『あっ…雪?』
窓の外を見ると 空から白いもんが降って来てた。
昨日も今日も めっちゃ寒かったもんなぁ…。
あっ もしかして夜までに雪積もったりせえへんかな?
だって今日は 12月の24日。
クリスマスイヴ。
雪が降ったら…
もっと特別な事がおきる気がする。
そんなスペシャルな日になったらええなぁ。
とはいえ…
年末という事であたしの仕事は超忙しかった。
今やテレビ局も雑誌社も予算がなくって日にちに余裕持って撮影なんて事はめったになく
ギリギリの予定と予算と人間とで動いている。
ええ例はドラマ。
最終回の放送の3日前にまだ撮影なんて平気でありの世界。
今日も1月はじめに出る雑誌のグラビア撮影やったりする。
いつ帰れるからなんて予想つかへん(笑)
彼氏の大谷様は このたび無事に学校の先生ってなもんになって
それこそ大忙しでここ1週間すれ違い…。
出合って8年目のクリスマス。
『リサ 末広がりの8って縁起ええと思わん?』なんてたしかゆうてた。
あぁ…大谷に逢いたいなぁ。
はよ仕事終らんかなぁ。
♪マジ ハンパないメールだぜ
『わっ…びっくりしたっ(大谷からメールや)』
噂をすれば影。
いや 呼ぶより誹れってな訳で(笑)
<メリクリ。ただ今サンタ中>という本文と
サンタの格好しとる大谷の写真。
『でへへへへ♪ 大谷サンタさんやぁーー』
学校でクリスマス会があって サンタさんの役やらされるゆうてたもんなぁ
似合ってるなぁ カッコええなぁ
『小泉さん? 何ニヤニヤしてんの?』
『わっ 真咲先輩。』
振りかえると真咲先輩。
しもた 写真見てにやけてヘンな顔見られてしもたっ。
『ほら 早くソレ持っていかないと 美々ちゃんに怒られるよ。』
『あっはいっ…』
あかんあかん…。
大谷サンタさんの事を頭の隅っこに畳んで あたしは仕事モードに切り替え
一分でも早く 仕事が終わるように動き回った。

『お疲れ様ーーーーー。』
『お疲れ様です。』
終った…。
打ち上げと称した飲み会に誘われたけどあたしはやんわりと断った。
♪マジ ハンパないメールだぜ♪マジ ハンパないメールだぜ
届いたんは やっぱり大谷からのメール。
<大谷サンタは終了>なんて1行メール。
もうちょっとロマンのかけらとかちりばめたメールくれたってええやん。
クリスマスやねんから…。
文句の一つも返したろうと 返信しかけた時…。
♪マジ ハンパないメールだぜ ともう1通のメール。
『大谷?』
<仕事終ったか? みんなの大谷サンタは終わりやけど
リサだけのサンタは継続中。迎えに行くから(笑)>
『もぉ なによ(笑)リサだけのサンタって…ハズいっやんかぁ』
あたしは携帯をぎゅっと抱きしめ小さな声で『心臓また掴まれた』って呟いた
そして<終った。>とだけ返信した。
『わっ さぶっ…。』
スタジオの外に出ると 雪は積もってないものの
風が冷たく頬に突き刺さる。
イルミネーションを巻きつけられた街路樹は綺麗な光を放ってる
あたしだけのサンタさん はよう迎えに来て…
そしたらきっとスペシャルなクリスマスになるから…
あたしは夜空を見上げた。