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EUの真価試すウクライナ(社説)

2014年02月24日 11時54分09秒 | 保管記事

日本経済新聞
 

  記事の紹介です。


 

 

EUの真価試すウクライナ(社説)

 

ソ連崩壊以後最大の転機

 


 ベルリンの壁崩壊から25年。欧州には再び革命の響きと激情が広がっている。1989年にはベルリンの壁崩壊が冷戦の終結を告げ、中・東欧の大半がソ連の覇権から逃れ、平和裏に欧州連合(EU)加盟に向けて足を踏み出した。ウクライナの反乱劇はまだ初期段階にすぎず、さらなる展開が待ち受ける。だが、89年の画期的な状況と比べても、今回のデモの歴史的意義は無視できない。これはウクライナ、EU、ロシアにとって計り知れないほどのチャンスであり、危機でもある。ソ連崩壊以来最大の「欧州の時代」到来を告げているからだ。

 


デモ参加者が治安部隊に狙撃され
亡くなった場所に置かれたシールドと花。衝突で82人が死亡した(23日、キエフ)=AP

 


 ウクライナの革命的な事態の展開とヤヌコビッチ政権崩壊について考えるには、それが同国と国民4600万人にとってどのような意味があるかを考えることから始めるべきだ。同国は91年に崩壊直前のソ連から分離し、核兵器を放棄して円滑に独立を果たした。特に2004年のオレンジ革命以降は民主化への期待が高まった。だがその後、同国は腐敗した指導者に率いられ、今や経済破綻の瀬戸際に追い詰められている。親ロシアのヤヌコビッチ政権が能力不足で崩壊したことで、ウクライナにはしっかり機能を果たせる民主主義国家に転換する新たな好機が到来している。

 

■ウクライナの取り込みは欧州の成果に

 

 もっとも、ウクライナの革命の政治的影響は国内だけにとどまらない。EUとロシアの間に位置する同国は四半世紀間、ロシア政府と西側の地政学的対立の焦点になってきた。08年に当時のブッシュ米大統領はこの対立が西側に決定的に有利に傾くよう試み、旧ソ連のウクライナとグルジアを米国が率いる北大西洋条約機構(NATO)に加盟させようとした。ロシアのプーチン大統領はこれに力で対抗。NATO加盟を阻止し、グルジアに侵攻した。だが、今回の革命は欧州の断層上にあるウクライナの立場を再考する機会となっている。ロシアに警戒感を抱かせずにウクライナを欧州の経済・政治コミュニティに引き込めれば、欧州の価値観やEUの国際的地位にとって大きな成果となるからだ。

 

 だが、こうした展開の実現にはプーチン大統領の協力が必要だ。ウクライナの状況が特別な好機であり、危機でもあるのはこのためだ。プーチン氏がロシアの大国としての地位復活という懐旧的ビジョンを抱いていることに疑いの余地はない。その中心となるのが旧ソ連圏で地域経済統合を進める「ユーラシア同盟」だ。どんな形であれウクライナを西側に奪われれば、この計画は頓挫してしまう。ロシアとウクライナの何世紀にも及ぶ歴史的つながりを考えれば、ロシア政府内ではこれは打撃だとみなされることになる。このため、プーチン氏はウクライナの路線転換に同意するどころか、壊滅的な被害を同国に及ぼす戦争に陥れる恐れがある。

 

 

 

 米欧首脳の責務はウクライナがこうした展開をたどるべきではないとロシア政府を説得することにある。ロシアとEUに挟まれた多民族国家のウクライナが欧州でいかに特別な立場を手にすることが可能かを詳しく説明しなくてはならない。完全に独立し、ロシアとEUの双方に敬意を抱き、緊密な経済関係を構築するというウクライナの民主的国家ビジョンを明らかにすべきだ。こうしたビジョンの枠組みでウクライナはEU加盟への長い道のりを歩み始めることが可能になる。

 

■最高レベルの政治指導力が必要

 


