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OSS日本本土に対する地震心理戦計画 (2) 本文全訳

2013-03-05 10:26:33 | 歴史・考古学

OSS日本本土に対する地震心理戦計画 (全訳)

序文

「日本は社会的緊張の国である・・・・・・
「緊迫時あるいは危機時における(日本の)感情的不安定性、またアジアの国々の平和的な人々に対して向けられた日本軍の歯止めなき残虐行為は、日本の社会が、自己表現や合理的な野心や批判的な知性などのための健全なはけ口が事実上否定されている病的な社会であることの証左にほかならない・・・・・・
「日本の社会史を繙けば、日本民族が社会の規制と抑制の崩壊に対して、熱狂の渦の中に自らを投ずることによって反応する、ということが分かる。それは例えば、徳川時代(1605年)において人口密集地で起きたし、最近では1923年、東京における大地震と大火災に引き続いて起こった熱狂的暴動がそうであった。」
以上の引用は、最近『極東調査:米国太平洋関係研究会議』において発表された『日本における集団ヒステリー』と題された論文からのものである。著者は E・ハーバート・ノーマン。日本に関する著名な権威であり、『日本における近代国家の成立』の著者である。

この論文の別の箇所で、彼は次のようにも指摘する。「多くの日本人の氷のような冷静さの裏にどのような神経症が、またどのような病的な熱情が隠れているかは、フロイト学派でなくとも想像できるだろう。」

それから彼は「日本人の社会的な振舞いの主要な特徴として考えられている、無表情で、感情を抑制した、禁欲的な日本」という一般的通念の暴露に取りかかる。彼は強調する、「これらの社会的な振舞いの表向きの顔が、こうした抑制が存在することの理由なのではない。むしろ、そういった表向きの顔は気質的な習慣であるよりは、自己防衛のためのカモフラージュのようにまとわれた、意識的に洗練された行動パターンであるのかもしれない。」・・・・・・ 

この論文の別の箇所において、彼は心理戦の持つ潜在的な威力について、われわれに一つの示唆を与えている。それは、単に群衆の間のこのパニック・コンプレクスを活性化させるためばかりでなく、日本という国を「よく統制の取れた国」から「国家の存続などよりも個人の生存により関心をもつ暴徒の群れ」に変えてしまうようなヒステリックな社会状況の招来を可能ならしめる心理戦である。

ノーマンはさらに書いている。「今日、国家警察の意志によって支配されている現代日本において、地域社会における厳格な社会統制、過酷な経済的搾取、学校における盲目的愛国心のプロパガンダ、そして神道の迷信などが、封建的な幕府の厳しい支配下で経験したよりも大きな重圧となって日本国民にのしかかっている。日本帝国主義の軍隊と政治機構が、敵のハンマーによって亀裂を見せ始めているので、集団ヒステリーの激しい発作があちこちで噴き出すということも無きにしもあらずである。」

これらの事実に照らして見れば、今この時こそ、日本本土に対する心理戦を強化するに時宜を得ているということは明白である。この目的のためには、日本国民のフラストレーションの元となるタガを締め上げる材料が必要である。

日本のラジオ放送から漏れ伝わってくる証拠がすでに十分にある。それらが示すところによれば、国民の士気の大規模な操作はこの国民のフラストレーションをうまく方向づけて放出することである。この事は戦争中の二つの内閣の解散において明らかである。即ち、サイパンが陥落した時と沖縄が侵攻された時の二つの内閣の解散は、日本の大衆を宥めるために行なわれたのである。これらの動きの背後にあった真の狙いは、増大するフラストレーションに新たな希望を与えることであった。この方法は、かつては確かだと信じられていたリーダーを捨て、今度は本当に確かだと喧伝される別のリーダーを据えるという手口である。しかし、言うまでもないことだが、いくら日本国民でも、すぐに化けの皮が剥がれてしまう確かなリーダーを次から次へとすげ替えることよって永遠に騙し続けることはできない。

日本人の士気のバロメーターが低下していることを示す証拠が積み上がっている。米軍による沖縄侵攻の後に小磯内閣が解散し鈴木首相が初めて公式に声明を出した際に、その一端を覗い窺い知ることができる。彼は沖縄上陸の結果として、目下の日本が直面している危機の深刻さを強調した。米国が日本の内部防衛圏に踏み込んだという事実を日本の上層部がいかに深刻に受け止めていたかは、東京読売報知(軍国主義者グループの代弁者)の最近の社説に現われている。その社説は、沖縄の喪失は「戦局を盛り返そうとの望みを日本から完全に奪うものであった。沖縄の喪失は日本の防衛線の崩壊を意味するだろう」と認めている。

