日本の生産性が低いのは、多くの企業が競い合って、とにかく、たくさんの新卒学生を一括採用するせいだろう。
しかも、その採用ときたら、事業遂行に必要なジョブ型採用ではなく、大学サークルの新人勧誘のようないい加減さ。
いまだに社風だとか、気が合う仲間だとか、学閥採用がまかり通っている。
これでは、世界と戦えないのは、当たり前。
しかも、そうした企業も、なぜか学生が自社の社員になった途端に、全く魅力を感じ無くなるようだ。
入社後は、OJTでほったらかし。
考えてみれば、企業の仕事なんて、大卒でなくても務まる雑務ばかり。だから、ほったらかしでも問題ないと言えば、その通り。
しかし、そうだとしたら、毎年、たくさんの大卒を、各社が競って採用する必要などないはず。
それなのに、無目的に学生をかき集めようとする愚かな人事部。そもそも、その人事部自体、一体どんな学生を採りたいのか分かっていない。
だから、学歴フィルターなどと称して、手っ取り早く、社員を特定の大学の卒業生で埋め尽くそうとする。
ナンセンスな話である。
学生も学生だ。後先考えずに、そんな企業に殺到する。
「幹部候補生」などとおだてられて入っても、一兵卒としてバンザイ突撃させられるだけ。同期入社の中で、幹部になれるのは、ほんの一握りに過ぎない。
自分と同じような指定校の学生ばかりが集まる企業に、選ばれたことへの優越感だけで、将来の展望も無いままに入社し、長い長い無益な競争を強いられる。
平成以降の30年余り、変化に取り残された多くの企業が、たくさんの大卒社員もろとも轟沈したことを、思い出して欲しい。
新卒で入った企業が倒産したとき、社員を待っているのは地獄。
仮に上手く転職できたとしても、転職先が旧態依然とした企業なら、転職社員は差別され、使い捨てられる。
倒産しないまでも、業績が悪化して、リストラで弾き飛ばされた社員の運命も同じ。
本人としては、何のために子供の頃から努力を重ねてきたのかわからない末路になりかねない。
運が無かった、入る会社を間違えたと言ってしまえば、それまでだが。あまりに理不尽だ。
人材を一極集中させた挙げ句、競争に敗れ、社員もろとも轟沈する企業。
資本主義の宿命とは言え、経済的にみれば、人的資源の無駄遣い。
考えてみれば、日本の人口が右肩上がりで、人的資源の無駄遣いなんて当たり前に許された、昭和の高度成長期の日本なら、バンザイ突撃がベスト。
「時差は金なり」、「24時間戦えますか」という古き良き時代。
不沈戦艦と言われた大企業への優秀な人材の一極集中は、有効な政策であり、効率的な経営戦略だったかもしれない。日本の生産性の向上にも大きく貢献したことは、間違いない。
しかし、現在では、特定の企業への人材の一極集中は、マイナスなだけ。
人材を広く分散させ、日本を全体的に底上げすることが必要だろう。
そうでもしない限り、この日本で、新しいビジネスモデルなど生まれなくなる。
ただ、そんな心配も必要なくなるかもしれない。
AIが普及すれば、人材の心配なんて必要なくなるからだ。かえって、人間がいない方が、生産性が向上するという「コペルニクス的転回」。
そうなれば、「新卒一括採用」や「優秀な人材」なんて言葉は、死語になるだろう。