ユリと逢えることにはなったが、何の心構えもしていなかったのでどうしたものか考えながら車を走らせた。
九時前に事務所を出発し、現在時刻は九時半。
後30分ばかりでユリに逢うことになる。
ユリの住む街はおれの住む街から一時間の距離だが仕事上、ちょくちょく行く事がある。
なので協力業者なんかと昼間は頻繁に車ですれちがう事もある。
社用車でユリとデートになるのであまり街中をうろついたり繁華街に行くのは危険だ。
デート一つに強烈に神経を尖らせなければならないのである。
オレはユリのマンションに迎えにいく事になっている。
前回ユリを送ったので場所もわかっている。
到着してユリに電話をした。
「すぐ降りて行くけ。ちょっと待っててね!」
降りて行くという事は一階に住んでいないということだ。
マンションは五階建てワンルームマンション。
洗濯物を干してあるバルコニーは見当たらないのでどの部屋かはわからない。
マンション出入り口は一つのようだ。
オレは車を降りて出入り口でユリが来るのを待つ。
「お待たせ~」
相変わらずショートカットが似合うかわいい奴だ。
「おはよう。すまんな、今日も作業服で。」
格好もクソもない薄汚れた作業服姿だ。
「その格好好きやけ、気にせんでええよ!仕事頑張ってる人って感じですきやけ。」
ガテン系がユリのタイプなのだろうか?
「今日はいきなりだしどこへ行くかも何も考えてないんだ。昼ご飯にはまだ早いし。」
本当に何も考えていなかった。
「とりあえず走ってたら何か思いつくかも知れんけ。行こ!それにここ路駐うるさいし」
迎えに来ただけだから広くはない道路に路上駐車したままだった。
「よし、まぁ行くか」」
人目を避けつつ、ある程度の人のあるところを模索する。
ある程度の人があるところと言うのは誰もいないところで顔見知りと出くわしたら逃げ場がなくなるからだ。
「そうだ!マリンアリーナへ行こう!観覧車に乗りたいな!」
マリンアリーナとは本県では有名な遊園地だ。
あくまで本県ではであり、他府県の遊園地と比べれば規模は小さい。
どうやらユリはそこの観覧車に乗りたいらしい。
オレは実は高所恐怖症だがユリと二人っきりになれるし、何にしろマリンアリーナなら平日の午前中だ、知り合いと出くわす確率はまずない。
「わかった。平日だし空いてるだろうからな」
車の屋根に脚立を積んだ社用車が遊園地に着く。
少し雨も降っていた。
「傘、あるから」
そうオレは言ってユリと一つの傘に入る。
彼女はオレの傘を持っていない左腕に腕を絡ませてきた。
相合い傘。
妻帯者のオレが妻以外の女性と。
目撃されれば死すら覚悟せねばならぬ。
ゲートをくぐりまずは観覧車へ。
「やっぱり空いてるね。天気も天気やしね。」
待ち時間もなくすんなりと観覧車に乗り込む。
彼女は高度を増していく景色を楽しんでいたが、オレは腰が引けていた。
「どうしたん?もしかして高い所苦手?あはは!」
小悪魔のようだがユリなら何でも許せてしまう。
完全な密室で観覧車の籠の小さな軋み音だけのこの空間。
あまり得意ではない。
体を抱き寄せたかったが今はそれをしたくはなかった。
オレはユリといちゃつく為に逢いにきたのではないから。
観覧車が一周し、元の場所に戻り俺たちは籠を降りた。
「楽しかったね~。もう一回乗ろうか?」
「はは…勘弁してくれよ」
などと他愛ない会話をしながら遊具の整備士しかいない雨のマリンアリーナを歩く。
天気はよくないがまるでオレ達の貸し切りのようだ。
オレはユリの事はすでにかけがえのない人になっている。
妻ももちろんオレにとって二人といないオレの理解者。
しかし、妻とユリとはかけがえのない人だが、よくわからないが言うなれば種類の違う大切さ。
