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2024.3.27_雨穴さん著『変な家』感想(ネタバレ含む)

2024-03-27 17:23:49 | 感想





前の記事に続き、『変な家』の備忘録です。
11の間取りはね……ミステリとして読むなら割と容易だったんです。何が起きたか、くらいは。でももはや、ここに登場した誰々さんが、あそこに登場する誰々さんと同じで……みたいなことの連続で、もう辛かった。手書きメモも途中で諦めている。
ということで、あくまで3つの間取りで完結してくれて、メモも1枚で済んだ『変な家』の方だけ清書します。




ということで、ここから先は、雨穴さんの著作『変な家』のネタバレを含みますので、回避したい方、また、だらだらした長文を避けたい方も、直ちにブラウザバックしてください。















まずは家系図を清書。
壮大だなあ…。この画像、見えてますでしょうか(可読性について非常に不安)。
『変な絵』の記事と同じですが、×印が殺人、ただの斜線が事件性の無いもの(と思われているもの)です。
*やはり読めないので、pixivのこちらに飛ばします。




次に、この話は時系列順に書いた方がいいのかなと思うので、そのように整理します。


1.「左手供養」に至るまで
  • かつて片淵家は、複数の事業で莫大な財を築いた。それに最も貢献したのは、明治32年~大正4年にかけて当主を務めた、嘉永。
  • しかし、50歳を迎えた頃に持病が悪化したため、後継者を選ぶことに。周囲から見れば、清吉が相応しいことは明白だったが、妾の子だったため、宗一郎が選ばれる。
  • 清吉は宗一郎の補佐をすることを拒み、独立。事業は急成長。22歳で結婚。片淵分家が誕生。
  • 一方の宗一郎は、24歳を過ぎても女性と関係を持ったことがなかった。嘉永は、当時19歳で、宗一郎の世話係を務めていた「高間 潮」と縁談を組む。
  • 潮は、女中から奥方への転身に歓喜するが、宗一郎と千鶴の姦通を知ってしまい、挙句、千鶴が妊娠してしまう。また、宗一郎の代になって、業績は次第に悪化した。
  • 清吉は、姦通や千鶴の妊娠を耳にして、本家に乗り込み、宗一郎には片淵家を任せられないと大演説を打つ。それをきっかけに、片淵本家の財産と事業の経営権のほとんどが分家に吸収されてしまう。こうして、清吉は、片淵本家と宗一郎への復讐を果たす。
  • 潮は、財産を分家に吸収され、愛の無い夫と、その夫の子どもを妊娠している義妹との貧乏暮らしの中で、精神を病む。結果、左手首に包丁を突き刺し、何度もその掌を畳に打ちつけて、手首を千切って死亡。宗一郎は、自分のせいで潮は死んだと思い込む。
  • その数か月後、千鶴が出産した双子のうち、弟の桃太には左手首が無かった。宗一郎は、これを近親相姦による先天異常ではなく、潮の呪いだと考える。
  • 双子が3歳になった頃、蘭鏡と名乗る謎の呪術師が現れ、「潮が恨んでいるのは、宗一郎夫婦ではなく、全てを奪っていった清吉。その怨念が桃太に影響を及ぼした。清吉に復讐しなければ、この呪いが桃太を殺す」と告げ、潮の呪いを解く方法を宗一郎に伝授した。これが「左手供養」である。


2.「左手供養」
儀式の内容
  • 片淵家に左手が無い子どもが生まれたら、暗室に閉じ込めて育てる。
  • 左手が無い子どもが10歳になった年、片淵清吉の血を引く人間を、その子どもに殺害させ、左手を切り取る。
  • 屋敷の外に離れ屋敷を作り、そこに潮の仏壇を安置する。切り取った左手は、潮の仏壇に供える。
  • 左手が無い子どもの兄か姉、それが居ない場合は、親族の中で年齢が近い者に後見役をさせる。
  • 左手が無い子どもが13歳になるまで、1年に1度、この儀式を行う。

本当の目的:
  • 清吉はかなりの好色で、20代で既に5人の妻が居た。当時、子どもは6人居た。後継者争いが夫人間で絶えず、第二夫人であった志津子が、子どもである次男を清吉の後継者とするため、妹の美也子に命じて本家に儀式を伝え、年齢の近い長男、三男、四男を殺させた。
  • 離れ屋敷を建てる資金は、志津子が援助した。

儀式のその後:
  • 分家は太平洋戦争による空襲で事業が壊滅。子どもたちは全国に離散。
  • 宗一郎は、蘭鏡の教えを、片淵家の家訓として、子どもたちに厳しく教え込んだ。その中に、柚希の祖父に当たる重治も居た。

残された疑問:
  • 清吉はこの状況に気付かなかったのか。
    →妻同士の争いが制御できないほどになっており、自分に火の粉がかかるのを避けるため、左手供養を間引きとして黙認していたのではないか。
  • 儀式によって殺害される子どもの人数は4人。あと1人はどうなったのか。
    →途中で儀式を断念した? あるいは、清吉の7番目の子どもである弥生の兄弟ではないか(5.へ)。


