民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

35:再審訴状

2010-05-24 07:17:12 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
               再審訴状
                               平成22年5月18日
最高裁判所 御中
  〒000-0000 横浜市00区00町00番00号
                再審原告 出羽やるか 印
             Tel /Fax 045-000-0000
  〒870-8502 大分市大手町3丁目1番1号
                再審被告 大分県
                       同代表者知事 広瀬勝貞
  上告受理事件の決定に対する再審
   貼用印紙 1500円
   上記当事者間の最高裁判所第二小法廷平成22年(受)第561号上告受
  理事件につき,同裁判所が平成22年4月23日に決定し,同日確定した決
  定に対し再審の訴えを提起する。
            目 次
  第1 調書(決定)の表示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2頁          
  第2 不服の申立に係る決定の表示
  第3 再審の趣旨
  第4 再審の理由
  第1点 終局判決の手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3頁
  第2点 小野寺の業務上過失傷害等の被疑事件・・・・・・・・・・8頁
  第3点 実況見分調書(甲7)作成の放置・・・・・・・・・・・13頁
  第4点 再審原告が従前提起した3件の訴訟・・・・・・・・・・16頁
  第5点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正・・・・・・・・・19頁
  第5 おわりに   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21頁
                1/22
第1 調書(決定)(以下「原決定」という。)の表示
   事件の表示:平成22年(受)第561号
   決定日:平成22年4月23日
   裁判所:最高裁判所第二小法廷
   裁判長裁判官:竹内行夫,裁判官:須藤正彦,:裁判官 千葉勝美
   当事者:申立人 出羽やるか,相手方 大分県 同代表者知事 広瀬勝貞
   原判決の表示:東京高等裁判所平成21年(ネ)第3294号(平成21
          年11月26日判決)
第2 不服の申立に係る決定の表示
 1 本件を上告審として受理しない。
 2 申立費用は申立人の負担とする。
第3 再審の趣旨
 1 原決定を取消し,事件の再審理を行う。
 2 本件を上告審として受理する。
 3 申立費用は再審被告の負担とする。
第4 再審の理由
 1 民事訴訟法338条1項9号
   判断遺脱を理由として不服を申し立てることのできない判決の判断遺脱の場
  合にのみ,再審の訴えが認められるのであるから,このような判断遺脱を,当
  事者が上訴により主張したりすることは不可能である。つまり,判断遺脱の再
  審事由については,他の再審事由とは異なり,そもそも民訴338条1項但書
  の適用はないわけである。(三谷忠之「民事再審の法理」215頁以下・法律文
  化社・昭和63年)
 2 以下に述べるとおり,本件は,民事訴訟法318条1項により受理すべき「そ
  の他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」である。
 3 事案の概要
                 2/22
   再審原告は,大分県玖珠郡内で交通事故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警
  察官が当該交通事故に関する事件の捜査に当たり,実況見分調書の作成をしな
  いまま放置するなどの違法行為をしたことにより損害を被ったと主張し,上記
  違法行為が原因で交通事故の加害者に対する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その
  支払を受けることができなかったことによる損害(交通事故による損害)25
  57万8457円及び上記違法行為自体による慰謝料442万1543円の合
  計3000万円の損害金のうちの一部請求として,10万円及びこれに対する
  訴状送達の日の翌日である平成20年9月6日から支払済みまで民法所定の年
  5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。(原判決2頁3行目から12
  行目まで)。
   原判決は,再審原告の本件控訴を棄却した。再審原告は,原判決を不服とし
  て,上告受理の申立てをした。最高裁は上告審として受理しないと決定した。
  再審原告は原決定に対し再審の訴えを提起した。これが本件である。
 4 前提事実
   再審原告が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,大分県玖珠郡九
  重町大字湯坪の県道別府一の宮線水分起点34.9km先付近道路(以下「本
  件道路」という。)を普通自動二輪車(再審原告車)で走行中,再審原告車と小
  野寺秀和(小野寺)が運転する国(陸上自衛隊)所有の大型貨物自動車(自衛
  隊車)に牽引されたフルトレーラーが衝突ないし接触する事故(本件事故)が
  生じ,再審原告は,右肘脱臼開放骨折,右第3・4指中節骨骨折等の傷害を負
  った。
   再審原告は,本件事故後,熊本市にある熊本赤十字病院に搬送され,同月3
  0日まで同病院に入院した。(再審原告の傷害につき,甲23)(第1審判決2
  頁6行目から14行目まで)。
第1点 終局判決の手続き
