綺羅の部屋

メイプルストーリーの攻略を主とした、楓の幻灯の派遣ページです。

LoveMaker-5-

2007-04-18 01:15:24 | 小説

5章~瀬尾修一~




 裕也にだって、友達はいる。


    私が裕也と出会ったあの居酒屋で、よく一緒に飲みにきてる人がいるんだ。



 その人が、裕也の就職祝いをしてくれるそうなので、私たちはその居酒屋に立ち寄った。



 「お、裕也!遅かったじゃん!」


    ・・彼の名前は 瀬尾 修一。

        もう出来上がっているようだが・・・



    「なんだ、先飲んでんのかよ・・」



 「まぁいいじゃん、就職祝いなんだし 無礼講で!」


     「お前なぁ・・」



          「あ、そういえば どして裕也はうちの会社にしたの?」


     「・・なんだよ急に・・。」



         「いや、気になったんだもん。」


      「・・お前がいるからに決まってるだろ?」


         「な・・」



 「まぁ、それは理由の半分くらいでしかないだろ?」



    「・・・」


        「え、なになに? 修ちゃん何か知ってるの?」


 「こいつさ、愛ちゃんと付き合いだした頃は まだフリーターだったじゃん?」


 「んで俺が、『片や一流企業の美人社員、片やニートじゃ、完全にヒモだよな。』って言ったの。」


         「あはは、確かに♪」


  「じゃあこいつ、マジで頑張りだしちゃってさ。」



            「へぇ~、可愛いとこあるじゃん♪」


        「・・うるせぇな・・」


  「でも、お前ばっかりモテるんだよな、昔から・・」



     「なんだ、まださっちゃんの事怒ってんのか。」



          「・・さっちゃん?」


  「だぁー、言うな言うな!」


     「こいつが好きだった子なんだけどな、その子こいつの目の前で 俺に告ったんだ。」


 「やーめーろー」


    「で、こいつ 自分に告られたと思って 答えてたんだ。」


          「あはは・・」




  ・・お酒が入ると、普段話せないような事でも聞けちゃう、やっぱりこういうのって楽しいな・・




 でも 次の瞬間

  ふと入り口に目をやった私は、恐怖で凍りつく・・

LoveMaker-4-

2007-04-18 01:14:58 | 小説


4章~柴原愛~








  ・・私と彼が付き合って、もう3ヶ月になる。


    最初知り合った時には、石田君には彼女がいて・・
 でも いつも通っていた居酒屋で話してるうちに、段々仲良くなったんだ。



   半年くらい前に、別れたって聞いて


 色々相談とか聞いてるうちに、勢いで言っちゃったの。


  「そっか・・、じゃぁ、私と付き合ってよ。」


      後になって考えてみたら、軽くすごい事言ってたし・・

  OKもらえたから、よかったんだけどね・・




 それから 私がいる会社で働きたいって言い出して・・

   私があんなに苦労して受かった面接も、2ヶ月くらい練習しただけで受かっちゃったり・・



  でも、実は彼と私って、1つしか歳違わないんだよね・・



      「愛、仕事終わったら飲みに行かないか?」


  「・・こら、職場では先輩でしょ?」


      「・・じゃぁ・・先輩...」


  「ん、終わったら駅で待ち合わせね。」




    付き合ってるって事、二人に知られたら・・


 でも 秘密にしてる事のほうが いけない事・・だよね。






 自分がとっても悪い事をしてるようで



          心が壊れそうになった。

LoveMaker-3-

2007-04-10 04:43:48 | 小説










3章~石田裕也~





 彼がうちに来たのは、今年の4月の事。



  「今日からお世話になります! 石田と申します!」



     「はいよろしく。」


 好ちゃんは、新入社員の世話も任されてたりして、色々急がしそうだった。


     「今日は、一通りの仕事覚えてもらうから そのつもりでね?」



 「はい!」



   そう言って、好ちゃんはテキパキと説明しながら やって見せる。


        ・・やっぱりすごいなぁ。








 昼休みになって やっと開放された様子。


     「あー、疲れた・・」


        「好ちゃんもやっぱり 疲れるんだ?」


     「・・あんたねぇ・・」




     「まぁでも、仕事覚えるの早いし・・ 割と楽だったわよ。」



        「へぇ・・」


        「かっこいいし・・ね?」



  「な、なに言って・・」



       「あはは、好ちゃん、嘘つくのだけは下手だねぇ」


  「くっ・・」



           「でも、私もあーゆー人タイプかもぉ・・」


  「あら・・ でも、もうメルアド聞いちゃったもんねー。」


            「えっ、ずるいー・・」



  「ふふ、先手必勝よ?」




    二人とも、石田君の事好きみたいで


       でもね だからこそ言えない。

 


