「スタート前」
2019年10月5日、
カタールドーハ、ハリーファ国際スタジアムに集結した
男子400メートルリレー日本代表リレーチーム!
東洋の時計大国日本から彼らはやってきた
彼らは正しく時を刻む時計のように
練習のときから寸分の狂いもない
走りをめざしていた
サニブラウンもアメリカから駆けつけた
「オレもいるんだ!」とサニブラウン!
「君はウチにとって最重要パーツだよ!」
「それを君自身もわかってくれ!」と日本チーム監督
時計の設計図面のように緻密にそして確実に
彼らは走りのイメージを積み上げ実行していく
「任せてくれ、オレたちに!」と選手たち
「人間が全力で走る姿こそ人間にとっての最高の美といっていい!」
と監督
「さあ、選手たちよ。見せてくれ!
人間が全力で走る姿、人間がその肉体でつくり出す最高の美を!」
と監督
伝統の技を持つ時計職人のように
彼らは自分たちの走りを設計し、それをトラックで表現する!
目的はただ1つ、勝つために!
日本人の感性
それが向かうもの、それは計算しつくされた構成と表現!
そしてそれによって生み出される勝利と美!
「すべては勝利のために!」
それが日本チームの合いことば
いよいよ選手入場だ
フランスを先頭に次々にスタジアムに入場する
決勝に進出した8カ国32人の代表選手たち!
日本チームも3番目に堂々入場!
4人がその雄姿を見せた
選手たちの晴れやかな笑顔、各選手とも勝つ気まんまんだ!
日本の走順は多田、白石、桐生、アンカーサニブラウンの順!
日本は内側から3つ目、4レーン!
「一走」
「さあ準備万端、いつでもいけるぜっ!」と多田
高鳴る心臓の鼓動!
自分を照らすライトを浴びて、気持ちを高めた多田!
各国の一走がスタートの位置に着いた
さあスタートだ
「行くぞっ」と多田!
そして・・
高らかに号砲鳴る!
8カ国の第一走者が一斉に飛び出す!
行け、各国の代表選手たち!
陸上に青春をかけた若者たちの戦い
男子400メートルリレー始動!
日本は一走多田が始動!
「ピークをこの日に!」
それが監督の指示だった
多田、ピーク・パフォーマンスの実現!
予選を走っていない分、多田には余力があった
「それをこの走りに活かしたい!」と多田
多田がぐんぐんとコーナーを回り、
カーブを終え二走白石とのバトンリレーへ!
待ち受ける白石!
「オレの出番だ!」と気合を入れた
「二走」
二走白石始動!
白石が走り出した
白石が日本代表、そして決勝のメンバーに選ばれた
うれしさをかみしめ、それを走る力に変えて走っていく
「今日のオレはとことん好調!」と白石
カタールまで来たのに
旅の疲れ、時差も全く関係ないかのような調子のよさ、白石
「さあ、ガトリンとガチンコ勝負だ、やってやるんだ!」と白石
白石の躍動を絵にしたような走り
君の走りは直線に向いている
かつて監督からもそういわれた白石!
本人にも自覚があった
走るなら二走かな、と
そこまでの自信は練習から生まれたものだった
多田といっしょに練習し、理想の走りを追求してきた白石
一流選手からの学びと吸収!
それが白石の走りを飛翔させた
そしてその理想の走りがついに
この大舞台でベールを脱いだのだ!
各国のエースやナンバー2が走る二走
二走は走る距離も長く、高い走力が求められる
白石のそこへの放り込み・・
日本チーム監督の意図は? 狙いは?
一発屋! それはここ一番での爆発力期待だった
チームは自分にそれを期待しているのか!
でももしそうならやるしかない
「オレはここで最高の走りをする!」
「それが自分に与えられた使命!」
「絶対にやり遂げる!」と白石!
恐いもの知らず、しかも無名!
だから失うものなし、の白石!
練習仲間、多田とのホットラインは知る人ぞ知るだ
「最近、走り方まで多田に似てきたな」と仲間にいわれ、
照れていた白石!
