goo blog サービス終了のお知らせ 

透明人間たちのひとりごと

「金のなる木」になる水

 一昨日、引退を明らかにした宮崎駿監督は、大量消費
社会が引き起こす環境破壊を予見して、現代文明を批判
する意味を込めて 『風の谷のナウシカ』 を発表しました。

 1984年(昭和59年)のことです

 『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『もののけ姫』 も
そのモチーフの根底にあるものは機械文明至上主義への
アンチテーゼと自然回帰の思想で溢れ返っています。

 また、日本の伝統的意匠をイメージした世界観にも独特
のものがありました。

 そうした独自の世界観と深いテーマ性が世界的に評価
されて 『千と千尋の神隠し』 ではベルリン国際
映画祭の最高賞「金熊賞」と米アカデミー賞長編アニメ賞
を受賞し、世界にその名を知らしめたのです。

 宮崎監督は 『千と千尋の神隠し』の企画書で、

 「(日本の)民族的空間 ―物語、伝承、行事、神ごとから
呪術に至るまで― が、どれほど豊かでユニークか、ただ
知られていないだけ、子供たちはハイテクに囲まれ、根を
失っている。 私たちが伝えなければならない」

 … と語っています。

    宮崎駿 著 「折り返し点」 岩波書店 より抜粋

 そして、

 最新作 『風立ちぬ』 ではゼロ戦(零式艦上戦闘機)
の設計者を主人公に、戦争という時代に翻弄されながらも
夢を追いかけて精一杯に生きる姿をロマンスと悲哀を織り
交ぜて丁寧に描いているようです。

 作品を観ていないので、想像の域を出ませんが、アニメ
を芸術にまで高めた名匠の引退劇は、戦争という究極
リアリズムの中にもファンタジー世界存在することを
証することで一応の完結を見たからではないでしょうか 

 プロデューサーは公開前に「この映画は宮崎駿の遺言」
と言っていたそうですが …

 ひとことで言えば、一貫して追求してきたファンタジーと
現実、つまり「子供の世界」と「大人の世界」の融合です。

 しかし、ファンタジーと現実問題の融合には、ともすれば
現実逃避の側面や目の前の問題を忌避してなかったこと
にする心理的なリスク回避あるいは近視眼的な利害得失
で事態を収拾するという傾向が見られがちとなります。

 要は、「いまがよけりゃ、あとは野となれ山となれ」 とか
先送りで 「未来に解決を委ねる」 などの方便と同じです。

 そうしたことが地球温暖化や環境破壊や資源の乱獲に
つながっているわけですねase

 よく使われる例えですが、約46億年前に誕生した我らが
地球の歴史をギュギュっと押し込めて1年に置き換えて
みたとすると …

 つまり地球の誕生を元日の午前0時とし、現在を大晦日
の深夜、年越しの直前として計算すると、現生人類の出現
は12月31日午後11時43分で、産業革命は同59分58秒から
始まります。

 機械化による大量生産とそれに伴なう大量消費の時代に
突入するキッカケとなった産業革命が起こったのは、たった
2秒前の出来事だったのです

 地球が営々として蓄え続けてきた地下に眠る化石燃料
や金属資源を、ごく短期間で消費し枯渇させようとしている
人類の愚かさが、これで知れようというものです

 ところで

 地球の資源枯渇の顕著な例としては、南太平洋の国
ナウルの悲惨な歴史が雄弁に物語っています。

 リン鉱石の資源に恵まれ、20世紀末までは1人当たりの
所得が世界トップクラスにあったナウルでしたが、その後
リン鉱石が枯渇すると他にこれといった産業のないナウル
の経済活動は破綻状態になってしまったのです。


 symbol2 同様のことは 「水」 についても言えることです

 ほとんどの日本人は「水と安全はタダ」同然だと
ほんの十数年前までは思っていました。

 水が豊富なことで知られる静岡県東部でも、ペットボトル
の水(ミネラルウオーター)を買う人を時折見かけますが、
水を買うことに抵抗を感じなくなっているのですね。

 1990年代に小型(500ml)のペットボトルの登場で徐々に
広まり始めたミネラルウオーターは、飲むためと言うよりも
ファッションアイテムとしての小道具のひとつであり、当時
の若者にとってはブランドの水を持ち歩くことがカッコよくて
オシャレだとされていたのです。