    原判決は民事訴訟法243条及び244条の規定に違背してなされたもの
                 3/22
   であって,その言渡し手続きに違法があるため破棄を免れない。
    同244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭
   せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当事者
   の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることがで
   きる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
   いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定す
   る。
    出頭当事者である再審原告の申出がないのに,再審原告の意向も聞かず弁
   論を終結した原審の手続きは違法である。
 1 再審原告は平成21年6月26日付け期日呼出状を東京高等裁判所第21民
  事部ロろ係
の書記官から受領した。裁判所のウェブサイトの東京高裁の裁判所
  担当裁判官一覧の民事21部の欄には,渡邉等,橋本昌純,西口元,山口信恭
  の記載があった。平成21年8月27日第1回口頭弁論調書には,裁判長裁判
  官渡邉等,裁判官西口元,裁判官山口信恭の氏名が記載されている。
 2 第1回口頭弁論調書の弁論の要領等の欄に,裁判長;控訴理由書13頁「第
  5点」で原審(第1審)における人証についての経過が述べられているが,当
  審では人証申請をしないということでよいか。再審原告;再審被告の答弁書を
  待っていたのだが,受領したのは昨日であった。当審においても人証申請した
  い。裁判長;再審原告は9月4日までに証拠申出書を,再審被告はそれに対す
  る意見があれば意見書を9月18日までに,それぞれ提出すること。続行,と
  の記載がある。
   次回期日は,平成21年10月8日(口頭弁論)と指定された。
 3 上記控訴理由書第5点は下記のとおりである。
    第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
  (1) 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成した
   堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人と
                  4/22
   して過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
  (2) 再審被告は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日ま
   でに堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が
   不安定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
    当日の調書には「被告(再審被告);次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
   の各陳述書)を提出する」と記載された。
  (3) 再審被告は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の
   証人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残って
   いないことなどを挙げた。
    当日の調書には「当事者双方;次回期日までにすべての書証及び証拠申出
   書を提出する」と記載された。
  (4) 再審原告は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間
   ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,第1審は平成21年3月12
   日第4回口頭弁論期日に不採用とした。
  (5) 再審被告が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は
   提出されないまま,第1審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,
   弁論を終結した。
  (6) 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」
   はさておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実
   性」が重要な争点となっている。
  (7) 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
   本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠であ
   る実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
  (8) 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく真実発見,適正な裁判とい
   う点でも効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
  (9) 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用
                    5/22
   されている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判
