GORE LOVERS

血しぶきホラー映画無法地帯

ドーン・オブ・ザ・デッド

2014-11-03 23:20:34 | ゾンビ
DAWN OF THE DEAD
監督:ザック・スナイダー
脚本:ジェイムズ・ガン
出演:サラ・ポーリー、ヴィング・レイムス





ホラー映画の傑作、モダン・ゾンビ映画の先駆けとなったロメロの『ゾンビ』のリメイク作。あまりにも出来過ぎた名作のリメイクは、うまくいかないことが多いが本作は成功した数少ない例と言って過言ではない出来。オリジナルのショッピング・モールに立て籠もるという設定は引き継いでいるものの、その他は大胆に変更。何といっても全力で走って襲ってくるスピード感は、圧倒的な怖さを生んでいて、手に汗握るスリルという点ではオリジナルを超越している。また、登場人物が多い割に、キャラ設定もしっかりしていて、それぞれ埋没することなく生かされているのも、他の凡庸なホラー映画(特に出来の悪いゾンビ映画)とは一線を画している。




残酷場面はそれなりにあるが、内臓を抉り出すような直接的な描写は残念ながら少ない。飛び出す血しぶき、リアルなゾンビの造形は良くできているが、嫌悪感を催すようなゴアな描写ではないのだ。それよりも、スピード感やアクション描写に重きを置いている感じがある(この辺、いかにも現代的。ゆっくり歩くゾンビはもはやクラシックな感じなんだろうか)。特に、ショッピング・モールから大量のゾンビの中をかき分けて、改造バスで脱出する場面は出色の出来。チェーンソーでゾンビを切りまくり、ガスボンベ爆弾の爆圧でゾンビを一気に吹き飛ばす!こんな風にゾンビを蹴散らせたら、さぞ快感だなあという妄想を現実に見せてくれたスタッフに感謝!なのだ。




ただ、あえて批判的なことを言えば、エンタテイメントに走りすぎた結果、オリジナルにあった無常感や社会への痛烈な風刺、世紀末を予感させる不気味な空気はこちらには無い。劇中で、有名人に似たゾンビを探してライフルで撃ち殺すお遊びに興じるようなブラックで、軽い感じがこの映画には似合っている。だから、見終わっても、なんだかスッキリ爽快、リフレッシュできるゾンビ映画、そんな感じだ。






ヘル・オブ・ザ・リビングデッド

2014-10-30 12:34:51 | ゾンビ
HELL OF THE LIVING DEAD
監督:ヴィンセント・ドーン
音楽:ゴブリン
出演:ロバート・オニール、マルグリット・イヴリン・ニュートン





ニューギニアの奥地にある化学工場で事故が発生、漏れ出したガスがもとで汚染された人々はゾンビと化す。政府は特殊部隊を派遣し事態の鎮静化を図る。途中、事件を嗅ぎ付けたTVクルーと合流し、彼らは工場に辿り着くが、生存者は無く、ゾンビの大群が襲いかかってくるのだった。





悪名高いイタリア・スペイン合作のゾンビ映画。『ゾンビ』のサントラを流用し、時折挿入される野生動物の映像も他の作品からの借り物。特殊部隊の制服はゴミ収集車の清掃員かと見間違うほどヨレヨレで、とてもプロフェッショナルと思えない隊員の行動が物語を薄っぺらいものに仕立て上げている。ゾンビの動きも緩慢で、しかしフルチ作品のような不気味さは無く、どちらかと言えばコントのようなぎこちない動きが笑いを誘う(多分、スタッフは真面目に撮っているのかもしれないが)。





しかし、何とも言えない暗いどよんとした雰囲気はイタリアン・ホラーならではのものか。救いようのないストーリー、意味もなく無残に死んでいく登場人物。そして、普通なら助かるはずのヒロインまでもが一番悲惨な死に方をみせて死んでいく。こんな終わり方でいいのか!?と思うが、多分これでいいんだろう。ゾンビ地獄だし。





ビヨンド

2014-10-29 00:03:30 | ゾンビ
THE BEYOND
監督・脚本:ルチオ・フルチ
原案・脚本:ダルダノ・サケッティ
特殊メイク:ジャンネット・デ・ロッシ
出演:カトリオナ・マッコール、デヴィッド・ウォーベック、サラ・ケラー








