Mr.トリックの科学・自然・子育て論議

どんな科学マジックでもすぐそのトリックが見破られるMr.トリックが、科学や自然それに子育てについて語ります。

「親子自然体験」「子ども自然体験」は、子育ての場となる

2021-06-23 05:41:08 | 日記

一般的に「自然観察会」や「山歩き」などいわゆる自然と触れ合えるイベントに募集をかけると中高年の方の参加者数が多い。
これは、中高年の方が健康で自然の中に生きがいを求めていること、仕事や子育てなど日常の忙しさから一段落したか解放されたことの表れでもあるだろう。
私も年に何回か一般向けの自然観察会をガイドしていることもあり、それはよく理解できるし、参加者である先輩方の知恵に学ぶことも多い。
だが、もし、それをあえて「親子」とか「子ども」限定にして募集してみたらどうなるか。
私は、当初、現役世代は仕事や子育てなどの時間に追われ、参加者数もごく限られたものになってしまうのではないかと考えていた。
だが、いざ実施したら違っていた。
例えば、わくわく科学工房主催の「親子自然観察教室」。
年数回行われているが、毎回定員オーバーで抽選せざるを得ない。
マイフィールドである真人山での「親子自然観察教室」は、始めてから4年目。
春と秋に行っているからすでに6回は行った。
参加者数は、年々増え始め、昨年の春には定員20名に対し、80名を超える数の応募があった。
昨年は、コロナ禍での最初の観察会だから特に自然に触れたいという願いが強かったということもあるだろうが、今年になっても今週末に行われる観察会で定員20名に対してすでに申込者が40名を超えたという。
子ども限定の自然体験でもそうだ。
例えば、この4月から毎月1回実施されている「釣りキチ三平の里子ども自然体験塾」。
これは、親御さんの理解なければ無理であるにもかかわらず、毎回定員20名に対してほぼ満杯の状態だ。
これらは何を意味するか。
それだけ親御さんたちも親子で自然の中で触れ合いたいあるいは子どもに対してもっと自然と触れ合ってほしいという願いの表れではないだろうか。
ただ、一般を対象とした「自然観察会」という看板を見ても親子や子どもだけで参加するのは敷居が高いと感じているのではないか。
逆に「親子」や「子ども」という限定条件を付けることによって、参加しやすい雰囲気が生まれるのかもしれない。
親子同士や子ども同士の交流にも期待していることだろう。
そして、何よりも参加することによって子どもによりよく育ってもらいたいと期待しているのだろう。

20日に行われた湯沢市小安の女滝沢での親子自然体験では様々なドラマが生まれた。
初めて参加したであろう親子がいた。
子どもに小学生の女の子がいた。
私の顔を見ると母親の後ろに隠れた。
母親に促され、ようやく小さな声で挨拶した。
はたして、付いてこられるかどうか不安だったが、母親の方はもっと心配だったかもしれない。
森の中を歩き始めた。
その子はやはり最後尾に付いている。
途中、森の中で元気な男の子にヤグルマソウを持たせ、走ってもらう。
ヤグルマソウがくるくる回るたびに参加者から拍手が起こる。
沢遊びでは、生き物に詳しい男の子がサワガニやサンショウウオそれにヘビトンボを見つけた。
すると他の子まで夢中になって沢遊びに興じる。
トチノキの前では、スタッフの一人が「モチモチの木」の読み聞かせをした。
親も子も一生懸命に聴いている。
途中、大きなフキの葉やホオノキの葉で遊んだりしながら歩いた。
ふと後ろを振り返ると私のすぐ後ろに先ほどの女の子がいた。
あんなにもじもじしていたのに終わり頃には、表情がきりっとしている。
本当に驚いた。
これが、自然や森が子どもに与える力なのか。
そしてそれをつないでくれたのは、私ではなく案外元気な子どもたちだったのかもしれない。
現に、子どもの参加者で最年長の6年生の男の子は、沢遊びでも小さな子たちをリードしていたし、カエルやセミなどを見つけては小さな子たちにその姿を見せてくれた。
子ども同士の交流は子どもたちをさらに元気にしてくれたに違いないのだ。

