自主営業で闘い職場再建を勝ちとった京品ホテル闘争を更に前進させよう!
いよいよ京品ホテル闘争の第二ステージが開始されました。雇用確保と職場再建をめざして闘った京品ホテルの組合員が11月日15 日、新たな職場「フォーエバー707」を開店しました。南新宿の小さなダイニングバーですが、職場再建の第1歩が踏み出せたことを、喜びをもってお知らせします。
東日本大震災で震災便乗の派遣切りが再燃し、福島原発事故がすべての生きる者の命を脅かしています。ギリシャの破綻などが対岸の火事ではなく、働きたくても職がない、働いても暮らせない、希望を持って生き続けることが困難な時代に私たちは悪戦苦闘の日々を過ごしています。獲得した職場再建の第1歩は僅かな光ですが「希望」を育てあう場所にしようと組合員は全力をあげます。いっそうのご支援をお願いするしだいです。
ところで、その一方で残念なことに京品ホテル闘争を歪曲し悪意に満ちた主張を繰り返す代理人弁護士加藤晋介氏に主導され元組合員が起こした京品闘争弁護団に対する「懲戒請求」(請求者は大内・自称元「代表」、金本元支部長、森本支部元書記長、佐藤組合員の4名)や9千万円の「闘争解決金引渡請求事件」の裁判が進行しています。
改めて京品ホテル闘争の意義を確認しながら、京品ホテル闘争の成果である解決金すべてを懲戒請求者ら個人に支払えという不当極まりない「拝金主義」の要求に屈しない東京ユニオンの決意を皆さんにお伝えし、旧来に増してご理解とご支援をいただけるよう訴えるものです
1.雇用確保と職場再建が京品ホテル闘争の目的
(1)東京ユニオンと京品闘争弁護団に「感謝している」という懲戒請求者ら元組合員は、10年10月2日(東京ユニオン第31回定期大会の開催日)東京ユニオンから解決金を返還させることのみを目的に「旧京品ホテル闘争団」を結成しました。彼らの主張は①和解調書では「原告に支払われる5千万円」「利害関係人組合に対し、利害関係人組合との間の雇用の確保に関する紛争に関し建物明渡請求事件及び雇用の確保に関する紛争の解決金として7千5百万円の支払い」と明記されていますが、7千5百万円の内、訴訟に関わった費用(組合員には一切負担させず全額東京ユニオンが出費)や弁護団への成功報酬など3千5百万円を差し引いた4千万円+5千万円=9千万円を「旧京品ホテル闘争団」に引き渡し全額を原告団で分配させろというものです。懲戒請求者らは必要な訴訟経費等は認めるが、解決金全額は自分たちに配分されるものだと主張しています。
②「引渡請求」を意味づけるために東京ユニオンに対し事実無根の「弁護士法違反(非弁活動)」で報酬を受け取った、などを訴状に加え、訴訟を有利に進めるために、献身的に奮闘した京品ホテル闘争弁護団に対して、勝手に解決金を東京ユニオンに振り込んだことは弁護士の職務上の義務違反だと懲戒請求を併せて起こしたものです。
なぜ、和解調書で解決金の支払いが原告と利害関係人組合(東京ユニオン)に二分されたかは京品ホテル闘争の経過に深く関わっています。
(2)京品ホテル闘争は経営者が放漫経営で多額の債務を負い債権者サンライズ・ファイナンス(リーマン・ブラザーズの完全子会社)が債権を一本化して、ホテルを売却して債権を回収するために経営者に全従業員を解雇させようとしたことが発端となり、職場と雇用が奪われることに対抗する闘いとして開始されました。
唯一の債権者の外資ファンドが実質上の使用者として振舞っていたことが京品ホテル闘争の特徴でした。また、団体交渉によって廃業が強行された08年10月まで賃金を全額補償させ、退職金も十分ではありませんが大幅に上積みさせ就業規則では支払い対象ではないパートについても支払わせるなど労働債権はすべて支払われていました。そのため闘争は労働債権に依拠する闘いではなく「労働者を犠牲にした債権回収は許さない」というスローガンが示していたように、債権者(外資ファンド)が企てた、ホテル廃業・全員解雇を前提にした不動産売買契約によって労働者が解雇される、理不尽な債権回収を許さず職場と生存権を労働者が自らを守るための闘いでした。
