「志」の英語教育

英語教育実践について日々の雑感を語ります。

We Are What We Read.

2009-09-29 18:52:08 | 授業
いつものように7時前に学校に到着し、ごそごそと授業の準備などをしていたら、日課変更が生徒に伝わっていないことが判明した。ライティングの授業だったのだが、教材が揃わないまま強行するのもどうかと思い、リーディング教材のパッセージを使って読みを深めるための指導に急遽切り替えることにした。

教材は以下の一文。

As national boundaries gradually disappear in Europe, food has emerged as an important source of identity, giving a new twist to the phrase, "We are what we eat."

Slow Foodをテーマにしたパッセージの一部分であり、生徒は他の先生の指導ですでに学習済みなのだが、おそらく深くは読んでないだろうと踏んで問いかけたのである。グループ学習で意見を交換し読みを深めようという趣向。発問は以下のようなもの。

「We are what we eat. という表現は、もともとどのような意味だったのが、どのような社会の変化のために、どのような意味が付け加わったのか小学生にも分かるように説明しなさい」

この教材は昨年も使ったのだが、実は、失敗して痛い思いをしたのだ。そのときの自分の間違いを含めて、読解は必ずしもリニアに進むものではないことを伝えるつもりだった。

机間巡視を始めしばらくは曖昧な議論が続いたが、徐々に焦点は絞られて幸運にも私の間違いと同じ方向で意見を交わしているグループを発見。さっそく、クラス全体に議論を紹介して貰った。曰く、

「以前は食べるものがその人の所属する階級を表していたが、ヨーロッパの国境が曖昧になったため、食べ物がその人の出身地を示すようになった」

ロジックからすれば十分納得がいくが、現実にはこれは正解ではない。「アメリカでよく使われる表現なんだよ」などというヒントを与えると、首尾よく生徒の方から正解が出てきた。

「もともとは、『健康状態や体型が思わしくないのは暴飲暴食の結果であり自業自得である』という意味だったが、ヨーロッパではEUの成立などが原因で、各国毎の個性が薄くなり、『土着の食べ物は独自の文化の側面としての重要性を増すようになった』という意味でも使われるようになった」

訳すだけであれば「ヨーロッパにおいて国境が徐々に消えて行くにつれ、食べ物はアイデンティティの重要な担い手として頭角を現すようになり、私たちは私たちが食べるものであるという表現に新しい意味が加えられるようになった」でおしまいになる。

ここで終わるなら、EUのことだけでも頭に浮かべばまだましな方。メタボやマリー・アントワネットのことまで思いを巡らせて初めて、知的好奇心がくすぐられるリーディング活動と呼べるのではないだろうか。

にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ

神の言葉

2009-09-29 07:27:14 | 研修
中嶋先生の講座、行って参りました。

内容は関大のものと大きく異ならなかったが、2回目だけに新たな発見や気付きがあったのが収穫だった。お話の柱は、言葉から「場面を引き出せ」ということだったと解するが、個人的には今回はマネージメントの工夫の方により惹かれた。

しかしながら、それ以上に感じたのは参加された皆さんの入れ込みよう。「中嶋先生や田尻先生の実践を研究し、それを真似て少しでも近づけるように努力している」といった趣旨の言葉があちこちで聞かれた。

会場に御著書を持ち込んでいた参加者も多かったように思う。(私もサインを貰おうと思って持ち込むつもりでしたが、自宅の食卓に置き忘れてしまっていました)

中嶋先生や田尻先生の「神」性の検証をするつもりはないが、たとえ本物であったとしても、神にすべてを委ねるのならそれなりの覚悟が必要だ。criticalな目を数%でも残しておくことが自分の進歩につながるはずだと私自身は思っている。

さて、研究協議の中で好奇心をかき立てる発問の工夫といった話題から、たまたま「英語教師のための発問テクニック」に言及したのだが、その流れで「他にためになる書物はないだろうか」という話になった。

ひとしきり考えたのち、結局自分からは何も勧めないことにした。思い当たる本は色々あるが、何に関してのどのような本がお望みかは、人によって変わってくるので、名前を出すのが躊躇われてしまったのだ。

にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


県総合教育支援センター研修講座

2009-09-26 16:54:04 | 研修
いわゆる県の研修所による講座にはこれまでにかなりお邪魔してきた。参加した講座の講師は投野由紀夫先生、三浦孝先生、伊東治己先生、北尾謙治先生など錚々たる面々である。

さすがに最近は「必ず参加」とはいかないが、それでも「この人は」というときは何をさしおいても駆けつけたいわけである。

日頃、大枚叩いて街まで繰り出さなければ聞けない人の話が地元で、無料で、仕事として、交通費まで出していただいて、聞けるのだから、利用しない手はないというものだ。

というわけで、今年度は中嶋洋一先生。

定員が中高合わせて十数名ということだったので、とても当たらないだろうと思っていたのだが、希望者はそれにも満たなかったよう。運がよいというべきか、現状が如実に表われているというべきか・・・。

昨年の関西大学で聞けなかったことをしっかり聞いてこようと思っています。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ

和文英訳の問題集の問題(わざとです)