   所は事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の
   認識をもて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実
   に役立つ。
  (10)第1審判決は,「原告(再審原告)の請求は,その内容において,すでに提
   起された3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,
   再審原告が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳述書(甲74)を除
   き,その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の訴訟に提出された
   ものと認めることができることからもいうことができる(第1審判決9頁2
   0行目から24行目)」と判示した。
  (11)前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
   再審被告が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査
   部長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
  (12)再審原告が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため
   申し出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
 4 原審(第2審)において,再審原告は平成21年9月4日に3名の証人(堀
  部警部補,間ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)の証拠申出書を,再審被告(被控
  訴人)は平成21年9月16日付けで,証拠申請に対する意見書を提出した。
   再審被告の意見書には,「記;控訴人(再審原告)は,証明すべき事実として,
  警察官に1ないし4の違法行為があるとして,本件事故の実況見分に関わった
  当時の玖珠警察署の署員3名につき,証拠申請をなしている。1の事実は,甲
  59の判決により,2,3の事実については,甲50,甲55,甲58,甲5
  9の各判決により,4の事実については,甲49,甲50,甲55,甲58の
  各判決により,いずれも玖珠警察署の警察官に違法行為がないことが明らかで
  あり,控訴人(再審原告)申請の3名の証人としての採用は,不必要であると
  考える。」と記載されている。
                  6/22
   再審原告は,平成21年10月8日,開廷前に,尋問事項書関係メモと称す
  る書面を提出した。内容は事故当日及び事故後の関係者の動静の時系列表と関
  係する証拠説明書で,証人尋問時使用を予定したものである。
 5 平成21年10月8日第2回口頭弁論調書には,裁判長裁判官渡邉等,裁判
  官橋本昌純及び裁判官山口信恭の氏名が記載されている。出頭した当事者は控
  訴人(再審原告)のみで再審被告(被控訴人)は欠席した。弁論の要領等欄に,
  出頭当事者;従前の口頭弁論の結果陳述,証拠関係別紙のとおり,裁判長;弁
  論終結,との記載がある。再審原告が申請した3名の証人は必要性なしとして
  採用されなかった。
   次回期日は,平成21年11月26日(判決言渡し)と指定された。
 6 平成21年11月26日第3回口頭弁論調書(判決言渡)には,裁判長裁判
  官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官西口元の氏名が記載され,出頭した当事者
  等は(なし),弁論の要領等の欄には,裁判長;判決原本に基づき判決言渡し,
  と記載されている。再審原告は同日判決言渡し直後判決正本を受領した。
   再審原告が申請し受領した平成21年12月3日付け判決謄本には,裁判長
  裁判官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官山口信恭の署名押印がある。
 7 民事訴訟法243条1項は,裁判所は,訴訟が裁判をするのに熟したときは,
  終局判決をする,と規定する。
   「裁判をするのに熟したとき」とは,当事者にその「訴訟」に関して十分な
  攻撃防御を展開させたが,もはやこれ以上それを展開させても,今までに得ら
  れた審理の結果が覆るおそれがなくなったという心証(判断)に裁判官が到達
  したとき,を指すといわれている(太田勝造「『訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルト
  キ』について」特別講義民事訴訟法429頁以下・有斐閣・1988年)。
   本件の場合,再審原告が提出した唯一の証拠調べ(玖珠警察署の署員3名の
  証人申請)を採用せず,弁論を終結したことは,十分な攻撃防御を展開させた
  とはいえず,再審原告の弁論権を奪ったことになり,許されない。
                  7/22
   再審原告はなお主張・立証を提出する意思を有しているのであるから,裁判
  所としては,さらに攻撃防御方法提出の機会を与え,また必要に応じ釈明権を
  行使して,事案の完全な解明に努めるべきである。
 8 民事訴訟法244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日
  に出頭せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当
  事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることが
  できる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
  いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定する。