東京ユニオンは何よりも職場の確保、職場再建を闘争の中心に据えました。これは懲戒請求者の金本元支部長が労働委員会の証人尋問で「お金の要求はしませんでしたけれども、当初からそういう話じゃないので、とにかく会社廃業を撤回してくれ、雇用を継続してくれ、その2点で要求を出しました」と証言していることでも明らかです。この方針は支部組合員に共有され、団体交渉や廃業後の自主営業、強制執行で排除された後の闘争でも一貫して維持されました。
(3)ところが、ホテルを廃業した場合、現行耐震基準によって再建築せざるをえませんが、京品ホテルの所在地では終戦直後の都市計画によってホテルのような恒久的建築物の再建築が不可能な状態でした。元の場所でホテルの再開ができないことは組合員に周知され、職場再建は①経営者及び廃業後はホテルの買受人に職場を確保させる②不可能な場合は職場再建のための費用を東京ユニオンが獲得する、いずれかの方法で実現を図ることになりました。
(4)職場再建を求める交渉は自主営業と並行して進められ、①京品ホテルの経営者に対し「資金を集めさせ別会社で店舗を営業させる」ことや金銭解決の提案には「職場再建の資金として10億円を要求」しました。②強制執行の根拠となった「建物明渡仮処分」では裁判官に東京ユニオンでも買い手を探していることを伝え、ユニオン・京品実業・買い手の三者で土地建物の扱いについて協議するよう申入れました。③強制執行によって自主営業が排除された後も債権譲渡の情報から弁護団が買受人を探し「債権の買受人が自ら組合員の職場をつくり、東京ユニオンにも解決金を支払う」もしくは「東京ユニオンが2億円から4億円の解決金を得て職場をつくる」交渉を模索しました。④債権がローン・スターに再譲渡された前後の09年6月から7月にかけ不動産業者数社からホテル売却の打診が東京ユニオン委員長にあり、いずれも2億円程度の解決金が支払われるものでした。これらの経過は支部会議や職場集会で組合員に報告し、職場再建の方針は組合員に了解されていました。その際に個別の組合員に対する個別解決金を要求すべきだとするような意見は全く出されませんでした。
2.再譲渡後の破産管財人交渉でも職場再建を追求する
(1)リーマン・ブラザーズの破綻によって京品ホテルの担保付債権はローン・スターグループに09年7月再譲渡されました。再譲渡によって使用者性が更に薄まり闘争はより困難となりましたが、ローン・スターに対し東京ユニオンは京品ホテルの土地建物を売却することで労使紛争を解決できる実質的な使用者だとして連日、解決要請や抗議行動を行いました。11月には団交を拒否するローン・スターに対し不当労働行為救済申立をし、ローン・スター側は東京ユニオンに対し「団交応諾義務不存在請求」を提訴し抗議行動等への損害賠償を求めてきました。
(2)東京ユニオンとの直接交渉を嫌ったローン・スターによって債権者破産が打たれ、破産管財人との団体交渉で事態の打開をはかることになります。
京品ホテル闘争が長期化し債権者破産開始決定がなされた10月末頃には支部組合員の多くが生活の維持などを理由に闘争から離脱せざるをえない状況となり、闘争継続のために12月から3月までの間、(東京ユニオンの乏しい闘争積立金を使い)闘争専従者7人を編成しました(懲戒請求者の森本元支部書記長も闘争専従者でした)。
闘争専従者の編成について懲戒請求者らは「支部の了解もなく勝手に人選した」「解決金を専従者に有利に配分した」と非難しています。東京ユニオンは個人加盟の単一組合で妥結権やストライキ権は執行委員長や書記長などの本部三役と執行委員会が有しています。東京ユニオンは闘争を担う責任から、懲戒請求者ら多くの組合員が闘争から離脱した状況を受けて闘争専従体制を打ち出し、人選についても責任を持たなければならないのは当然で非難される理由はありません(11月28日の懲戒請求者らが出席した支部会議で何の異論もなく闘争専従者について確認されています)。
(3)11月末から開始された破産管財人との団体交渉は委員長、書記長、ならびに輪番で闘争専従者が出席し(森本氏も出席していますので交渉の過程は懲戒請求者らも承知しています)20回行われました。
