日本語教師ブラジル奮闘記

ブラジル生活裏話

刑務所不足問題に直面する州政府

2009年09月30日 08時07分50秒 | ブラジル事情
 僕が住むリオグランデドスル州は、刑務所不足という問題に直面している。州都であるポルトアレグレ市の刑務所は収容最大人数2千人の所に、4800人近く収容されている。

 ただでさえブラジルの刑務所は警備が甘く、刑務所職員に少し賄賂を送ったりすれば簡単に逃亡できたりする。倍以上の収容人数を収容すれば、管理が甘くなり、下手したら囚人たちが決起して、刑務所自体を乗っ取る可能性もあるのだ。そうなると市民は危険に晒され、治安は一気に悪化する。

 州政府はそのような最悪の事態を避けるために、1年前から新しい刑務所の建設を計画しているが、計画予定地の住民の反対運動などの問題で、建設が予定通り進まない。仕方ないので、近隣都市の刑務所に囚人を送り出しているが、近隣の刑務所も既に収容最大人数の倍近くを受け入れており、もうこれ以上の受け入れはできない危機的状況である。

 こういった状況は、ブラジル人の計画性のなさ、いい加減さが引き起こした結果である。裁判官が囚人の刑務所への送還を拒否したケースまででてきており、リオグランデドスル州の刑法制度は崩壊しつつある。

 犯罪を犯しても、刑務所が満員だから、刑務所に入れられない。ブラックユーモアと言えばそれまでだが、冗談にもほどがある。ここまでくると、もう笑うしかない。

 刑期を短くして、囚人を予定より早めに出所させるなどの案も出ているが、その方策はブラジルの刑法制度の存在意義自体を問うことになる。また、犯罪を犯す人の多くが再犯であることを考慮すれば、この方策が治安を悪化させるのは間違いなく、市民の平和をより脅かすことにつながる。

 ブラジルは脱獄は結構当たり前だ。逃げた者勝ち。刑が軽いと、付き添いの人が同行すれば、刑務所の外にも出られる。そして、彼らは隙を見計らって逃げる。日本ではとても考えられないことだ。

 何しろ、囚人が刑務所内で携帯電話を持ち、一般市民に脅迫電話をかけ、誰々を人質に取っているから、返してほしかったら、どこどこの銀行口座にお金を振り込めなんていう詐欺行為が成立しているから恐ろしい。まず、囚人が携帯電話を持っていること自体が杜撰な管理としか言えないが、口車にのせられて支払ってしまう被害者も被害者である。日本でも、「オレオレ詐欺」が流行っていたが、人間なんて騙される時は簡単に騙されるものなのかもしれない。

 ブラジルに初めて来た時、サンパウロの田舎に3年間住んだ。そこにはこれといった産業がなく、同地域周辺には刑務所がいくつも建設された。サンパウロ市内の囚人達がこの刑務所に移されてきた。僕は町唯一のホテルに住んでいたが、週末になると囚人の親族がバスでドーッとやってきた。町は刑務所のおかげで、雇用が創出され、小さな町の商業も活性化。

 本来なら、教育に投資して、一般庶民のモラルを高め、囚人を減らすのが筋である。何とも末恐ろしい世界である。
 
 

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