 それが、2011年3月11日に起こった東日本大震災に付随
する福島第一原発事故の影響で、浄水場から放射性物質
が検出されるやいなやスーパーやコンビニに水を求める人
が殺到したわけですね。

 当然のことに国産水の供給は追いつかずに、海外の水
が大量に入ってくる事態となったのですが、それが逆に、
「日本の水」 を再評価する一大契機となるわけです。

 欧州に多いミネラルが豊富ではあっても硬水では、何か
と都合が悪く不便なこともあったのです。

 たとえば、「硬水で米を炊いたら堅くて食べられない」とか
「粉ミルクを硬水で溶かすと、腎機能が未発達の乳児の体
に良くない」 との声もあり、震災後は軟水と硬水の違いや
料理との相性や粉ミルクにはどの水が適しているか、など
水を意識して選ぶ人が増えたそうなのです。

 あたりまえのことですが、各国の食文化はそれぞれの国
の水の特徴を活かして出来上がっています。

 欧州では硬水で肉を煮込んで柔らかくしてからさまざまに
調理します。

 日本のイタリア料理店でもパスタを茹でるのに欧州産の
硬水を使う店が多いと聞きます。

 さらに、日本と欧州のミネラルウオーターには、もうひとつ
大きな違いがあります。

 欧州産は無殺菌ですが、日本産は殺菌・除菌が義務付け
られています。

 世界でこんなことをしているのは日本だけのようですが、
日本でも井戸水はいまでも無殺菌のはずです。

 要するに、体に良い水とは 「基本はアルカリ性で適当に
ミネラルが入った生水」なのだそうです。

 水は常温のときにこそ、ハッキリとした味の違いが出る
ようで 「常温飲み」 が流行り始めているそうですが、
2号 は富士山の湧水がベースの地元の水道水で十分
に満足です

 参考までに、脳梗塞になりやすい体質の人には硬水が
よく、腎臓の悪い人は硬水は控えた方がよさそうです。

 いずれにしても、自分に合った水を見つけるのが大事で
あることに誰も異論はないでしょう。   

 … 以上 日本人水の飲み方変化」 9月2日付
静岡新聞夕刊を参考にしました。

 さて

 今や「水」は貴重な資源ですが、数年程前から、外国
の資本による日本の水資源の買収が相次ぎ、その事態は
深刻化の一途を辿っているといいます。

 爆発的な人口の増加による水不足に加え、環境汚染など
のさまざまな要因から淡水や地下水への需要は増す一方
で、水はいつしか 「金のなる木」 になると化して
世界中の国々が水をめぐって競争を展開する時代となって
いるのです。

 一時、話題となった中国を筆頭に世界が日本の水資源を
狙っていたわけですが、中国に関しては福島の原発事故で
日本は汚染された」 という風評が広がり、そのほとんどを
手放したそうなので 過去の話 として機に敏な中国人
を笑えますが、それで水資源についての脅威が過ぎ去った
わけではありません。

 入れ替わりに中国よりずっと手ごわい「水メジャー」
そのなかでもトップ企業である「エヴォリア」が千葉の
浄水場を落札したというニュースが2年程前にあり、欧米も
また、日本の水資源を狙っているという事実が知られること
になったのです。

 世界中にある水源のほとんどは、エヴォリア などの
水メジャー と呼ばれるトップ10社によって買い占めら
れていて、中国資本などの単なる利殖目的の不動産売買
とは違って、「世界の水」 を支配する目的に特化した
プロ中のプロ集団なわけです。

