急ぐとき用の3分あらすじは=こちら=になります。
二段目の「陣門・組打」は=こちら=
「一ノ谷嫩軍記(いちのたに ふたばぐんき)」 三段目です。
人気演目です。
ストーリーを把握しそこねるかたが多いです。長い軍記物の真ん中だけブツっと出すんですから前後の設定がわかりにくいです。
しかも最近は三段目全部出すのじゃなく、最初のほうをはしょるのでますますです。
でもわかりやすく丁寧に出すとヒトビトが寝るし、難しいところですね。
一幕のお芝居なのですが、登場人物がけっこう多く、それぞれ立場が違うのでわかりにくいのです。
先にだいたいの人物配置を説明します。
源平の戦の真っ最中のお話です。
「一の谷の戦」は源平の一連の戦の中でも、平家に壊滅的な打撃を与えた重要な戦闘です。平家の主だった武将の殆どが、この戦闘で討死にしました。
この後、平家はジリジリと瀬戸内海を後退し、壇ノ浦で滅びることになります。
主人公は「熊谷次郎直実(くまがいじろう なおざね)」です。 源氏の武将です。
JR熊谷駅前に銅像がありますよ。
ところで、源平の戦は「源氏」vs「平家」の戦いですが、その上により大きい権威として「天皇」がいます。これ大事です。
そして、源氏の中には義経→熊谷次郎という命令系統があり、
さらにその上に頼朝という総大将がいます。
義経、頼朝、熊谷、それぞれに思惑があるのです。
だから味方同士だけどそれぞれがビミョウに違う立場です。
お互いがお互いの思惑を読みあいながら、問題解決に向けてベストな方法を探ります。
大きい犠牲が出るのですが、それも含めて重厚な人間ドラマになります。
女性が二人出ます。普通に武将の付属品としての奥さんならいいんですが、
一人「藤の方」は主人公の熊谷次郎の「昔のご主人」にあたります。
熊谷次郎、義経の指揮下にありますが、「藤の方」への義理もあるのです。
さらに何の説明もなくイキナリ出る味方だけどイヤなやつとか、謎の民間人とかがいます。
で、敵、平家。
というかんじです。
ストーリー説明書きます。
出だし、桜の花の前に札があります。「制札」、せいさつ、と読みます。
「○○しちゃダメ」と制する札です。「せいさつ」、セリフにも出ますので音を覚えておきましょう。
「一枝を切らば一指を切るべし」 いっしをきらば いっしをきるべし、と書いてあります。
この桜の枝を一本でも切ったら指一本切るぞ(絶対切るなよ)、という意味です。怖。
総大将の義経が熊谷次郎にわたしたものです。
さて今はイキナリ、陣屋に戻ってくる熊谷次郎、から始まります。
奥さんの相模(さがみ)さんはもう来てます。
職場に顔出すな、と怒る熊谷ですが、奥さんは一緒に出陣している息子が心配なのです。
ここのやりとりは聞き取れると思いますが、一応書くと、
・息子の小次郎(こじろう)くんはケガしたけど無事。
・熊谷は平家の若君「平敦盛(たいらの あつもり)」を討ち取った。
とここで敦盛のお母さんの「藤の方(ふじのかた)」がイキナリ登場し、怒って熊谷に詰め寄ります。
誰、ていうか何でここに?というわけで混乱しますよ。
藤の方は、やっぱり息子が心配でウロウロしていて相模と会い、かくまわれていたのです。
はじめのほうをていねいに出すと相模と藤の方のやりとりがあるわけですが、
現行上演では急に出てくるのでわけわかりませんよ。
息子が殺されたので怒る藤の方です。恐れ入る熊谷。ここでの演技が恐れいりながらも武将らしくかっこよくなくてはならないのがむずかしいと思います。
ここでセリフで過去バナがチラっと出ますが、これは本筋と関係ないので聞き流して大丈夫です。
熊谷は藤の方にすごく恩がある、ということです。
熊谷次郎は、藤の方のために敦盛を討ち取ったときの様子を語ります。
べつに話さなくてもよさそうですが。いわゆる「ものがたる」芸であり、見せ場のひとつなのでだまって聞く。
そうこうするうちに義経が到着します。
ここの細かいやりとりも、いま出る部分のストーリーとは直接関係ないので流してオッケーです。
で、討ち取った敦盛の首の「首実検」です。「首実験」ではありませんよ。「実検」です。
「首が本物かどうか実地検分」です。
