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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

第95回全国高校野球選手権大会を振り返って

2013年08月24日 | 高校野球

95回の夏の甲子園大会が閉幕してまだ1日。

まだまだ、
あの熱気と歓声、打球音にブラスバンドの音が頭にこだまして、
なかなか”日常”に戻れない状態です。


今年も変わらぬたたずまいを見せた、日本一の、いや、世界一の球場。

さて、
今年の95回記念大会。

従来の大会から、
準々決勝が1日開催になったことと、
全試合抽選方式が復活したことで、
昨年までの大会よりも『先が見えない』トーナメントの面白さが倍増し、
素晴らしい大会になったと思っています。

そんな中で、
大会の印象に残ったことを、
ちょっと振り返ってみたいと思います。


激戦を物語る決勝のスコア。


1.戦国大会の名の通り、前橋育英が初出場で優勝を飾る。

大会前から言われた”戦国大会”の名の通り、”Aクラスの優勝候補”と言われた有力校が次々に敗退。まさに戦国大会となりました。
そんな中で勝ち残ったのは初出場の前橋育英と延岡学園。大会前には”優勝候補”には上がっていませんでしたが、まさに一戦一戦力をつけての優勝。大会に入ってからは、どの学校よりも攻守のバランスがよく、特に投手を中心とした守りは、両校ともに素晴らしいものがありました。
前橋育英は、準々決勝で9回2アウトまで追いつめられた試合を粘って逆転、その勢いを準決勝、決勝まで持ち込んで快勝。6試合のうち4試合を1点差勝ちという粘り強さで、この大会を制しました。アグレッシブな守備力はこれまでの優勝校にもなかったようなすばらしさで、まさに『守り勝った』優勝と言えました。
大会前に注目を浴びた、選抜優勝の浦和学院は初戦で、夏連覇を狙った大阪桐蔭は3回戦で、それぞれ強豪対決に敗れて涙をのみました。それぞれこの対決を制した仙台育英、明徳義塾の有力校は強豪を破った安心感が出たのか、次戦で敗れ去り、これまた大旗までは届きませんでした。日大三、横浜は今大会の”台風の目”となった学校に、それぞれ力で押し切られました。
やはり甲子園では、『その風をつかんでチームが駆け上がっていく』ということが証明された、今大会だったと思います。予想通りには、事は進まないということです。



2.前橋育英が初出場で優勝。初出場校が、頑張った!

前橋育英の優勝は、初出場での初優勝でした。
今大会の初出場校は全部で10校。そのうち5校が初戦を突破するという大健闘を果たしました。
前橋育英の初出場での優勝は特筆すべきことですが、そのほかでも春夏を通じて甲子園初出場で8強に進出した富山第一や、2勝を挙げた弘前学院聖愛、開幕戦を飾った有田工などの大健闘は大会を盛り上げてくれました。
今大会を通じて思ったこと。それは、初出場でも、臆せずに強豪に立ち向かっていったということでしょう。各校ともに、『甲子園で試合できることがうれしい』ということを前面に出して、伸び伸びとプレーしていたことが印象的でした。初出場とは言っても各地方大会を勝ち上がってきた強豪。甲子園でも”普段着”で野球が出来れば、十分に戦っていけるということが証明されたようでした。


3.印象的な、東北勢の大躍進。栄冠はすぐそこまで来ている。

正直な話、もうこんな話題は話題にするのも失礼な話かと思っています。
過去2年連続で決勝に進出、今年も4強に花巻東、日大山形を送り込む東北勢の話です。
これまで春夏の甲子園で”たまたま”優勝がなかったため殊更そのことが強調されるのですが、すでに実力は各地区の中でも上位に位置して、毎年優勝候補を輩出する実力派の揃った地区です。しかしこれまでとは違って、日大山形、花巻東、弘前学院聖愛の3チームが上位に残ったことは、東北地区のチームの若干の”変質”を感じる出来事でした。今大会でも東北勢は大会前から実力派揃いと言われていましたが、期待が集まったのは仙台育英、聖光学院が中心。この両校、ここ10数年の『東北の強豪』そのままに、中心選手は他の地区からの”野球留学生”で占められるチームでした。しかしこの両校が敗れ去った後上位にくらいついて行った前述の3校は、『地元選手中心』のチーム。ということは、『地元中心』の東北のチームも、甲子園で十分に勝ち上がれる力をつけてきたってことですね。
東北勢は90年ぐらいから、”野球留学生”を中心にしたチームで力をつけてきて、どんどん甲子園でも上位に進出してくるようになりました。仙台育英、東北の”老舗”の両校が先鞭をつけ、青森山田、光星学院、酒田南、聖光学院、羽黒、盛岡大付属・・・・・・・。『外人部隊』とも揶揄されることがあったものの、これらのチームは着実に東北勢の戦績を上げ、地域のレベルを上げてくれました。その功績は、大きなものだったと思います。そして昨今、それ以外の『地元中心』のチームが叩かれ続けながら力をつけてきたことで、【東北の高校野球】は新しいステージに突入したということも言えるでしょう。今年の大会の3校は、そのことを体現してくれたチームでした。『東北勢の悲願』はそう遠くない時期に、達成されることは確実です。そのゴールに初めて飛び込むのは、果たしてどの学校でしょうか。東北勢が甲子園の大会を席巻して上位に並び、『まるで東北大会?』なんて言われるのもすぐそこ。来年も楽しみになってきました。