主催者である「森っこ倶楽部」は、わずか数名のお母さんたちのグループだ。
開催の相談を受けた時も募集数は「親子5組」であったが、はたしてこれだけ集まるかなあと心配されていた。
それがいざふたを開けてみると7組19名の親子数にふくれあがっていた。
主催者の一人も自宅から「モチモチの木」の絵本を持ってきて読み聞かせしてくれた。
森の中での読み聞かせによりさらに自然体験の中身は充実した。
主催者がどなたであれ、強い願いと綿密な計画があればこれほど楽しい企画が実現できるのだということを証明してくれた。

「親子体験」での子どもたちのきらきらした表情を私は、今でも忘れることはできない。きっとその日は、親子でフィールドでの話題が持ち上がり親子の会話が弾んだに違いないー私はそう確信している。
孫と一緒に参加したというおじいちゃん、おばあちゃんたちもフウフウ言いながら、常に笑顔だった。
まさに、大人も子どもも輝く一日となった。

「親子」「子ども」限定は確かに危険も伴いリスクが高い。
しかし、それ以上に自然は「親子」や「子ども」に大きなプレゼントを与えてくれるのだ。その覚悟と信念(もちろん綿密な計画や安全に配慮して)があれば、主催者側にも大きな喜びと充実感が生まれるのだ。
それは、自然というフィールドが、最高の子育ての場だからこそかもしれない。

20日の親子自然体験は、そのことをはっきり教えてくれた。


親から子へ命をつなぐ

2021-06-12 06:06:13 | 日記

先日の朝、何気なしに庭を見ていたら、スズメが1羽うろちょろ動いていた。
見るからに動きが不器用だ。
危険を感じてすぐに飛べる様子でもない。
子スズメかなと思いきやすぐに1羽のスズメが下りてきた。
するとすぐさまそのスズメは子スズメらしきものに食料を与えていた。
親スズメなのだろう。
子スズメとおぼしき存在はというと思い切り嘴を開けていた。
そこにすばやく食料を放り込むのだ。
見るに、食料というのは庭にある植物おそらくその名もずばりスズメノカタビラの種子のようなものである。
本来は、育ち盛りの子スズメにとっては、バッタや芋虫などの昆虫食が良いのかもしれない。
だが、まだ草丈の低いこの庭では簡単には見つけられそうもない。
その点、植物の種子だったらすぐにでも与えられる。
とりあえずのタンパク質にはなるだろう。
すぐ近くには、もう1羽の子スズメもいたようだ。
親は、そちらにも食料を運ぶ。
大忙しの親である。

マイフィールドである真人山に行けば、オオルリやキビタキなどの夏鳥たちも子育ての季節に入りつつある。
野鳥たちだけではない。
実は、植物もまたこの季節、命を子孫につないでいたものがいた。
その一つがエゾユズリハ(以下ユズリハと記述)である。
ユズリハは常緑樹であるから1年中緑色に見える。
現に雪に覆われている冬にあっても緑色は健在だ。
1年中葉は落とさずにそのままかなと思えてしまう。
ところが、確かに命をつないでいる。
下部の葉は、枯れて落ちていく。
代わりに新しい葉が展開する(写真)。
今の季節がまさにこの交代時期ともいえる。
昔の人はよく考えたもので、ユズリハは「譲葉」とも書く。
春に若い葉が出ると古い葉が落ちていく姿を見てそう名付けたらしい(葉脈が「弓弦(ゆずる」に似ているからそう名付けたという説もあり)。
いずれ、5月から今の時期にかけてまわりの自然界は、命を親から子へとつないでいる姿がよく目立つ。
自然界では、親世代は、子世代に命をつなげば尽きていく。
一見残酷なようにも思えるが、この命のバトンがつながれることによって種は絶滅せずに命をつなげててきたのだ。
それはまた、生き物たちの進化の歴史でもあったといえるのだろう。

こんなことを考えていたら、人もまた例外なくそうであることに気づかされた。
であるならば、しっかり未来を生きる子どもたちに何かしら伝えていくことが私たち大人の役目なのだろう。

さて、今日は、「第3回釣りキチ三平の里子ども自然体験塾」の日である。
どんなことを伝えられるであろうか?