で、歌舞伎で「首実検」が出たら、殆どの場合「にせ首」です。
これもニセモノです。
誰の首かというと、熊谷次郎の息子、小次郎の首です。生きているうちに入れ替えて、戦場で我が子の首を切ったのです。
なんでこんなことをしたのか、というのがどうもわかりにくいようです。
敦盛の母親の藤の方のためではありません。
そういう情にほだされての理由じゃなくて、
「平敦盛」が「後白河法皇」の孫だ(作品内設定)、というのが問題なのです。
法皇の孫だというのは皇位継承権まで出てくるくらいの血筋です。
しかも当時の「安徳帝(あんとくてい)」(8歳)は平家が連れて逃げちゃったので、後白河法皇の孫の中から実際に新しく天皇を選んだのは史実です。
というわけで政治的に敦盛は最大VIPなので、
頼朝の命令は「殺せ」だけど、義経は「何とかごまかして助けよう」と画策しています。
というような事情です。
こういうとき、親子とか兄弟とかの個人の事情を捨てなくちゃいけないのが当時のお侍です。
でもべつに彼らは冷血漢ではなく、
むしろしっかりした家庭に育った情のあついかたがたです。
でもその気持ちを捨てなくてはいけないのです。
そういう悲しみや葛藤こそが、歌舞伎の普遍的なテーマです。
で、「熊谷陣屋」は、この葛藤が最もよく表現されているので、人気演目なのです。
首実検のあたりは、このへんの事情さえ把握できていれば問題なく味わっていただけると思います。
首が自分の子供だと気付いて、半狂乱で駆け寄る、母親の相模さんと、やはり驚いて近寄ろうとする藤の方。
このふたりを持っていた例の制札で制しながら、
自分も悲しみをこらえて首を義経に差し出す熊谷の、細かい動きや表情が、作品の大きな見どころになります。
陣屋の周囲に張り巡らされた幕には熊谷次郎の家紋、向かい合わせの鳩が描かれていますが、
親子のむつましい様子に見えるので、悲しくなりますよ。細かい効果です。
で、後はいろいろセリフで事情説明になります。
「一枝を切らば…」というのが「一子」にひっかけた謎であり、小次郎を身替わりに敦盛を助けよ、と暗に義経が熊谷次郎に言っていた、とか言っています。
しかしこれは鎌倉にいる頼朝の命令には反しています。裏切りです。
頼朝の直属の部下、梶原平三(かじわら へいぞう)が鎌倉の頼朝に密告しようとイキナリ花道に走っていきます。
これも急すぎて「何?」って感じなのですが、
彼が花道間際で急に倒れるのはさらに意味不明かもしれません。
舞台のこっちがわに謎の民間人「弥陀六」みだろく、がいつのまにか出てきていて、手裏剣(石ミノ)を投げたのです。わかんねえって。
この一連の動きは、もう歌舞伎の定番の約束なので、昔の観客は「ほら、走るぞ、ほら、死ぬぞ」という感じで見ていたのですが、今の客にはハードル高すぎです。
乗り越えて下さい。お約束ってことで。
通りすがりの一般人のフリをして去ろうとした「弥陀六」を義経が呼び止め、
さらに唐突に義経さまと弥陀六が昔話を始めます。ここもわけわからないと思います。
さくっと事情を書くと、
・弥陀六さんは平家方の人間。立場上は敵。
・しかし昔、平治の乱のころ、平家との戦に負けて追われて殺されかけていた子供のころの義経とその母を助けた。
つまり義経の恩人である。
・いまは戦には加わっていないが平家方の人間なので、平家が滅びるのを悲しく思っている。諸行無常。
そんなハナシをしています。
弥陀六さんが鎧櫃(よろいびつ 鎧が入った箱ですよ)をもらいます。中身は、まあ、ひと一人入る大きさと、重そうな様子から想像つくよね。
義経と弥陀六さんのやりとりが終わり、
一度引っ込んだ熊谷次郎が再登場します。出家のお願いをします。
今回の出来事で諸行無常を強く感じ、出家したくなったのです。もう頭剃ってます。
義経もそれを許します。
熊谷次郎は、僧形になって花道に引っ込みます。
ストーリーはこれで終わりです。
お願いなのですが、
幕が下りたあとも、熊谷次郎の花道での演技があります。陣太鼓が鳴ったらつい条件反射で身構えてしまって、再び無常の心に戻って祈るところとかとても重要な演技です。
