介護・福祉きまぐれ通信

介護・福祉出版編集人のきまぐれ編集後記

水際作戦

2005-07-29 18:18:10 | 記事
厚生労働省の資料を見ると、介護予防は地域支援事業によって行われるものと、新予防給付によって行われるものに大別されている。介護予防の定義としては「要介護状態の発生をできる限り防ぐ・遅らせること」と「要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと」の2つ要素が叫ばれており、前者は地域支援事業、後者は新予防給付によって行われるとされている。
新予防給付の対象者となる方は、認定作業により要支援1・要支援2といった方で、顕在化が顕著であるが、一方の地域支援事業の対象となる方は、いわゆる元気老人といわれる方なのであろうが、認定作業に至らない閉じこもりやうつ状態の虚弱高齢者や、元気な方で短期的に状態が悪化しやすい要因をもった方なども対象となる。
そのような地域のなかで潜在化している、あるいは潜在化しやすい高齢者をいかに把握し、早期に対応するかが重要であり、システム化が望まれるところであろう。厚生労働省は、このことを「水際作戦」と銘打っているようだが、どうなることやら…。

車いすは誰のためのもの?

2005-07-28 10:46:05 | 記事
施設入所者で、生活している日中の大半を車いすで過ごされている方も少なくない。
車いすにもいろんな構造をもったものがあるようだが、施設などで日中を過ごすもっとも一般的に使用されている車いすの座面・背シートは、大抵がビニールレザーやナイロン布張りである。その理由は、低コストで作れるから…というのではなく、車いすを折りたたんでしまっておくための構造としてそのような素材で造られているのだとか。
このことは、つまり、車いすを管理する人のための構造なのであって、車いすに座っている人のための造りではないということである。
一般家庭にあるビニールレザーやナイロン布張りのいすといえば、せいぜいキャンプ場などに持っていく折りたたみいすくらいしかないのでは? と思ってしまうが、ある人に言わせれば、そのような車いすに日中、長時間そのままに座らせておくこと自体が「虐待」と言ってもよいのではないかと…。車いすが誰のためにあるものなのかということを今一度、考えてみることも必要なのでは…。

施設での看取り加算

2005-07-27 17:25:26 | 記事
日本人全体の死亡者数は2003年に100万人を超え、そのうちの80%が高齢者といわれている。また、死亡する場所は病院が79%、自宅が16%、高齢者介護施設が2%、その他(事故など)3%などというデータも示されている。そんななか、これからは高齢者介護施設での終末期の看取りが増えていくことも充分に予想される。
現在、終末期ケアは、医療保険と介護保険の両方の制度下で提供されている。しかし、現在の施設ケアにおける介護報酬では、看取りや終末期ケアに関する加算は訪問看護などを除いては規程されていない。そのような状況が続いた場合は、老健などの病院併設の施設は、終末期ケアを病院に依頼することが多いため、その実施については二極化が進むことも予想される。
併設病院もなく、協力病院もままならない単体の施設では、終末期ケアは職員の多大な労働のもとに行われているのが現状であろう。施設での終末期ケアが今後も増え続けることが予想されるなかで、それらの報酬体系についても議論される時期に来ているといえる。

トイレでの排泄介助は戦場

2005-07-26 18:54:44 | 記事
利用者の排泄は「トイレで排泄」を推進しており、それだけでもかなりの介護量を費やしている施設…。それはもう戦場のようだという…。
車いすから一人が抱きかかえ、もう一人が下着を外し、ポータブルトトイレを差し入れ、二人がかりの介助で便座に座っていただくこともしばしば。認知症がある方の場合だと、排泄介助を強く拒否され、ひっかれたり、つねられたりすることもしょっちゅう。眼が不自由な利用者からは、恐怖心からか、介護職の服が破れるくらいにしがみつかれることもあるのだとか。
どんなにきつい仕事でも、抱えられて自分の脚で立ち上がり、体の向きを変え、ズボンや下着の脱ぎ着をするために手を動かしたり、介護職との声かけに反応しながらコミュニケーションしていく…。介護職にしがみつくことで、上下肢のリハビリになっている…。そういった生活機能を活性化させるさまざまな要素が「トイレでの排泄介助」には組み込まれていることを、介護職みんなが理解して実践していた。

パワリハと筋トレ

2005-07-21 18:44:32 | 記事
介護保険制度改正によってよく聞くようになった「筋力向上」という言葉…厚生労働省の最近の資料には「運動器の機能向上」なんていう言葉も見られる。「筋力向上」とリンクして「パワーリハビリテーション」というものもあるが、それらに詳しい人に言わせると、筋力トレーニングとパワーリハビリテーションは異なるのだとか。
筋力トレーニングは、原則として健康でそこそこ動ける人に対して行うトレーニングで、筋力を向上させることを目的に強い負荷による運動を行うため、筋線維や筋細胞を傷めて破壊することもあるなどリスクを伴うことが多い。一方のパワーリハビリテーションは、介護保険で対象になるような虚弱な高齢者を対象として、穏やかな負荷をかけ、普段使われていない筋群を呼び起こし、神経と筋肉が協調した行動をとれるようにするもので、結果的に筋力が向上することもある…らしい。
パワーリハビリテーションというと、すぐにマシーンを使ってトレーニングするようなことを連想してしまうが、ストレッチなどによる準備運動や整理体操を行うプロセスからみるとマシーンによるトレーニングというのは全体の一部と考えるべきなのだとか。う~ん。。