2009-09-26 15:21:27 | ライティング
受験向けの英作文教材はあまり売れないらしく、関係の出版社にとってこの分野は鬼門だったりするようだ。学校向け教材として送られてくるサンプルを見ても種類は少なく選択の幅は狭い。

そんな中で、以前にも述べた某定番(にならざるを得ない)問題集を使っているのだが、そこで見た問題から再び気付きを。

「与えられた状況に不満を言っても始まらないし、不平を言う人は生涯その状況から抜け出せないだろう。生きるとはその自分だけの特別な状況を生かして、そこから自信のある己を作り出すことだ」

この問題に対する模範解答として与えられたのがこれ。

Complaining about your circumstances won't get you anywhere. In other words, as long as you keep on complaining about them, you won't try to improve them. But if you are to live more positively, you should make the best of your given circumstances and creating a confident self from them.

もし、課題の和文からこの模範解答がそのまま書ける人がいれば、その人には英語力を超える能力があると言ってよい。おそらく、日本語を「意訳」して英文を作ったものなのだろうが、これを和訳したところで元の和文にはとてもなりそうにない。

これを「正解」として与え、これに沿って生徒に自分の訳例を「訂正」させるくらいなら、英訳させたりせずにハナから英文を与え丸暗記させた方がまだ指導として筋が通っているような気がする。

高校生に書けると私が想定する範囲で英訳してみたものが以下である。

You cannot get anywhere by complaining about your circumstances. Those who complain are not likely to get out of them all through their lives. You have to make the best of your circumstances and try to have confidence in yourself.

入試で点が稼げるかどうかという視点から論じるつもりはない。が、和文英訳指導に際しては、丸腰のまま英訳をさせるなら、到達できそうなゴールを示してやらないと、「英作はやっても無駄」感を生徒の中に広げてしまうだけにはならないだろうか。逆に身の丈にあった解答を示してやれば、直すべき致命的な間違いが浮き上がり、「使える」文法力がつくこと請け合いである。

おそらくは、ネイティブスピーカーが解答作成に加わる段で、より自然な英文への追求から、和文との乖離が広がるのだろう。しかし、英作文を指導する立場からすれば、これ見よがしに無理めな解答を提示する問題集は使いにくいことこの上ない。英作の教材はぜひ生徒目線で作って欲しいものである。その意味では、竹岡先生の教材はかなり優れていると感じている。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


センター対策早朝勉強会秋バージョン

2009-09-15 17:49:27 | 授業
今年、3セット目のセンター対策勉強会を再開。今回は受験生の皆さん大好きな第2問Aの四択問題である。

一般にここの問題は「文法問題」と捉えられることが多いが、実際には語法、語彙が多く問われるようになっている。大昔の問題や古い問題集では「適切?」な対策はできそうもない。

普段から文法中心の四択問題をやっても駄目だとは言ってきたが、今回はより信憑性を高めるために昨年、一昨年のセンター試験問題と今年行われた6月末のA社のマーク模試、8月半ばのB社のマーク模試を分析して提示した。

自分で具体的に数値化したのは初めてだが、普段から指摘している傾向が綺麗に出ている。


2009 

問 1 文法問題(時制)ただし、文意がとれないと正解が出せないように工夫してある。
問 2 文法問題(準動詞:動名詞):remember ~ing
問 3 語法問題(名詞と前置詞のコロケーション):in the direction
問 4 文法問題(spend 時間 ~ing)「時間」をHow longの疑問文にして工夫。
問 5 文法問題(不可算名詞の用法):物質名詞としての「たまご」
問 6 語彙問題(イディオム)比較的簡単なイディオム。:close down
問 7 語法問題(名詞と形容詞のコロケーション):traffic と light
問 8 語彙問題(動詞の意味と使い方):「禁止する」 
問 9 語彙問題(名詞の意味と使い方):「運賃」
問 10 語彙問題(見慣れた動詞の意外な意味):run

文法:4問、語法:2問、語彙:4問


2008

問 1 語法問題(名詞と形容詞のコロケーション)audienceとlarge
問 2 語法問題(動詞と名詞のコロケーション)riskとtake
問 3 語彙問題(動詞の意味と使い方):「書いてある」say
問 4 語彙問題(動詞の意味と使い方):「規則を守る」observe
問 5 文法問題(接続詞の用法)関係詞が使えそうで使えない。センターでは頻出
問 6 文法問題(仮定法)比較的簡単な仮定法問題。
問 7 語彙問題(動詞の意味と使い方):「含む」
問 8 文法問題(疑問詞の用法)比較的簡単 
問 9 語彙問題(口語的定型表現):Why don't you ~?
問 10 文法問題(時制+受動態)正答を出すためには文意が必要。