管財人交渉でも、東京ユニオンはホテルの再建、買受人による職場再建を要求しましたが管財人は受け入れず、金銭解決の意向を強く示しました。このため10年1月9日の支部会議(懲戒請求者の大内・佐藤・森本各氏も参加)で団体交渉の方針を金銭解決とし①京品支部組合員に対する賠償②組合員の雇用創出のための費用及び職場再建費用③東京ユニオンの権利侵害に対する費用の3点で要求することが確認されました。決定された方針は東京ユニオンが京品支部を結成した以降堅持した「雇用確保と職場再建」に基づいて出されたものであり、これまでの闘争経過を正しく反映したものでした。支部会議に出席した懲戒請求者らから何の異論も出されませんでした。
(4)管財人との団体交渉は極めて厳しい状況で推移し、最初に支部組合員への解決金として5千万円が決定しました。破産管財人は裁判所の決定とはいえ、自主営業が強制的に排除されたことに理解を示し、職場再建のための資金及び東京ユニオンに対する権利侵害への賠償、各訴訟を取下げ全体的解決をはかるために「建物明渡請求事件及び雇用の確保に関する紛争の解決金」として最終的に総額7千5百万円を利害関係人組合(東京ユニオン)に支払うことで合意しました。
和解調書で解決金の支払いが原告(組合員)と利害関係人組合(東京ユニオン)に二分されたことは京品ホテル闘争の経過からみれば当然であり、懲戒請求者らが東京ユニオンに支払われた7千5百万円の内の職場再建資金4千万円を組合員個人に配分するよう要求する根拠はまったくありません。ちなみに、東京ユニオンは5千万円については和解時から全額原告に配分されるものと考え提案しています。
3.「解決金の5割を取得した」「組合民主主義に反する」ことへの反論
(1)懲戒請求者らは1月29日、東京地方裁判所で和解が成立した際に「組合員に和解調書のコピーも配布されない、和解調書の読み上げすらなかった」と不満を述べています。
これは解決金が京品ホテルの土地建物の売却代金から支払われるために、和解成立前から成立及びその履行がホテルの土地建物が売却できるかどうかにかかっていました。支払われる解決金は京品ホテル闘争が社会的にも注目されたために、不動産の抵当権者、買受人、破産事件の裁判所らが強い関心を示し、高額の解決金が支払われる情報が漏えいした場合、不動産売却の話が壊れる危険がありました。破産管財人から東京ユニオン及び弁護団に対し、情報管理を厳格に行うよう強い申入れがありました。
1月29日の和解成立時にも履行日は和解調書に記載されず、和解金の支払い日は「売買代金が支払われた日から10日以内の被告(破産管財人)が指定する日」とだけ記載され、実際に和解条項が履行されたのは4月7日でした。和解成立時にも破産管財人から裁判所に和解調書を読み上げないように要請があり、その後も東京ユニオンや弁護団に売却金が入るまでの和解内容を公表しないように度々要請がありました。団体交渉の過程で破産管財人から3千万円の提示があった際に森本氏が支部組合員に携帯電話等で知らせたところ「3千6百万の提示があった」と事実に反する情報が流されたことがあり東京ユニオンも情報漏洩について懸念していました。そのため、裁判や労働委員会の期日に懲戒請求者らを含めた支部組合員が多数集まった場で東京ユニオンや弁護団から情報管理のために、具体的な和解金額が出せないことを再三説明しました。
(2)東京ユニオンが5割(6割という風評もあり)の解決金を得たという悪意に満ちた宣伝があります。実際は1億2千5百万円の解決金の内、東京ユニオンが出費した諸費用を闘争積立金に戻した2千万円+若干の事務経費を取得しただけであり(総額で16%強)、事実無根の悪宣伝です。懲戒請求者らは、京品ホテル闘争の経過を歪曲して職場再建資金にあてられた4千万円も含めて9千万円を個人に配分すべきと主張するために5割ないしは6割を東京ユニオンが取得したと論難しているにすぎません。東京ユニオンに支払われた7千5百万のうちの4千万円を懲戒請求者らが組合員個人に配分するよう要求する根拠は何もありません。
