パン欲をとぎすます

2014-10-29 | つれづれ日記
山に初雪のニュース
里では木枯らしが落ち葉を掃いている

「パン欲」(池田浩明)を読む




ページを開いたとき
ふっとパンの香りがした(ような気がした)

人には本能としてパン欲があると池田さんは言う

それをとぎすますために(?)
他のものは何も食べないで
パンだけを食べて北海道から沖縄まで縦断した

池田さんは
どんなパンも受け入れる
小麦から自分でつくっているひとのパンも
一日何百個も売れる工場生産のパンも
ハード系のパンも
お年寄りや子どもにやさしい柔らかいパンも


「ぱりぱりしているが
がさがさとは割れない
沈み込んだあと
しゅれしゅれと割れる
表面の香ばしい甘さはやや強く
中身はしっとりした食感と抑え気味の繊細な白い甘さがあり・・・」
という惜しげもない賞賛の言葉が
どのページにもあふれている

他のものを抑えて
確かめてみたくなりました
本当のパンの味を










意外な取り合わせ

2014-10-26 | つれづれ日記
ナツツバキの葉が
グラデーション紅葉になっている

「鬼はもとより」(青山文平)を読む



主人公の奥脇は
経営コンサルタントをしている
江戸で

冷害によって経済が破綻して崩壊してしまった自分の藩の
経済破綻の原因を
考えて考えて
奥脇はついに藩札を使った経済の立て直し方を思いつく

それを試してみる実験場に選んだのが北国の島村藩
奥脇の助言を受けて
島村藩の執政の梶原清明が
「鬼」になって改革を行う

奥脇の考えた方法は
①特産物をつくって他国に売る
②特産物を藩札で買い上げる
③藩が自ら正貨で売る
④特産物を売れる所まで輸送する

奥脇の考えた方法は成功するのか
梶原が「鬼」になるとはどうすることなのか
・・・・

最後まで興味は尽きません

経済小説で時代小説
意外な取り合わせですが
意外に美味しい










肯定が降ってくる

2014-10-23 | つれづれ日記
道を行く人たちが
マフラーをしている
気温11度の昼下がり

「ふたつのしるし」(宮下奈都)を読む



温人=ハルト≒ハル
遙名=ハルナ≒ハル
という2人のハルの話

幼い頃からずっと違和感を感じ続けてきたハル(少年)は
地図を読むことが楽しみだった
ハルはそのままの自分で生きていく
やがて
地図を読むことは電気の配線図を読む仕事になり
どこにでも「行ける」人になる

ハル(少女)は
違和感を押し隠して生きていく
周りの望む姿で生きているうちに
ふと
自分を見失ったような気持ちになる

そんな時大きな地震が起こる
ハル(少年)はハル(少女)を
自転車で家まで送り届ける
もうその時は少年と少女ではないけれど
・・・・

ずっと地図を読んでいていいんだよ
という肯定
あなたを助けに来ましたよ
という肯定

肯定が降ってくる話です

白馬の王子というのは
現代では肯定のことなのかもしれません






理想の枕

2014-10-20 | つれづれ日記
首に付け根から肩先まで

背中の厚み
が同じ長さの人というのはまずいないだろう
そのどちらもに対応する枕なんてあるはずがないのに
今まで何処かにないかなぁと思って来たのだから可笑しい
枕を二つ用意すればいいだけなのだそうだ(目から鱗)
ということで
二つの枕の谷間に仰向けになり
左右の枕で横向きに寝ている(はず)

この枕で
「今だけのあの子」(芦沢央・よう)を読む



ミステリ短編集です
このところ乾きもの読み気分からすると
ちょっとウエットなミステリでした

友達の結婚式に自分だけが招待されない話
絵画教室に行っている子どもの絵が盗まれた話
姑が自分のあげたお菓子を捨てているのを見てしまった話

解きほぐされて
誤解だったんだね となる5編
だったので
でも
夜でも安心して読めます

中でも「願わない少女」のトリックは
なかなか





みほんの国

2014-10-09 | つれづれ日記
朝の
居間の温度が10度台

なりました

「『消費』をやめるー銭湯経済のすすめ」(平川克己)を読む



どうもあんまりうまくいっていないらしい日本

どうしたらいいかなぁと考え
実際にやってみた
という筆者の体験が
(うまくいかなかった時代のことも)
書かれています

まず、自分が行くための喫茶店をつくって
その喫茶店でゆっくりしたいために
会社を喫茶店の近くに移転して
午後は休憩時間に銭湯に入ってから
また仕事をする
「湯治生活」のような会社生活

今、筆者はしているのだそうです

経済は成長しなくていいから
いろいろな年齢の
いろいろな個性の人が「住んでいる」
(筆者は「棲み分け」と言っていますが)
「落ち着いた大人の国」
の見本に
日本はなればいい
と筆者は考えている

前半は
これまでの日本の経済のことを
ざっとおさらいできる
というお得な本でもあります

にほんの国がみほんの国を目指す
(これって駄洒落?)

追記
身長が伸びなくなって
ようやく大人になるわけです
日本もしっかり大人にならなくては(原研哉・10/21 A新聞)






誰が誰を?

2014-10-01 | つれづれ日記
10月になりました
中の秋
を存分に味わわなくては・・・
3ヶ月予報は「寒い」だから
雪が早いかもしれないので

「胡蝶殺し」(近藤史恵)を読む



表紙の少年は
歌舞伎役者市川萩太郎の子・俊介と
中村竜胆の子・秋司
竜胆が病死し秋司は萩太郎の弟子になることになる

俊介にはない才能を見せる秋司だったが
大切な舞台の直前おたふく風邪に罹ってしまう
代役になったのは俊介だった
歌舞伎に興味を示さなかった俊介だったが
持ち前の記憶力でみごと代役をこなす

なぜ秋司は踊れなくなってしまったのか
なぜ俊介は急に稽古に熱を入れるようになったのか

いったい誰が誰を殺すのか

2人の少年が
角度を変えるたびに違う姿を見せてくれる多面体のように描かれる
ところに
ぐいぐい引き込まれます

謎解きの魅力も十分

堪能しました