文法:4問、語法2問、語彙:4問


A社

問 1 語彙問題(イディオム)やや難の名詞中心の表現。a man of his word
問 2 語彙問題(動詞の意味と使い方):「許す」
問 3 文法問題(準動詞・動名詞)need~ing 工夫がしてあり自動的には答えにくい。
問 4 語彙問題(動詞の意味と使い方):「できた」
問 5 語彙問題(形容詞の意味と使い方):「無関心な」
問 6 語彙問題(動詞の意味と使い方):「あいそこなった」
問 7 語彙問題(動詞の意味と使い方):「(~の日に)あたる)
問 8 文法問題(準動詞:分詞):オーソドックスな分詞の使い分け。look+感情系過去分詞 
問 9 文法問題(関係詞):文意を考え適切な接続表現を選ばせる問題。The day will come when~
問 10 文法問題(前置詞):前置詞の使い方に関する問題。文意が必要。「~にしては」

文法:4問、語彙:6問


B社

問 1 文法問題(自動詞・他動詞)定番の自・他動詞に関する問題。「結婚する」
問 2 文法問題(比較構文):定番の比較構文に関する問題。the more ~, the more …
問 3 語彙問題(形容詞の意味と使い方):「生きた」
問 4 文法問題(分詞構文):定番の分詞構文に関する問題。
問 5 文法問題(仮定法):定番の仮定法に関する問題。仮定法過去完了
問 6 文法問題(接続詞):文意から正しい接続表現を選ぶ問題。by the time …
問 7 文法問題(関係詞):関係形容詞に関する問題
問 8 語彙問題(動詞+名詞のイディオム):lose face
問 9 語彙問題(動詞+副詞のイディオム):take over
問 10 文法問題(間接疑問):定番の間接疑問に関する問題。

文法:7問、語彙:3問


以下のような対策の基本的な考え方を示してオリエンテーションを締めました。

1 配点は20点。こだわりすぎるな。8問とれれば十分OK。
2 1問あたりの制限時間は30秒。それ以上はかけるな。
3 問題は、文法4問(うち少なくとも1問はマイナー分野)、語法2問、語彙4問(うち少なくとも1問はイディオム)
4 文法問題はひと捻りあり。正答するには「読む」こと。
5 文意のない文法問題は文字通り「意味がない」
6 似た意味を持つ語の使い分けを意識すべし。
7 見慣れた語の意外な意味に注意すべし。
8 コロケーション関係の知識を増やすべし。
9 文法が不要なわけではない。文法力はあくまで重要な基礎力の一つ。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ


地デジの威力

2009-09-11 19:00:07 | その他
前回の書き込みはテレビ周辺をガチャガチャ弄くっているときに思い出したもの。それというのも、初代のDVD(HD)レコーダーが壊れてしまったのである。その下にはずっと前に潰れたビデオデッキも修理しないまま放ってあって、自分の録画歴に思いが及んだのだ。

ビデオデッキもクローズドキャプションでずいぶん勉強させて貰った。そのころは家族がなかったからレンタルしたビデオも好きなだけ英語字幕で見ることができた。帰国するALTにsitcomを収めたビデオを譲り受けたりもした。

定番のFriendsやFrasierもよかったが、当時一番のお気に入りだったのはSeinfeld。コメディはとことんくだらないのがリラックスできて好ましい。

さて、新しいレコーダーはブルーレイではないものの、地デジハイビジョン対応で初めて我が家にデジタル放送が入ることになった。例によって通販で買ったので、配線には結構手間取ったが、地デジ放送が受信された瞬間の映像の綺麗さにはたまげました。こんなことならもっと早く買っておくべきだった。

というわけで、ハードの方はかなり満足のいくものが揃った。テレビをつけるのが楽しみなくらいである。それにつけても残念なのは、昔の貴重なソフトが旧メディアで使えないこと。テクノロジーの進歩もあまり速いと不便である。

こどもと同じで、Don't grow up too fast. といったところだろうか。


にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ

英会話上級 インタビューを楽しむ

2009-09-08 18:14:47 | その他
90年代の半ばから数年間、NHKで「英会話上級インタビューを楽しむ」という番組が放送されていた。政治家や学芸員、ビジネスマン、NPO代表など様々な立場の人にKate Elwood氏などがごく普通に英語でインタビューをするというものだった。

http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200999404130130121/

ESL向け色合いが濃いアルク社EJのものに比べ、こちらのインタビューはスピードも語彙レベルも高めの硬派。それでも、スクリプトつきのテキストがあったから当時の自分にはとても良い教材になった。この番組で身につけた表現はかなりある。

内容もよかった。印象に残っているのは、数学者(大道芸人?)ピーター・フランクル氏。数十カ国語を操る氏は、「言葉を学ぶのに正しい方法はない。自分にあった方法で学んだらいい」という内容の発言をされた。もちろん英語も氏の母国語ではない。

いつまでも続いて欲しいと願っていたが、この番組が終わってからもう10年が経つ。その後の上級者向け番組はクオリティはともかくレベル的に今ひとつ。視聴者ターゲットを変えた(適正化した)ということだろう。

当時VCRにも録ったりしていたが、テープは痛むし機械も壊れて使用不能。その後、DVDレコーダーを購入したものの、番組の録画には間に合わなかった。

NHKの外国語講座は毎年リニューアルされ、過去の年度のものを再び目にする機会は非常に稀なようだ。「インタビューを楽しむ」のような貴重な番組にアクセスする手段が今はもうないのは残念な限りである。

にほんブログ村 教育ブログ 英語科教育へ