(3)すでに述べたように東京ユニオンは「原告に支払われる5千万円」について、全額を原告組合員に支払われるものとの前提で、数回の支部会議(懲戒請求者の森本氏が出席した)の議論を経て配分案を作成しました。その際に森本氏から反論は何もありませんでした。京品ホテル闘争を指導した責任制から東京ユニオンが最初の配分案を作成するのは当然であり何も問題はありません。原告に支払われる5千万円の配分については支部組合員や訴訟を提起した加藤晋介弁護士の意見を反映させて修正を行いました(加藤晋介弁護士も「配分方法の問題だ」と発言していました)。
「組合民主主義」を持ち出していますが、京品ホテル闘争が最も困難な局面で闘争から離脱した懲戒請求者の大内・金本・佐藤各氏の配分が東京ユニオンの原案では少ないことを不満に思ったことがきっかけとなり、彼らが職場再建資金を「生活再建資金」と勝手に読み替えて個人への支払いを要求したが加藤晋介弁護士との事前折衝でも東京ユニオンが個人への配分に一切応じないと明確に示したために、今回の訴訟や懲戒請求に至ったことが事実経過です。「組合民主主義」には縁もゆかりもない愚劣な発想といわざるをえない問題です。
以上のように何が起きているのかは明白です。加藤晋介弁護士は提訴前の事前折衝でも突然「弁護団への懲戒請求」を叫び出し、裁判所での「和解交渉」が思いどおりにいかないとみると全国各地のユニオン等に事実無根の文書を送付するなど常軌を逸したと思われる対応をとっております。更に一部の労働関係誌がそれをそのまま一方的に転載するなど何のルールもわきまえない事態も起こりました。
東京ユニオンはスクラムを組んだ仲間たちと共に職場再建をはたした「フォーエバー707」を資本主義の危機の時代を闘い抜く希望のひとつとしても発展させていきます。
2011年11月17日
労働組合東京ユニオン 執行委員長 渡辺秀雄
※東京ユニオン機関紙GU11月号に掲載している同様の記事は、紙幅の関係から若干割愛しており、上記が完全版となります。
いよいよ京品ホテル闘争の第二ステージが開始されました。雇用確保と職場再建をめざして闘った京品ホテルの組合員が11月日15 日、新たな職場「フォーエバー707」を開店しました。南新宿の小さなダイニングバーですが、職場再建の第1歩が踏み出せたことを、喜びをもってお知らせします。
東日本大震災で震災便乗の派遣切りが再燃し、福島原発事故がすべての生きる者の命を脅かしています。ギリシャの破綻などが対岸の火事ではなく、働きたくても職がない、働いても暮らせない、希望を持って生き続けることが困難な時代に私たちは悪戦苦闘の日々を過ごしています。獲得した職場再建の第1歩は僅かな光ですが「希望」を育てあう場所にしようと組合員は全力をあげます。いっそうのご支援をお願いするしだいです。
ところで、その一方で残念なことに京品ホテル闘争を歪曲し悪意に満ちた主張を繰り返す代理人弁護士加藤晋介氏に主導され元組合員が起こした京品闘争弁護団に対する「懲戒請求」(請求者は大内・自称元「代表」、金本元支部長、森本支部元書記長、佐藤組合員の4名)や9千万円の「闘争解決金引渡請求事件」の裁判が進行しています。
改めて京品ホテル闘争の意義を確認しながら、京品ホテル闘争の成果である解決金すべてを懲戒請求者ら個人に支払えという不当極まりない「拝金主義」の要求に屈しない東京ユニオンの決意を皆さんにお伝えし、旧来に増してご理解とご支援をいただけるよう訴えるものです
1.雇用確保と職場再建が京品ホテル闘争の目的
(1)東京ユニオンと京品闘争弁護団に「感謝している」という懲戒請求者ら元組合員は、10年10月2日(東京ユニオン第31回定期大会の開催日)東京ユニオンから解決金を返還させることのみを目的に「旧京品ホテル闘争団」を結成しました。彼らの主張は①和解調書では「原告に支払われる5千万円」「利害関係人組合に対し、利害関係人組合との間の雇用の確保に関する紛争に関し建物明渡請求事件及び雇用の確保に関する紛争の解決金として7千5百万円の支払い」と明記されていますが、7千5百万円の内、訴訟に関わった費用(組合員には一切負担させず全額東京ユニオンが出費)や弁護団への成功報酬など3千5百万円を差し引いた4千万円+5千万円=9千万円を「旧京品ホテル闘争団」に引き渡し全額を原告団で分配させろというものです。懲戒請求者らは必要な訴訟経費等は認めるが、解決金全額は自分たちに配分されるものだと主張しています。
