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年度内にも法整備、超小型EVが街を走る

2012-08-08 14:03:24 | 騙マスメディア

年度内にも法整備、超小型EVが街を走る

4人乗りの車はオーバースペック

2012年8月8日(水) 久川 桃子

 1~2人乗りのEV「超小型モビリティ」の開発が急ピッチで進み、間もなく日本の公道で日常的に走るようになる。なぜ、今、超小型モビリティを普及する必要があるのか。その狙いを、法律や補助金などの整備を進める国土交通省自動車使用適正化対策官の星明彦氏に聞いた。

(聞き手は久川桃子=エコマムプロデューサー)

超小型モビリティを普及させようという動きは、いつ頃から始まったのですか。

日産自動車の「New Mobility Concept」

 2008年にコペンハーゲンで開催されたCOP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)にさかのぼります。当時の鳩山由紀夫首相は、2050年までに1990年比で二酸化炭素の排出を80%削減すると宣言しました。これは非常に野心的な目標です。これまでの延長線上で物事を進めていたのでは、決してクリアできない。当時もエコカー減税やエコカー補助金はありましたが、それを積み上げていても2050年の目標に向けては、持続可能性が全く見えてきませんでした。今までにはない革新的なアイデアが必要です。野心的な目標達成のために車の物づくりとして、何ができるだろうか? そう考える中で、超小型モビリティの概念が浮上したのです。

なぜ、超小型モビリティが、二酸化炭素の排出量80%削減への切り札になるのでしょうか。

 日本のエンジン燃費向上技術はすばらしいものがあります。しかし、これまでに技術が進歩してきたこともあり、燃費向上は限界に近づきつつあります。おそらく、今後10~20%の向上がせいぜいでしょう。これでは、二酸化炭素の80%削減の目標には到底届きません。解決しうるのは電気自動車(EV)しかありません。

 ところが、EVには航続距離の問題、バッテリーの制約があり、すべての車をEVにするのは不可能です。長距離を走る輸送用トラックなどは燃料電池車の可能性があるでしょう。EVに最も適しているのは近距離で、少人数で移動する車ということになります。

 一方、交通量に占める割合を見てみると、近距離、少人数での移動が非常に多いという現実があります。そこに合わせた車が、まさに超小型EV。だからこそ、切り札になると考えています。

 今の4人乗りの車は、生活の中ではオーバースペックで、実際のニーズには合っていないのだと思います。今までは、車は車、街は街、家は家でバラバラに進化してきました。しかしこれからは、人口減少、二酸化炭素、財政、いろいろな制約の中で、オーバースペックは許容できなくなり、車、街、家すべてが調和的に進化しなければならない段階にきています。

軽自動車とは違う全く新しいカテゴリー

軽自動車やバイクのポジショニングとどう違うのでしょうか。

 

国土交通省自動車使用適正化対策官の星明彦氏

 超小型モビリティは軽自動車とバイクの中間です。4輪なので軽自動車に似ていると思われるかもしれませんが、サイズなどから考えるとバイクの方が近い存在です。

 

 2003年にスズキが「ツイン」という2人乗りの軽自動車を発売したことがあります。しかし、わずか2年で生産が終了しました。トヨタが「e-com」という、超小型モビリティのコンセプトに近い2人乗りのEVを開発していましたが、これも失敗しています。

 なぜ失敗したか。両者とも、見た目が車だったからです。これでわかったのは、車の延長ではダメだということです。車に似ていると、人間は4人乗りを期待してしまうのでしょう。

 超小型モビリティを成功させるには、軽自動車ではない、全く新しいカテゴリーを一から作っていく必要があると思っています。各社とも斬新な未来的なデザインにしているのはそのためでもあります。7月にトヨタが発売した「新型COMS」はドアがありません。日産が近々発売を予定している「ニューモビリティコンセプト」の座席はまたがるような形です。風を感じたりと、バイクのような魅力を感じられるでしょう。