 


  私が二人に秘密にしてる事、それは・・


   石田君と付き合ってるって事・・。

LoveMaker-2-

2007-04-10 04:43:16 | 小説



2章~柊真理子~






   いつも遅刻ぎりぎりで来る真理子ちゃん。
     もうすぐ来ると思うんだけど・・


 
  あ、来た来た・・



 「あ、愛ちゃん、えっと・・おはよう。」


     「真理ちゃんおはよ。 あれ・・それどうしたの?」


 「え・・? あっ、やだ・・ 郵便出すの忘れてたよぉ・・」



   真理ちゃんはどっちかって言うと おっとりしてる。

  って言うか、トロい方かもしれない。


 ・・・手に持ったまま忘れるなよ・・。



 「ちょっとこれ、出してくるね!」


    「うん、行ってらっしゃい。」




  真理ちゃんと好ちゃん。


    この二人が話しだすと止まらない。



 皆仲良しで、毎日楽しい日が続く。


  これまでも これからもずっと続くと思ってた。












 でも、もう一人
   「彼」が会社に来たのが全ての始まりだった・・。

LoveMaker-1-

2007-04-10 02:39:44 | 小説



-LoveMaker-








  ・・こんにちは、柴原愛です。 今年で入社二年目になります!
     あ・・、スリーサイズはダメですよ? ハズカシーので・・

 私には、すっごく仲のいい友達がいます。 
    その二人とは、ずっと前から一緒に居て・・
  本当になんでも解り合ってる感じなんだ。

     目指してた事も一緒で、一緒に某一流企業の面接も受かって、今でも仲良く働いています。

 ただ、3人の間で秘密は無し! のはずなんだけど・・。










1章~阿島好~





   「おはよ!」


      「あ、好ちゃん・・」


 いつも元気で頼れる好(よしみ)ちゃん。

         ・・・私より仕事できるし、綺麗なの・・

   でも、困った時とか すっごく頼りになるんだ♪


 「ん? 愛、なんか元気ないぞ? 大丈夫・・?」


     「あ、うん・・ ちょっと疲れてて・・」


 「そっか、たまにはゆっくり寝なよ?」


   そう言って、仕事に向かう。

  好ちゃん、今日は外回りらしい・・

    ほんとに面倒見がよくて、なんて言うのか・・

 男の人にすっごくモテるんだけどね、本人はあんまりそういうの気にしてないみたいなの・・





   私も、好ちゃんみたいな女の子になりたいな・・。

空のカケラ

2007-04-04 02:25:06 | 小説












最終章








~空のカケラ~













  ──僕は、あの世界と一緒に消えた・・。



 アイの記憶と一緒に・・。








   僕が最後に残したあの手紙も、一緒に消えちゃったのかなぁ・・?
















 ──気付いたら私は、部屋のベッドで寝ていた。






      なんだろう、すごく長い夢を見ていた気がする・・。




    
    思い出そうとしても 思い出せない・・。







  でも・・



      私の手には、小さな紙が握られていた・・。












  ・・・なんだろう、とっても懐かしい字だ・・。



     薄い罫線の引かれた小さなその紙には、小さな字で こう書かれていた・・・。







 「──アイへ、
     どんなに辛くても、どんなに悲しくても、僕は 君が本当の空に出会えたって信じてる。
      君の幸せを願ってるよ、アイ・・・。」



     手紙はここで終わっていた・・。


      私は、無意識にこう言う・・。




 「ありがとう、ずっと忘れないよ、駆・・・。」



  


    



   










 蒼く澄み渡った空の下・・、彼女は今日も 大切な何かを探して、その場を後にする・・・




    どこか嬉しそうな顔をした彼女は、その詩を口ずさむ・・




    「──愛してるの響きだけで
         強くなれる気がしたよ
        ──ささやかな喜びを
           つぶれる程抱きしめて・・。」

        

