現在、日本の人口は世界第12位。
少子高齢化だと騒いでいる多くの日本人は、日本は人口が少ない国だと思っているのではないか。
しかし、昔は違った。
まだ日本が高度経済成長期に入る前の1950年の世界の国別人口ランキングを見ると、日本は何と第5位。
1950年のランキングは次の通り。
1位 中国
2位 インド
3位 アメリカ
4位 ロシア
5位 日本
これを見てわかるのは、当時の日本は人口大国だったということだ。
日本経済が大躍進した大きな要因は、日本や日本人が特別だったわけではなく、人口大国だったからかもしれない。
だから、少子高齢化で生産年齢人口の減少が止まらなくなった平成、令和の30年、日本経済はほとんど成長しなくなった。
人口増加が経済成長の重要ファクターだと考えると、日本の生産年齢人口が増えない限り、いくら金融緩和を続けたり円安誘導をしたところで、日本経済に未来は無いということだろう。
バイデン大統領が言ったとおり、日本は外国人嫌いで移民を受け入れないから困難を抱えることになったという指摘に、素直に耳を傾けるべきかもしれない。
経済が衰退する日本なのに、円が強く物価も安定していたのが唯一の救いだったが、昨年からの急激な円安で物価は急上昇。
これでこの国も万事休すかと思っていたら、今年になって株価が急上昇。
そのせいか、大企業の給与アップが実現し、政府もメディアも喜んでいたら、株価が下がり始めた。
やはり何も変わりそうにない日本。
いやそれどころか、政治不信、円安、株安、物価高という悪夢のようなフェイズに突入しつつあるようで不安だ。
人口が減少しているのに、これまで日本政府も経済界も、労働者の収入を上げないどころか、労働者をコスト扱いする「非正規や契約社員」という新しいコンセプトを創り出して労働者を追いつめた。
そのせいで、労働者は生きていくだけで精一杯。
かと言って、労働者が投資で儲けようにも、事業者優遇の「ゼロ金利政策」では、利回りを追求する投資など夢のまた夢。
今の若者は知らないだろうが、高度成長期の日本は違った。
大企業の社員や公務員になれば、40年間は安泰。
しかも高額な退職金や公的年金のおかげで、現役時代に老後資金のことなど考えなくても優雅な老後を送れた。
人口も増加していたので、まとまった金があれば、土地を買っておきさえすれば、それを売却して簡単に利益が得られた土地神話だ。
株式投資も長期に保有すれば必ず儲かった。
だから、投資に無頓着な人でも、金融機関に貯金したり、保険商品を買っておけば、ノーリスク、ハイリターンで、その元本は10年で2倍、30年で10倍。
だから大企業に勤めて、昭和の末から平成の初期に、幹部にまで上りつめた人なら、定年までに数億円の金融資産と不動産を手にすることができた。
定年後には、そうした資産の利回りや年金だけで、年間一千万円以上の収入。
現在、5億円を超える金融資産を保有する世帯を「超富裕層」と呼ぶようだが、バブル期の大企業で幹部になった祖父がいる世帯なら「超富裕層」はざらだろう。
そもそも、当時大企業で幹部になるような人たちは、会社に入ってから、飲食で自腹を切ったことなどない強者ばかり。
年間数百万円の交際費で、飲食、マージャン、ゴルフの贅沢三昧。そんな連中だから、若いうちはタクシー券、役員になったら社有車。おまけに、中元、歳暮の時期には、倉庫が必要なくらいの届け物の山。
笑いが止まらなかっただろう。
とにかく、会社の金を誰よりも、たくさん使った人間ほど出世するというのが昔の大企業。
思えば、すでに格差社会は始っていたといえる。
とは言うものの、当時は下々の人たちまで、経済成長の恩恵を受けていたので、誰もあまり気にしていなかっただけだろう。
今、思えば、古き良き時代。
しかし、経済が全く成長しない現代を生きる私たちには、そんな薔薇色の人生なんて最早「都市伝説」。
政府は、経済が成長しなくなったこの国で、バリバリの資本主義復活を狙い、「円安、株高、ゼロ金利」という、メチャクチャな経済政策を続けている。
そもそも、人口が減少して経済が成長しなくなったのだから、移民でも受け入れない限り、経済の復活などないのは「自明の理」。
ただ、日本人に移民受け入れなんて無理だろう。
人口が右肩が上がりに増えて、経済が順調に成長している時代に生まれていれば、平均的な能力と真面目な努力で豊かになれた。
しかし、人口が減少し、経済がほとんど成長しない現在に生まれてしまったために、平均的な能力と真面目な努力だけでは、決して豊かになれなくなった。
この冷徹な事実を自覚しない限り、この国に明日はない。