ルイジアナ。かつてホテルだった屋敷を相続したライザは、改装し再び営業させようとするが、不可解な事件が続発、ペンキ屋は窓から謎の目を見て2階から転落、水道屋は地下の壁から飛び出てきた手に目玉をえぐり取られて死亡する。そして、近くに住む盲目の女性エミリーはこの地を去れ、と警告する。実は、この地は地獄の門に通じていた画家が住民のリンチを受け死亡、地下室に埋め込まれていたのだった。地獄の門は、再び開かれ、死者の群れは地上に溢れつつあった。





グロテスクなイマジネーションが全編に展開するルチオ・フルチの最高傑作。フルチの得意とする地獄の門が決壊し、ゾンビが地上を支配しようとする設定を、特殊メイクのジャンネット・デ・ロッシの特殊メイクと、終末感を感じさせるファビオ・フリッツィの音楽が強烈にバックアップ。ストーリーは相変わらずあってないようなものだが、ゴーストハウスで起こるこの世のものではない力による不条理な死の物語として考えれば、リアルさや辻褄合わせはさほど重要ではなく、いかに人間に死が訪れるのかを見届けるのが大事なんじゃないかと思う。





だから、不自然なところに塩酸が置いてあって、倒れた女性の顔面に丁度いい具合にこぼれて当たるとか、ホテルの秘密を探る男性が図書館で猛毒タランチュラに生きたまま喰われてしまうとか、わざわざ壁から飛び出た釘のある方へ下がっていってからゾンビに頭を押し付けられて頭部を貫通串刺しにされて目ん玉飛び出しとか、などなど。どれもこれも、いかに死ぬ瞬間を魅せようかと考えてから逆算して作られたような感じなので、ショッキングシーンの決まり具合はフルチの作品群の中でもピカイチなのだ。ある意味、死の瞬間を数珠つなぎにした詩のようなものなのかもしれない。





主演は、『地獄の門』とこの『ビヨンド』、そして『墓地裏の家』と3作連続で出演したカトリオナ・マッコール嬢。ゾンビの群れに翻弄されながらも、最後まで悲鳴を上げ続けて頑張っている。ラスト、ビヨンド=あの世に吸い込まれて、彼女たちの目から光が失われていく情景は、『地獄の門』のあまりに唐突であっけないラストと比べると、充実した余韻に浸れる出来でなかなかいい出来。





デモンズ

2014-10-27 23:56:30 | ゾンビ
DEMONI
製作:ダリオ・アルジェント
監督:ランベルト・バーバ
特殊メイク:セルジオ・スティバレッティ
出演・ナターシャ・ホーベイ、ウルバノ・バルベリーニ




女子大生のシェリルはベルリンの地下鉄の駅で不気味な仮面をつけた男から映画の試写状を手渡される。映画館はメトロポールという聞いたことのない名前だったが、友人のキャシーを誘って観に行くことに。映画は、ノストラダムスの墓が暴かれて、その呪いで人々が殺されていくというストーリー。ところが、その上映中に、ロビーに置いてあった仮面を被って顔に傷を負った観客が怪物化、他の観客に襲いかかる。



館内はパニック状態になり、観客らは逃げ出そうとするが、出口のドアを開けるとそこにはコンクリートの壁が出来ていて外に出ることができない。さらに映写室に行って映画を止めようとするが、そこには誰もおらず無人だった。この映画を流していたのは誰なのか!?犠牲者が増えていく中、突然ヘリコプターが落下してきて、キャシーらは空いた天井から脱出する。しかし、外の世界もすでに無法地帯となっていた・・・。



ダリオ・アルジェント製作、マリオ・バーバの息子ランベルト・バーバが監督したサバイバル・ゾンビホラー。映画では、ゾンビという名前は使われていないが、噛まれると仲間になってしまう現象はゾンビと同じ。ただ、デモンズというタイトルからも、悪魔が使徒を増やしているようにも見えなくもない。ちなみに、アルジェントは同時期に共同製作を構想していたロメロの『死霊のえじき』が暗礁に乗り上げたため、こちらの『デモンズ』をスタートさせたよう。『ゾンビ』のアルジェント監修版がゴブリンの音楽を前面に打ち出した軽快なサバイバル・ホラーだったように、この『デモンズ』も派手目だが、ドラマの内容は薄いアクションホラーに仕上がっている。対して、ロメロの『死霊のえじき』が重厚でヒューマニズム溢れる地味な作品になっているのとは実に対照的。




