はい、こちらを書きたかったんです。
『変な家』と『変な絵』は発売されてすぐ購入して読んで、うわあああああああと手でメモを書き殴りながら(でないと頭の整理が追い付かなかった)読破して、それぞれ1週間くらいずつ放心状態だったのですが、今改めてメモを読んでも、どういう話だったかさっぱり…。
よく、「記憶を消してもう1回やりたいゲーム」などという表現がありますが、そんなことをしなくても、雨影の記憶は消えるようです。
ということで、改めて読み返すとともに、メモを清書したり、ところどころ感想を書いたりします。
備忘録的に。
ということで、ここから先は、雨穴さんの著作『変な絵』のネタバレを含みますので、回避したい方、また、だらだらした長文を避けたい方も、直ちにブラウザバックしてください。
まずは人物相関図を清書。
『変な家』と『11の間取り』に比べれば、『変な絵』は登場人物が少なくて助かりますね…。
(しかしそれなのに覚えていない。)
概ね目次の順序に従って、書きます。
手書きメモの方は、書いたり消したり×印を付けたりと、この物語に様々などんでん返しがあったことを物語っていますが、清書に当たっては、なるべく最後の結論だけ書いて、必要に応じてその過程を書きます。
『「それではこれから、一枚の絵をお見せします」』と、『第一章 風に立つ女の絵』は、最終章に直接関わる内容のため、後述します。
1.『第二章 部屋を覆う、もやの絵』
時期:2015年
絵を描いた人物:今野優太(6歳)
絵の内容:
保育園で「お母さんの絵」を描くことになった。優太は、昨日ママ(直美)に叱られたことへの反抗として、「お母さん」(由紀)の絵を描こうとした。しかし、ママに対して酷いことをしている気分になって、絵を誤魔化した。
最初に描こうとしていたのは、墓石と、そこに彫られた今野の「今」という字。しかし、誤魔化した結果、マンションの絵ということにした。
出来事:
- 絵を描いた後、やはり「お母さん」に会いたくなって、優太は一人で外出し、近所の霊園へ向かった。
- 墓石には、「今野家之墓」ではなく、「今野由紀之墓」と彫られている。
- 直美は、由紀をこの場に一人、置き去りにしたいほど怯えており、息子の武司の墓とも離れたところにした。
2.『第三章 美術教師 最期の絵』
時期:1992年9月21日
絵を描いた人物:三浦義春(直美により惨殺。当時41歳)
絵の内容:
- 岩田は「直美による死亡推定時刻の偽装トリックに気付き、三浦が『自分は朝まで生きていたことを示す』」ために描いたと推測。
- しかし、直美は「妻(直美)が殺人罪で捕まったら、息子の武司を守る者が誰も居なくなり、一人になってしまう。だから妻を庇う」ために描いたと推測。
出来事:
- 1992年。三浦が山腹で殺害された事件についてL日報の記者、熊井が取材を行う。しかし、取材の最中に食道がんが発覚し、治療をきっかけに異動。
- 1995年。岩田(19歳)が新人としてL日報に入社。三浦は岩田の高校時代の恩師であり、事件の真相が有耶無耶になることに耐えられず、自ら明らかにするために記者を志望。熊井から事件の詳細を教えてもらう(8月28日)。
- 岩田、現在美術教師を務めている亀戸由紀(元部員)に取材。事件の後、三浦の家でよく一緒に食事をしたこと、食事の支度や子どものお世話などを手伝ったこと、当時、三浦に恋をしていたこと、豊川(三浦の元同窓生で、臨時教師の仕事を三浦から貰っていた)も一緒に居ることが多かったが、豊川は直美に言い寄っていたことを聞く。
- 同年9月21日。岩田、三浦が殺害された日に再現をするため、登山。
- 三浦の遺した、レシートの裏に書かれた山並みの絵が、朝日に照らされた山並みであることに気付く。
- 三浦は、寝袋で寝ている最中に、犯人に手足を縛られ、犯人によって口に無理矢理食べ物を詰め込まれる。未消化の食べ物で死亡推定時刻を偽装されることに気付き、自分は朝まで生きていたことを示すため、何度も訪れたこの山並みを、記憶を頼りに描いた、と岩田は推測。
- また、三浦が「人の形をした何か」になるまで徹底的に惨殺されていたのは、激しい怨恨によるものではなく、消化物からしか死亡推定時刻を割り出せないようにするために惨殺したことに辿り着く。
- しかし、岩田も同一の手口で直美に惨殺される(由紀が直美に岩田のことを話してしまっていた)。岩田も三浦同様、絵を描き遺す。
