投資家の目線

投資家の目線928(追い込まれるG7)

 「ウクライナ軍」の攻撃に備え、ザポロジエ原子力発電所の一部が稼働停止している(『ザポロジエ原発の一部稼働停止、ウクライナ軍の「挑発」に備え』 2023/5/8 ロイター)。米国エネルギー省は、ロシア国営原子力エネルギー企業ロスアトムに、サポロジエ原発には米国政府によって輸出管理されている米国起源の原子力技術情報があり、ロシアはそれに触れてはならないという書簡を送付した(”US warns Russia not to touch American nuclear technology at Ukrainian nuclear plant” 2023/4/19 CNN)。ウクライナ、NATO側は、その「技術」が公表されるのをよほど嫌がっているように思われる。

 

 マスメディアではウクライナがロシアに反転攻勢すると盛んに報じられているが、ウクライナ国家安全・国防会議のアレクセイ・ダニロフ書記が最高会議で反転攻勢の最終計画は用意できていないと表明している(「春の反転攻勢、その最終計画は誰も知らない=宇政府高官」 2023/5/10 SPUTNIK)。ロシアに対して、NATO側の武力は心許ない。ドイツに続きイタリアも弾薬が不足しており、伊大手紙「コリエーレ・デラ・セラ」が報ずるところによれば抗戦できるのは長くて3日しかないという(『「今攻められれば持って3日」 イタリア、ウクライナ支援で弾薬が枯渇』 2023/5/5 SPUTNIK)。 F16の元パイロットは、ロシアの防空システムの前にF16を派遣しても効果がないと判断している(”Former F-16 pilot says he would not want to fly missions over Ukraine right now, arguing 'there is no fighting chance”' Jake Epstein May 4, 2023 businessinsider)。ロシアの誘導滑空弾は、ウクライナに脅威を与えている(”What Are Glide Bombs? Russian Weapons in Ukraine Called 'Big Threat’” BY JON JACKSON 2023/4/27 Newsweek)。ロシアは米国の供与したロケットシステムHIMARSをジャミングしている(”Russia’s jamming of US-provided rocket systems complicates Ukraine’s war effort” 2023/5/6 CNN)。米軍はM1エイブラムス戦車から機密技術を取り外してウクライナに供与する(”Fearing Russian capture, US strips sensitive tech from M1 Abrams tanks headed for Ukraine” Tom Vanden Brook 2023/5/8 USA TODAY)。ウクライナによって転売されたり、ロシアに鹵獲されたりして、重要技術が漏洩するのを防ぐためだろう。米海軍でもメンテナンスのトラブルなどで艦船が不足し、訓練の中止などが発生している(「米海兵隊、アジア太平洋地域で艦船不足 訓練中止などの影響」 2023/5/1 ダウ・ジョーンズ配信)。そもそも、ノーキスト元米国防副長官は、防衛関係のベンダー数が大幅に減少しており、防衛産業基盤の回復を訴えている(”Industrial Base Strength Necessary for Future DOD Success” May 9, 2023 By Nancy Benecki, Defense Logistics Agency U.S. Department of Defense HP)。

 

 米国は経済も深刻な状況だ。8日の米連邦準備委員会(FED)の調査結果によって、米国の銀行が融資態度を一段と厳しくしていることが明らかになった。「空室増加などで収益の悪化しているオフィスビルなど商業用不動産向けローンも、需要の落ち込みが目立った」(「米銀融資態度さらに悪化 企業の資金需要、09年来の低さ」 2023/5/9 日本経済新聞電子版)という。シカゴ連銀のグールズビー総裁は、銀行業界が経済への信用供与を控えているとの認識を示している(「【MW】信用の引き締まり起きている=シカゴ連銀総裁」 2023/5/9 ダウ・ジョーンズ配信)。信用の引き締めのため、米国の投資・雇用が低迷する可能性があるという見方も出ている(「【市場の声】信用引き締め、米国の投資・雇用の足かせに」 2023/5/13 ダウ・ジョーンズ配信)。今年1-3月期、米国では約3分の1の都市圏で住宅価格が前年同期比で下落した(「米住宅価格、1-3月期は3分の1の都市圏で下落」 2023/5/10 ダウ・ジョーンズ配信)。バークシャー・ハザウェイのマンガー副会長は、『米国の銀行は商業用不動産の不良債権で「いっぱい」だと警鐘を鳴らした』(「【MW】米銀、商業用不動産の不良債権まみれ=バークシャー副会長」 2023/5/1 ダウ・ジョーンズ配信)。空室率と金利の上昇に苦しむ商業不動産市場では、ロサンゼルス市のオフィスビルに投資する上場企業が不動産ローン返済で債務不履行に陥った(「ブルックフィールドのLAビル投資会社、債務不履行に陥る」 2023/5/2 ダウ・ジョーンズ配信)。証券化商品などを通して不動産価格の下落は金融業界に悪影響を及ぼす。日本でも、東京駅周辺でオフィスビル、23区内でタワーマンションが盛んに建設されているが、影響はないのだろうか?

 

 米国で中小企業の楽観度指数が低下しており、中小企業経営者はインフレが経営上の最大の課題と回答している(「米中小企業の楽観度指数、4月は89.0に低下 予想下回る」 2023/5/9 ダウ・ジョーンズ配信)。しかし、『全米小売業協会(NRF)の「グローバル・ポート・トラッカー」によると、国内で最も取扱量の多いコンテナ港における輸入量は、4月と5月に前年同月比で23~24%減少すると予想されて』(「米小売業者、輸入減速の深刻化を予想」 2023/5/9ダウ・ジョーンズ配信)おり、生産の国内移転は一朝一夕に行くものではないことを考えると、インフレ率の低下は見込みづらいように思う。

 

 米国の債務上限問題で、米国のクレジット・デフォルト・スワップの保証料率は、ギリシャやメキシコ、ブラジルより高くなっている(「米国のデフォルト・スワップ、ブラジルやメキシコを上回る水準に上昇」 2023/5/11 Bloomberg)。債務が増えれば、その返済のため、納税者は増税もしくは「インフレ税」を支払わされる羽目になる。米国の納税者としては、これ以上の税金負担には耐えられない。しかもバイデン米大統領は、息子のビジネスに関する問題で追及を受けている(「米共和党、バイデン一族に対する調査めぐり報告書を公表」 2023/5/11 ダウ・ジョーンズ配信)。バイデン政権の主張する債務上限引き上げ案に賛同する米国人民は少ないのではないだろうか?

 

 イタリアが連合軍に降伏した後の1943年11月、南京国民政府、満州国、タイ(首相は欠席)、フィリピン、ビルマなどの代表を招いて東京で大東亜会議が開かれた。間もなく開催されるG7広島サミットは21世紀版の大東亜会議になるように思う。

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