最近幕がひかれたら「終わり」だと思ってさわぐお客さんが多くて困っています。
まだ終わってないのでちゃんと見ましょう。たとえ3階席で花道見えなくても座って音だけ味わえば楽しめるようになっています。
というかんじです。
名作なので、がんばって内容把握して見て下さいねー。
さて、
今は、熊谷の出家の理由を「息子を殺したのがつらかったから」と解釈するのが主流みたいです。
でも、その理由で義経の前で出家したら、ツラアテ状態じゃん。
「平家物語」では「身替わり」のエピソードはもちろん存在せず、普通に敦盛さまが殺されます。
齢16の、美しい誇り高い若武者、熊谷に組み伏せられて首を切られる瞬間も、ちっともさわがず、
「お前程度の武将であれば私の首を取ればずいぶんいい手柄になるだろう」と言い放つ気高い青年。
どこに刃をたてればいいのか分からないくらいきれいな首、熊谷悲しくなって涙ボロボロ。
そんな場面です。
息子が死んだからじゃなく、熊谷は、こうやって若い美しい桜を散らさなくてはならないのがつらくなって、出家したのだと思います。
そういう、親子の情を越えた高みにある「無常観」みたいのを本当は表現していただきたい舞台です。
一時は、熊谷といっしょに奥さんの相模も出家するような演出もあったのですが、
やめていただきたいものです。
二段目「陣門・組打」は=こちら=
=50音索引に戻る=
二段目の「陣門・組打」は=こちら=
「一ノ谷嫩軍記(いちのたに ふたばぐんき)」 三段目です。
人気演目です。
ストーリーを把握しそこねるかたが多いです。長い軍記物の真ん中だけブツっと出すんですから前後の設定がわかりにくいです。
しかも最近は三段目全部出すのじゃなく、最初のほうをはしょるのでますますです。
でもわかりやすく丁寧に出すとヒトビトが寝るし、難しいところですね。
一幕のお芝居なのですが、登場人物がけっこう多く、それぞれ立場が違うのでわかりにくいのです。
先にだいたいの人物配置を説明します。
源平の戦の真っ最中のお話です。
「一の谷の戦」は源平の一連の戦の中でも、平家に壊滅的な打撃を与えた重要な戦闘です。平家の主だった武将の殆どが、この戦闘で討死にしました。
この後、平家はジリジリと瀬戸内海を後退し、壇ノ浦で滅びることになります。
主人公は「熊谷次郎直実(くまがいじろう なおざね)」です。 源氏の武将です。
JR熊谷駅前に銅像がありますよ。
ところで、源平の戦は「源氏」vs「平家」の戦いですが、その上により大きい権威として「天皇」がいます。これ大事です。
そして、源氏の中には義経→熊谷次郎という命令系統があり、
さらにその上に頼朝という総大将がいます。
義経、頼朝、熊谷、それぞれに思惑があるのです。
だから味方同士だけどそれぞれがビミョウに違う立場です。
お互いがお互いの思惑を読みあいながら、問題解決に向けてベストな方法を探ります。
大きい犠牲が出るのですが、それも含めて重厚な人間ドラマになります。
女性が二人出ます。普通に武将の付属品としての奥さんならいいんですが、
一人「藤の方」は主人公の熊谷次郎の「昔のご主人」にあたります。
熊谷次郎、義経の指揮下にありますが、「藤の方」への義理もあるのです。
さらに何の説明もなくイキナリ出る味方だけどイヤなやつとか、謎の民間人とかがいます。
で、敵、平家。
というかんじです。
ストーリー説明書きます。
出だし、桜の花の前に札があります。「制札」、せいさつ、と読みます。
「○○しちゃダメ」と制する札です。「せいさつ」、セリフにも出ますので音を覚えておきましょう。
「一枝を切らば一指を切るべし」 いっしをきらば いっしをきるべし、と書いてあります。
この桜の枝を一本でも切ったら指一本切るぞ(絶対切るなよ)、という意味です。怖。
総大将の義経が熊谷次郎にわたしたものです。
さて今はイキナリ、陣屋に戻ってくる熊谷次郎、から始まります。
奥さんの相模(さがみ)さんはもう来てます。
職場に顔出すな、と怒る熊谷ですが、奥さんは一緒に出陣している息子が心配なのです。
ここのやりとりは聞き取れると思いますが、一応書くと、
・息子の小次郎(こじろう)くんはケガしたけど無事。
