≪第104回全国高校野球選手権大会≫
【大会総展望】
”コロナ禍”この言葉が球児に黒い影を落としてから3回目の夏。
今年の3年生は、
待ちに待った高校球児としての3年間を、
この「コロナ」という言葉の中で過ごしてきました。
様々な制約を設けられる中、
2年前は初めて、
夏の高校野球甲子園大会が行われず、
時の3年生は涙に暮れて引退していきました。
昨年は夏の選手権は復活したものの、
通常の大会とは違いブラスバンドの応援はなし、
さらに一般観客の入場制限と、
通常の大会とは趣を異にした中で2年ぶりの大会が開催されました。
しかしその中でもコロナの陽性者を出したことで2校が甲子園での試合を辞退、
何とも気の毒な終わり方で球場を去っていきました。
さて、
今年は3年目。
春のセンバツではコロナ陽性で1校が大会を前に、
そして1校が大会中に出場を辞退するという出来事が起こり、
まだまだ通常開催ではないという事を意識させられました。
そして迎えた今年の夏。
6月の時点では陽性者の数も沈静化してきており、
各地方大会もブラバン応援可、一般観客も入場制限なしでにぎわいを生んできましたが、
ここにきてまた陽性者の数が爆上がっていて、
プロ野球をはじめ各種スポーツの興行も四苦八苦の状況になってきています。
しかしここがスポーツの踏ん張りどころ。
大相撲もプロ野球もJリーグも、
厳しい状況の中何とか興行を続けています。
この高校野球は、
プロのスポーツとは違うものの、
100年を超える伝統を持ったスポーツ文化の担い手として、
ずっと日本の夏に彩りを加えてきました。
ワタシは、
どの国にもある伝統文化の一つとして、
凛として君臨し続けているのがこの高校野球だと思っています。
この高校野球の灯を消さず、
これからの100年に向けて指針を示せるような大会に、
この大会はなってほしいと思っています。
今年の主役は、
コロナ禍でずっと苦難を強いられてきた球児たち。
その彼らが生き生きと試合をして感動を与えることが、
日本にとって、そして日本のスポーツ文化にとって、
どれほど大切なことか。。。。
そんな気持ちで、
この大会を追っていきたいと、
”高校野球おやじ”は思っています。
さて、
今大会の総合展望です。
大阪桐蔭がまごうことなき1強。果たしてこの最強王者に迫る学校は出てくるのか?!
2000年ごろからPL学園に変わって大阪でその強さを見せてきた大阪桐蔭。
05年に完全にその殻を破ってからというもの勢いはとどまることを知らず、
08年に西谷監督になって初優勝を飾って以降、12年、18年と2度の春夏連覇を達成。
そして今年はその春夏連覇のチームをもしのぐ最強の布陣で、
春選抜に続いてこの夏も完全優勝を狙ってこの甲子園にコマを進めてきました。
チーム打率4割近い超強力打線はどこからでもホームランが飛び出すまさにびっくり箱。その強打線、打つだけではなく走塁やバントなどの細かいプレーにも気持ちが行き届いており、見ていても「他とは1枚どころか2枚も3枚も違うな」と思わせてくれる打線です。そしてその打線に援護されながら、過去最強と言ってもいい投手陣が相手を完全に抑えきるのが今年の大阪桐蔭のチーム。前田、別所、川原の3枚を中心に回した投手陣は大会通じてわずか1失点。1試合を通じても相手に5本以下のヒットしか許さず、ほぼ完ぺきに抑え込んできました。激戦の大阪大会でこれだけ完璧な勝ち方をしたチームは、かつてのKKのPL学園でも、藤浪ー森バッテリー時や根尾、藤原らの時の大阪桐蔭でも見たことがなく、それほどの完璧さで甲子園に臨む夏になります。不安材料をあえて探すとするならば、アグレッシブな守備に若干の乱れが見えること、そして投手陣の四死球が若干多いことぐらいですが、それもあえて探せば・・・・・という事で、他の代表校に比べて明確に”ウィークポイント”と言えるようなところではありません。この甲子園、連日35度前後まで気温が上がることが予想されていて、上位に行けば行くほど投手陣を中心に疲労度が増すことは必定です。しかしながら、層がこれでもかと厚い大阪桐蔭は、上に行けば行くほど、疲れが蓄積されるシチュエーションになればなるほど、他校との明確な違いを出せるチーム。考えれば考えるほど、このチームを倒す高校生チームなどあるわけがない・・・・・・という結論に至るのではありますが、そこは不確定要素が多く、波乱が起きやすい野球というスポーツ。大阪桐蔭を倒す可能性のあるチームを探るのが、一つの楽しみともいえるでしょう。いずれにしても、今年の大阪桐蔭の強さ、それは高校野球100年超の中でも破格・・・・・と言って差し支えないでしょう。
夏連覇狙う智辯和歌山は、唯一大阪桐蔭に土を付けた好チーム。近江、京都国際の近畿3強がどこまで迫れるか?!
