北海道新聞で次のような記事を載せています。
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【知的障害者年金「横領」 札幌市、対応に遅れ 過酷な環境、06年に疑念】
(02/14 14:02)
札幌市白石区の食堂で働いていた知的障害者四人が、
給与の未払いや障害者年金の横領があったなどとして、
食堂の経営会社「商事洋光」(白石区)などに損害賠償を求めた訴訟で、
札幌市は原告のうち三人と面談し過酷な労働環境にあるとの疑いを持ちながら
、八カ月間も保護などの具体的な措置を取っていなかったことが分かった。
中田鉄雄市保健福祉局長は「もっと早く実態把握すべきだった」と話し、
対応の遅れを認めている。
市によると、札幌市知的障害者更生相談所は二○○六年十月、
療育手帳の更新の際に三人と面談し、
古びた服を着てつめの汚れがひどいことなどから労働環境に疑念を抱いた。
しかし、同相談所が市障がい福祉課に報告したのは○七年一月で、
さらに同課などが食堂の経営者に事情聴取したのは同年六月四日だった。
市は同月十一日、障害者年金が振り込まれていた通帳の提出を経営者側に求め、
四人を保護した。
食堂の経営者は市に対し「障害者年金は会社の経費に充てた」と
流用を認めているという。
市は四人が暮らす寮を運営する社団法人「札幌市知的障害者職親(しょくおや)
会」に一九九三-二○○五年度、計約二千七百万円の補助金を支出したが、
この間、一度も現地調査をしていなかった。
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また
アサヒコムでは
その悲惨な生活について次のように述べています。
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【知的障害者に「奴隷生活」 保護の4人、経営者らを提訴】
~2008年02月13日22時42分
札幌市の食堂で住み込みで働いていた知的障害のある32~51歳の男女4人が
13~31年間、無報酬で劣悪な生活を強いられ、07年6月に保護されていたこ
とが13日わかった。労働時間は1日十数時間で休日は月2回。食事も満足に与え
られなかったという。4人は同日、「奴隷のように働かされ、障害者年金も横領さ
れた」などとして経営者らを相手どり約4500万円の損害賠償を求め、札幌地裁
に提訴した。経営者は現在、行方がわからないという。
4人は、32歳の男性1人と35~51歳の女性3人。
定食類を出す札幌市白石区の「三丁目食堂」の調理室で調理や皿洗いを
担当していた。
4人を保護して暮らしぶりを聴き取った弁護士によると、
4人は食堂2階の部屋などに住み、毎日午前6時ごろ起床。
仕事中はトイレに立っても怒鳴られ、午後10時ごろまで働かされた。
食事は残り物ばかりで、調理室の食べ物を持ち出してしのいでいたという。
休みは月2回で、現金は週1回、銭湯代を渡されるだけ。
入浴は休日しか許されず、下着は汚れたものをずっと使っていた。
歯磨きも「仕事を始めてからほとんどしたことがない」といい、
保護時は緑色の歯石がびっしりたまっていたという。
4人は長期にわたって恐怖感を植え付けられ、
逃げ出すことができなかったという。
親たちも知的障害があるなどの事情で、
後ろ盾になれる状態ではなかったという。
弁護士の電話相談に事情を知る人から情報が寄せられたことから、
4人は障害者施設に保護された。
発見時は4人ともやせ衰え、繰り返し「早く食堂に戻らないと大変なことになる」
とおびえていたという。
食堂の経営者らは4人の障害基礎年金の手続きも無断で行い、
約2600万円を横領していた疑いもあるという。
経営者は弁護士に「面倒をずっと見てきた。責められることはない」
と話したという。
弁護士は
「自己主張のすべがないのをいいことに、奴隷のような環境で人格をおとしめた。
裁判を通じて警鐘を鳴らしたい」と話している。
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インターネットでもニュースでも、殆ど流されていない記事なので、
転載させて頂きました。
この記事を問題視しないのが
この国の現代の姿です。
なぜなら、この事件は、この国の社会の縮図だからです。
大企業の下で非人間的労働に甘んじる派遣社員、
同じ仕事をしながらも差別的待遇を受けるパート労働者、
年齢や性別等を理由に労働社会から閉め出される人々…
そんな不条理な社会に気付かせないためにも、
この記事は見せない方がいいのでしょう。
ともすれば
この社会を面白可笑しくして
他人事のように世の中を見させ
この社会は自分ではどうにもならないものだという諦念を抱かせるのが
この国のメディアですから…
けれども
私たちは
この社会の不条理に気付く努力をいたしましょう。
こう書いていたらば
『ビルマの竪琴』の映画 (先日逝去された市川氏監督)が
テレビで放映されているのを、ふと見ました。
抵抗できず自らの意思を声にすることも出来ない
弱い人々を
福祉という名の下に食い物にするこの国の社会を目にしているので、
この映画を見ると、涙が出てきました。
戦死した人々の屍をそのまま放置することができなかった
水島の生き様は何と人間らしく純粋なのでしょう。
エメラルド色のインコを肩に乗せた水島が
この世の人間の業を弔いながら
今も彷徨い続けているような気がします。
この世とあの世を結ぶ野の果てから
水島の弾く竪琴が聞こえてきませんか?
ビルマの国の土は赤く
そこからは紅い宝石ルビーが算出されるそうです。
戦うこと放り捨てることのできない男達には見えないけれど、
その色は戦争で殺戮された弱い人達の血の色に見えます。
私も
水島の竪琴の後に続いて
野の果てを彷徨い舞い歩こうと思います。