小さい、ドアがないとなると安全性が問題にはなりませんか。

 今までの4輪車の基準で安全性を考えてはいけないと思っています。交通を妨げないように一般道で一般車並みの速度は出せるよう、二人乗りにふさわしい出力に調整は必要です。小さい分、ほかの車から見えにくくなりがちなので、視認性が一番問題になるでしょう。これは自動車よりも厳しく規制する予定です。制限時速も低く、高速道路にも乗らないという前提で、安全基準を一から作る必要があります。

 衝突の安全性については、安全の価値、概念が変わるのではないかと思っています。ここ何年かのトレンドを見て、車と車の衝突事故は減っています。減っていないのは、車が人をひく事故です。これからは、歩いている人に対しての安全性、優しさが求められるのではないでしょうか。周りの人への優しさという意味では、超小型モビリティの安全性は車よりもむしろすぐれています。子育て層、熟年層でも安心して乗っていただける車にしていきたいのです。

ハイブリッド偏重からコンパクトへ

国内の自動車メーカーは、超小型モビリティに本気で取り組む気はあるのでしょうか。超小型モビリティが普及すると、軽自動車やバイクが売れなくなる懸念はありませんか。

 確かに、現時点で本気になっているメーカーは多くありません。どうしてもメーカーは国内に軸足を置いた経営になりがちです。国内の雇用も考える必要があるので仕方がない面もあると思いますが、そろそろ海外の市場を見据えた判断が必要です。

 世界市場が超小型モビリティに動くのであれば、日本メーカーも出遅れるわけにはいきません。正直なところ、数年前までは日本の方がリードしていましたが、メーカーも社会も興味を示さないうちに、欧米では一気に超小型モビリティの存在感が大きくなってきました。フランスでは、ルノーの超小型EVがすでに街中を走っています。ヨーロッパは特に流行のスピードが速いと感じています。

 エコカー減税の影響ですが、日本はハイブリッド車に偏重した傾向があります。今年4月からのエコカー減税や補助金では、そこを大きく見直しました。コンパクトな車にインセンティブを積む方向を今後も進めていく予定です。超小型モビリティは、コンパクト化の究極の形でしょう。

コンパクトなEVというと、大手自動車メーカーでなくても、新興国やベンチャーが続々と参入できるイメージもあります。

 だからこそ、技術がリードしている今、日本が本気で超小型モビリティに取り組む必要があるのです。「車とは違うカテゴリー」と矛盾するようですが、そうは言っても人が乗る乗り物です。日本メーカーでなければできない領域がまだまだあります。今までに自動車で培ってきた、バッテリーの安全性、インバーターの技術など、データ量などはケタ違いに多い。

 新しい超小型モビリティの領域を、乗り物と制度そのものの設計を同時に進めていけば、一体的にアジア諸国に輸出できるのではないかと考えています。

自動車産業の政策は、経済産業省が進めているイメージでしたが、国交省も深く関わっているのですね。

 かつてと比べると、減税にしろ補助金にしろ、燃費などテクニカルな部分に相当踏み込まなければならなくなりました。そこで、国交省が関わる部分が広がっているのだと思います。

今年中に公道を走れる?

現状と今後の展開を教えてください。

 2010~11年度は、青森県や福岡県など、13の地域で実証実験を行いました。全体利用者のうち、8割の人が「利用したい」と回答し、特に2人乗りの車両は85%の人から「利用したい」と回答がありました。1回の利用あたりの移動距離は片道5キロメートル未満、往復10キロメートル未満のものが約70%を占めました。買い物や送迎での利用が多かったです。外出頻度が増える、立ち寄り先が増えるといった効果がありました。

 すでに、トヨタの一人乗りの新型COMSが発売されましたが、今、それ以外の超小型モビリティが一般の公道でも走れるような新しい認定制度を策定する方向で調整し、秋にも販売できるようになる見込みです。年度内には、もっと広く一般の方に乗っていただけるようになるのではないかなと思います。



このコラムについて

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