          
      
 
       
          
           -The end-

明日を見たとき

2007-04-04 02:24:41 | 小説




13章






     ~明日を見た時~








-lost Memory









藍が帰ってきて、数ヶ月が経った




   僕が望んでた日常が、全部帰ってきたんだ。









     でも、なんだろう・・




 今日はなぜか、胸騒ぎがするんだ・・。










    



  ──日本に戻って数ヶ月経った


     こっちの生活にも大分慣れてきたし、今の生活が楽しいのは駆のおかげ。



   


   この幸せが、一生続いたらいいのに・・



      そんな事ばっかり考えて、最近は勉強にも集中できないんだ









  今日は、駆が会いに来てくれるって言ってたし、いい一日になりそうだな♪












  ──ふと僕の中に、何かがささやいた。




      そして、僕は真実を知る・・。





 本当の空


   その存在が、とても遠く感じた・・。



     でも、伝えなくちゃならない、そう思った。



 僕は、彼女のいるアパートの前に立っていた。








  インターホンを押して少しすると、彼女が部屋に入るように言った。



片付けでもしていたのだろうか




  「ごめん、散らかってて・・」

    

        「いや、いいよ。」





  「ほら、座って。」


        「あぁ・・。」





 僕は、彼女の・・・ 藍の目を見てこう言う・・




         「なぁ、藍・・。 大切な話があるんだ・・。」




  「な、なに? 急に改まって・・」




     悲しい、でも言わなきゃならない・・・


  だって僕は・・。





         「藍、本当の空を、僕は見れそうにない・・。」






 「・・・どうして..?」






         「この世界は・・・、人も、空も・・。 全部が創り物なんだ・・。」



  「え・・?」


         「君はここに、閉じ込められてるんだよ・・。」



  「それって・・」




       「──僕も、本当はいない・・。 本当の空を、僕は見れない・・。」





  ・・そう、彼女は誰かにこの世界に送り込まれた・・。


       ここにいても、一生幸せになんかなれないんだ・・。










  ──そうだ、これが真実だったんだ・・。




      全部思い出した・・




 私は昔、どこかの研究所に連れていかれて、それであの世界に・・。



 

   なんの目的かは知らないけど、でも


 彼に会えてよかった、

        そう思った。








     ・・・でも、全部思い出したら私、


        この世界には居られないんだね・・。




 周りの景色が、色を失っていく・・。 

      

     私は、元の世界に戻されるんだ・・。




  崩れて行く景色の中で、駆は私にずっと微笑みかけていた・・。

再会

2007-04-04 02:24:15 | 小説





12章~再会~




-Promise









──あまりに突然で、何を話していいのかわからなかった。


  でも、確かにそこに彼女がいる・・


    それ以上、何も望むことなんかない気がした・・。





 「・・・藍?」



   今まで忘れていた・・、いや、忘れようとしていた何かが、次々とよみがえってきた。




      「駆・・あの・・。」





  この瞬間、この時間に自分がいることが信じられなかった・・。


      何が本物かさえも、自分が自分であるかすらも・・。



 でも、彼女はゆっくりと口を開く・・。





       「覚えててくれてありがと・・、えっと・・ ちゃんと伝わったよ、駆の気持ち・・。」



    彼女の手には、小さく折りたたまれたノートの切れ端が握られていた。



 全てが輝いて見えた、




     僕はその時、少しわかったのかもしれない・・。


 「本当の空」って言葉の意味を・・。




 

   少し微笑んで、僕は彼女をぎゅっと抱きしめた・・。

























 ──駆が私の事を覚えてくれていた・・・


 それだけで十分だった。





   もう、忘れちゃいけない。


      いつまでも、覚えていたい。









 そうだ、もうひとつ言わなきゃいけない事があるんだ・・。






   「駆・・ 急にいなくなってゴメン・・。 でも、もうここから離れる事はないから・・。」




        「あぁ・・」




   「ずっと、一緒だよ。」




         






          「──うん、約束だぞ・・。」












 二人は出会った


     何かを得るために


        本当の空を探すために・・。


















































──二人の出会いと共に





  『--そうか、奴らが出会ったか・・。』



        「はい、引き離しましょうか?」




       ──様々な思惑が


  『--いや、そのままにしておけ・・。』



         「了解しました。 しかし・・、我々が完全に消したはずの記憶を、簡単に取り戻すとは・・。」




          ──動き出す・・。

  
  『--ふむ・・。 所詮我々も完全ではない という事だ。 

      記憶から欠け落ちた「何か」を埋めれば、自然と全てが戻ってくる・・。

        これからも監視を続けなさい・・。』


         「はい、了解です。」


    



         ──彼らの目的は・・・?