 


母校から生徒の感想が届いた

2021-06-02 05:17:58 | 日記

 先日、母校である横手市立増田中学校の全校生徒に行った講演の感想が届いた。
 どれもが皆、真剣に願いを受け止めてくれている内容だったのでとてもうれしかった。
 以下、8人の感想を紹介したい(全文原文のまま)。

・真人山にノウサギ、リス、キツネなどの動物がいることを初めて知った。どんな生物にも生きるため、絶滅しないためにいろいろな工夫がされているのだとわかった。人間は、そのために脳が発達したのかなと考えた。印象的だったのは、講師の酒井浩さんが生き生きと話していたことだ。動物、自然が本当に好きなんだなと感じた。僕も趣味などを熱く語れる人間になりたいと思った。
・増田に暮らして15年が過ぎるが、増田についてここまで深く考えることがなかったので、今回はとても良い話を聴けたなと思いました。中でも心に残ったのは、植物は話すことができなく動くこともできないが、食べられないようにと毒を作るなど工夫をしていることです。なので、僕もこれからは工夫し、楽しく生活できるようにしたいです。また、「Think Globally Act Locally」も意識してがんばりたいです。
・今回の講話会を受けて普段からまわりにある自然だったので、興味を示したことはあまりありませんでしたが、写真や映像を通して見ることで自分たちは貴重なものにふれることができていると気づかされました。「無関心」と聞いてはっとしました。地域の自然に触れると共に世界という大きなものにふれてみたいと思うことができました。ぼーっと歩いていてもどこかに隠れている宝を見つけることはできないので自分の身体で感じてみたいです。
・講話会で自分の知らない増田の自然の魅力について知ることができました。その一方で、自分は今まで増田の自然にあまり関心がなかったのでそこからこつこつとがんばりたいと思いました。また、自然や動物のことに関心を持って海外へホームスティに行くその熱量がすごいと思いました。自分も自分の好きなことに熱量を持って取り組みたいです。
・今回の講話会を通して、自分の住んでいる増田に知らなかった自然がたくさんあることに気づくことができました。また、私は狙半内に住んでいるので「暇さえあればスマホなんて、なんともったいないことを今までしていたのだろう!!」と思いました。これからは、もっと自然に興味を持って生活したいです。今日学んだことを総合の時間に生かしたいです。
・私は、今日の講話会で、自分の家の近くに山があっていいことないなあと思っていたけれどリスや野ウサギなどあんなにかわいい動物がいて、お父さんなど家族に伝えたいと思いました。また、真人公園の山に登ったことがないので、すごくかわいい生き物や不思議な生き物がいて、動画で見たり写真で見たりすごく楽しい講話会でした。虫が鳴くことによって季節の分け目の日がわかるのがいいと思いました。
・酒井先生の講話を聞いて、私はそんなに自然をじっくり調べたりする機会があんまりなかったので感心しました。酒井先生は調べたことだけを話すのではなく、実物や実際に撮った写真や動画を見せて話してくださったのですごくわかりやすかったです。自然についてたくさんの知識が増えたので、これからその知識を教えて行けたらなと思いました。そして、自然を大切にしていきたいと思いました。
・春夏秋冬には、その季節にあった植物や生き物がいるとわかりました。ふるさとの自然に親しみ、知り、歩き、探すということをみんなで大切にしていたいです。同じ桜でも真人山には4種類の桜があって、義経も見たベニヤマザクラが咲いているとわかりました。酒井浩さんは、ふるさとの自然を広めるために自然観察会や他の国の自然を見るため、いろいろな国々にホームスティなどを行っていると聞いたので、いい人だと思ったし、本当に自然を広めたいんだとわかった講話会でした。

 さすが、地元の中学生である。
 感性が豊かで、しかも中学生なりの気付きを得ている。

 聴いている態度もすばらしかった。

 私が見ている限りでは、講演している70分の間に誰一人居眠りしている生徒はいなかったし、それどころか皆、目をきらきら輝かせて聞いてくれていた。

 ちなみに、今回、最後に中学生向けにアピールしたことは、次の3つである。

 ➀今は、基礎(土台)を作る時期、たくさん勉強し本を読もう。

 ②多くの素敵な大人から話を聴こう。

 ③(コロナが明け大人になったら)観光旅行ではない、海外への旅をしよう。

 そのうえでのまとめの言葉は、「Think Globally,Act Locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」であった。

 どうやら、私が発信した以上に、生徒からはたくさんのエネルギーをもらったようだ。
 今回の講演や感想を糧にして、次の活動に還元していきたいものだ。