イタリアン・ホラー界の重鎮だったマリオ・バーバと比べると、息子ランベルト・バーバの演出は比べるのも可哀想なものだが、当時最大級の製作費をかけて仕上げた特殊メイクによる派手なスプラッターシーンと、ヘビメタを多用した音楽で、とにかく目と耳に訴えかけるものはかなりのもがある(この辺、フーパーの『スペース・バンパイア』にも通じるものがある)。内容をゆっくり吟味する暇もなく、最後までパワフルに駆け抜けていくこの『デモンズ』は観た後には特に何も残らないが、ある種の爽快感味わえるのには間違いない。




続く『デモンズ2』では再びランベルトが監督、今度は高層マンションが舞台になり、デモンズが暴れまくるが、基本的には同じ路線。その後、似たような邦題でシリーズが作られているが、直接的な繋がりは無い便乗作品が多い。

死霊のえじき

2014-10-27 22:28:17 | ゾンビ

DAY OF THE DEAD(1985)
監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ
特殊メイク:トム・サヴィーニ
出演:ロリー・カーディル、テリー・アレクサンダー、ジョセフ・ピラトー






生者と死者の数が逆転してしまった世界。地上には膨大なゾンビたちがあふれ、街はゴーストタウンと化している。僅かに生き残ったグループが軍の地下倉庫に立て籠もって生活しているが、そこでは科学者と軍人との衝突が絶えず、重苦しい空気が続いている。ある日、研究に打ち込むローガン博士が軍人の死体をゾンビに食わせているのを知ったローズ大尉は博士を射殺、サラたち科学者グループもゾンビの群れに放り込み抹殺しようとする。しかし、なだれ込んできたゾンビの群れにローズたちもえじきとなり全滅、サラと生き残ったヘリパイロットらはからくも脱出する。




ロメロのゾンビ・サーガ『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』に続く3作目。夜~夜明けときて、ゾンビたちは太陽が照らす日中をもついに占拠、圧倒的な数で人類との立場を逆転した絶望的な世界が舞台になっている。当初、ロメロはゾンビと軍隊が激突する大規模なアクションものを想定していたが、共同出資を計画していたアルジェント側の資金調達が困難になり、規模を大幅縮小、脚本もかなり変更し、終始暗い地下施設で物語が展開する内容になってしまった経緯がある。





本来ならば立場を越えて協力して生き残る道を模索しなければいけないのにいがみあう人々。ローガン博士は研究のためなら多少の犠牲はやむなしと考え孤立、前任者が死んで軍のリーダーになったローズは科学者の研究が進まないことに常に苛立っている。その結果、さらに犠牲者が増えていく。理解しあえない人々の対立の歴史は、当時の米ソ冷戦時代を思い起こさせるが、21世紀の今現在だって、西洋諸国とイスラム諸国の対立なんかがあって、何も状況は変わっていないのかもしれない。




ストーリー的には非常に暗く重いドラマ展開だが、時折挟み込まれているゴア描写は強烈。内臓ハミ出し、脳髄剥き出しゾンビは当たり前、クライマックスのゾンビが食い殺しまくる阿鼻叫喚地獄まで、トム・サヴィーニが作り出したビジュアルはそのリアルさにおいて最高峰まで上り詰めたのではないだろうか。ローガン博士が飼いならそうとするゾンビ“バブ”というキャラクターが若干微笑ましい時間を与えてくれるが、暗いストーリーと血まみれゴアシーンのおかげで、前作『ゾンビ』ほどメジャーな作品にはなれなかったのは残念。当時、派手な内容で同時期に公開された『デモンズ』に興業的に惨敗したのも致し方ないかもしれない。





DVDのときに出ていた「最終版」は残酷描写が大幅カットされた“最低版”だったが、その後「完全版」がリリース。現在ではBlu-ray版も出ている。