米核搭載艦船の一時寄港に関し、政府が密約の存在を否定する根拠の一つに挙げてきた、核持ち込みを事前協議の対象にするとの「藤山・マッカーサー口頭了解」は、存在していなかったことが、9日公表された外交文書で明らかになった。政府は架空の口頭了解を68年に文書化したが、宮沢喜一外相(当時)は75年、英訳する際、駐日米国大使に「異議を唱えないと言ってほしい」と協力を要請していたことも分かった。長年、国会で虚偽答弁を繰り返してきたことになり、歴代首相らの責任が問われそうだ。
これまで日本政府は、事前協議に関する安保条約と関連取り決め「岸・ハーター交換公文」の解釈を明確にするものとして「藤山愛一郎外相とマッカーサー大使との間で(核の持ち込みは事前協議の対象にするとの)口頭了解がある」と国会で説明してきた。しかし、口頭了解は事前協議の対象から除外するとした「密約」の存在を明らかにできない日本政府の「作文」だったことが分かった。
さらに75年3月の文書には、宮沢氏がホドソン米公使に対し「三木武夫首相とも協議したが、結論は現在の(密約はないことを前提とした)政策は到底変更できぬ、ということだった」と伝え、存在しない口頭了解の文書化というウソの上塗りを了承するよう求めた様子が記されている。
日米密約に関する有識者委員会の報告書は、安保改定時に口頭で了解されたものが、68年に文書化されたことについて「外交常識では考えにくい」と批判。米側の認識についても「日本政府が核搭載艦船の事前協議なしの寄港を現実問題として容認している以上、黙認せざるをえないと考えたのだろう」と指摘した。【中澤雄大】
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