「ソビエト秘密警察の碑」
の破壊を試みる反政権支援者(23日、キエフ)=ロイター


 ウクライナの民主化という共通の国際ビジョンを構築することは西側外交の急務だ。これには最高レベルの政治指導力が必要となる。オバマ米大統領には緊迫感を持った行動が必要であり、後方から指揮を執ろうとする性向を克服しないといけない。米ロ政府の関係は良く見ても不安であり、今こそ最高レベルで連携すべきだ。

 

 これらを全て実現するには3つのグループの指導力が必要となる。第1のグループはウクライナ国内のリーダーだ。野党はヤヌコビッチ氏の失脚を喜ぶことでは一致したかもしれないが、実際には主張が大きく異なる。野党勢力にはヤツェニュク元経財相や元ボクサーのクリチコ氏ら信頼できる主流派リーダーがいる。こうした野党勢力はオレンジ革命で活躍したティモシェンコ元大統領と共に、5月25日に指定された選挙が自由で公正に実施されるよう挙国一致体制で臨むべきだ。

 

 第2に、米欧や国際通貨基金(IMF)など西側は金融面で重大な責任を負っている。EUは昨年、ウクライナとの連合協定で債務危機を阻止する金融支援を提供せずに、交渉の余地のない提案を示す過ちを犯した。EUとIMFはこの経験から学び、ウクライナ安定に寄与する金融支援を早急に実施しなくてはならない。ウクライナのエリート層にまん延する腐敗など深刻な障害があるため、支援は条件付きにしていかなくてはならないだろう。それでも、西側首脳は東・北アフリカの民主化運動「アラブの春」で犯した過ちを避けなければならない。米国と同盟国は新たな現実に苦しむ改革後の政権への経済的支援について十分な想像力を働かせることができなかった。

 

■選択肢が限られるプーチン大統領

 

 最後に、プーチン氏には特別な責任がある。同氏には選択肢が限られていることに早急に気付いてもらいたい。1959年のハンガリー動乱や68年のチェコ事件とは状況が違うのであり、ロシア政府がウクライナの革命に武力介入すれば、ロシア軍は至る所で反政府デモと戦う羽目になる。

 

 

 

 プーチン氏はもっと陰湿な策略に訴えることも可能だ。06年や09年のようにウクライナへのガス供給を断ち切ったり、禁輸措置を講じたりすることはできる。だが、こうした策を講じても、ロシア政府が盟友に選んだヤヌコビッチ前大統領が失脚したという事実は変わらない。プーチン氏は新たな操り人形を探すだろうが、策略にたけた同氏のことだからウクライナをロシアの衛星国にする作戦は成功しないことに気付いているはずだ。ウクライナをずっと不安定にしておくのは政策ではなく、策略なのだ。

 

 プーチン氏にこの現実を受け入れる用意があるのか、それとも武力介入を検討しているのかはまだ分からない。だからこそ米国だけでなく、EUも含む西側の協調した対応が重要となる。この10年間、EUの国際プレーヤーとしての実効性はユーロ圏危機、経済緊縮策による政治的意志の低下、域内市民のEU統合への不満の高まりなどで打撃を受けてきた。だが、ウクライナの状況はEU域外に住む何百万の人にとってEUがどれほど重要かということを示している。

 

 過去数週間、キエフのデモ参加者にはウクライナ国旗だけでなくEU旗をまとう者もみられた。EUは民主主義、自由、そして不完全とはいえまずまずの統治を象徴する存在になっている。ウクライナ国民はこの1週間、より良い未来を求めてこうした普遍的な価値のために命を犠牲にする覚悟があることを示した。89年に欧米首脳や見識あるソ連のリーダーは新たな現実を認めた。歴史は繰り返すにふさわしい。

 

(2014年2月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 

(c) The Financial Times Limited 2014. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV24002_U4A220C1000000/?n_cid=DSTPCS013

 

 

 

  記事の紹介終わりです。

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