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ゲイツとバフェット新しい資本主義を語る

2009-06-27 13:56:31 | Misc.
今日のフォトリーティングは1冊。『ゲイツとバフェット新しい資本主義を語る』です。累計173冊。
ビル・ゲイツは2008年1月のダボス会議で、資本主義の新しいあり方として「創造的資本主義」を提唱するスピーチを行いました。この本はそのスピーチと、自分の巨額の財産をゲイツ財団に寄付したウォーレン・バフェットを交えた対談、そして、第3部「経済の賢人たちが資本主義の未来を考える」で「創造的資本主義」のサイトに識者たちが寄せた文章が掲載されています。

 「創造的資本主義」とは何か。ビル・ゲイツは次のように語っています。
 「純粋な資本主義」では裕福な人のために働こうというインセンティブは高いが、貧しい人のためい働こうとするインセンティブは低い。人間の本質的な力として利益を上げようとする力と他人を思いやる力があるが、後者は慈善活動や政府支援によって実践されているが、世界の貧困を解決するには資金がたりない。そこで、収益を上げつつ貧しい人々の生活を改善することができる修正された資本主義=創造的資本主義が必要となる。その活動を継続するには利益インセンティブとは異なる市場インセンティブ=評価
を用いるべき。創造的資本主義は、利益と評価という2つのインセンティブにより、自己の利益を追い求める力と他人を思いやる力を同時に刺激するシステムである。

 ビル・ゲイツはこれまで行われている創造的資本主義の具体例として次の5つをあげています。
①慈善行為 ②貧しい国々に存在しているが十分に活用されている市場の開拓 ③段階的価格設定 ④政府による市場インセンティブ ⑤ボノ・モデル(RED:商品が売れるごとに価格の一定割合を寄付する)。

 この「創造的資本主義」の概念はビル・ゲイツならではの非常に非常に高い視点から発された「思想」レベルの段階にあるもので、スピーチでは噛み砕いて説明されていないし、ビル・ゲイツ自身も、特に「評価」モデルなど具体的な内容は思考中のようで、まだまだ理解しにくいところがあります。その名前も「創造的資本主義」とあたかも従来の資本主義が「創造的」でないような感じもして、そのため第3部で一部の「賢人」達からの容赦ない批判に晒されています。

 私が解釈するに「創造的資本主義」は従来のCSR(企業の社会的責任)論を超えた新しシステムを提唱するものだと思います。CSRと10年以上前アメリカで盛んになった考え方で、社会的責任を果たす企業は社会の尊敬を集め、いずれ収益、株価の上昇を得られるというものです。日本でもアメリカではやっているから、あるい他者がやっているからということで多くの企業が取り組んでいます。ただ、たとえば「共生」という立派な理念を掲げた「CSR先進企業」が、経済危機に際しいわゆる「派遣切り」問題を引き起こしており、その理念の底の浅さを露呈しているようです。
 
 おそらく、ゲイツはそういった利益につながるからCSRをやるというのでは、もはや地球の貧困の問題は立ち行かないところまで来ている、資本主義自体が世界の貧困を解決することを内包するものに変わっていかなくてはならないということを考えているのではないかと思います。

 しかし、それはなかなか理解しされにくく、第3部では「賢人」たちがいろいろと批判しています。特にアメリカの右翼、新自由主義の立場の人たちからは、企業には株主からの受託者責任があり、それは利益の最大化であり創造的資本主義はそれに反するという非常に原始的は意見や、途上国への援助は企業が利益を上げその金で慈善活動をやった方が効率的だ。ビル・ゲイツだってマイクロソフトで儲けた金でビル・ゲイツ財団を作っているじゃないかとか、対外援助は途上国の腐敗した支配者を延命させ改革を遅らせるだけだ等々。私の感覚から言うとこいつらどこが「賢人」なのかと思うような批判が散々書かれています。流石資本主義の本場アメリカという感じです。
 
 創造的資本主義にはまたまだ学ぶべき、考えていかないところはたくさんあります。しかし目指すべき方向性としては正しいと思いますし、新しい指導原理として深まっていくことを期待します。

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