原文の現代語訳
(一)
興ざめなもの。昼間に吠える犬。春の網代。三、四月の紅梅かさねの衣。牛が死んでしまった牛飼い。赤ん坊が死んでしまった産屋。火を起こしていない角火鉢やいろり。博士が続いて女の子ばかり産ませた場合。方違えに行ったのに、もてなしをしない所。まして季節の変わり目などには、あらかじめ分かっているはずだから、まことに興ざめだ。
地方からよこした手紙で、贈り物を添えていないもの。京からのもそう思うかもしれないが、京からのは知りたいことなどをも書き集め、世間の出来事などをも知ることができるので、贈り物がなくてもすばらしいのだ。人のところにとくにきちんと書いて送った手紙で、そろそろ返事を持ってきているだろうか、妙に遅いな、と待つうちに、先だっての手紙を、それが正式な立て文にせよ略式の結び文にしろ、ひどく汚く扱い、けばだたせ、封じ目として上に引いてあった墨なども消え、「いらっしゃいませんでした」とか「御物忌みだといって受け取りません」と言って持ち帰るなどは、ほんとうに情けなく興ざめだ。
また、必ず来るはずの人の所に迎えの牛車をやって待っていると、牛車が来る音がするので、やって来たようだと人々が出てみると、牛飼いは車を止めず、そのうえ車庫に引き入れて、轅をばたんと下ろすので、「どうしたのか」と聞けば、「今日はよそへいらっしゃるというので、こちらへはおいでになりません」などと言い、牛だけ引き出して去ってしまうのは興ざめだ。
また、家の内に迎え、通ってきていた男性が来なくなってしまうのも、ひどく興ざめだ。しかるべき身分で、自分が宮仕えしているところの女性のもとに婿を取られ、気が引けているのも実におもしろくない。
(注)網代 ・・・ 冬に竹や木を編んで川の浅瀬に並べ、あゆの稚魚などを捕らえる仕掛け。
(注)紅梅の衣 ・・・ 11月から2月ごろに着る、襲(かさね)の表と裏の配色の一つ。
(注)地火炉 ・・・ いろり
(注)博士 ・・・ 大学寮などに属する教官。男子の世襲制だった。
(注)方違へ ・・・ 陰陽道で、外出する方角が悪い場合に、前夜に他の方角に向かって一泊し、あらためて目的地に向かうこと。
(注)轅 ・・・ 牛車の前方にある二本の長い棒。
留学版 枕草子
(一)
興ざめなもの。昼間に叫ぶ人。冬の半袖。十・十一月のビーチサンダル。フレンチフライを食べるリス。道に落ちているペニーの数。腹の肉がはみ出す綺麗な女性。続いてlikeを連発する場合。名前を何度教えても覚えないアメリカ人。まして国際交流サークル内での出来事だから、まことに興ざめだ。
知人からのメールで用件だけ書いているもの。日本からのもそうかもしれないが、日本からのは、すぐに会えない人からのもので、相手の様子も直接見て知ることができないので、ただメールをもらっただけでも素晴らしいものだ。人のところに特にきちんと書いて送った手紙で、そろそろ返事を持ってきているだろうか、妙に遅いな、と待つうちに、先だっての手紙を、それが正式な立て文にせよ略式の結び文にしろ、ひどく汚く扱い、けばだたせ、封じ目として上に引いてあったインクなども消え、「切手がはってありません」とか「エアメールは80セント必要です」と言って持ち帰るなどは、ほんとうに情けなく興ざめだ。
また、営業しているはずのタクシーの会社に送迎を頼みに電話する際、道路を走るタクシーがあるので、大丈夫なようだと思ったところ、「一時間後じゃないと行けない」、などと言い、一方的に電話を切ってしまうのは興ざめだ。
また、初めは家の内に迎え、誘われていた人からの誘いがなくなるのもひどく興ざめだ。アメリカ国内を旅行すると知人に話しただけなのに、「ここは日本じゃないんだから。危ないんだよ。」と強くいわれ、気が引けているのも実におもしろくない。
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(一)
