世界遺産大峰奥駈道の山上ヶ岳は今でも女人禁制が続いている。
昔から 信仰心厚い女性はその隣の山「稲村ヶ岳」へ登り
祈りを捧げてきた。
その女人山上ヶ岳と呼ばれる稲村ヶ岳に一月末に登ったが、
あまりの深い雪で 斜面のトラバースが出来ずに引き返した。
そこで今回その稲村ヶ岳に再チャレンジした。
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母公堂前の駐車場はすでに一杯だ。しかたなく
ごろごろ水前の広い道路に駐車して歩き出した。午前七時半。
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稲村登山口付近には、雪は全く無い。
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あっという間に法力峠だ。１時間かかっていない。
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峠を過ぎると残雪が現れた。しかも凍っている。
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日当たりのよい場所は雪が無く、残雪が交互に現れる。
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凍っているのでよく滑るので、慎重に歩く。
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前回引き帰したのはここかもしれない。
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いやここかもしれない。道そのものがかなり崩れている。
真冬の積雪期とは感じが全然違う。
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残雪でマンダラの道を行く。このとき後ろから追いついてきた人と
お話しながら一緒に歩く。
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山上辻到着。一緒に歩いてきた人は、ここでピッケルの用意したり、
アイゼンを10本爪に履き替えたりするので、私が先行して進む。
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この辺から残雪はかなり増えた。
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小動物の足跡が転々と続く。
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正面に尖がった「大日岳」が見えてきた。
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ここからが最大の難所、大日キレットへ続くトラバースだ。
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しかしこのあと 不用意に載せた雪面が崩れて、雪の塊と共に
雪面を転げ落ちた。ピッケルで制動をかけるヒマもなかった。
しかし幸い立ち木にぶつかり止った。約５メートル滑落した。
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垂直に近い雪面を這い上がるのはとてもつらい。
足のアイゼンを蹴りこんで雪面に突き刺し、ピッケルを
雪面に叩きつけて突き刺し、(円内がピッケル先端)
少しずつ体を持ち上げる。休みながら這い上がる。
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もう少しで這い上がれる。
やっとのことでなんとか崩れた場所まで這い上がった。
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このとき一緒に歩いてきた人が追いついてきた。
雪の斜面にへたり込んでいる私を見て とっさに状況が分かったようだ。
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その人は、私が落ちた場所より少し上を巻いて進むと言い
慎重に歩き始めた。
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私は少し離れた小高い場所から 見守る。
よく見ると、もう少し下にもトラバースルートが見える。
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その人はピッケルを斜面に深く突き刺し、ホールドを作りながら
一歩一歩慎重に進んでいく。
無事にわたり終えると 「ありがとうございました」と大きな声で
礼を言い 先へ進んでいった。
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