読売報知のような御用新聞からのこのような社説のコメントは、ヒステリックな恐怖の種がすでに政府系の情報源においてすら芽を出していることを露呈しているようにみえる。

こここまでくると、「いったいどのようにすれば日本の大衆に潜在するパニックのエネルギーに十分な圧力をかけて、それを顕在化、つまり狂気のヒステリー状態に転換させることができるか」ということが次のテーマとなってくる。

そしてこれは物理的戦闘による破壊と自然の諸力による破壊とを連繋させた長期的な見通しに基づく戦略的軍事行動によって可能であると思われる。

このような心理戦軍事行動は、日本に対して科学的爆破をしたのは、彼らの絶滅を早めるために自然の諸力を利用する意図を有していたためであるということがわかるように計画されることになるであろう。

 


それは実行可能か

ここで次のような問いが発せられるであろう:科学的に言って、既知の地震地帯における正確な位置での大規模な爆発が断層地帯内に、われわれの狙いに沿った破壊的な条件をもたらし、その結果、目標地域に悲惨な地震を引き起こす、ということは果たして可能だろうか? ここでの戦略的な目的は、目標地域における軍事産業の生産を阻止すること、あるいは強力な防衛部門としての機能を無力化することである。

この質問に対する回答は、部分的には N.H. ヘック(米国沿岸測地調査会の次長)によって与えられている。彼は『軍事的観点から見た日本の地震』と題された小論文中の「爆破による地震誘発は可能か」という章で次のように述べている。

「この質問は今まで何度か問われてきたもので、真剣な回答が与えられて然るべきである。必要なものは、起爆力だけである。そしてこれによってできることは、自然に起こるはずの地震の発生を早めるだけであり、その発生時刻を設定することだけである。しかしながら、もしその爆発が、厳密に適切な時間と場所に設定されるならば、正確な結果をもたらすことも考えられる。その爆薬は非常に大きなものでなければならないだろうし、その設置場所を知ることも必要であろう。そしてこの設置場所も、日本の外からでは全く決定不可能である。」・・・・・・

この“爆発的なメッセージ”を「いつ」「どこで」(最も時宜を得た時間に)落とすか、これこそが、この問題における最重要ポイントである、と彼は強調する。そして彼は付け加える──しかしこれは現在、マニラ、上海、そしてバタヴィアの地震観測所を失ったことによって難しくなっている。彼は指摘する ──これらの地震観測所は、発現する起爆力の強度を予測するためのデータの提供源として必要である。必要となるデータは、日本の国土における地質変化に関するものと、小型地震と同時並行的に起こる地質変化に関するものなどである。小型地震はしばしば大型地震に先行するからである。これを報告するには時宜を得ているが、以上の指摘は、米国によるマニラ奪還、ならびに優に日本固有の領土内の沖縄諸島の占領に先立ってなされたものである。

今では、あたかもこれらの指摘は最早妥当性を失っているかのような印象があるし、また必要なデータを収集するというこの仕事も、今や可能性の領域に入ってきたかの感がある。

こうしたデータの入手の可能性とともに、「この大型爆薬を何処に設置すべきか」という問題が立ち上がってくる。カリフォルニア大学の地震学研究所の P. バイアリー教授はこの質問に答えて、時と場所に関する推測の範囲を絞り込んでいる。地球物理学研究所の L. H. アダムズ教授への手紙の中で彼は書いている。「我々は、外からの何の助けもなしに一年以内に自壊する運命にある断層上のその場所から少なくとも5マイル(8km)以内に、爆薬を仕掛けなければならないだろう」、そして「もし我々が90年以内に自壊する運命にある断層上のポイントから1マイル(1.6km)以内の地点にそれを仕掛けることができるならば、地震を誘発できるかもしれない。」

繰り返しになるが、どの断層が壊れやすいかを決定する作業は、各地の地震観測点から得られる、より詳細なデータに依存している。

それぞれの分野からのこうした著名な科学者達の指摘は、強力で正確な爆破によって潜在的地震状態を「誘発させる」ことは現実的に可能であるとする証言である。この実現可能性は、さらにパーマー物理学試験所で実施された実際のテストによっても実証されている。こちらでは、高性能爆薬が、地震状態に対して持つ効果の観点から研究された。

潜在的地震状態を誘発させる可能性を、ファンタジーの世界から科学的な実現可能性の領域に持ち込んだのは、まさにこの研究の成果である。

爆薬が引き起こし得る影響についての知識と、地震観測点から得られる地震学上のデータがあれば、われわれには、優にその科学的な現実可能性の領域内で「パニック心理戦略」を引き起こすことができる相当の可能性があるように思われる。そしてもし、我々が「地震を引き起こすことによって日本をさらに苦しませる」という仮想的な計画を遂行するために日本固有の領土内の戦略上の重要地域に科学者達を既に配置済みであるという事実が日本で明るみになることがあるならば、それはそれで日本国民の疑心暗鬼をいや増して、彼らのパニック・ヒステリーを募らせる鬼畜的な要素がもう一つ加わることになろう。

