介護・福祉きまぐれ通信

介護・福祉出版編集人のきまぐれ編集後記

ニーズの優先順位

2004-11-30 09:59:21 | 記事
昨今のケアプランのニーズの表記は利用者のポジティブな意欲や希望に沿って「○○したい」と書くのが主流なんだとか。「ご飯は自分で食べたい」「歩いて外出できるようになりたい」「トイレで排泄できるようになりたい」…。
これらのニーズは解決すべき課題として優先順に並べられる。居宅の場合は、緊急性に伴ってサービスを使う場合が多いので、優先順位は明確かもしれない。しかし、施設の場合、生活全般におけるケアが入所と同時に始まるといった場合が大半なわけであるから、極度に状態が変化したということがなければ、「これが優先順位の1番」というように、ニーズを並べるなんてことができるのだろうかと思ってしまう。その方にとっては、どのニーズも生活の中で同時進行していくのだから…。
つまるところ、ケアプランの第1表にある「総合的な援助の方針」そのものが、施設でのケアプランになっていくと考えてよいのだろうか…。


富士山登山論

2004-11-29 12:08:23 | 記事
某施設の施設長が“富士山登山論”として施設サービスの現状を次のように比喩し語る。「富士山の山頂に行きたくて登山をしていたら、八合目付近で土砂崩れのため登山道がなくなっていた。しかたがないので登山道が復旧するまで山小屋に非難する。いくら待っても登山道が復旧しないため山小屋での生活が長くなる。麓からはどんどん人が登ってくるために、山小屋の前には大勢の待機者が並ぶ。待機者がいるのだから山小屋が足りない、もっともっと山小屋が必要だとお役人は言う。登山者のニーズは山頂に登ることで山小屋に入ることではないのに・・。」
登山者を高齢者に、山小屋を施設に、山頂をめざした登山そのものを暮らしの継続と置き換えてみよう。確かに山小屋は避難所であって本来の生活の場ではない。
ユニットケアや逆デイ・・利用者のQOLを高めるために施設ではさまざまな取り組みがなされている。しかし、その取り組み自体を目的、ゴールとしてよいものだろうか。利用者のニーズは、今で長年暮らしてきた生活の継続なのだから・・。
小規模多機能サービスとして今、施設機能の解体、そして施設機能の地域分散が始まろうとしている。

高齢者の脱水とケア

2004-11-26 09:49:37 | 記事
要介護高齢者なかには、おむつを汚すことは多くの人に迷惑をかけることと感じ、水分を摂取しない人が少なくない。しかし、それは脱水を引き起こす危険がある。脱水は脳梗塞、心筋梗塞などを起しやすく、すべてのエネルギーを奪い、生きるためのパワーを喪失させる恐ろしい力がある。高齢者のケアは脱水への挑戦でもある。
人は1日1500ml以上の水分を食事以外で摂取することが必要といわれている。脱水による問題は山ほどあり、生命を落とすことさえある。最悪なのは、脱水しているときにはのどの渇きを感じないという症状が出ることである。
日本の健康教育のなかで、水分に関する教育は非常に欠如しているといえる。

レジデンシャルワーク

2004-11-25 16:44:55 | 記事
「レジデンシャルワーク」という用語は日本ではまだ新しく、統一された定義はないものの、一応「施設という生活の場を設立、運営することはもとより、入所者を直接的に援助することのすべてであり、そのために必要な知識基盤やスキル、そして理論を構築することまでをも含む包括的な概念である」と言われている。
施設で普通の生活が営みにくいのは、自分の意思に反して入所しなければならなかったり、生活のあらゆる面でプライバシーが尊重されていなかったり、毎日の日課など、集団的な生活や動きが強制されたりするからであろう。
したがって、レジデンシャルワークでは、これらのシステムを取り除いた施設を創設することになる。つまり、できる限り自分の意思で入所するようなシステムを作る、個室の整備等、できる限りプライバシーを尊重する、できる限り個人の意思で、したい生活ができるようなシステムを作るということが求められるのだろう。