3.片淵慶太とは(慶太の手紙より)
  • 高校時代、いじめられていたが、クラスメイトの綾乃に助けられることが何度もあった。
  • 慶太から告白して、綾乃と付き合い始める。
  • 卒業間近の冬、綾乃から「左手供養」の話を聞く。綾乃は犯罪者になってしまい、慶太にも迷惑が掛かるかもしれないから別れようと言われるが、綾乃を救いたい一心で、綾乃を守る計画を思いつく。
  • 計画の概要としては、「左手供養」の後見役となった上で、桃弥を本家から連れ出し、子どもたちに殺人を行わせず、死体を探して左手首を切り取り、重治たちの目を誤魔化すことで儀式を乗り切ることだった。
  • そのため、高校卒業後、綾乃と結婚し、片淵家に婿入りする=綾乃と共に「左手供養」の後見役を務めることを意味する。
  • 桃弥が10歳になる一年前、重治に自分たちの家を建てることを願い出る。儀式には、殺人を行う場所は指定されていないため、自分たちの家を建てて独立しても成立するのではないかと申し出た。結果、新居の間取りを片淵家が主導で作成すること、清次が慶太たちを監視することを条件に、独立を許可された。
  • つまり、隠し通路などの殺人を行うための間取りは、片淵家が作ったものであり、慶太たちは使用していない。
  • 清次が当時、埼玉県に住んでいたため、新居は埼玉県に建てられた。
  • 新居では、頻繁に桃弥の部屋に行き、勉強を教えたり、コミュニケーションをとった。桃弥が、儀式の後、普通の子どもとして生きていけるよう願ったもの。桃弥は成長し、年相応の子どもらしい感情が出てくるようになっていった。
  • その後の経緯は、4.のとおり。


4.片淵柚希やその周辺で何が起きていたのか
  • 1993年 綾乃 誕生
  • 1995年 柚希 誕生
  • 1998年 洋一 誕生
  • 2006年2月 公彦 病死
  •    8月 洋一、喜江の夫に殺害される
    • 喜江は弥生(清吉の子)の子孫であり、片淵分家の血を引いているため、綾乃、柚希含め、左手供養で殺される可能性があったため、本家筋で桃弥の後見となる洋一を殺害。
  • 同年 桃弥 誕生
    • 妊娠中に左手の無い子どもだと分かったため、美咲が喜江に相談したところ、その翌日から美咲は、人工中絶ができなくなる22週まで本家で監禁された。美咲は、桃弥を生んですぐ失踪。行方不明。
  • 同年 綾乃 本家に連れられ、人殺しの洗脳教育を受ける
  • 2007年 柚希の父、自損事故(?)で死亡
    • 喜江は洋一を殺害した罪悪感に圧し潰されて自殺したと語る。
  • 同年 喜江、清次と再婚(表面上)
    • 喜江は清次からの監視を受けており、綾乃を本家から取り戻せなかったと語る。
  • 2009年 慶太と綾乃が出会う
  • 2012年 慶太と綾乃が結婚
  • 2014年 柚希 独立
  • 2016年 綾乃から柚希に手紙
    • 6月 埼玉の家 建築
    • 9月 宮江恭一 死亡
      • 自宅にて既に持病で死んでいた宮江の左手首を慶太が切断し、清次経由で本家に奉納
  • 2017年 浩人 誕生
  • 2018年3月 埼玉の家を売却、東京へ引っ越し
    • 清次の仕事で引っ越す必要があったため
  • 2019年5月 柚希、綾乃の家を訪問
  • 同年 7月 宮江の遺体発見を機に、儀式を誤魔化していたことが重治に知られる
    • 直ちに桃弥を本家に引き渡すよう清次経由で求められるが、桃弥が秘密の通路を通って、発熱した浩人の看病をしてくれていた姿に涙し、桃弥を助けることを決意。慶太は清次と重治を殺害。
    • 綾乃、浩人、桃弥はあるアパートで暮らしているので、喜江の援助を頼みたいと慶太が手紙を綴る。
  • 同年10月25日 慶太逮捕
    • 綾乃たちは喜江のマンションへ


5.残された疑問(栗原の単なる「憶測」)
  • 宗一郎は儀式に固執していた。儀式の中断は有り得ない。弥生の兄弟が、殺された4人目の子どもではないか。
  • 兄弟を殺された弥生は、片淵本家の人間を殺せ、と呪いをかける(復讐を誓う)。それが世代を超えて、喜江に託された。喜江の片淵家への嫁入りは偶然なのか。本家に、100人を超える分家の人名と住所が書かれたリストを渡すことができたのは、分家内部の人間だけ。夫の自殺も、洋一の殺害も、慶太の反逆も、全てが喜江の計画なのではないか。
  • 慶太の手紙は、本当に慶太が書いたのか。綾乃への愛、その一心でほかの全てを犠牲にしたと言えば聞こえはいいが、事実なのか。東京の家の1階にあった、リビングから寝室を覗く小窓は、綾乃が慶太(の寝室)を監視していたものではないか。慶太は、綾乃によって一連の事件に巻き込まれ、監視されていたのではないか。



感想です。
慶太が可哀想でならなかった……。なんかもう、栗原さんのあとがきを読む前から、慶太頑張り過ぎじゃないか!?部外者なのに何故こんなに頑張れるの!?とバイタリティに驚いていたけれども、やっぱりそんなの有り得ないですよね…。それに、そう、あの小窓の件は解決してなかったわけですからね…。
あとは桃弥くんが浩人くんと兄弟として、元気に育っていってほしい(できたら喜江と綾乃から離れたところで成長してほしい。柚希が引き取ったりしてほしい…)。
雨穴さんの作品は、割と近親相姦がすぐ出てくる気がする。あれ…? 気のせいか…?


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