G7広島サミット終了後、中華人民共和国の李輝ユーラシア事務特別代表がウクライナ問題解決に向け、渡仏した(「ウクライナ侵攻解決へ協力強化 中国特別代表が仏訪問」 2023/5/24 日本経済新聞電子版)。ゼレンスキー氏はフランスの政府専用機で日本まで往復したが(「ゼレンスキー大統領、フランス政府専用機で広島空港を出発…帰国の途に」 2023/5/21 読売新聞オンライン)、ゼレンスキー氏は14日にパリでマクロン大統領と会談している(「ゼレンスキー氏、なぜフランス機で日本へ? 外交筋が明かした舞台裏」 2023/5/20 朝日新聞デジタル)。フランス政府はゼレンスキー氏の考えを聞いていてもおかしくない。
ロシアからの安いエネルギーを失ったドイツはリセッションに陥っている(「欧州経済のエンジン、ドイツがリセッション入り-危機乗り越えれるか」 2023/5/26 Bloomberg)。現在起こっていることの一つは、EU内部での覇権国の交代である。そのことに無策のショルツ政権をすぐに引きずり下ろさないと大変なことになると、政権打倒の動きがドイツ内部で出ているのはおかしなことではない。ウクライナはポーランド国民に特別な法的地位を与える(2022/5/27 RT 投資家の目線878(ウクライナの終わりと終わらない食糧・エネルギー不足) )。これで欧州東部に大国が実質的に出来上ることになる。欧州の重心が東に移動することを、西部のフランスは望ましいと思うだろうか?ポーランド等の東欧諸国には領土拡大という利益を得られる可能性があるが、西のフランスにとってウクライナを支援しても単なる持ち出しにしかならない。フランス外務省には「フランスとソ連の結びつきを肯定しようとする伝統」(「アデナウアー回顧録Ⅱ」 佐瀬昌盛訳 河出書房p202)がある。ポーランドの通貨はズロチ、フランスの現在の通貨はユーロである。ロスチャイルド銀行にいたマクロン大統領ならユーロの凋落は看過できないだろう。また、第2次大戦時ポーランド人を虐殺したステパン・バンデラを英雄視する今のウクライナに対して、ポーランドは憤慨している(投資家の目線929(ウクライナを切り捨てるポーランド) )。フランスと保身を図りたいゼレンスキー氏には利害が一致する点はあるだろう。
電磁パルス兵器を使用されれば、電子機器の塊である反撃兵器は使用不能になるだろう。中ロが開発・保有している極超音速ミサイルの前に現行のイージスシステムは無力だ。ロシアやDPRKは巨大津波を発生させる兵器を開発した。イラン・イラク戦争時から攻撃用ドローンを使用していたイランは、その分野で一日の長がある。防衛財源確保法案が衆議院を通過し、参議院で審議入りした(「防衛費増額の財源確保法案、参院で審議入り」 2023/5/24 日本経済新聞電子版)。兵器・戦術のレジューム・チェンジが起き、相互確証破壊が成立しなくなった時代に、核兵器の保有は、航空機の時代に大艦巨砲主義を掲げるほど意味をなさない議論だと思うが、防衛費を増額したところでどれだけ意味のある防衛政策がとれるのだろうか?
有力国であるブラジルのルラ大統領、インドのモディ首相、インドネシアのジョコ大統領はG7の見解を支持しなかった(『G7、中立国と埋まらぬ溝露呈-ゼレンスキー氏訪日も「わな」と警戒』 2023/5/22 Bloomberg)。G7に世界を主導する能力がないという事実を確認したのが、今回のG7広島サミットであった。
イギリスの元首相「イーデン回顧録Ⅲ 独裁者との出あい 1931~1938」(南井慶二訳 みすず書房 p160~p161)には、ポーランドのベック大佐について、「ドイツの再軍備なんかちっとも恐れてはいない。まだまだ時間はたっぷりある」と強調していたこと、「ベックのやり方は遠回しでいささか邪悪なところがあり、(中略)彼はフランス人がきらいだった」、「チェコ国民に対する反感にふけりすぎた」と書かれている。
青字部分追記