 これまで世界でも数少ない水メジャーの支配を受けない
稀有な国として知られていた日本ですが、エヴォリアから
の買収の触手が伸びてきたことによって、豊富な水資源
を有するといっても、そうそう安穏とはしていられない情勢
なのです。

 そこで

 こうした現状を踏まえたうえで、水と深いつながりがある
日本古来の文化と自然への畏敬を込めた大人のための
ファンタジーアニメを是非、宮崎駿監督には引退する前に
制作して欲しかったと願わずにはいられません。

 もう、本当に子どもたちに伝え残したい物語を紡ぐ意欲も
世界に訴えたい社会的な大人のメッセージを届ける情熱も
すべて失くしてしまったのでしょうか

 だとしても、それも致し方のないことなのですねase

 残念ですが … お疲れさまでした。

 そして、ほんとうに

 ありがとうございましたpeace

コメント一覧(10/1 コメント投稿終了予定)

透明人間2号
宮崎駿監督の引退宣言は今回で3度目です。 「これで3度目の正直、嘘いつわりのない正真正銘のリタイアですね」と念を押す意味でわざと慇懃に「お疲れさまでした」「ほんとうにありがとうございました」と最大限のお礼を述べさせてもらったのです。
『風立ちぬ』はベネチア国際映画祭のコンペティション部門にエントリーしているわけですが、本来なら審査結果の発表後に「これをもって …」と引退発表するのが筋で、これでは「金獅子賞を私にください」と言っているようなものです。

 … ですが、問題はそれだけではありません。

餃子ライスさんの指摘やココナンさんの質問とも関連しますが、こうしたパフォーマンスは彼の戦術というか、スタジオ・ジブリの営業戦略だと訝っているわけです。
いみじくも5号が『ヘイト気分にチープな心』のなかで洩らしたように、かなりの部分で胡散臭い輩なのです。(表現が悪いですね、要は策士なのです)
いまのところ彼の高等戦術は成功しているようで、中国紙では「平和主義者であり自然主義者」として高く評価されているようです。
韓国でも事情は似たり寄ったりでしょうが、猜疑心が強い分だけ化けの皮がはがされるのは早いのかもしれません。
ここのコメント欄では文字数の問題もあって、その辺りの説明には不向きですので、別途、記事にまとめてみたいと思います。

1号が体調不良で輪番制の今回、急遽、2号が代替エントリーしたわけですが、引き続きまして2号が担当します。

ナウルの直近の様子はよくわかりませんが、経済的には破綻して完全に崩壊同然のパラサイト国家でしょう。
そうは言っても、人口1万人にも満たない小国ですし、元来、楽観的で楽天気質の国民性ですので、きっと平和な生活が続いていることと思いますよ。
おいら
http://sin-sei.at.webry.info/
ナウルはリンで入った収入を国民に支給してて、ほとんどの国民が働くことを知らなかったらしいですね。最近のことは知らないけどどうなってるのかな。

生活保護受給要件が緩和されてから日本でもそういう人が増えているようですがね。
ココナン
少なくとも2号さんは「改憲」派で、従軍慰安婦問題を冤罪だと考える立場にあると認識していたのですが、餃子ライスさんの指摘にもあるように従軍慰安婦に対して謝罪と賠償の義務を国家が負うべきであるような発言をした宮崎駿監督を賞賛し持ち上げる意図はどこにあるのですか?
餃子ライス
宮崎駿は、「護憲」と「従軍慰安婦へ謝罪して賠償すべきだ」と発言したんですよね。
それで、ゼロ戦アニメって矛盾してるぜ!
皮肉のアッコちゃん
宮崎駿の作品と言ったら、「ルパン三世 カリオストロの城」と
「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」の初期3作品が
なんてたって秀逸だよな!
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ノンジャンル」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事