さて、大阪桐蔭一択、単勝1.1倍程度のオッズに穴をあける可能性があるのはどこか。まず上がるのは、やはり昨夏の優勝校、智辯和歌山でしょう。昨夏は、その前年秋に一敗地にまみれたチームが力を伸ばしての夏甲子園制覇。智辯和歌山として21年ぶりの快挙となりました。その指揮を執るのが中谷監督。前任の”甲子園の名物指揮官”高嶋監督からそのバトンを受け継いで、より完成度の高いチームへと昇華してきました。中谷監督のチーム作りは、かつての「打撃で粉砕」から一歩進んで、バッテリーを中心として、相手に得点をやらない確率の高い野球。その一つの集大成が昨年のチームでしたが、今年も昨年に負けず劣らずの好チーム。投手陣では塩路、武元の2本柱をしっかりとローテを組んで投入して、まったく疲れを感じさせないトーナメントの戦い方を示しています。そして打線は決勝でホームランをバンバン叩き込んだ通りいつもの強力打線。スキはほとんど見当たりません。昨夏は好投手とあまり対戦することがなく甲子園で上位まで進出しましたが、心配があるとすれば好投手に抑え込まれた時ぐらいでしょうか。春の近畿大会では4人の投手を小刻みにつないで、大阪桐蔭にこのチームとして初めて公式戦で土を付けました。甲子園で対戦するときは、いったいどのような作戦で臨んでくるのか。2強というには少し力が離れている気もしますが、2強に近いところまで実力を上げて、智辯和歌山が夏連覇に挑んでいきます。選抜準優勝の近江も大阪桐蔭という事を考えると、面白いチーム。何しろエース山田は大阪桐蔭キラーと言ってもいいほど、大阪桐蔭を苦手としていません。選抜では疲労や準決勝での負傷で投げられる状態でなく大敗を喫しましたが、昨夏の甲子園では大阪桐蔭を見事破っていますし、さらに選抜帰りの春の近畿大会でも6回まで2失点に抑える好投。「大阪桐蔭打線を抑える術」を心得たこの山田が、昨年に続いてジャイアントキリングを巻き起こす可能性も、十分にあると思われます。そして近江は多賀監督が腹をくくった戦い方を続け、山田が投げなくても打線で試合を何とかとっていけるようになっているのが注目されます。ほぼどんなピッチャーからも5,6点は取れる打線になっていて、多賀監督は≪全国制覇≫という大望を抱き、この甲子園に乗り込んできます。その近江に選抜では道を譲って出場辞退した京都国際も、昨夏4強の実力をそのまま維持する好チーム。エース森下の左腕は全国屈指。内外角を強気に攻める投球は圧巻で、最後は相手に気迫勝ちする好投手。そしてさらに今年に入り、2本柱として計算された平野よりも守田が一本立ちして森下をしっかりサポートできるようになってきています。打線も昨夏よりも鋭さが増し強力打線に。春の悔しさを知るだけに、この夏にかける思いも強いと思われ、大活躍の可能性、一気に高まっています。
昨年に続き近畿勢が大会を席巻するか、それともほかの強豪が巻き返しを図れるのか?!