ピープルウエア

2005-07-20 11:59:17 | 記事
当然ながら介護施設には、さまざまな教育背景や生活背景をもった人がいる。
介護福祉士の資格をもっている人であっても、その教育背景は2年制の専門学校や短大、4年制の大学、通信制の高校など多種多様である。また、3年の実務経験で資格を取得した人も多いことだろう。さらには、主婦経験の長い人、保育の学校を出られた若い人、病院で看護助手として働いていた人など、さまざまなキャリアの持ち主がいる。
それらの教育背景や生活背景も影響してか、介護職員といっても、その価値観や介護観はさまざまなことが多いようだ。
経営学に関する書籍『ピープルウエア-ヤル気こそプロジェクト成功の鍵-』のなかで「管理者は、個々人のユニークさ・個性を採用することで、プロジェクト内が不思議な作用で活発に効果的に働く」といったことが書かれている。個々の介護職員の「やる気」を引き出すためにも、管理者はその特徴や得意分野・苦手分野を把握して、それぞれに応じた目標設定を行い、誰もが持ち場に応じて生き生きと働くことができるような職場をつくっていただきたい。

死を包含した生への支援

2005-07-15 18:31:53 | 記事
その人の人生をも含む生活の支援を行う施設では、利用者のQOLを追求すると同時に「死」への関わりは避けて通れない。そのため、介護に携わる人々には、施設におけるターミナルケアというものを論ずるまでもなく、「死をも含んだ生」への支援を意識していただきたい。
自らの「生」に堂々と向き合い、「死」まで付き合える生き方というものに自立支援のあり方を見出したいという思いから、利用者とともに般若心経を読経しながら、その一節一節について利用者と意見を交し合うといった取り組みを行った施設…。そこではさらに写経の取り組みなどもはじめられ、仏の功徳を積む大切なひと時として施設内で継続されているのだとか。
施設では、そのような取り組みを通じて「死」は施設の職員や入居者の共通言語となって、恐怖のみではない「死への想い」を共感し、共により良い「生」と「死」を考える協働態勢への一歩が生まれたという。
入居者のなかには「息子には言えないが、死んだら伝えてや」と、死後の対応内容を託されている人もいるという。日ごろから、どこでどのような終末を迎えるのかという会話があるならば、叶うのであれば、それらの内容について記録に留めておくことも必要なのかもしれない。

要介護度に惑わされないケアを

2005-07-14 12:09:56 | 記事
よく要介護度が5から4に下がった場合、身体機能や精神機能に改善があったものと考えがちである。しかし、要介護度にあらわれない利用者の生活の状態像があることも指摘されており、留意が必要である。
例えば、嚥下機能に若干の不安がある利用者に対して一方で、食べ物の形がわかるようにお膳には自然の形で配膳し、食べる際にその方の摂取能力に応じて魚の身をほぐしたり、副食を食べやすくして自力摂取してもらった場合は「一部介助」とされるが、もう一方で、十分なアセスメントもなく食べやすさの観点のみで刻み食という形態にして提供し、食べ物の元の形がわからないものを自力摂取した場合は「自立」と判定される。実際、このことによって要介護度が5から4に下がる場合もありうるのだとか。
いろんな考え方があるのだろうが、利用者自身が食べ物の形を意識して食事摂取することは重要で、食事の楽しさや喜びを実感するといったことは精神面への影響も大きいように思う。
介護職が利用者の援助にかかわる際、こうした当たり前の生活行為に関連した部分がよく見逃されがちであるが、このような小さなことの積み重ねが、利用者の生活機能向上につながる介護予防となり、廃用症候群の改善や認知症の高齢者の方の機能維持にもつながっていくというように理解したい。

運動がしたい男性利用者?

2005-07-13 18:25:21 | 記事
一般的にデイサービスの利用者は女性のほうが多い。利用者の7~8割が女性であるといわれている。男性の利用者はそこで肩身の狭い思いをしているという話も聞くことがある。
そんななか、とあるデイサービスでは、施設の中央部にトレーニングジムを設置したところ、男性の利用者が大幅に増えたのだとか。今はやりの筋力トレーニングマシンである。そのデイサービスでは、運動を中心としたプログラムを展開しているとかで、今では6~7割が男性利用者で、運動するのが楽しみだということで通う人が多いのだとか…。
最初はスタッフに手伝ってもらって運動していた人も見違えるように元気になって表情も明るくなったり、杖をついていた人がいつの間にか杖なしで施設内を歩き回るようになったりといった効果も出てきているのだとか。そして、そのデイサービスでは開設して1年もたたないうちに自立判定者が出るほどになったのだとか…。
自立判定されれば介護保険サービスは利用できない。そこでその施設ではこの人たちをボランティアスタッフとして契約し、施設利用を無料でできるようにしたという…。うそのようなほんとのはなし…?。

利用者が主役のケアプラン

2005-07-12 18:18:09 | 記事
本来、ケアプランに記載される長期目標や短期目標には、利用者が「○○できる」「○○できるようになる」といった「利用者の将来像」が設定されるべきところといわれている。
しかし、実際は「○○というケアをする」「○○に対応する」などといった「援助者側の目標」となっていることが少なくない。ひどいところでは、サービス内容や種別の単語しか書かれていないものも目にすることがある。
確かに、視点が援助者側の目標だと、利用者は「ケアを受けること」が目標になってしまい、自立に向けた意欲が湧かないなどといった結果に陥るかもしれないので注意が必要だ。
したがって、利用者自らが自立に向けて積極的に取り組んでいくためには、ケアプランに「利用者本人が取り組むこと」を位置づける必要があるともいわれている。
利用者自身の「○○を頑張る」という言葉を引き出し、「○○さんが頑張ることをプランに入れておきますね」「スタッフもできるように応援しますね」という会話をたくさん交わすなど、コミュニケーションを通じたケアプラン作りが、利用者の自立に向けての一歩につながるのではないだろうか。