②「引渡請求」を意味づけるために東京ユニオンに対し事実無根の「弁護士法違反(非弁活動)」で報酬を受け取った、などを訴状に加え、訴訟を有利に進めるために、献身的に奮闘した京品ホテル闘争弁護団に対して、勝手に解決金を東京ユニオンに振り込んだことは弁護士の職務上の義務違反だと懲戒請求を併せて起こしたものです。
なぜ、和解調書で解決金の支払いが原告と利害関係人組合(東京ユニオン)に二分されたかは京品ホテル闘争の経過に深く関わっています。
(2)京品ホテル闘争は経営者が放漫経営で多額の債務を負い債権者サンライズ・ファイナンス(リーマン・ブラザーズの完全子会社)が債権を一本化して、ホテルを売却して債権を回収するために経営者に全従業員を解雇させようとしたことが発端となり、職場と雇用が奪われることに対抗する闘いとして開始されました。
唯一の債権者の外資ファンドが実質上の使用者として振舞っていたことが京品ホテル闘争の特徴でした。また、団体交渉によって廃業が強行された08年10月まで賃金を全額補償させ、退職金も十分ではありませんが大幅に上積みさせ就業規則では支払い対象ではないパートについても支払わせるなど労働債権はすべて支払われていました。そのため闘争は労働債権に依拠する闘いではなく「労働者を犠牲にした債権回収は許さない」というスローガンが示していたように、債権者(外資ファンド)が企てた、ホテル廃業・全員解雇を前提にした不動産売買契約によって労働者が解雇される、理不尽な債権回収を許さず職場と生存権を労働者が自らを守るための闘いでした。
東京ユニオンは何よりも職場の確保、職場再建を闘争の中心に据えました。これは懲戒請求者の金本元支部長が労働委員会の証人尋問で「お金の要求はしませんでしたけれども、当初からそういう話じゃないので、とにかく会社廃業を撤回してくれ、雇用を継続してくれ、その2点で要求を出しました」と証言していることでも明らかです。この方針は支部組合員に共有され、団体交渉や廃業後の自主営業、強制執行で排除された後の闘争でも一貫して維持されました。
(3)ところが、ホテルを廃業した場合、現行耐震基準によって再建築せざるをえませんが、京品ホテルの所在地では終戦直後の都市計画によってホテルのような恒久的建築物の再建築が不可能な状態でした。元の場所でホテルの再開ができないことは組合員に周知され、職場再建は①経営者及び廃業後はホテルの買受人に職場を確保させる②不可能な場合は職場再建のための費用を東京ユニオンが獲得する、いずれかの方法で実現を図ることになりました。
(4)職場再建を求める交渉は自主営業と並行して進められ、①京品ホテルの経営者に対し「資金を集めさせ別会社で店舗を営業させる」ことや金銭解決の提案には「職場再建の資金として10億円を要求」しました。②強制執行の根拠となった「建物明渡仮処分」では裁判官に東京ユニオンでも買い手を探していることを伝え、ユニオン・京品実業・買い手の三者で土地建物の扱いについて協議するよう申入れました。③強制執行によって自主営業が排除された後も債権譲渡の情報から弁護団が買受人を探し「債権の買受人が自ら組合員の職場をつくり、東京ユニオンにも解決金を支払う」もしくは「東京ユニオンが2億円から4億円の解決金を得て職場をつくる」交渉を模索しました。④債権がローン・スターに再譲渡された前後の09年6月から7月にかけ不動産業者数社からホテル売却の打診が東京ユニオン委員長にあり、いずれも2億円程度の解決金が支払われるものでした。これらの経過は支部会議や職場集会で組合員に報告し、職場再建の方針は組合員に了解されていました。その際に個別の組合員に対する個別解決金を要求すべきだとするような意見は全く出されませんでした。