- 同年9月26日。豊川が大量の睡眠薬を飲み、自殺。三浦と岩田を殺した旨の遺書(新品のワープロで打ったもの)が残されていた。なお、事実は、直美が豊川を殺害。
- 2015年。熊井の推理。犯人がわざと山の絵を現場に残した理由について、死に際に山並みを模写したとなれば、犯行時刻は夜明け後になり、朝の時間はアリバイとなるため、有利になるからと推測。岩田は、犯人が絵を持ち去らないことを見越して絵を描いた。岩田が遺したかったメッセージは、「山の絵を現場に残すことで有利になる人物が犯人」(=直美)ということ。熊井は、直美を徹底的に調べることにする。
3.『第一章 風に立つ女の絵』
時期:2009年9月
絵を描いた人物:今野由紀(旧姓:亀戸)
絵の内容:
5枚の絵のうち、3枚は、自身が出産時に直美に殺される絵(=計画殺人)。
残る2枚は、武司と子どもが手を繋いでいる絵。
出来事:
- 2014年。大学生の佐々木と後輩の栗原が『七篠レン 心の日記』に関する推測を行うことで物語が進行する。
- ブログ内で暗に示された「もう一人」=直美
- 七篠レン=今野武司。「こんのたけし」を分解して並べ替えると、「ナナしのレんここ」となるため、「七篠レン心の日記」とした。
- 由紀が出産時に死ぬよう、直美が計画。
- 出産の一週間前、由紀が突然泣き出す(ブログ内『マタニティブルー』)。由紀は直美の計画に気付いていた。
- しかし、直接的な殺人計画であれば、武司に助けを求めたり、警察に相談できたものの、直美の計画はあまりにも迂遠で、その段階では犯罪ではなく、言い逃れも可能だった。直美にべったりの武司は、直美の言い分を信じるだろうし、そうなれば、由紀は居場所をなくす。
- 由紀は、両親と絶縁状態であり、仕事もしておらず、若くもない。逃げ場所が無かった。そのため、直美の計画が成功したときのために、暗号めいた5枚の絵を遺す。
- 2009年9月10日、由紀は出産時に死亡。優太誕生。
- 2012年11月28日、武司が絵の暗号を解いてしまう。優太が生まれてからのブログ記事を削除し、翌日、自室で首を吊って自殺。
4.『最終章 文鳥を守る樹の絵』
時期:1961年?
絵を描いた人物:今野直美
絵の内容:
母を殺害した直美に対する描画テスト。
直美は、刺々しい攻撃心の奥に、とても優しい心を隠し持っている、と、心理学者・萩尾登美子によって診断される。
2015年になって、本当は逆だったのではないか。
木の枝は、文鳥を守るために尖っている。
つまり、弱い生き物を守るためならいくらでも外敵を傷つけられる人格であり、木はまさに殺人鬼・今野直美そのものを象徴していたのではないか、と萩尾はかつての自分の浅はかさを悔いる。
出来事:
- 直美の半生が、本人の回想で語られる。
- 10歳の誕生日のときに文鳥を飼いたいと強請る。
- 1年後、父は管理職になって鬱になってしまい、自殺。しかし、そうした死因から、母は周りから根も葉もない噂を立てられ、家に引き籠る。母が直美にDVを行うようになる。ここで直美は、母は元々こういう人格で、父に愛されたくて、優しい母を演じていただけだと気付く。
- 9月1日、文鳥が煩いと殺そうとした母を殺害。6年間、救護院で過ごす。
- 高校卒業と同時に施設を出る。「庇護欲が強いから助産婦を目指せば」という職員の無責任な一言をきっかけに、助産婦を目指す。
- 美大の学校通りの喫茶店でアルバイトする。ここで、美大に通っていた三浦、そして三浦を通じて豊川と知り合う。自分が母に似た美しい容姿になっていることを自覚しており、自分を巡って三浦と豊川が争っているのも知っていたが、三浦の真っ直ぐなプロポーズを受けることにする。
- 三浦との間に誕生した息子の武司を、直美は溺愛した。しかし、非常に内向的な性格だった武司は、父に厳しく教育され、体罰まで受けるようになる。直美は離婚調停を考えるが、母を殺害した過去がある直美は不利になるため、親権を奪われるおそれがある。そのため、三浦を殺害する。
- 三浦の死後、豊川から「自分も三浦を殺そうと現場に居たら、直美の犯行を目撃した」と告げられる(美大時代は豊川の方が優秀だったのに、社会人になってから三浦に職の世話までされて屈辱だった)。警察に通報しない代わりに、毎週自分とセックスするという取引を持ち掛けられる。豊川は、三浦と散々天秤にかけて弄んだ直美のことも恨んでいた。
- ある夜、トイレに起きた武司に抱かれている姿を見られてしまう。母が犯されている姿を息子に見せつけるため、寝室の襖を開けていたのも、武司に利尿剤を飲ませてトイレに起きるよう仕組んだのも、豊川の仕業だった。しかし、豊川は転勤で遠くに越す。