白石が走る!
直線バックストレートを全力で走り抜ける快感
その強烈な快感が白石の全身を力強く貫く!
☆ ☆
躍動
多田から白石へ、白石から桐生へ
詰まりゼロのなめらかなバトンリレーが次々に展開されていく
これが日本代表の走りだ
これが日本代表のバトンリレーだ
世界の陸上ファンが一心にレースを見つめている
陸上のトラック種目で一番華やかな競技種目、
400メートルリレー!
厳しい国内予選に勝ってこの舞台にコマを進めた
各国の代表選手たち!
それはどの選手にとっても大変な道のりだった
心技体!その調和と融合!
それがトラックを走る選手たちの鮮やかなパフォーマンスとなって
表現されている
☆ ☆
「三走」
三走、桐生始動!
リレーは待ちに待った出番
走りに飢えていた桐生!
「やっと自分の出番が来た!」
「うれしい!」と桐生
予選で同じ三走を走り、勝手がつかめた桐生!
桐生は1回走っただけで三走の感覚が全身に甦っていた
最終順位のカギを握る三走!
「オレがインから突き崩す!」
「優勝候補の牙城を!」と桐生!
バイク大国日本!
当然陸上選手も小回りが得意だ
「自分は大外だけでなく、イン4レーンも軽快に回れる!」
「見てな!」と桐生
「やはり直線では日本はライバル国を上回れない!」
桐生の冷徹にレースを見る目!
「だからオレの走りなんだ!」と桐生
4レーンを走る桐生
「オレがインからブチ抜く、ライバル国を!」と桐生
4レーンの桐生が5レーンから外を走るライバル国を
激しくそして厳しく追っていく!
「必ず捕まえる!そして抜く!」と桐生
桐生がそのターボエンジンを全開させた
桐生のインからのアウトの追撃!
爆走という言葉が一番似合う男、桐生!
桐生がここ一番の渾身の爆走を展開させていく!
「見ろ、オレの走りを!」と桐生
三走の選手たちがコーナーを回り,アンカー手前へと向かっていく!
コーナーを回り、アメリカに次いでアンカー手前へと
躍り出てきた男!
日本の三走桐生だった!
桐生がでかい仕事をやってのけた
なんと日本をイギリスと並んで2位タイへと
浮上させたのだ!
そしてバトンはアンカーサニブラウンへ!
「アンカー」
日本のアンカーはサニブラウン!
フロリダから駆けつけた垢ぬけたシティボーイ、
サニブラウン!
オーバーハンドパスからアンダーハンドパスへの
切り替えも難なくこなした
「エヘヘ、日本人なもんで!」
器用で当然とサニブラウン!
アンカーサニブラウン始動!
サニブラウンが桐生からバトンを受け走り出す!
日本のエース、サニブラウンと前回ロンドン大会の
金メダリストアンカー、ミッチェル=ブレイクとの激突!
2位争いは日本とイギリスとの一騎打ちとなった
「いざ、勝~負!」とサニブラウン!
直線残り正味80メートルの戦い!
ミッチェル=ブレイクとサニブラウン!
一体、どちらが競り勝つのか?
ミッチェル=ブレイク、前回大会に続いてのアンカー起用に
胸が躍った!
今2位タイのイギリス!
今回は日本をかわしても銀だが不満はない!
自分はアンカーとしてやるべきことをやるだけだ、とミッチェル=ブレイク!
映画「炎のランナー」を何度も見たミッチェル=ブレイク!
映画の中でイギリス代表が金メダルをめざし、ゴールに
向かって走るように、自分もゴールに向かって走りたいと思った
「今回はアメリカに屈したが、次は必ず勝つ!」とミッチェル=ブレイク!
イギリスアンカー、ミッチェル=ブレイクがサニブラウンをかわし、
そのままゴールへと突き進んでいく!
そして選手たちはゴールへ!
アメリカ、イギリス、日本のアンカーが次々にゴールを駆け抜け、
続いて4位以下のライバル国アンカーも次々にゴールを駆け抜けていく!