/19 ダウ・ジョーンズ配信)。先進国側で天然ガス供給の協力体制を作るのは難しそうだ。
6月の『24日に中国が主催した「グローバル発展高位級対話にはブリックス5カ国のほか、アルジェリア、アルゼンチン、エジプト、インドネシア、イラン、カザフスタン、セネガル、ウズベキスタン、カンボジア、エチオピア、フィジー、マレーシア、タイの13カ国の首脳が参加した」(『中国、「米同盟国外交」に対抗して発展途上国18カ国が参加する首脳会議開催』 2022/6/27 ハンギョレ新聞)という。13カ国のうちからBRICS加盟申請などが相次いでいる中、ユーラシア経済同盟(EAEU)の1国カザフスタンやEAEUとFTA交渉の開始を決めたインドネシア(「ユーラシア経済連合、インドネシアとのFTA交渉開始を決定(アルメニア、キルギス、ベラルーシ、インドネシア、カザフスタン、ロシア) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ」 2022/6/2)などもBRICS加盟に向かうのではないだろうか?
今月末に予定されているロシア主導の軍事演習には中華人民共和国の人民解放軍も参加し、「中国国防省の声明などによると、軍事演習にはインド、ベラルーシ、タジキスタン、モンゴルなどが参加するもようだ」(「中国、ロシアの軍事演習に参加へ 米対抗で共闘」 2022/8/18 ダウ・ジョーンズ配信)。インドは中ロ包囲網などには参加しない。故安倍晋三首相の功績とされるクアッドなど、安全保障上ほとんど意味がないことがわかる。
追記:
2022/9/29
↓バングラディシュも脱ドル決済増へ
ドル不足のバングラデシュ、貿易決済で人民元を活用へ:2022/9/29 日本経済新聞
2022/10/20
↓トルコ、エジプト、サウジアラビアがBRICSに参加の可能性と報じられていたが、
BRICSの代表が発表 フォーラムの今後の拡大について sputniknews 2022/7/14
↓サウジアラビアは参加が決定しそうだ。
「南アフリカのラマポーザ大統領はこのほど、サウジアラビア皇太子がBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国)加盟への意欲を表明したと示しました。」(「中国 BRICSメンバー拡大プロセスの開始を支持=外交部」 2022-10-20 CRI)
↓パキスタンがロシア産石油の輸入を検討と報じられたが、決済はドル以外の通貨で行うと考えられる。
経済危機のパキスタン、ロシア産石油の輸入検討=財務相 2022/10/20 ロイター