- 時は流れ、27歳になった武司が、恋人として33歳の由紀を連れて来る。かつて三浦の家によく手伝いに行っていた由紀に、武司も心を開いていた。12年ぶりに再会して、恋人となった。
- 1年後(2007年10月15日)、結婚。由紀は、直美と武司の家に同居する。
- やがて由紀が妊娠。直美は、自分が由紀の居ない世界で、母親でいたいことを自覚(祖母にはなりたくない)。それを甘美な夢だと感じる。
- 直美が勤めていた病院は助産婦が権力を持っており、中でも直美は最も古株で、意見できる者はいなかった。そのため、本来なら有り得ないが、義理の娘である由紀の担当となる。ここで、由紀が35歳という高齢出産であること、また、血圧が高いことを知り、殺人の計画を立てる。
- 計画とは、妊娠8か月目から、塩をサプリメントと称し、毎日15g飲ませ続けることだった(本来の摂取限度量は6g未満)。成功率の低い祈りだったが、叶ってしまった。
- 出産前に測定した血圧は嘘の数値を記入し、由紀は極度の高血圧の状態で何度も強くいきんだため、死亡。
- 武司に対し、優太が「ママが居ないことに惨めさを感じてはいけないから」と言い包め、優太に自らを「ママ」と呼ばせた。武司はずっと直美の「いい子」であり、言い包めるのは簡単だった。
- それまでの殺人は、武司を守るためだったが、由紀の殺害は、「永遠に母親で居続けたい、母親という称号を失いたくない」という、自分のための殺人。どこかで罰を受けると思った。ある日、隣で寝ているはずの武司が見当たらず、探したところ、首を吊って死んでいるのが見つかった。遺書であるブログを読む。
- ブログの最後の記事である「一番愛する人」とは直美。それほどまでに直美は武司にとって絶対的存在だった。武司の心の自立を妨げてしまい、武司は直美を切り離すことができなかった。
- 一方、熊井は、記者としてのプライドを取り戻すため、事件を追う。直美の犯した殺人のうち、三浦は時効だが、岩田は時効ではない。警察を動かすために、別件逮捕をさせることに。方法は、直美に恐怖心を与え、自らを襲わせること。
- 2015年4月20日、直美のストーキングを開始。
- 4月24日、恐怖心を煽られた直美に刺される。直美は逮捕される。
- 5月8日、病院。入院している熊井の隣に、足を骨折?した栗原が入院してくる。
- 数日後、栗原からブログのこと(直美の余罪=由紀の殺害)を教えられ、その代わりに、再発した食道がんの手術を受け、優太の面倒を見ることを約束する。
感想です。
もう本当にね……直美が終始気持ち悪かった。ずっと気持ち悪かった。直美自身、こんな願望は気持ち悪いと表現していたけれども、いや、もっと前から気持ち悪いですよ…と思っていた。母を殺害したときの描写からして気持ち悪い。もうずっと、ずっと、ずっと、50年以上気持ち悪い。
そして、そんな直美に終始べったりな武司も気持ち悪い。雨穴さんが動画で可愛くレン(武司)の言葉を読んでくださるから、純粋な青年、という印象を受けるけれども、いや、気持ち悪いな。
たとえ迂遠な計画だとて、殺されるかもしれないという妻の訴えよりも、そんなの嘘よと言うであろう母親を信じるわけ?(しかもそれを、妻という第三者からそう評価されるほどのマザコンだった。)
30歳過ぎても、ダブルスコア以上年の離れた母親と「一緒のお布団」に入って寝ているのか。気持ち悪……っ。生理的に受け付けない。本能が拒絶する。
ああ、そういう男性が世の中に実際にいらっしゃるかもしれませんね。申し訳ございません。気持ち悪いです。生理的に受け付けません。本能が拒絶します。
ここからは憶測だけれども、子どもが生まれてからも、毎日のようにブログを更新して、そこに「ママ」が登場していたんじゃないかな。だから消すことにしたのでは。
実の母親を妻として扱うのも意味分からんが、それを3年間も続けたのが本当に気持ち悪い。「ママ」とか、どうせ優太だけじゃなく武司にも呼ばせてたんだろ。うわあ……この親子、気持ち悪すぎて……無理……。頭が痛くなる。まだ近親相姦の方が受け入れられる(何でだ)。
優太くんのその後が少し描かれるから、読後感はほんの僅かだけ緩和されるけれども、もう気持ち悪さ120%でした。
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