4.名前やユニフォームで勝負できる大会ではなかった。

これも今大会の印象的な出来事でした。横浜、大阪桐蔭、日大三、明徳義塾、沖縄尚学……。
甲子園で優勝経験があり、『名前とユニフォームで勝負できる』チームと対戦した学校が、まったく臆することなく接戦を展開、あるいは破り去った姿を見ていると、本当に『実力伯仲』を実感した大会でした。横浜を破った前橋育英、大阪桐蔭を追い詰めた日川、日大三、明徳に勝った日大山形、沖縄尚学に快勝の弘前学院聖愛など、いくつも印象的な試合がありました。これらの学校は、強豪校に対して全く”ビビり”の印象がありませんでした。自分たちの野球をしっかりやり切り、『自分たちの野球は強豪に十分通用するんだ』ということを実感して、自信を持って戦い切った印象です。
こういう野球を全国の球児や選手たちが見て、【俺たちも】と思ってくれれば、ますます地方大会でも激戦に拍車がかかっていくと思われます。


5.若い監督さんが躍動。やる~。

これも印象的でした。
前橋育英の荒井監督は49歳とさほど若い監督さんではありませんでしたが、甲子園での采配は過去わずか1試合だけの”初心者”に近い監督さんでしたが、その選手たちを信頼して”やらせきる”采配は見事。ベンチでの立ち姿や、後ろポケットにしまった手帳に何事か常に書き込んでいる姿は、なかなか凛々しかったですね。選手と間違われるんじゃないかと思われるほど若さを前面に出してくれたのは準優勝・延岡学園の重本監督。『良き兄貴』の風情で、選手を鼓舞していく姿は、見事に選手を”乗せて”決勝まで導いていきました。初出場・富山第一の黒田監督も30歳そこそこの若き監督。投手力を中心としたキレのある野球は見事。準々決勝の重本監督との”若き名将”同士の延長の激戦は、両ベンチを見ているだけでも楽しかった。これだけの経験を積んだ両監督の、次の甲子園での試合がとても楽しみです。日大山形の荒木監督と花巻東の佐々木監督は、すでに名前も実績も十分な東北地区の名将。落ち着いたたたずまいでの采配で、今大会は相手となった【甲子園の名将】たちを次々に葬り去りました。名門に新風を吹き込んだのは常総学院・佐々木監督と作新学院・小針監督。両監督とも今更紹介するまでのないほどの監督ですが、特に佐々木監督の今大会での落ち着いた采配ぶりは、『脱木内監督』での常総新時代を感じさせてくれるものでした。作新小針監督の、3年連続出場で計9勝という数字もすごいですね。箕島を復活させた尾藤監督も、話題となりましたね。 新しい監督たちが、新時代を作っていく。そう感じさせてくれた大会でした。


6.守りの重要性、再確認。

今大会は開幕直後はホームランが乱れ飛ぶ大会でした。『もしかして、飛ぶボール?』なんてくだらないことを思ったりもしましたが、浜風に乗ってレフト方向への打球が伸びる伸びる。右打者のみならず、左打者がレフト方向にはなった高いフライがポ~ンと入ってしまったなんてことも1度や2度じゃあありませんでした。しかし大会の中盤以降は、試合のポイントになったのは『いかにしっかりと守れるか』ということ。特に今大会は、『ガッチリと確実に』というよりも、前橋育英に代表されるようなよりアグレッシブな守りが目を引いた大会でした。大ピンチでの≪ゲッツー≫、多かったような気がします。動きのいい内野手が多かったのも特徴ではなかったでしょうかね。これから数年間は、各チームがこんな形での≪相手にプレッシャーをかける守り≫を磨いていくのではないでしょうか。ひょっとしたら今後、トレンドになっていくかもわかりません。甲子園野球の転換点と言われた、池田高校が優勝した64回大会。圧倒的なパワー野球を見せつけられた各校の間で、その後『パワー野球』全盛の時代がやってきました。その転換点からすでに30年余り。今度は≪アグレッシブな守備≫が高校野球の全盛になっていくかも…そんな気もしたりしています。


