JCIA(日本幼児コンピュータあそび研究協議会/幼児教育ソフト研究会)ブログ

幼稚園で、保育園で、家庭で、子ども達にとって有効なコンピュータの活用方法を研究しています。

東日本大震災の経験から、災害時に有効な学校IT環境についての提言

2012-11-05 12:34:21 | 活動報告
東日本大震災の経験から、災害時に有効な学校IT環境についての提言

                               JCIA 日本幼児コンピュータあそび研究協議会

 東日本大震災から1年半が過ぎましたが、大きな爪痕への対応が思うように進まぬ中、大飯原発や首都圏で新たな断層が発見され、直下型地震に対する心配が続いています。震災以来、全ての教育機関がこれまでの地震対策や避難方法についてもう一度ゼロから見直し、地震災害と真剣に向き合って参りましたが、その中で、情報手段の果たす役割がどれほど大きいかについてもわかって参りました。緊急地震速報システムなどは避難に直結して命を守る情報手段といえるでしょう。反対に、地震が起きてからの情報手段は家族の絆を繋ぐ命綱の役割を果たすでしょう。特に小さな子どもを預かる幼稚園や保育園では、どのような情報手段を利用して、我が子を心配する保護者と正確に連絡を取り合い、いかに安全に園児を引き渡すかについて、これまできっと真剣に検討が重ねられたことでしょう。
 JCIA(日本幼児コンピュータあそび研究協議会)では、こうした災害時にどのような情報手段が好ましいかについて現状を分析しました。携帯電話やインターネットなどの情報メディアから実際に人が移動して情報を伝える方法まで、実際に地震が起きたら被災状況に応じて選択できる情報手段は異なりますが、こうした全体像を踏まえながら、災害時に少しでも役に立つ学校IT環境とは何かについて整理し、これから地震防災対策を検討する上での一助となりますよう提言をまとめました。

1.東日本大震災の経験から

 東日本大震災の当時は、被災地だけでなく広い地域で長時間にわたり電話や携帯メールが通信しづらい状況が続きました。そんな中、Twitter(ツイッター)やmixi(ミクシィ)、Facebook(フェイスブック)などといったインターネット上の「ソーシャルメディアサービス」の利用者は、比較的早く情報収集や緊急連絡ができたといいます。緊急時でもインターネットに接続できる環境が確保できていれば、園のホームページやソーシャルメディアを通じて、職員同士や保護者との緊急連絡手段を複数確保することができるといえます。

2.メールよりもwebサービスが有効だった理由

 そもそも、なぜメール連絡は遅れるのでしょうか。メール配信システムから一斉送信される保護者宛のメールは、一般的にインターネットを通じてメール配信用サーバからプロバイダや各携帯電話会社のサーバに届けられます。そのメールは、一時的に携帯電話会社の交換機(サーバ)に集められてから順次送信されますが、災害時など一極集中して混雑が予想される場合は送信制限がかかり、受け付けがされなかったり、送信が遅延したりすることがあります。一般電話や携帯電話の通話は、利用が集中するだけでなく、災害の救援・復旧にかかわる機関の通話を優先する目的で一般回線の利用が制限されるため、通話がしにくくなるのです。
 これに対して、ホームページのほか、Twitter(ツイッター)、mixi(ミクシィ)、Facebook(フェイスブック)などといったインターネット上の「ソーシャルメディアサービス」が利用しやすかったのはなぜでしょうか。その理由は、情報の発信者も閲覧者もともにインターネット上のサーバにアクセスし、情報を発信したり閲覧したりするしくみだからです。災害時は普段よりもインターネットへのアクセスが集中するのですが、電話の通信網のように利用制限がかかることはありません。また、新しい技術でアクセスを分散できるように工夫されているため、災害時に強い基盤と言われているのです。
 災害時にはパソコンが利用できないこともあると思いますが、そんな時は、携帯電話のほかにタブレットコンピュータやスマートフォンもあると役立ちます。停電で電源が確保できないときでもバッテリー駆動できますし、携帯電話の通信ができないときでもワイヤレスで接続することができます。
 大切なのは日常からそれらの道具に使い慣れておくことでしょう。仕事でもプライベートでも複数の「デジタルデバイス」を持ち歩き、大いに活用しておくことをお勧めします。

3.非常時に対応できるIT環境とは

 メールは災害直後に配信遅延が生じるとしても、園から保護者への一斉連絡手段としてはやはり有効です。災害の状況にもよりますが、まずはメール配信システムを整備し、日頃から先生がメール送信の手順に慣れておくだけでなく、保護者側もメールの受信状況を確認しておくとよいでしょう。
 また、「開封確認機能」があれば、保護者がいつメールを確認したかを管理画面で確認できます。この機能によって、連絡漏れを防ぐことができるので安心です。あわせて、携帯電話やスマートフォンから簡単な操作で一斉送信ができたり、様々な条件で送信者をグループ分けして送信ができる機能があると便利です。
 次にホームページですが、これは携帯電話からの閲覧が可能となっているでしょうか。普段は利用しなくても、緊急時なら携帯電話からホームページを閲覧する保護者が増えるでしょう。また、更新作業はパソコン以外のデジタルデバイスからも可能でしょうか。携帯電話やスマートフォンなどを使ってインターネット接続し、いつでもどこでも更新ができる状態が理想的です。さらに、近年はスマートフォンが急激に普及しています。保護者のスマートフォン利用率が高まっているようなら、ホームページをスマートフォン対応にし、ワンタッチで必要な情報を閲覧できるようにするのもよいでしょう。
 メールが使えない状況での連絡手段として有効なのがTwitter(ツイッター)、mixi(ミクシィ)、Facebook(フェイスブック)などといったインターネット上の「ソーシャルメディアサービス」です。これらは無料会員登録をして「アカウント」を取得すれば、利用者間で安否確認や情報収集をすることができます。
 「Twitter」はホームページ同様に不特定多数に広く情報を伝える役割を果たします。発信された情報を閲覧した人々がそれを転載(リツイート)して広めることもできるため、水や食料の要求、避難ルートや避難場所の確認、医療サービスが受けられる場所などの情報提供にも広く活用されました。
 「Facebook」にも「Facebookページ」と呼ばれるホームページ同様の情報発信機能があります。これは会員でなくても閲覧できるため、園の状況を広く伝達することができます。またFacebookは実名で登録することが義務付けられているため、保護者にも登録してもらえば、非公開で「グループ」を開設することもできます。グループ内での情報発信は閲覧者も限られていることから、より詳細な情報共有をおこなうことができます。グループを開設した場合は、日頃から情報交換に活かし、そのしくみに慣れておくことをお勧めします。実名での交流のため、コミュニティが荒れるような心配も少ないでしょう。

4.情報のセキュリティ確保のために

 情報をインターネット上に置き、どこからでも利用できるコンピュータの仕組みを「クラウドコンピューティング」と言います。特に東日本大震災後に注目されている利用形態で、インターネットに接続すれば情報を取り出すことができます。地震によりパソコンが壊れても、情報の安全性は確保できます。クラウドコンピューティングを利用すれば、セキュリティが確保された場所に個人情報を一元管理でき、さらに煩雑な業務もスムーズに対応できます。緊急連絡だけでなく、非常時に備えて情報の安全管理も検討しておくとよいでしょう。

平成24年 11月 1日


                                JCIA 日本幼児コンピュータあそび研究協議会
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