2.再譲渡後の破産管財人交渉でも職場再建を追求する
(1)リーマン・ブラザーズの破綻によって京品ホテルの担保付債権はローン・スターグループに09年7月再譲渡されました。再譲渡によって使用者性が更に薄まり闘争はより困難となりましたが、ローン・スターに対し東京ユニオンは京品ホテルの土地建物を売却することで労使紛争を解決できる実質的な使用者だとして連日、解決要請や抗議行動を行いました。11月には団交を拒否するローン・スターに対し不当労働行為救済申立をし、ローン・スター側は東京ユニオンに対し「団交応諾義務不存在請求」を提訴し抗議行動等への損害賠償を求めてきました。
(2)東京ユニオンとの直接交渉を嫌ったローン・スターによって債権者破産が打たれ、破産管財人との団体交渉で事態の打開をはかることになります。
京品ホテル闘争が長期化し債権者破産開始決定がなされた10月末頃には支部組合員の多くが生活の維持などを理由に闘争から離脱せざるをえない状況となり、闘争継続のために12月から3月までの間、(東京ユニオンの乏しい闘争積立金を使い)闘争専従者7人を編成しました(懲戒請求者の森本元支部書記長も闘争専従者でした)。
闘争専従者の編成について懲戒請求者らは「支部の了解もなく勝手に人選した」「解決金を専従者に有利に配分した」と非難しています。東京ユニオンは個人加盟の単一組合で妥結権やストライキ権は執行委員長や書記長などの本部三役と執行委員会が有しています。東京ユニオンは闘争を担う責任から、懲戒請求者ら多くの組合員が闘争から離脱した状況を受けて闘争専従体制を打ち出し、人選についても責任を持たなければならないのは当然で非難される理由はありません(11月28日の懲戒請求者らが出席した支部会議で何の異論もなく闘争専従者について確認されています)。
(3)11月末から開始された破産管財人との団体交渉は委員長、書記長、ならびに輪番で闘争専従者が出席し(森本氏も出席していますので交渉の過程は懲戒請求者らも承知しています)20回行われました。
管財人交渉でも、東京ユニオンはホテルの再建、買受人による職場再建を要求しましたが管財人は受け入れず、金銭解決の意向を強く示しました。このため10年1月9日の支部会議(懲戒請求者の大内・佐藤・森本各氏も参加)で団体交渉の方針を金銭解決とし①京品支部組合員に対する賠償②組合員の雇用創出のための費用及び職場再建費用③東京ユニオンの権利侵害に対する費用の3点で要求することが確認されました。決定された方針は東京ユニオンが京品支部を結成した以降堅持した「雇用確保と職場再建」に基づいて出されたものであり、これまでの闘争経過を正しく反映したものでした。支部会議に出席した懲戒請求者らから何の異論も出されませんでした。
(4)管財人との団体交渉は極めて厳しい状況で推移し、最初に支部組合員への解決金として5千万円が決定しました。破産管財人は裁判所の決定とはいえ、自主営業が強制的に排除されたことに理解を示し、職場再建のための資金及び東京ユニオンに対する権利侵害への賠償、各訴訟を取下げ全体的解決をはかるために「建物明渡請求事件及び雇用の確保に関する紛争の解決金」として最終的に総額7千5百万円を利害関係人組合(東京ユニオン)に支払うことで合意しました。
和解調書で解決金の支払いが原告(組合員)と利害関係人組合(東京ユニオン)に二分されたことは京品ホテル闘争の経過からみれば当然であり、懲戒請求者らが東京ユニオンに支払われた7千5百万円の内の職場再建資金4千万円を組合員個人に配分するよう要求する根拠はまったくありません。ちなみに、東京ユニオンは5千万円については和解時から全額原告に配分されるものと考え提案しています。
3.「解決金の5割を取得した」「組合民主主義に反する」ことへの反論
(1)懲戒請求者らは1月29日、東京地方裁判所で和解が成立した際に「組合員に和解調書のコピーも配布されない、和解調書の読み上げすらなかった」と不満を述べています。