昨夏は近畿勢が4強を独占。昭和の時代の最後によく見られた「近畿大会」の様相が濃い大会となり、今年のセンバツも決勝は近畿勢同士のカードとなった。そしてこの大会も、近畿勢は強豪が無難に甲子園にコマを進めたのに対して、他地区の強豪は一敗地にまみれたというケースが多く、今年も近畿勢の力が抜けているという評価が一般的ではあります。しかし黙って手をこまねいているわけではなく、捲土重来を誓い各校が実力を上げてきました。今大会の「4強」に迫る一番手にまず上がるのが、センバツも経験した九州国際大付。左の「最高級の技巧派左腕」香西に加えて夏に伸びてきた池田がマウンドを守り、佐倉、野田ら攻撃陣が豪打で突き放す野球は豪快無比。初戦をうまく乗り切れば乗っていける可能性が大です。評価が難しい仙台育英も、投手陣は大阪桐蔭と互角のマッチアップができるぐらい実力を上げてきています。問題はやや小粒になった打線の破壊力ですが、ロースコアゲームをしっかりとっていければ上位進出も狙えるという評価です。選抜の初戦で大阪桐蔭と「唯一試合になった試合」を行って1-3で敗れた鳴門は、その後春の四国大会を制覇して、この夏甲子園に戻ってきました。エース左腕の富田は全国屈指の左腕に成長、大阪桐蔭に対して捲土重来を期しています。かなりチーム力は充実していて、久々に四国勢が上位進出も狙える位置につけています。
関東では明秀日立の打線が評判が高く、初出場ながら4強入りを狙っています。ここは猪俣という好投手のエースも控えており、実力は折り紙付き。毎年キレのあるチームを作ってくる興南は今年も好チーム。何しろ堅実な野球がしっかりと身についており、トーナメントでしっかりと勝ちあがっていける布陣。昨春選抜で準優勝の明豊も、投打でバランスが良くダークホースの一角に上がってくる。馬淵監督が「負けない雰囲気を持ったチーム」と評する明徳義塾は、2度目の全国制覇を狙い参戦。例年通りの戦力で投打に他を圧する力はないものの、戦いぶりのうまさときっちりした野球で上位を狙っています。東海勢は、今年も力を持ったチームが出場。4校のうち3校が昨年と同じ顔ぶれで、三重の上山は昨夏も甲子園で好投を見せた好投手。愛工大名電は力はありながら昨夏も初戦敗退。今年こそその力を発揮して上位に食い込みたいところです。鍛治舎イズムが浸透してきた県岐阜商は、投げる投手のだれもが140キロ超と実力を上げてきました。今年は一発を狙っています。春夏連続出場の日大三島は、永田監督が鍛え上げてきた1期生の集大成の年。エース松永の奮闘にかけています。春夏連続甲子園は北陸勢も。星稜は監督交代ながら夏も制し甲子園に戻ってきました。好投手マーガードに鋭い打線で選抜は8強。さらに上にターゲットを絞っています。昨夏は8強ながら選抜では初戦敗退の敦賀気比は、エース上加世田が健在。このままでは終われないと気迫十分です。
昨春は東海大相模が全国制覇、今春は選抜で4強に2校が進出した関東勢ですが、強豪と目されたチームが予選で大挙して敗退。勢いに乗ったチームがこの甲子園にやってきました。期待されているのは日大三か。6試合で74得点の強打は往年の猛打線をほうふつとさせ、4年前の4強進出を再度狙っています。聖望学園は埼玉大会決勝で、「絶対王者」の浦和学院の強打線を完封したエース岡部に期待。水準以上の好投手で、守備が鍛えられているバックが守り抜くカラーです。横浜は県決勝で杉山が東海大相模打線を完封。このところほとんど甲子園でいいところがないチームを引き上げていけるか注目です。山梨学院も実力派水準以上と言われながら、甲子園での実績はほぼないに等しいこれまでの戦い。名将と言われた吉田監督、そろそろ大ブレークが欲しい年だと思います。名門・高松商は昨夏に続いての出場。ここには注目のスラッガー浅野がいて、どんなパフォーマンスを見せてくれるか、注目度が高いです。
”大横綱”以外はほぼ実力差なし。大相撲のように、前頭下位での優勝も、十分に考えられる。