興ざめなもの。昼間に吠える犬。春の網代。三、四月の紅梅かさねの衣。牛が死んでしまった牛飼い。赤ん坊が死んでしまった産屋。火を起こしていない角火鉢やいろり。博士が続いて女の子ばかり産ませた場合。方違えに行ったのに、もてなしをしない所。まして季節の変わり目などには、あらかじめ分かっているはずだから、まことに興ざめだ。
地方からよこした手紙で、贈り物を添えていないもの。京からのもそう思うかもしれないが、京からのは知りたいことなどをも書き集め、世間の出来事などをも知ることができるので、贈り物がなくてもすばらしいのだ。人のところにとくにきちんと書いて送った手紙で、そろそろ返事を持ってきているだろうか、妙に遅いな、と待つうちに、先だっての手紙を、それが正式な立て文にせよ略式の結び文にしろ、ひどく汚く扱い、けばだたせ、封じ目として上に引いてあった墨なども消え、「いらっしゃいませんでした」とか「御物忌みだといって受け取りません」と言って持ち帰るなどは、ほんとうに情けなく興ざめだ。
また、必ず来るはずの人の所に迎えの牛車をやって待っていると、牛車が来る音がするので、やって来たようだと人々が出てみると、牛飼いは車を止めず、そのうえ車庫に引き入れて、轅をばたんと下ろすので、「どうしたのか」と聞けば、「今日はよそへいらっしゃるというので、こちらへはおいでになりません」などと言い、牛だけ引き出して去ってしまうのは興ざめだ。
また、家の内に迎え、通ってきていた男性が来なくなってしまうのも、ひどく興ざめだ。しかるべき身分で、自分が宮仕えしているところの女性のもとに婿を取られ、気が引けているのも実におもしろくない。
(注)網代 ・・・ 冬に竹や木を編んで川の浅瀬に並べ、あゆの稚魚などを捕らえる仕掛け。
(注)紅梅の衣 ・・・ 11月から2月ごろに着る、襲(かさね)の表と裏の配色の一つ。
(注)地火炉 ・・・ いろり
(注)博士 ・・・ 大学寮などに属する教官。男子の世襲制だった。
(注)方違へ ・・・ 陰陽道で、外出する方角が悪い場合に、前夜に他の方角に向かって一泊し、あらためて目的地に向かうこと。
(注)轅 ・・・ 牛車の前方にある二本の長い棒。
留学版 枕草子
(一)
興ざめなもの。昼間に叫ぶ人。冬の半袖。十・十一月のビーチサンダル。フレンチフライを食べるリス。道に落ちているペニーの数。腹の肉がはみ出す綺麗な女性。続いてlikeを連発する場合。名前を何度教えても覚えないアメリカ人。まして国際交流サークル内での出来事だから、まことに興ざめだ。
知人からのメールで用件だけ書いているもの。日本からのもそうかもしれないが、日本からのは、すぐに会えない人からのもので、相手の様子も直接見て知ることができないので、ただメールをもらっただけでも素晴らしいものだ。人のところに特にきちんと書いて送った手紙で、そろそろ返事を持ってきているだろうか、妙に遅いな、と待つうちに、先だっての手紙を、それが正式な立て文にせよ略式の結び文にしろ、ひどく汚く扱い、けばだたせ、封じ目として上に引いてあったインクなども消え、「切手がはってありません」とか「エアメールは80セント必要です」と言って持ち帰るなどは、ほんとうに情けなく興ざめだ。
また、営業しているはずのタクシーの会社に送迎を頼みに電話する際、道路を走るタクシーがあるので、大丈夫なようだと思ったところ、「一時間後じゃないと行けない」、などと言い、一方的に電話を切ってしまうのは興ざめだ。
また、初めは家の内に迎え、誘われていた人からの誘いがなくなるのもひどく興ざめだ。アメリカ国内を旅行すると知人に話しただけなのに、「ここは日本じゃないんだから。危ないんだよ。」と強くいわれ、気が引けているのも実におもしろくない。

コミュニティーより流れてまいりました、小梅ともうします。
タイトルの通り、ついつい笑ってしまいましたw
私は留学の経験がないので、異国文化には疎いのですが、手紙に切手が貼っていなくて、こちらが払うせつなさはかなり理解できます。(日本国内でも、差出人の住所が書いてない場合は受け取るために払わなきゃなんですよね。)
面白いので、また覗きに来させてくださいw
これからもよろしくお願いします。