・熊谷は平家の若君「平敦盛(たいらの あつもり)」を討ち取った。
とここで敦盛のお母さんの「藤の方(ふじのかた)」がイキナリ登場し、怒って熊谷に詰め寄ります。
誰、ていうか何でここに?というわけで混乱しますよ。
藤の方は、やっぱり息子が心配でウロウロしていて相模と会い、かくまわれていたのです。
はじめのほうをていねいに出すと相模と藤の方のやりとりがあるわけですが、
現行上演では急に出てくるのでわけわかりませんよ。
息子が殺されたので怒る藤の方です。恐れ入る熊谷。ここでの演技が恐れいりながらも武将らしくかっこよくなくてはならないのがむずかしいと思います。
ここでセリフで過去バナがチラっと出ますが、これは本筋と関係ないので聞き流して大丈夫です。
熊谷は藤の方にすごく恩がある、ということです。
熊谷次郎は、藤の方のために敦盛を討ち取ったときの様子を語ります。
べつに話さなくてもよさそうですが。いわゆる「ものがたる」芸であり、見せ場のひとつなのでだまって聞く。
そうこうするうちに義経が到着します。
ここの細かいやりとりも、いま出る部分のストーリーとは直接関係ないので流してオッケーです。
で、討ち取った敦盛の首の「首実検」です。「首実験」ではありませんよ。「実検」です。
「首が本物かどうか実地検分」です。
で、歌舞伎で「首実検」が出たら、殆どの場合「にせ首」です。
これもニセモノです。
誰の首かというと、熊谷次郎の息子、小次郎の首です。生きているうちに入れ替えて、戦場で我が子の首を切ったのです。
なんでこんなことをしたのか、というのがどうもわかりにくいようです。
敦盛の母親の藤の方のためではありません。
そういう情にほだされての理由じゃなくて、
「平敦盛」が「後白河法皇」の孫だ(作品内設定)、というのが問題なのです。
法皇の孫だというのは皇位継承権まで出てくるくらいの血筋です。
しかも当時の「安徳帝(あんとくてい)」(8歳)は平家が連れて逃げちゃったので、後白河法皇の孫の中から実際に新しく天皇を選んだのは史実です。
というわけで政治的に敦盛は最大VIPなので、
頼朝の命令は「殺せ」だけど、義経は「何とかごまかして助けよう」と画策しています。
というような事情です。
こういうとき、親子とか兄弟とかの個人の事情を捨てなくちゃいけないのが当時のお侍です。
でもべつに彼らは冷血漢ではなく、
むしろしっかりした家庭に育った情のあついかたがたです。
でもその気持ちを捨てなくてはいけないのです。
そういう悲しみや葛藤こそが、歌舞伎の普遍的なテーマです。
で、「熊谷陣屋」は、この葛藤が最もよく表現されているので、人気演目なのです。
首実検のあたりは、このへんの事情さえ把握できていれば問題なく味わっていただけると思います。
首が自分の子供だと気付いて、半狂乱で駆け寄る、母親の相模さんと、やはり驚いて近寄ろうとする藤の方。
このふたりを持っていた例の制札で制しながら、
自分も悲しみをこらえて首を義経に差し出す熊谷の、細かい動きや表情が、作品の大きな見どころになります。
陣屋の周囲に張り巡らされた幕には熊谷次郎の家紋、向かい合わせの鳩が描かれていますが、
親子のむつましい様子に見えるので、悲しくなりますよ。細かい効果です。
で、後はいろいろセリフで事情説明になります。
「一枝を切らば…」というのが「一子」にひっかけた謎であり、小次郎を身替わりに敦盛を助けよ、と暗に義経が熊谷次郎に言っていた、とか言っています。
しかしこれは鎌倉にいる頼朝の命令には反しています。裏切りです。
頼朝の直属の部下、梶原平三(かじわら へいぞう)が鎌倉の頼朝に密告しようとイキナリ花道に走っていきます。
これも急すぎて「何?」って感じなのですが、
彼が花道間際で急に倒れるのはさらに意味不明かもしれません。
舞台のこっちがわに謎の民間人「弥陀六」みだろく、がいつのまにか出てきていて、手裏剣(石ミノ)を投げたのです。わかんねえって。
この一連の動きは、もう歌舞伎の定番の約束なので、昔の観客は「ほら、走るぞ、ほら、死ぬぞ」という感じで見ていたのですが、今の客にはハードル高すぎです。
