高木 震えているのか
軍曹殿は怖くないのでありますか
泥だらけの顔
澄んだ目
高木という青年が
ちいさく言った
生き残ったのは
どうゆうわけか
オレとお前だけだ
もうじき
また攻めてくる........
俺達二人では
たぶん10分も持たないだろう
死ぬと分かっていて
怖いも何もない
自分も怖くないであります
軍曹殿をお守りします
そうか
たのもしいな
ですが
自分は自信がないであります
なにがだ
自分は人を殺すことに
まだ抵抗があります
自信がないであります
そんな事に自信を持つな
いざとなった
人間はそれくらいの事は抵抗無く
しでかすものだ
一瞬あたりがひんやり
静まり返った
かすかな気配
感じてはならない
何かが忍び寄る
高木もっと頭を低くしろ
軍曹が高木の頭を押しつけた
静寂はその時を待っていた
静けさは破られた
一発の銃弾の音
たった一発の銃弾
高木に寄りかかるように
軍曹は崩れ落ちた
静かに
そして
高木を見つめたまま
無言の息を引き取った
高木は軍曹を抱きかかえ
何が起きたのか理解できない
軍曹殿ーー!
軍曹殿ーーーー!
頭部が血に染まり
高木の手が血にまみれ出した
高木の見ている前で
銃弾が軍曹の こめかみを貫いていた
高木は声を絞り出し
叫んだ
敵が攻めてくる
直前の戦場で
軍曹殿!
軍曹殿!
軍 曹 どの.....
高木を
一人ぽっちに
しないでください
高木を.......
まだ
暖かい軍曹殿を
強く抱きしめた
死んだ人間の感触に
驚き
高木の目には
やっと涙があふれてきた
高木は
軍曹殿を..
お守りする事が
できませんでした
敵を倒すどころか
こうして
軍曹殿を......
守る事さえ
できなかった
涙が邪魔して言葉が出てこない
高木の手に
ポタポタと涙が落ちる
軍曹の流れ出る赤い血
高木の無念の涙が
いり混じる
何も洗い流すことができない
無念の涙
そして
涙が全身を刺す
高木に
軍曹の
言葉が
渋い笑顔が
蘇った
高木
いざとなれば
やるか やられるかだ
それが戦争の陰惨なとこだよ
ところで
お前の国はどこだ
北国であります
軍曹殿
北国でありますか
面白い答えだな
ご両親はどうしてる
母一人 子一人であります
じゃ
どうしても生きて帰らなければ
母親を一人にするな
自分は生きて帰れるんでありますか
オレにもわからない
自分で生き抜くしかない
生き抜くんだ
高木
高木
この戦争の意味を知ってるか
よくわからないであります
分かったとこで
何も変わらないが
少なくとも
オレ達は互いに理解しあえる
この残されたわずかな時間の中で
俺がなぜこんな命令を出したか
高木
分かるか
軍曹は高木の肩を強くつかんで
言った
軍曹殿
心配しないでください
高木は
軍曹殿に
どこまでも
ついていくであります
高木
戦争に
そもそも
大義なんか無い
その中で
ただ死んでいくんだ
オレは
おまえに
何一つ
説明できないんだ
軍曹殿は戦争が嫌いなんでありますか
好きも嫌いも無いさ
大勢の命が無駄に失われていくんだ
好きも嫌いもあるか
失礼いたしました
高木は
軍曹殿を信じて
どこまでもついていくであります
ど こ ま で も
また大粒の涙が
高木の目から
こぼれ落ちた
無念というより
寂しかった
軍曹殿
高木は
高木は
戦争が嫌いでありました
いまこうして
軍曹殿を見て
高木は
ただ死んでいくという意味が
むなしいというより
無念であります.....
さみしい......のであります
軍曹殿
高木は
すぐに立ち直ります
大丈夫です
心配しないでください
生き残って見せます
軍曹殿
安らかにお眠りください
高木は
ぜったい
生きて帰ります
高木は
すでに冷たくなり始めた
軍曹を抱きかかえ
何を思ったのか
敵の銃弾から守るように
くぼ地に引き込んだ
静寂が
再び
あたりを覆い
非情な
気配が忍び寄る
高木が
涙を袖口で拭いた
そのとき
からだに
電流が はしった
なんであるか
今度は
一瞬で
高木は
理解した
一発の銃声の意味
折り重なった
二人の男
軍曹と
高木
戦争の意味を理解しないまま
いや
戦争をむなしいと感じたまま
暗い暗い
森の中を
二人の男が歩いている
軍曹殿
ココはやけに暗いであります
高木
まだ
わからないのか....
俺達は......... もう....