でもこの時はユリの事しか考えられていなかった。
九時前に事務所を出発し、現在時刻は九時半。
後30分ばかりでユリに逢うことになる。
ユリの住む街はおれの住む街から一時間の距離だが仕事上、ちょくちょく行く事がある。
なので協力業者なんかと昼間は頻繁に車ですれちがう事もある。
社用車でユリとデートになるのであまり街中をうろついたり繁華街に行くのは危険だ。
デート一つに強烈に神経を尖らせなければならないのである。
オレはユリのマンションに迎えにいく事になっている。
前回ユリを送ったので場所もわかっている。
到着してユリに電話をした。
「すぐ降りて行くけ。ちょっと待っててね!」
降りて行くという事は一階に住んでいないということだ。
マンションは五階建てワンルームマンション。
洗濯物を干してあるバルコニーは見当たらないのでどの部屋かはわからない。
マンション出入り口は一つのようだ。
オレは車を降りて出入り口でユリが来るのを待つ。
「お待たせ~」
相変わらずショートカットが似合うかわいい奴だ。
「おはよう。すまんな、今日も作業服で。」
格好もクソもない薄汚れた作業服姿だ。
「その格好好きやけ、気にせんでええよ!仕事頑張ってる人って感じですきやけ。」
ガテン系がユリのタイプなのだろうか?
「今日はいきなりだしどこへ行くかも何も考えてないんだ。昼ご飯にはまだ早いし。」
本当に何も考えていなかった。
「とりあえず走ってたら何か思いつくかも知れんけ。行こ!それにここ路駐うるさいし」
迎えに来ただけだから広くはない道路に路上駐車したままだった。
「よし、まぁ行くか」」
人目を避けつつ、ある程度の人のあるところを模索する。
ある程度の人があるところと言うのは誰もいないところで顔見知りと出くわしたら逃げ場がなくなるからだ。
「そうだ!マリンアリーナへ行こう!観覧車に乗りたいな!」
マリンアリーナとは本県では有名な遊園地だ。
あくまで本県ではであり、他府県の遊園地と比べれば規模は小さい。
どうやらユリはそこの観覧車に乗りたいらしい。
オレは実は高所恐怖症だがユリと二人っきりになれるし、何にしろマリンアリーナなら平日の午前中だ、知り合いと出くわす確率はまずない。
「わかった。平日だし空いてるだろうからな」
車の屋根に脚立を積んだ社用車が遊園地に着く。
少し雨も降っていた。
「傘、あるから」
そうオレは言ってユリと一つの傘に入る。
彼女はオレの傘を持っていない左腕に腕を絡ませてきた。
相合い傘。
妻帯者のオレが妻以外の女性と。
目撃されれば死すら覚悟せねばならぬ。
ゲートをくぐりまずは観覧車へ。
「やっぱり空いてるね。天気も天気やしね。」
待ち時間もなくすんなりと観覧車に乗り込む。
彼女は高度を増していく景色を楽しんでいたが、オレは腰が引けていた。
「どうしたん?もしかして高い所苦手?あはは!」
小悪魔のようだがユリなら何でも許せてしまう。
完全な密室で観覧車の籠の小さな軋み音だけのこの空間。
あまり得意ではない。
体を抱き寄せたかったが今はそれをしたくはなかった。
オレはユリといちゃつく為に逢いにきたのではないから。
観覧車が一周し、元の場所に戻り俺たちは籠を降りた。
「楽しかったね~。もう一回乗ろうか?」
「はは…勘弁してくれよ」
などと他愛ない会話をしながら遊具の整備士しかいない雨のマリンアリーナを歩く。
天気はよくないがまるでオレ達の貸し切りのようだ。
オレはユリの事はすでにかけがえのない人になっている。
妻ももちろんオレにとって二人といないオレの理解者。
しかし、妻とユリとはかけがえのない人だが、よくわからないが言うなれば種類の違う大切さ。
でもこの時はユリの事しか考えられていなかった。