同様に、もしマニラと沖縄にいるこれらの科学者達の存在、あるいは中国にいる我々の工作員の助けを借りて日本の領土内に潜入した科学者達の存在が知られるならば、それはこのような鬼畜的な計画が存在するという事実を日本の大衆にも受け容れさせるだけでなく、日本の科学者達に対する挑戦ともなるであろう。

この鬼畜的な計画はまた、日本の当局に、対処せざるを得ないもう一つのジレンマを与えるであろう。何故なら、このような計画は、もし明らかになった場合には、軍需工場を地下に造っていることに意味が無くなり、日本の当局にとっては、地上に移した機械設備と労働者達を通常の空爆から防衛する必要が余計に生じるからである。最下層の労働者にしても、このような人工地震によって、自分が地中に閉じ込められて生き埋めになる運命を想像することは難しいことではない。この局地的なヒステリーに陸上の工場群の労働者達の恐怖を加えたまえ。造船所の労働者達の恐怖を加えたまえ。その貯水を田園地帯に流してしまうことになる巨大水力発電所ダムの人々の恐怖を加えたまえ。そして最後に、家庭にあっても四六時中彼らの頭の周りを締め付けている一般的な緊張を加えれば、われわれはどんなタイプの物理的戦闘によっても真似できないパニック・ヒステリーを起こすための一つの心理戦の公式を手に入れることになる。

 

日本本土に対するパニック心理戦構想

目的:
ネガティブで破壊敵な奔流を引き起こすこと:これは、日本国民をヒステリックな暴徒の群れに変容させるための条件である。もはや社会上層部のどんな指導力も信じられなくなり、カリスマ的な指導力を失った国家の存続などよりも個人の生存により関心を持つようにさせるための条件である。

我々の目的は主として、統制のとれた国家体制を破壊することと、個人的な生存本能の奔流をその体制に向けて激突させることである。この心理戦軍事行動は、もちろん、日本に対する物理的戦闘の増大と連携して行なわれるように時間調整されなければならない。物理的攻撃が激しさを増すことによって、心理戦を無理なく展開する下地が整うことになる。われわれはこの機会を逃さないように準備していなければならない。そして、その時がきたなら、日本を物理的に激しく破壊することによってますます募る彼らのパニック傾向に、いや増して心理的圧力を加えなければならない。

方法:
この目的は、日本国民の生来のパニック・コンプレクスに対する圧力を強めていくことで達成される可能性がある。既に日本の国民を締めつけているフラストレーションのタガのどこかで亀裂が走りそうなくらいに締め上げられている明白な徴候が数多くある。参照可能な歴史上のデータによれば、日本は社会的緊張の国であり、その歴史にはこうした社会的緊張のために激しく社会的に爆発した事例がいくつかある。

手段:
日本国民の間に社会的なヒステリー状態とパニック状態をもたらすことにおいて、二つの顕著な要因が歴史的に大きな役割を演じてきた。それは火事と地震である。これらが大きな経済的苦境の時期に起こった時、しばしばその後に社会的混沌が生じた。われわれはもう経済的な苦境という要因が与えられていることを知っている。火事という要因はわれわれの焼夷弾による広範囲の爆撃によって供給されつつある。さてここに、われわれが利用すべきもう一つの別の要因が残っている。それは地震という要因である。

状況:
地震学者達は日本が「地質学的な地雷」であると明かしている。地質図と地震変動の記録は、日本直下の地中が不安定な状態であることを証拠立てている。地中に相当な潜在的破壊力が隠れている。いったん触発されると、長い時代にわたって溜まっていた潜在エネルギーは解放され、再発を繰り返す地震波となる。この地雷は日本の歴史を通して間隙を空けながら激しく爆発し、地表の構造物を地面に倒壊させ、何百万もの命を犠牲にしてきた。

科学者達はさらに、強化された爆発によってこの地震の潜在エネルギーを誘発することが現実的に可能であることを明らかにしている。一流の大学や研究機関の物理学試験所で実施されたテストを通して、「通常の自然のトリガーの力」と「人間に引き起こせるトリガーの力」との類似性が実証されている。これらの科学者たち(地震学者たちと物理学者たち)は、この地質学的地雷の上に置かれる、その内部を効果的に起爆すべき様々なサイズの爆薬の効力を示す一覧表を作成している。

