新型コロナ感染症対策の遅れは、暮らしや営業に大きな影響を与えています。倒産と失業者の増加、お金がなければ医者にもかかれないので、受診もせず重症化する。
現役世代や女性、非正規労働者の困窮が増加している。貧困と格差が広がっている実態が民医連調査で明らかになりました。
アベのマスクに260億円も使いました。お金はあります。命を大切にする社会を作ろうではありませんか。困窮事例を読んでください、政治の貧困のあらわれです。
新型コロナで困窮、受診せず重症化例も」民医連調査
現役世代や女性、非正規労働者の困窮が増加
2020年11月4日 星野桃代（m3.com編集部）
全日本民主医療機関連合会（全日本民医連）は、10月30日の記者会見で「コロナ禍を起因とした困窮事例調査」の中間取りまとめを公表した。新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響により、経済的な困窮が非正規労働者を中心に広がっており、それにより医療機関へ受診できず重症化を招いている事例があると指摘。岸本啓介事務局長は「今回の調査で把握できた事例は氷山の一角。国に対し、困窮者の生活状況の把握と迅速な施策充実を求めていくことで、より多くの命を助けたい」と訴えた。
調査で浮かび上がった実態を基に、全日本民医連は制度改善策として（1）生活保護の申請手続きを簡素化し、生活用品としての車の所有などを認めて、必要な時にためらわずに利用できる制度にする、また10月1日に引き下げた生活扶助基準、住宅扶助基準、冬季加算を元に戻す、（2）困窮に陥っても必要な医療を受けられるような十分な施策を用意する、（3）コロナ禍で帰国困難になってしまった外国人や、仮放免中で在留資格を持たない外国人などに対し、十分な医療を提供する――を求めた。
アンケートは、全日本民医連に加盟する事業所（医科、歯科、介護、薬局など）や県連などに配布。事業所がかかわった患者・利用者やその家族、また全日本民医連の各支部で実施した生活相談・電話相談の中で、コロナ禍が原因で困窮に至った人の事例を集めた。調査期間は2020年7月20日から9月30日まで。困窮事例は727例集まり、今回は困窮実態が明確な435事例に絞って中間取りまとめをした。435例の相談経路は、「医科」242例（56％）、「歯科」17例（4％）、「介護系」18例（4％）、「調剤薬局」11例（2％）、「相談会・電話相談」134例（31％）、「その他」13例（3％）。
435例の困窮者の属性は男性が59％、女性が39％、不明2％。全日本民医連が毎年行っている「経済的事由による手遅れ死亡事例」の調査結果では、困窮事例のうち女性は20％前後であることから、COVID-19により女性の経済困窮者が増加していることがうかがえる。また、435例を年齢別で見ると、40代19.5％、50代29.0％、60代19.8％で、例年の調査と比べて現役世代の困窮者が増えた。職業は「無職」が最多の29％で、コロナ禍のあおりで失業した人も含まれる。「派遣」「契約社員」「パート・アルバイト」を合わせた非正規労働者は35％を占めた。家族構成は、男女とも「独居」が最多だが、女性は次いで「一人親世帯」が多かった。
経済的困窮により医療へのアクセスが阻害され、重症化や手遅れを招いた事例も複数寄せられた。パート・アルバイトの50代男性は、緊急生活支援相談会への3度目の来訪時に「実は体調が悪い」と相談し、無料低額診療につながった。悪化していた未治療の糖尿病でインシュリン注射を受けたが、同時に膵臓がんと肝臓への多発転移が判明した。生活保護を受給し始め、転院してがん治療を開始した。別の60代男性は、飲食店に勤務していたが、コロナ禍で勤務日数が減り失職。体動困難で糞尿まみれの状態で発見され、救急搬送先でS状結腸がんが判明した。1カ月ほど十分な食事が取れておらず、るい痩著明だったという。
医科・歯科から寄せられた259の困窮事例のうち、受診を控えていたと思われる事例は66例で、そのうち所持金がわずかの状態だったのが38例、（受診控えによる）罹患・増悪が見られたのが23例だった。無料低額診療の利用者（希望者）は142例だったが、医療機関などの判断で相談者を直ちに生活保護受給につなげ、無料低額診療ではなく生活保護で対応した事例も多数見られた。生活保護に関しては、このような「水際作戦」と思われる事例が15例あったことから、久保田直生常駐理事は「命の危機を救うことを使命として多くの医療者が奮闘しているが、地域で困窮している人を行政が追い払ってしまったら、医療者としてこんなに報われないことはない。経済困窮による命の危機は行政にしか救えない」と語気を強めた。