             つづく。

あの場所で

2007-04-04 02:23:40 | 小説




11章~あの場所で~



 point








私は、空港で日本行きのチケットを買う・・。




そして私は、あの手紙を読み返す・・・。










  ──よし、行こう・・。





 私は、飛行機が飛び立った後すぐに眠りについた。


















 ──僕は、彼女の住んでいたアパートの前に立っていた。



  彼女の部屋はまだ空いていて、
     彼女のいた部屋の扉には、小さなハートのシールが貼られていた。




 「これ・・・、まだあったんだな・・。」









   ──このシールは・・、彼女と知り合って少しした頃に・・








  「ねぇ、駆! これ見てっ、」


     彼女はやけに嬉しそうに 扉に貼ってあるシールを指差す。



        「・・ん? シール・・?」




   「ぅん! 友情の証ね♪」


       「あぁ・・ ちょっと恥ずかしいけどな。」



   「えー、そんな事ないよぉ、」




  ──見る度に照れくさかったっけ・・。




        ──今日は、帰ろう・・。
















  ──僕がそのアパートから出ると、そこには彼女が立っていた・・。








      僕らはそこでまた出会った。




   蒼く・・蒼い空の下で・・・。

別れのトキ

2007-04-04 02:23:17 | 小説

10章~別れのトキ~



Good-bye days




あの日、私は怖かった・・・


  何かを失いそうな気がして・・・。


 でも、それは仕方のない事のような気がして・・。



  もうこの街にはいられない、


だって、駆が私の事を知ってても、私は駆の事を知らなくなるから・・。





  今日言わないといけない・・

    今日ここからはなれないといけない・・・。



そう思って、私は彼の家に走った・・。





   ──やっぱり、私は誰かと話しちゃいけないんだ・・。




 私には、子供の頃の記憶どころか、つい半年前の記憶だってない。



 それがなぜかはわからないけど、いつも半年経つ度に、こんな事が繰り返されてる気がする。




   私はいつも、気付いたらその場にいたんだ。








   でも、信じてる

      空がある限り、繋がりは消えないって・・。









 突然、船の汽笛が鳴った。


  もう出港するようだ・・



    私は、甲板に立ってあの街を見続けた・・。







   「さよなら、オレンジの街・・・。」


 その船はゆっくりと、


   でも確かに私をその街から遠ざけた。















 ──何かを信じているから頑張れる。

  それが何かは僕にはわからない。

    でも、僕はその何かをしっかり信じていた。



 僕には、彼女がどこにいるのかわからない。

  なぜここから出ていったのかもわからない。


 でも、彼女はきっとここに戻ってくる。



   だから、ずっと待ってる。



 僕はその日、蒼く染まった空を見上げていた・・。



夕日を描いたあの空に

2007-04-04 02:22:47 | 小説



9章~夕日を描いたあの空に~


rewrite






船着場で船を待ってる間、私はジェーンおばさんにもらった小さな袋の中を見ていた。



そこには、手紙と、そして私の学生証、携帯電話が入っていた。







手紙にはこう書かれていた。






  「──アイ、お前は、どこにいても誰かを幸せにできる子だよ。

    そういう力を持ってるって事は、誰よりも幸せなんだと思う。

    ──アイ、あんたが拾ったあのビンは、
       見えない何かで繋がってる・・ 
        そういう人から来たんだよ・・・。


  だからあんたは、その人の事を思い出して、会いに行かなくちゃならない。


    今までありがとう。
        ─ジェーン=ライムより」



オレンジの街・・・

 ジェーンおばさん・・

   もう会えないんだって思うと、すごく寂しい気持ちになる。



 でも、行かなくちゃいけないんだ。


そう思って、他の荷物を手に取る。







電話は、電池こそないが 充電すればまた使えるようになるだろう。



そして、学生証を見て私は思い出した。



   まるで、最初から一つの繋がりだった物のように次々と・・。




  私の名前は黄昏 藍。


そして、私はあの日


 駆にさよならを言いに行ったんだ・・。




空からの贈り物

2007-04-04 02:22:18 | 小説

8章~空からの贈り物~



together