最近の原子爆弾の登場は、地震潜在エネルギーの誘発に関して、すでに確立されていた科学的な実現可能性にさらに大きな弾みを与えた。一つの原子爆弾の有する、通常爆弾に比して莫大な破壊力によって、地震潜在エネルギーの誘発の実現可能性は、さらに実用性の域に至った。

それはまた、原子爆弾の爆発力が地震層の地中深くで、解き放たれた放射能の結果として、地震波を発生させる可能性を示唆した。それは地震誘発の時間を早める可能性があるし、あるいはまた、それ自体で、各断層に対して平衡を取り戻す調整を直ぐに始めるよう強いる外圧を高める可能性もある。

原子爆弾の破壊力じたいに対する恐怖と、原子爆弾の放射性破壊力によって起こる地震への付加的恐怖とを、日本人の心の中において結びつけるというわれわれの心理学的計画が土台としているのは、原子爆弾と大規模な強化された爆破によって地震の潜在エネルギーを誘発させることが科学的に実現可能であるという事実である。

利用すべき媒体:

1)雑誌: 利用される全てのメディアに先行する下準備は、日本の雑誌であるかのように偽装された雑誌の中に似非科学的な記事を挿入するという方法である。その記事は、それが日本の科学者の手になるものであるとされた上で、「連合国の主要な目的は、彼らの爆撃をますます激化することによって悲惨な地震を引き起こすことである」などと主張するのである。その記事はそれから、「重爆薬あるいは特に新しい原子爆弾によって我が国の国土の地震潜在エネルギーを誘発させるなどということは、はたして実現可能か否か」という問題をめぐって論陣を張るのである。また別の偽造記事においては、日本の地震学者達の個人署名入りで、そうしたことの実現可能性について肯定したり否定したりしながら、地震に対するこの上ない恐怖を日本国民の心中に植え付けることになる。

2)ビラ: 偽造記事の出現の次には、ビラが登場する。そして地震が実際に起きた場合に講じられるべき対策に関する詳細な指示を与えることになる。これらのビラの中で、予想される地震のために必要な新措置を組み込むため、それまでの空襲対策規則が改正されることになると告知されるであろう。これらのビラは中国にいる我々の工作員達によって占領地域に配布できるであろうし、またあるいはB29から投下することもできるであろう。

3)ラジオ: 何らかの方法によって沖縄にラジオ放送局を設置することができるならば、利用することができるかもしれない。そこからならば中波を使い、日本の公的なラジオ放送であると見せかけた周波数の上で、一連の放送を日本に直接届けることができるであろう。隠密転覆工作部隊によって編集されたこれらの番組は日本国民に、アメリカ軍からの集中的な爆撃によって引き起こされるかも知れないいかなる地震にも備えておく必要があると、注意を呼びかけることになろう。それらの番組はまた、隠密転覆工作部隊によって、日本国民に向け、地下工場で働くよう動員された全ての労働者の安全を確保する計画が日本当局によって立てられている経緯を詳述し、それによって、地下工場の危険性について注意を促すこともできるであろう。

4)噂: 「アメリカ人はこの理論のための実験場として硫黄島近辺や沖縄近辺の島々を使っている」とか、「最近感じた絶え間なく起こる震動は、先のB29の爆撃の直接的な影響かも知れない」といった趣旨の噂を流すこともできるであろう。

5)書簡の偽造: 帝国地震委員会のメンバーの間でやりとりされた書簡の写しとされるものを偽造することもできるだろう。そこには、潜在的地震状態の上に重爆破が加えられた場合に起こりうる影響が指摘されていることになる。そうした偽造書簡は、日本国民によってそばから鵜呑みにされて拡散されるように、我々の工作員が心理戦的に効果的な場所に置いてくることもできるであろう。

戦略的な目標:
もしわれわれがひとたびこのネガティブで破壊的な奔流を引き起こすことに成功するならば、われわれは今度はそれをポジティブで建設的な奔流に切り替える立場に立つことになるであろう。生理的反応に起因するそのようなネガティブで破壊的な奔流というものは、常にポジティブで建設的な希望を見出そうとするものである。このポジティブで建設的な希望は、いわゆる「自由な日本」運動の出現によって供給できるであろう。沖縄から中波ラジオに乗って日本に吹きこまれるこのグループの活動は、日本のリベラル派を活性化させるための触媒となるかも知れない。そうして次に、日本のリベラル派は戦争のフラストレーションからの解放のためのポジティブで建設的な力を提供することができるであろう。

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 訳者:これは今から70年ほど前の太平洋戦争の終戦間際にOSS(CIAの前身)によって立てられた計画である。英語原文および解説は以下を参照されたい。

OSS日本本土に対する地震心理戦計画 (3) 英語原文

OSS日本本土に対する地震心理戦計画 (1) 解説


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