声が小さく響きながら
闇の空間へ
消えてゆく
高木という
誰も知らない
青年の青春
軍曹殿は怖くないのでありますか
泥だらけの顔
澄んだ目
高木という青年が
ちいさく言った
生き残ったのは
どうゆうわけか
オレとお前だけだ
もうじき
また攻めてくる........
俺達二人では
たぶん10分も持たないだろう
死ぬと分かっていて
怖いも何もない
自分も怖くないであります
軍曹殿をお守りします
そうか
たのもしいな
ですが
自分は自信がないであります
なにがだ
自分は人を殺すことに
まだ抵抗があります
自信がないであります
そんな事に自信を持つな
いざとなった
人間はそれくらいの事は抵抗無く
しでかすものだ
一瞬あたりがひんやり
静まり返った
かすかな気配
感じてはならない
何かが忍び寄る
高木もっと頭を低くしろ
軍曹が高木の頭を押しつけた
静寂はその時を待っていた
静けさは破られた
一発の銃弾の音
たった一発の銃弾
高木に寄りかかるように
軍曹は崩れ落ちた
静かに
そして
高木を見つめたまま
無言の息を引き取った
高木は軍曹を抱きかかえ
何が起きたのか理解できない
軍曹殿ーー!
軍曹殿ーーーー!
頭部が血に染まり
高木の手が血にまみれ出した
高木の見ている前で
銃弾が軍曹の こめかみを貫いていた
高木は声を絞り出し
叫んだ
敵が攻めてくる
直前の戦場で
軍曹殿!
軍曹殿!
軍 曹 どの.....
高木を
一人ぽっちに
しないでください
高木を.......
まだ
暖かい軍曹殿を
強く抱きしめた
死んだ人間の感触に
驚き
高木の目には
やっと涙があふれてきた
高木は
軍曹殿を..
お守りする事が
できませんでした
敵を倒すどころか
こうして
軍曹殿を......
守る事さえ
できなかった
涙が邪魔して言葉が出てこない
高木の手に
ポタポタと涙が落ちる
軍曹の流れ出る赤い血
高木の無念の涙が
いり混じる
何も洗い流すことができない
無念の涙
そして
涙が全身を刺す
高木に
軍曹の
言葉が
渋い笑顔が
蘇った
高木
いざとなれば
やるか やられるかだ
それが戦争の陰惨なとこだよ
ところで
お前の国はどこだ
北国であります
軍曹殿
北国でありますか
面白い答えだな
ご両親はどうしてる
母一人 子一人であります
じゃ
どうしても生きて帰らなければ
母親を一人にするな
自分は生きて帰れるんでありますか
オレにもわからない
自分で生き抜くしかない
生き抜くんだ
高木
高木
この戦争の意味を知ってるか
よくわからないであります
分かったとこで
何も変わらないが
少なくとも
オレ達は互いに理解しあえる
この残されたわずかな時間の中で
俺がなぜこんな命令を出したか
高木
分かるか
軍曹は高木の肩を強くつかんで
言った
軍曹殿
心配しないでください
高木は
軍曹殿に
どこまでも
ついていくであります
高木
戦争に
そもそも
大義なんか無い
その中で
ただ死んでいくんだ
オレは
おまえに
何一つ
説明できないんだ
軍曹殿は戦争が嫌いなんでありますか
好きも嫌いも無いさ
大勢の命が無駄に失われていくんだ
好きも嫌いもあるか
失礼いたしました
高木は
軍曹殿を信じて
どこまでもついていくであります
ど こ ま で も
また大粒の涙が
高木の目から
こぼれ落ちた
無念というより
寂しかった
軍曹殿
高木は
高木は
戦争が嫌いでありました
いまこうして
軍曹殿を見て
高木は
ただ死んでいくという意味が
むなしいというより
無念であります.....
さみしい......のであります
軍曹殿
高木は
すぐに立ち直ります
大丈夫です
心配しないでください
生き残って見せます
軍曹殿
安らかにお眠りください
高木は
ぜったい
生きて帰ります
高木は
すでに冷たくなり始めた
軍曹を抱きかかえ
何を思ったのか
敵の銃弾から守るように
くぼ地に引き込んだ
静寂が
再び
あたりを覆い
非情な
気配が忍び寄る
高木が
涙を袖口で拭いた
そのとき
からだに
電流が はしった
なんであるか
今度は
一瞬で
高木は
理解した
一発の銃声の意味
折り重なった
二人の男
軍曹と
高木
戦争の意味を理解しないまま
いや
戦争をむなしいと感じたまま
暗い暗い
森の中を
二人の男が歩いている
軍曹殿
ココはやけに暗いであります
高木
まだ
わからないのか....
俺達は......... もう....
声が小さく響きながら
闇の空間へ
消えてゆく
高木という
誰も知らない
青年の青春