これは解決金が京品ホテルの土地建物の売却代金から支払われるために、和解成立前から成立及びその履行がホテルの土地建物が売却できるかどうかにかかっていました。支払われる解決金は京品ホテル闘争が社会的にも注目されたために、不動産の抵当権者、買受人、破産事件の裁判所らが強い関心を示し、高額の解決金が支払われる情報が漏えいした場合、不動産売却の話が壊れる危険がありました。破産管財人から東京ユニオン及び弁護団に対し、情報管理を厳格に行うよう強い申入れがありました。
1月29日の和解成立時にも履行日は和解調書に記載されず、和解金の支払い日は「売買代金が支払われた日から10日以内の被告(破産管財人)が指定する日」とだけ記載され、実際に和解条項が履行されたのは4月7日でした。和解成立時にも破産管財人から裁判所に和解調書を読み上げないように要請があり、その後も東京ユニオンや弁護団に売却金が入るまでの和解内容を公表しないように度々要請がありました。団体交渉の過程で破産管財人から3千万円の提示があった際に森本氏が支部組合員に携帯電話等で知らせたところ「3千6百万の提示があった」と事実に反する情報が流されたことがあり東京ユニオンも情報漏洩について懸念していました。そのため、裁判や労働委員会の期日に懲戒請求者らを含めた支部組合員が多数集まった場で東京ユニオンや弁護団から情報管理のために、具体的な和解金額が出せないことを再三説明しました。
(2)東京ユニオンが5割(6割という風評もあり)の解決金を得たという悪意に満ちた宣伝があります。実際は1億2千5百万円の解決金の内、東京ユニオンが出費した諸費用を闘争積立金に戻した2千万円+若干の事務経費を取得しただけであり(総額で16%強)、事実無根の悪宣伝です。懲戒請求者らは、京品ホテル闘争の経過を歪曲して職場再建資金にあてられた4千万円も含めて9千万円を個人に配分すべきと主張するために5割ないしは6割を東京ユニオンが取得したと論難しているにすぎません。東京ユニオンに支払われた7千5百万のうちの4千万円を懲戒請求者らが組合員個人に配分するよう要求する根拠は何もありません。
(3)すでに述べたように東京ユニオンは「原告に支払われる5千万円」について、全額を原告組合員に支払われるものとの前提で、数回の支部会議(懲戒請求者の森本氏が出席した)の議論を経て配分案を作成しました。その際に森本氏から反論は何もありませんでした。京品ホテル闘争を指導した責任制から東京ユニオンが最初の配分案を作成するのは当然であり何も問題はありません。原告に支払われる5千万円の配分については支部組合員や訴訟を提起した加藤晋介弁護士の意見を反映させて修正を行いました(加藤晋介弁護士も「配分方法の問題だ」と発言していました)。
「組合民主主義」を持ち出していますが、京品ホテル闘争が最も困難な局面で闘争から離脱した懲戒請求者の大内・金本・佐藤各氏の配分が東京ユニオンの原案では少ないことを不満に思ったことがきっかけとなり、彼らが職場再建資金を「生活再建資金」と勝手に読み替えて個人への支払いを要求したが加藤晋介弁護士との事前折衝でも東京ユニオンが個人への配分に一切応じないと明確に示したために、今回の訴訟や懲戒請求に至ったことが事実経過です。「組合民主主義」には縁もゆかりもない愚劣な発想といわざるをえない問題です。
以上のように何が起きているのかは明白です。加藤晋介弁護士は提訴前の事前折衝でも突然「弁護団への懲戒請求」を叫び出し、裁判所での「和解交渉」が思いどおりにいかないとみると全国各地のユニオン等に事実無根の文書を送付するなど常軌を逸したと思われる対応をとっております。更に一部の労働関係誌がそれをそのまま一方的に転載するなど何のルールもわきまえない事態も起こりました。
東京ユニオンはスクラムを組んだ仲間たちと共に職場再建をはたした「フォーエバー707」を資本主義の危機の時代を闘い抜く希望のひとつとしても発展させていきます。
2011年11月17日
労働組合東京ユニオン 執行委員長 渡辺秀雄
※東京ユニオン機関紙GU11月号に掲載している同様の記事は、紙幅の関係から若干割愛しており、上記が完全版となります。