神はそれでも意地悪に僕らの魂をいつかは取り上げるのだろう

クズと思われても仕方がない赤裸々な日記。

sentimental journey

2012年10月23日 00時12分47秒 | 日記
YUKIの「センチメンタルジャーニー」を聴いていると、ある女の子のことを思い出す。


三年ほど前。
俺は、当時付き合っていた恋人と別れたばかりで、深く傷付いていたし、色んなことがどうでもよくなっていた。

優しくしてくれた職場の女の子と飯を食いに行き、ラブホに入った。

村上春樹風に言えば、俺は酷く渇いていて、その渇きをセックスで潤したかった。相手は誰でもよかった。誰でもいいからセックスがしたかった。

けれど、俺はその女の子とセックスをしなかった。

何故か?

セックスの最中にその女の子が号泣し始めたからだ。



俺「…なんで泣いてるの?」
女「…ごめん(思いっきり涙声)」
俺「……」
女「何かね…前の彼氏のこと、突然、思い出しちゃって…(ぐすん)」

やれやれ。

俺は覆い被さっていた彼女から離れ、ベッドの上に仰向けになった。
暗い天井を見つめる。

彼女は裸の胸をシーツで隠し、俺の顔を覗き込んできた。
涙で濡れた瞳。落ちたマスカラで目の下が黒くなっている。バンプの「今更マスカラ気にして泣くな」というフレーズを思い出した。

「ごめんね」。
彼女が呟く。
涙がポタポタと俺の顔に落ちる。
正直、俺は何も感じていなかった。彼女の涙を美しいとは、ましてや愛しいなどとは全く思えなかった。

俺は無言で立ち上がり、たまたま持っていたCDを安っぽいプレイヤーにセットした。

スピーカーからYUKIの「センチメンタル・ジャーニー」が流れた。

「抱き合ったりキスをしたりいつもと変わらない景色を愛しく思おう」とYUKIが歌う。

俺がベッドに戻ると、彼女は俺の薄い胸板に顔を埋めて、四年前に別れた彼氏のことを、とうとうと、涙ながらに語り始めた。
すると、「その彼氏が忘れられない」というような話になるのかと思いきや、俺の予想に反し、その彼氏にヒドイことをされていたらしく、それがトラウマ(的な?)になってしまっているのだという。
その「ヒドイこと」について詳しくは書かないけれど、彼女の言葉が全て真実だとしたら、確かに嫌な思い出になってしまうだろうと思う。
けれど、それを俺に話してどうするのだろうか?
俺には誰かを救う力なんて無いし、その気もない。セックスをして、お互い後腐れなくバイバイするはずだっただろ?

俺が黙っていると、彼女はようやく顔を上げ、「ごめんね」と笑った。

その笑顔がとても可愛らしくて、俺は思わず彼女を強く抱き締め、「そんな奴のことは俺が忘れさせてやる」と言いきって熱いキスをした。

…わけがなく、「うん」と頷き、チェックアウトの準備をした。
彼女ははだけたシャツのボタンを留め、セーターを着た。
ひどくみすぼらしい身体に見えた。

ホテルを出たのは20時過ぎで、彼女は去り際、「また連絡してもいい?」と訊ねた。
「構わないよ」と俺は答えた。


次の日、その女の子からメールが来た。

「昨日はごめんね」。

俺は正直な気持ちを返信した。

「正直、少しガッカリしたけれど、俺は気にしていないから何も謝る必要はないし、それどころか少し反省している」。

すると、すぐに返信が来た。

「ありがとう」。

一瞬、この「ありがとう」を踏みにじってやりたい、と思ったけれど、堪えた。
美しいものを壊したかった。何もかも消えてしまえばいいと思った。



それ以来、彼女とは一切連絡を取っていない。
どこで何をしているのだろう。
幸せにしているのだろうか。



…まぁ、どうでもいいんだけどさ。

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