その日、私の住んでいる街には冷たい雨が降っていた。


 数週間ぶりの、恵みの雨だ。




 私は、ジェーンおばさんにこう話した。




 「あの、私・・・日本に行こうと思うのですが・・。」


   おばさんは、得に驚いた様子もなく、
  いつもの椅子に腰掛けていた。




       「先に進むって事はいい事だよ。」


     「あんたは自由に生きればいいし、当然・・・。」



 おばさんは少し微笑み・・


       「ここに戻ってきてもいいんだよ。」




 先に進む・・か・・



  「えと・・ 今までありがとうございました!」


 そう言って家を出ようとした、

   一秒でも早く、日本に行きたかったから、そして、


 前の私を、


   駆の事を、思い出したかったから・・。








        「ちょっとお待ち、アイ。」



 ふいに呼び止められたので、少し驚いた。



  「は、はい。」




      「何も持たずに出かけてどうするんだい。 これを持っていきな。」





 お金と、そして、小さな袋を手渡された。




        「また、いつでも来なよ!」



 「うん! ありがとう、ジェーンおばさん。」





   そう言って、私は港に走った。


想いを風に乗せ

2007-04-04 02:21:24 | 小説
 

7章~想いを風に乗せ~

sink








──最近、思った事がある。

    彼女と過ごしたあの時間は、夢だったんじゃないかって・・・。












──ここの所私は毎日海岸を見つめている。


    教会から響く鐘の音と、海から吹く風は、そこに何かを運んでくれる気がした。




 ──私、忘れたままでいいのかなぁ・・・



  思い出す事は怖い・・ でも。



 絶対に忘れちゃならない「何か」を忘れた。

   そんな気がする・・。



 オレンジの収穫も終わりに近付いたある日。
  私はそこで空を見ていた。



    考える度に切なくて、でも、思い出せない。


気が付くといつも私の手にはあの手紙が握られていて、私はそれを眺めていた。


 私は無意識に、その手紙を広げてこう言った。








   「──ちゃんと届いてるよ、駆の気持ち・・・。」


 駆って人がどんな人かも知らないし、なんでこんな事言ったのかもわからないけど。 私の眼は涙で滲んでた。



 確かに、でもとっても不鮮明に、彼の名前は残る・・。


  
   きっと、この空の向こうに、私を待ってくれてる人がいる・・・。




















 ──ほんの一瞬だって、君の事を忘れた事なんてなかった。


     もし本当に手紙が着いたらって思う。


 戻ってきたら 彼女はまた悲しみを背負うかもしれない。


    ──でもね、思うんだ。


  本当の空って、その先に見えるものなんじゃないかな・・?















──今まで、思い出したくないって思ってた。


 幸せな自分を失いたくないと思ってた。


    でも、もっと大切な事、あるんだよね・・?




 ──わかってる、本当の空がそこにあるかもしれないって事・・。












空の飛び方

2007-04-04 02:20:50 | 小説




6章~空の飛び方~




follow wind







私はその日、海岸に小さなビンが流れ着いているのを見つけた。



  (珍しいな、こんな所に流れ着くなんて・・・。)



 私がいる街の南側は、少しだけ海に面していて、潮の流れの関係で 物が流れ着く事がほとんど無い場所なんだそうだ。


私は、何気なくそのビンを拾い上げた・・。


 中には手紙が入っていた。

   ボトルメールってやつだろうか・・?




  (海の向こうにいる人からの手紙・・か・・)



 私はそのビンの蓋を開け、手紙を取り出した。


  中に入っていた小さな紙には、薄く罫線が敷かれていて、
    それは、とても懐かしい物のような気がした。




  小さく折りたたまれたその紙を開くと、そこにはこう書かれていた。




 「この空の下で出会ったあなたへ、
   お元気ですか? 僕は元気です。
    あなたとはもう会えないかもしれないし、
     この手紙だって着かないだろうけど。

  どんなに離れてたって僕らは繋がってる。
   
    君がこの世界のどこかで、本当の空を見つけられるって信じてます。



  それと・・・ 僕からも言っておきたかった事があるんだ。

   僕に楽しい時間をくれて、ありがとう。」





  差出人の住所や名前は書かれていなかった、

    当然と言えば当然なのだが、私は何か釈然としなかった。







 (あれ・・ この手紙・・ 日本語で書いてある・・?)







