今年で87才になるジミー・ミリキタニ(三力谷)さんは、カリフォルニア州サクラメント生まれで、一時広島で過すも兵学校に行くことを拒否し、絵を描くために再びアメリカへ。ところが第二次大戦が始まると、米国籍を持っているにもかかわらず日系人強制収容所に入れられ、半ば強制的に市民権を放棄させられてしまいます。家族とも離れ離れになり(母方の家族は原爆で失い)、各地を転々とした後ニューヨークでホームレスのような生活をしながら路上で絵を描いていたところ、監督のリンダと出会い撮影が始まります。そして2001年9月11日のテロをきっかけに二人は監督のアパートで共同生活をすることになり、ミリキタニさんの戦争に翻弄された波乱の人生を辿りながら、こじれてしまったアメリカとの関係を修復し再生してゆく、、というだいたいこんな内容のドキュメンタリー映画です。良かった~。 ミリキタニさんの生き方、人柄、描く絵、歌、、、なんともいえないミリキタニワールドの魅力。 それほど広くはないリンダ監督のアパートの部屋での共同生活。優しい監督だけれどつい「私だって一人の時間が欲しいときもあるのよ」とこぼしてしまう。ミリキタニさんに直接言うのではなく飼っている猫に言うところも面白いのだけれど、それを聞いたときのミリキタニさんのしょんぼりした表情がとっても可愛らしい。歌もお上手で「北国の春」や「奥飛騨慕情(それも3番!メモして帰ってから調べました、笑)」などを映画の中でも歌っています。見る前はどんな頑固で偏屈なおじいさんかと思っていたけれど、誇り高く純粋で、強くそしてキュートなハートの持ち主。 そして、そんなミリキタニさんに社会保障を受けさせようと、根気強くさまざまな調査や手続きに奔走するリンダ監督の優しさにも感心しました。彼女の尽力で、ミリキタニさんが生き別れたご家族の一人と60年ぶりに電話で話すシーンでは、映っていないけれどリンダ監督は泣いているように見えました。彼女の親切さが打算や感傷からのものではなく人間としてもっと深いところからのもので、だからこそ映画の前半と後半でミリキタニさんの姿勢も表情も大きく変わり、ドラマチックなほどいろいろなことが良い方向に向かいはじめてゆくという流れに、感謝と感動を覚えずにはいられないのだと思います。 パンフレットに、今年の夏に70年ぶりの来日を果たし広島の原爆の日の平和記念式典にも参列されたとありました。思い出の美味しい広島の柿を召し上がられたのでしょうか。いつまでもお元気で絵を描き続けて欲しいです。 それにしてもミリキタニさんが猫の絵を描くのには悲しくて優しい理由があるのに。それなのに、パンフレットに(公式サイト(画像クリック)にも)ある「猫写真コンテスト」の入賞作品の選考基準はなにか映画のイメージとギャップがあるような、、。カワイイから良いけど(笑)。
■ 今日の劇場鑑賞 『ミリキタニの猫』(2006年/米/リンダ・ハッテンドーフ監督)