巻き取られる

「前の車、遅すぎ」「車間距離とれよ、後ろの車」「わっ、もうこんな時間だ」。
車を運転しながら生まれる思考。
そいつに翻弄されたりする。

クラシック音楽について、知識は薄紙ほどもない。
有名な作曲家や指揮者、そして演奏家でも私の脳味噌には入っていない。
ほんの数名しか。

運転している際に発生する思考だが、これが全て巻き取られる。
クラシック音楽に。
パッと頭の中に生まれても、スッと消える。
穏やかな心もちだけが残る。

空手教室を終えて帰る道。
車外の風景が、音楽の旋律とともに流れ行く。
フロントガラスを打つ雨粒さえ、楽器の奏でる音に合わせているようだ。
車内が、コンサート会場になっている。

クラシック音楽は、奥行きの深い物語のように感じる。
難しいことは分からないのだが、感覚がそう呟く。

演奏の途中で、家に着いてしまった。

続きが聞きたい。