乗り越えて下さい。お約束ってことで。
通りすがりの一般人のフリをして去ろうとした「弥陀六」を義経が呼び止め、
さらに唐突に義経さまと弥陀六が昔話を始めます。ここもわけわからないと思います。
さくっと事情を書くと、
・弥陀六さんは平家方の人間。立場上は敵。
・しかし昔、平治の乱のころ、平家との戦に負けて追われて殺されかけていた子供のころの義経とその母を助けた。
つまり義経の恩人である。
・いまは戦には加わっていないが平家方の人間なので、平家が滅びるのを悲しく思っている。諸行無常。
そんなハナシをしています。
弥陀六さんが鎧櫃(よろいびつ 鎧が入った箱ですよ)をもらいます。中身は、まあ、ひと一人入る大きさと、重そうな様子から想像つくよね。
義経と弥陀六さんのやりとりが終わり、
一度引っ込んだ熊谷次郎が再登場します。出家のお願いをします。
今回の出来事で諸行無常を強く感じ、出家したくなったのです。もう頭剃ってます。
義経もそれを許します。
熊谷次郎は、僧形になって花道に引っ込みます。
ストーリーはこれで終わりです。
お願いなのですが、
幕が下りたあとも、熊谷次郎の花道での演技があります。陣太鼓が鳴ったらつい条件反射で身構えてしまって、再び無常の心に戻って祈るところとかとても重要な演技です。
最近幕がひかれたら「終わり」だと思ってさわぐお客さんが多くて困っています。
まだ終わってないのでちゃんと見ましょう。たとえ3階席で花道見えなくても座って音だけ味わえば楽しめるようになっています。
というかんじです。
名作なので、がんばって内容把握して見て下さいねー。
さて、
今は、熊谷の出家の理由を「息子を殺したのがつらかったから」と解釈するのが主流みたいです。
でも、その理由で義経の前で出家したら、ツラアテ状態じゃん。
「平家物語」では「身替わり」のエピソードはもちろん存在せず、普通に敦盛さまが殺されます。
齢16の、美しい誇り高い若武者、熊谷に組み伏せられて首を切られる瞬間も、ちっともさわがず、
「お前程度の武将であれば私の首を取ればずいぶんいい手柄になるだろう」と言い放つ気高い青年。
どこに刃をたてればいいのか分からないくらいきれいな首、熊谷悲しくなって涙ボロボロ。
そんな場面です。
息子が死んだからじゃなく、熊谷は、こうやって若い美しい桜を散らさなくてはならないのがつらくなって、出家したのだと思います。
そういう、親子の情を越えた高みにある「無常観」みたいのを本当は表現していただきたい舞台です。
一時は、熊谷といっしょに奥さんの相模も出家するような演出もあったのですが、
やめていただきたいものです。
二段目「陣門・組打」は=こちら=
=50音索引に戻る=
こちらのブログ、
ものすごい読ませていただいてます。勉強になります。スッゴいおもしろくて楽しいです。
売ってる筋書きなんかより全然役に立つんじゃないかと思います。(筋書き買ったことありませんが)
今後もよろしくお願い致します。
私(素人)にも分かるように書いてくれてあって、楽しく勉強できました♪ありがとうございます。
ありがとうございました。
解説を読んだだけでは不十分で激しく眠りこけてしまいました(´Д`)
吉右衛門さんを目の前にして勿体無かったです(>ε<)
私も今日、南座で吉右衛門さんの熊谷を楽しみました。
私はイヤホンガイドを借りたので、ほぼ筋書きは理解できましたが、ご指摘の通り、なぜ敦盛を助けたのかと、なぜ出家したのかは、わかりませんでした。
イヤホンガイドで冒頭に「一枝を切らば一指を切るべし」はポイントであると教えてくれたので、二人の青年の話が出てきたところで「いっし」は一子と気付いたのですが、「一子を切らば一子を切るべし」だから、敦盛を殺した報いとして自分の息子も殺したのだと思っていました。
なので、なぜ小次郎だけを殺したのかが納得できずにいました。
「法皇のお種」って言葉も何度も出ていたのですが、法皇の子だから殺さない、ってとこまでは気付きませんでした。
まして出家の理由は、俗っぽく親子の情で片付けていました。
おかげさまで、いい余韻を味わうことができました。
ありがとうございました。