多忙な母と旅に出かけるのは、大人になってから初めて。
京都が全く分からない私は、ガイドブック片手に桜の名所平安神宮から南禅寺。
大鳥居から美術館の川沿いは、ソメイヨシノが満開です。
私は「あ~船が流れて、桜が咲いて~」とうっとりするのですが、
歳と共に何事も「感動」の二文字が薄らいだ母は、私を置いてスタスタ歩いていきます。

「私は登った事あるから、あんた登ってきたら」と言う母の勧めで、
南禅寺の門の上に登って京都を一望。

左下には、私のリュックを持った小さな母が見えます。
宿に戻るとベットに腰掛け「あ~良く歩いたね。みんな行けてよかったね」と
自分を誉める(私の知らない)可愛い母の姿。
龍安寺の石庭を座ってみているのは、ほとんど外国の人。

夜、二人で酒を飲みながら夕ご飯を食べていると、
「私は生きてるだけで、皆に迷惑。早く死んだ方が・・・」と涙を流す母。
(東京に一人で行けるほどしっかり者の母の「どこが、迷惑なんだろう」と思いつつ)
「前から言っているけど、平均寿命まであと10年、母さんは大丈夫。
10年経ったら、『トンコロリ』とか言って欲しい。その話聞き飽きた」
翌日には、あっけらかんと二条城で
(もう何回も来たらしく)私を置いてスタスタ城内を回り、
小雨降る庭を少しだけ歩いて、満々と咲いた八重桜をカメラに収めると

帰りのバスの中に「良かった。良かった。みんな行けて良かった」と呟く母がいた。
***
京都も4月の上旬雨が桜の花びらを散らせ、葉桜がちらほら。
今回見た中で一番きれいだったのが、妙心寺の塔頭「退蔵院」の紅しだれ桜。
(2013年「そうだ 京都、行こう。」のJR東海のキャンペーンに採用)

緑に囲まれた狭い空間に、満開の花が映えて本当に美しかった。

書道、御詠歌などなど、忙しい母の予定が空けば、また旅が出来るのでしょう。
次回の母は、もっと可愛いおばばになっているはず。