7.今大会印象に残った選手

今大会の印象に残った選手です。

まず前半戦。投手では、左腕の活躍が目立ちました。樟南のエース山下の低めに集める投球、特に印象に残りました。2試合でわずか1失点。敗れてなお凄さを感じさせてくれました。熊本工の山下投手も、素晴らしい投球を見せてくれました。敗れたとはいえ浦和学院の選抜優勝投手・小島は崩れましたが、8回無死満塁での『鬼気迫る3者三振』は選抜優勝投手の矜持を十分に感じさせてくれました。後半戦からは右腕が大活躍。言うまでもない≪大会NO1投手≫の称号を手にした前橋育英の高橋光成は、まだ2年生。来年また彼が見られるなんて・・・なんて贅沢なことでしょうか。明徳義塾の岸も見事な投球を見せました。大阪桐蔭戦で見せたピッチング。グーンと伸びるストレートはPL・桑田投手の再来かと思いました。日大山形の庄司投手も、忘れられない選手です。シュート気味に入ってくる速球で日大三、作新学院、明徳義塾の強打線に真っ向勝負する姿は圧巻でした。富山第一の宮本投手も見事。前橋育英の高橋と並んで『大会NO1』に推したいピッチャーでした。外角低めに伸びる140キロ台後半の速球、無限の未来を感じさせてくれました。そして個人的に『大会NO1』にあげたいのは常総学院の飯田投手。彼の今大会のピッチングは素晴らしかった。速球の球速には一切こだわらず、丁寧に低めに投げ続ける姿は素晴らしかった。準々決勝の最終回に足がつって無念の降板をしましたが、4試合で35イニングわずか2失点。無念の思いは、次のステージで晴らしてください。

打者では、何と言っても前橋育英の内野陣。これがワタシの心を奪いました。サードの主将・荒井。ショートの土谷。そしてセカンドの高橋知也。3人の守備力にまさに”脱帽”状態でした。荒井選手のダッシュ力の素晴らしさと、バントをセカンドで”簡単に”刺すプレー。土谷-高橋コンビのため息の出るような美しいゲッツー。3人とも打線でも上位で頑張りましたが、何と言ってもまぶたの裏に浮かぶのはその守備での”華麗な”プレーの数々でしたね。
そして今大会を彩ったのは、花巻東・千葉選手のプレー。156cmの身長ながら、攻守に素晴らしいプレーを見せてくれました。打席ではカット打法で相手に投球させ続けて四球を選ぶ姿は、ある意味ホームランを打たれるよりも相手投手にダメージを与えていました。その千葉対策として済美が取った”5人内野手”の守備陣形をあざ笑うように3安打、そしてそのうち一本は”二人の外野”のはるか上を抜けていく大三塁打でした。準々決勝の試合後にあのカット打法が審判団から『疑義』を表明され、それゆえ準決勝ではその打法を【封印】せざるを得なかった無念、察するに余りあります。このことについては、また別稿で記事にするつもりです。日大山形ではショートの奥村選手が光りました。”県大会6割打者”に偽りなし。初の打席で日大三・大場投手から放った名刺代わりの一発は、観衆の度肝を抜きました。守備での華麗な動きも、彼の特徴でしたね。鳴門では4番伊勢がすごかった。特に修徳戦の大爆発は忘れることが出来ません。スイングがものすごく速かったですね。大会前の話題をさらった大阪桐蔭の森主将は、初戦で2打席連発のド派手な『ただいまアーチ』を放って沸せてくれました。投手としては不調ともいえた済美・安楽は、最後の最後、打席ででどでかい3ランを放って意地を見せてくれました。常総・内田、聖光・園部、仙台育英・上林のスラッガーたちは、それぞれ甲子園に足跡を刻んで去っていきました。


そんな中で、ワタシが選んだ今大会のMVP。

投手では高橋光成投手(前橋育英) 

野手では千葉翔太中堅手(花巻東) 

MIP(最も印象に残った選手)は荒井海斗三塁手(前橋育英) 

応援賞は、もちろん延岡学園の皆さんです。
暑い中、最後までの応援ご苦労様でした。



ピンクに染まった、ノリノリの応援席。


今年の大会は、
甲子園大会が色々な意味原点に戻ったような印象を受けました。
もちろん大会の方式もそうですが、
チーム作りの在り方などを見ても、
そう感じた大会でした。

それがゆえに、
ワタシにとっては実に『印象深かった』大会となりました。

来年からもこんな大会が続くといいなあ・・・・
そんな感想を強く持った、
いい大会でした。


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