大阪桐蔭以外はほぼ実力差はない今年の甲子園。最近の大相撲さながらに、大関がバンバン負けて、勢いに乗った前頭会の力士が優勝近くまで駆け上がるなんていうことも、十分に考えられる大会です。その可能性を持ったチームは数多ありますが、最も期待が大きいのが日本文理。エース田中は150キロ寸前までMaxの球速を上げ、さらに勝てる投球もできるという事で評価の高い投手。彼が絶好調ならかなり期待が持てると思われます。選抜出場、その後春の東北大会も制した聖光学院は、昨夏10年以上にわたった連覇が止められて、そこから再スタートの年。何か背負っていた重いものを下ろしたようないい戦い方で、今年は期待できそうです。天理は長身のエース南沢が復調して、投打のバランスがしっかり取れてきました。ここはうまく立ち上がれば、ダークホースというよりも優勝の対抗馬ぐらいの実力を持ちます。社は県大会で明石商、神戸国際大附の両チームを抑えきった芝本、堀田の2枚看板が面白いチーム。あとは打線です。岡山の創志学園は、この秋の新チームから元東海大相模の名将・門馬監督が就任する予定。長くチームを育ててきた長沢監督最後の年に、いい戦いで聖地をつかみ取りました。もとより春の中国大会の優勝校であり、実力は高く評価されていました。ここもそのモチベーションがいい方向に向くと、ひょっとするかもしれないチームです。九州の名門2校も実力があります。鹿児島実は好投手赤崎が県大会初戦で春の中国大会優勝校の強豪・神村学園を抑えて競り勝ち。勢いに乗って一気に甲子園にたどり着きました。熊本の九州学院は、今をときめくヤクルト・村上の弟が4番を張り、兄が果たせなかった「打倒秀岳館」を果たしてうれしい自身初めての甲子園。
まずは1勝、そして勢いに乗って・・・・・・どのチームにもチャンスが広がる今大会。
甲子園に出場したからには、とにかく1勝を挙げて甲子園で校歌を歌いたい。。。。。これはどの学校も考えることだと思われますが、1勝を挙げて波に乗ると、それ以上が狙えるというのが今大会だと思います。札幌大谷は、夏は初出場ながら秋の明治神宮大会制覇の経験もあり、波に乗るとすごい力を発揮しそうです。今年のチームもなかなかの戦いぶりを見せているので、注目です。八戸学院光星は今年は注目されていなかったにもかかわらず夏はしっかり代表権を奪取。相変わらずの強打が売りのチームで、8強を狙います。一関学院も好チーム。花巻東、盛岡大附に席巻されていた夏の代表を久々に奪い取り、意気上がります。鶴岡東は最近の常連組。2019年の再現(3回戦進出)を狙いたいところ。能代松陽は甲子園に確かな足跡を残して以来、11年ぶりの夏。センセーショナルな戦い、期待できるかもしれません。国学院栃木は37年ぶり、樹徳は30年ぶりと、今年は北関東で、久しぶりに覇権の行方が変わりました。作新学院、前橋育英の強豪を破ってきた両校、どんな戦いをするのでしょうか。市船橋も圧倒的な実力を誇った木更津総合を倒しての15年ぶり。つながる打線がチームのキモ。3季連続甲子園の土を踏む二松学舎は、エースと4番をセンバツから変えて臨む甲子園。昨夏コロナで県大会を無念の辞退となった佐久長聖は、その無念を晴らしての夏。気持ちの強さで波乱を起こしたい。一方で高岡商は5大会連続の夏。例年違うチームカラーで登場するチームではありますが、今年は強打で出場。準決勝、決勝をともに10点以上のゲームでの1点差勝利。何かを持っているのかも。。広島の盈進は48年ぶりの出場。前回は初戦で見事な勝利をあげている。鳥取商、浜田、下関国際はいずれも苦しい県大会を制しての夏。初戦突破を狙っている。帝京五は初めての夏。小林監督が鍛え上げた攻守で初戦突破狙う。有田工は1番エース、塚本に注目。海星と富島には、水準以上の好投手がいて、波に乗れば一気・・・・も想定できる。旭川大はしぶとさが前面のチーム。前回は星稜・奥川と0-1の大接戦、その前年は延長タイブレークを甲子園で初めて経験して敗れ去った。今年は果たしてどうなるか。
今年の大会は、春夏甲子園初出場校がいないという、初めての大会となりました。
夏初出場校は5校、連続出場は15校を数えます。ある意味甲子園出場校も固定化してきた・・・・と言えるかもしれません。もちろんコロナ禍で練習環境も制限されますから、練習環境が整った学校が、より一層のアドバンテージを得た、と分析できるかもしれません。そんな中での今大会、予報では連日35度を超える猛暑日になる・・・・・とも言われていて、コロナの収束も見通せない中、熱く戦いながら何としても最後まで全うしてほしい。。。。。。その気持ちを強く持っています。
コロナに翻弄され、また連日の雨にも翻弄された昨夏の大会。
その記憶が生々しく残っているだけに、今年の大会も、楽しみとともに何だか得体のしれないハラハラ感もまた、感じているワタシです。
どうかご無事で。。。。。
こんな時に言う言葉ではありませんが、
そんな心境で大会の開催を待っているワタシです。