専門性と連携

2004-11-19 12:55:29 | 記事
看護職や介護職をはじめ医師やセラピストなど、さまざまな職種が協働しながらサービス提供が行われている高齢者施設。そこでは、利用者の生活支援という使命の下で、それぞれの職種が専門性を発揮し、チームケアが行われていることと思われます。
では、高齢者施設における各職種の専門性とは何なのでしょうか?また、専門性を生かした連携および役割分担をどのように実践していけばよいのでしょうか?
施設ケアを進めていく中においては、各専門職による視点のズレというものはどうしても出てきてしまいます。そこで、施設における高齢者ケアの看護と介護の専門性について相互に改めて認識し合い、本来目指すべき方向性について確認していくことが重要なんだと思います。また、各々が誇りと責任をもって他職種と効果的に連携を進めていくための方策および、そのなかでのリーダーの役割についても考えていくことが大切なのでしょう。

介護職の死生観

2004-11-18 12:02:49 | 記事
加齢とともに訪れる死。それは、高齢者介護施設に入所する利用者においても同様のことです。
老人病院や介護施設で介護職として働いていれば、利用者の死という悲しい別れは何度も経験することになります。それでも次の瞬間には、気を取り直して笑顔でまた現場に戻ります。
入所を希望する利用者の重度化が進むなか、介護の専門職としての判断や対応はもちろん大切です。しかし、人の死を悼み悲しむ気持ちを忘れないで持っていただきたいと思います。
施設における家族も含めた利用者の人間としての尊厳や誇りをどのように理解し、その人自身のQOLに寄り添う看取りのケアをどのように提供していけばよいかということについて改めて考えてみる必要もあるのではないでしょうか。

施設でのインフルエンザ

2004-11-17 09:38:06 | 記事
インフルエンザの季節が近づいてきました。施設では予防対策を実施しているところも多いと思います。
しかし、札幌医大助教授鷲尾昌一の調査によると、北海道内の老人保健施設や養護老人ホームなど約400の高齢者施設で、入所者の7割以上が予防接種した施設は約80%だったのに対し、職員は約62%の施設にとどまり、職員の接種率が10%未満の施設も48あったという。
職員がかかると施設内流行の引き金になる恐れがあるため、厚生労働省の研究班は費用の公費負担など接種率向上対策が必要と指摘し、職員や医療関係者への接種の在り方を検討会で議論していくようです。
入所者の安全を維持していくためにも、職員の健康管理は重要課題と言えそうです。

痴呆ケアとICF

2004-11-16 17:59:16 | 記事
痴呆の方のケアでは「その人らしさを尊重し理解する」「行動障害ばかりに目を向けのではなく、できることに注目する」といったことが言われます。
しかし、これまで痴呆ケアは「医学モデル」が展開されてきたため、その人の生活を捉えたケアを・・といったとき、介護現場では具体的な方法が見出せないことが多いようです。
人がもっている生活機能をその人なりに活用して日常生活、社会生活を送る上で使うすべての機能を捉えたICF(国際生活機能分類)の考え方や分類項目が今、着目されています。それらを生かした痴呆ケアの展開方法について現場は検証し、実践していく時期にそろそろ来ているように思えます。

全国老健大会

2004-11-15 13:05:17 | 記事
去る平成16年11月10日・11日・12日の3日間の日程で、四国は香川県高松市で第15回全国老人保健施設香川大会が行われた。参加者は全国から総勢4000人だとか。
2日目のシンポジウムでは、「21世紀おける老健の夢と現実~介護保険制度改正を踏まえて~」と題して、2005年度の制度見直しに向けた議論のなかで叫ばれている老健の役割や方向性、具体的なビジョンなどが、厚生労働省老健局総務課長の山崎史郎氏ほか各シンポジストらによる発言がなされた。
そのほか各種講演や3つの会場に分かれた演題発表、ランチョンセミナーなどが繰り広げられた。本会の最後には記念講演として前阪神タイガース監督の星野仙一氏が熱のこもった講演で現場の方々にエールを送った。

施設の重度化

2004-11-10 10:43:26 | 記事
重度の人など、緊急性の高い人の優先入所というルールが制度化されてから施設、とりわけ特養で、医療依存度の高い入所者の割合が一層増えており、問題点が浮き彫りになってきているようです。介護職が医療行為をせざるをえないといった状況です。
特養では、看護師は常勤換算で2人、夜間の配置義務はないというものの、夜間に呼び出されることは月に10回以上だという。それでも対応しきれないというのだから、介護職が医療行為をせざるをえないのはやむをえないのでしょうか?
しかし、介護職が医療行為をしなければ、施設に入所する利用者の生活が成り立たないといった現象もあるとも聞きます。