菅政権は、専門家や野党の提案も聞かず人の命と営業を犠牲にしてきました。自らの失政は反省することなく、罰則を導入し国民におしけようとしています。
「住民の理解と協力を得て、社会を防衛する」ということ。「一人を犠牲にして、残りを救う」ではないのです。橋本英樹教授
田村智子議員 動画のアドレス
新型コロナウイルスの感染者が入院や検査を拒否した場合などに罰則を設ける法改正が検討されていることについて、日本医学会連合や日本公衆衛生学会、日本疫学会が揃って反対の声明を出した。
感染拡大を抑えるためという目的を掲げても、なぜ罰則は設けるべきではないのか。
罰則に代わる有効な手立てはあるのか。
声明の呼びかけ人の一人で、公衆衛生を専門とする東京大学大学院行動社会医学講座教授の橋本英樹さんに話を聞いた。
感染症法ができた経緯を忘れたのか? 全国知事会も罰則を要請
ーー公衆衛生というと、「感染症の拡大防止という全体の利益のために、個人は我慢しろ」というイメージなのですが、なぜ今回、公衆衛生の学会や医療系の学会は罰則や私権の制限に反対する声明を出したのでしょう。
感染症法というものはある歴史を持って作られたものです。それを立法府の人たちが忘れているのか、理解していないのかと疑問を持ったのが今回声をあげたきっかけです。
少なくとも感染症法の前文を知っていたら、こんなに簡単に罰則を入れるという提案に「うん」と言うはずはない。
我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。(感染症法前文より)
これは危ない、と思ったのが一番の引っかかりでした。
ーーなぜこれほど大事な前文が立法府で尊重されないのでしょう。
忘れられているか、忘れてはいないけど無視しているのだと思います。今のところ、何がこの動きを押しているのかはわかりません。
ただ、事実としてわかっているのは、全国知事会が1月9日に政府に出した「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を受けた緊急提言」で、「保健所による積極的疫学調査や健康観察、入院勧告の遵守義務やこれらに対する罰則」を求める文言が入ったことです。
罰則を作れば保健所が混乱する
また、声明の文章について議論している最中に、それ以上に大きな問題だと気づいたのは、この罰則規定を入れることで、保健所の現場が混乱する可能性が高いということです。
ーーどうしてですか?
新型コロナでやっている感染者の同定や積極的疫学調査は、保健所が今回初めてやったことではないのです。結核でずっと日常的にやってきたことです。なので、担当部門はすぐコロナに対処できたのです。
そして、以前から前提にしているのは、「住民の理解と協力を得て、社会を防衛する」ということです。「一人を犠牲にして、残りを救う」ではないのです。
かつては、「全員を救うために、一人を殺した」のです。それが感染症法以前のやり方です。
記録を見ると、当時は結核やハンセン病だとわかると収容所に連れて行かれていました。家にいると捕まるので、山小屋に匿って家族がご飯を運んでいたのです。
だけど頻繁に訪問していたら周りに気づかれます。それで保健婦(当時)が良心の呵責を感じながらも、警察権力にその所在を知らせて、強制収容に加担したのです。
そうではない形で保健活動をするために1998年に作った感染症法を、また「警察権力にくっつく保健師」に戻すのか、というのが今回の問題です。
つまり、住民との信頼関係で成り立っている地域の保健活動が、根底から崩されてしまう。
感染症法上必要な情報が取れなくなるだけではなく、あらゆる地域の保健活動の根底的な資源を失ってしまうのです。
ーー言い方は悪いですけれども、「警察の犬」のように見られてしまうわけですね。
そうなります。「あそこに情報を流したら、警察に流れてしまう」と警戒されます。
ーー今回は、「夜の街」クラスターに対処するためと言って、警察権力が動員されましたね。
お巡りさんが出まくっていましたね。