 ・・・なんだろう、なんだか、とっても懐かしい気がするな・・





 その日、何かを考えてたわけでもない。


  ただ、気付いたらそこにビンがあって、私はそれを拾ってた。








 (──不思議な日だなぁ・・)







 この日から、私は、毎日その手紙を読み返す・・
  何度も、何度も・・・


      ──本当の空を、探して・・・
















──その日僕は、その場所に立っていた。


  蒼く澄み渡ったその海には、人の姿はなかった。






   ──彼女のもとに、届くといいな。




 僕は、澄み渡った海に小さなビンを投げ込む。



     小さなビンに、たくさんの想いを込めて・・


















・・・毎日、毎日その手紙を読み返した。

   私に宛てて書かれた物なわけないと思うけど。


でも、なんだろう


  この手紙を読んでると、何か、心の奥が熱くなる・・


 ──もしかして、本当に私に宛てて書かれたのかな・・・?



 そんな事を考えると、ドキドキする気持ちと、また、それと一緒に

 


   ──昔を思い出すかもしれない


 その恐怖感に包まれた。





 思い出さないほうがいいから、忘れてしまったのであろう 過去の記憶・・



それを思い出す事・・・
 それが、私にとって唯一の恐怖となっていた。



気が付くと、私は空を見上げていた・・・。






        ──本当の空ってなんなんだろう・・


あなたがここにいない理由

2007-04-04 02:20:28 | 小説









5章~あなたがここにいない理由~




  -relive-







   彼女はほんの半年前までここにいた。




     けど、あの日・・・



 11月も終わりが近付いていたあの日、




   彼女は僕に会いに来たんだ・・。










    たった一言、




  「ありがとう」って言いに・・。










 その日、彼女は僕の家の前に立っていた。





  「どうしたの? 急に・・。」



  彼女は、走ってきたのか、ひどく息があがっていた。





        「ごめんなさい、でもね、あなたに、これだけは言いたいと想って・・。」







   ──これまでも続いていた平穏な日々が、


     ──これからも続くと、そう信じてた。








         「──何? ゆっくりでもいいから、言ってみてよ。」








  彼女は、僕の目を見て、確かにこう言った。









 それが、何を意味するのかわからない。


   でも、今でもはっきり覚えてる。





  これからも、ずっと忘れない。






     彼女の声を、


   彼女の言葉を・・








  「私ね、あなたと居れて楽しかった。 でもね・・ もう行かないといけないの。」





   ──すぐに言葉は出てこなかった。






  彼女は、ずっとこっちを見たまま話し続けた。









 「もう会えないかもしれないの・・ 遠い、遠い所に行くから・・。」




  「本当の空を探しに行くの・・。 だから、私の事は忘れて・・?」








     ──もう、会えない・・・?

  すぐに理解できなかった。





    そんな事、考えられない










 彼女は、じっとこっちを見て、こう言う。








  「今まで、ありがとう。」









 そう言って彼女は立ち去ろうとした。






       「──待って!」





 彼女は、少し迷った後に振り返った。



    その眼には、涙がにじんでた。







  「どうしたの? 翔くん。 そんな寂しそうな顔しないで? 私まで悲しくなっちゃうから・・。」






         「どうしても、行くの・・・?」





  「うん・・・」



 
           「もう、戻らないの・・・?」






 「うん・・・ でもね・・? 離れてても、どこに居ても。」




 「私たちは繋がってる、そう信じてる。」




 


    「──だから、悲しまないで・・・? 辛かったら、私の事忘れていいから・・。」








  そう言い終えると、彼女は走り去る。




    もう、呼び止めてもだめだった。







 彼女に何があったのか、


   彼女がどこに行ったのか



 誰も真実は知らない。








   でも




 僕らは繋がってる。

そう信じてる。





   この 空の下で・・。