   そもそもの立証趣旨が不熱心訴訟に対する対処ということであるので,出頭
  当事者が望んでいないのに,相手方の当事者が出頭しないことによって,出頭
  している当事者の主張立証の機会を奪うのは不当なので,一方が出頭している
  ときは,その当事者の意向を聞いて終結するかどうかをきめる,ということに
  した(研究会新民事訴訟法318頁柳田幸三の発言・有斐閣1999)という。
 9 出頭当事者である再審原告の申出がないのに,再審原告の意向も聞かず弁論
  を終結した原審の手続きは違法である。
 10 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。

35-2:再審訴状

2010-05-23 12:23:45 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
第2点 小野寺の業務上過失傷害等の被疑事件
    刑事訴訟法189条2項,246条についての法令の解釈の誤り
    司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,犯罪の嫌疑がないことが明らか
   な事件でも検察官に送致しなければならない。
 1 本件事故の受理(当事者間に争いがない事実)
   本件交通事故は,110番通報で熊本県警本部に入ったものであるが,事故
  の発生場所が大分県警察本部管内であったことから,熊本県警察本部から 大
  分県竹田警察署に110番通報が転送された。さらに,本件事故が,「大分県玖
  珠郡九重町大字田野県道別府一宮線水分起点34.9㎞先路上での自衛隊車両
                 8/22
  とバイクとの交通事故」と判明し,平成11年10月7日午前11時25分頃,
  竹田警察署から玖珠警察署に電話連絡された。
   本件電話連絡を受けた堀部警部補は,本件事故が,玖珠警察署長者原駐在所
  の管内で発生したものであったことから,同駐在所勤務の早水巡査長に対し事
  故現場に急行し事実調査と現場保存を行うよう指示した。
   同日午前11時50分頃,早水巡査長は,駐在所配備の警ら用自動車(いわ
  ゆる「ミニパト」)で現場に到着したが,再審原告は,早水巡査長が現場に到着
  すると直ぐに救急車で病院に向け搬送された。(甲20・11頁16行目から1
  2頁6行目まで)。
 2 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・エ)
   (エ)小野寺は,フルトレーラーを牽引した自衛隊車を運転して,雑草等が
  あり,双方からの見通しが不良な半径25mのカーブを通過する場合,カーブ
  の手前でスピードを落とし他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転し
  なければならない義務があったのに,最高速度と指定された毎時40kmのまま
  本件道路のヘヤピンカーブに進入した過失があった。この結果本件事故が生じ
  たのであり,再審原告は約3か月の加療を要する傷害を負ったのであるから,
  小野寺は人身事故の加害者である。
   しかるに,玖珠警察署の警察官は,小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者
  として検察官に送致しなかった。(第1審判決4頁7行目から15行目まで)。
 3 原審における再審原告の主張
   一たび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑のある事件
  に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
  ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
  いのであり,司法警察員は,事件を送致するか否かを決定する権限を与えられ
  ていない。したがって,小野寺を業務上過失傷害等被疑事件の被疑者として検
  察官に送致しなかった司法警察員の行為は違法である。(原判決2頁24行目か
                 9/22
  ら3頁4行目まで)。
 4 再審原告の請求原因(エ)についての原審の判断
   原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
   「証拠(甲49,50,55,58)によれば,第1訴訟の第1審裁判所は,
  本件事故につき,自衛隊車が毎時40kmの速度で進行車線をはみ出すことなく
  走行していたところ,再審原告車が急にコントロールを失って対向車線に入り
  込み,小野寺がブレーキをかける間もなくフルトレーラーに衝突して発生した
  ものと認定し,小野寺には,本件事故の原因となる速度違反や対向車線ヘのは
  み出しその他何らの過失もなかったと認定したこと,第1訴訟の控訴審裁判所
  も同様の認定をし,本件事故は再審原告の過失に基づく結果であり,小野寺に
  は何ら過失がないとの判断を示したこと,第2訴訟の第1審裁判所は,本件事
  故につき,小野寺は時速約40kmの速度で本件道路を自衛隊車進行車線を進行
  して本件事故現場手前の右カーブに入ったが,再審原告車がコントロールを失
  って左右に大きく振れ,自衛隊車の運転席の横を通り過ぎてフルトレーラーに
  衝突ないし接触したと認定したこと,第2訴訟の控訴審裁判所も,再審原告は
  再審原告車のハンドル・ブレーキの操作を誤り,バランスを崩して中央線を越
  え対向車線に進出させたためフルトレーラーに衝突したと認定したこと,第3
  訴訟の第1審裁判所は,本件事故の態様につき,第2訴訟の第1審裁判所の上
  記認定と同様の認定をしたことが認められる。
   上記の各裁判所の認定及び証拠(甲16 ,17,19 ,乙3)によれば,本
  件事故の原因は,再審原告車のハンドル・ブレーキの的確な操作を怠った再審
  原告の過失にあると認められるのであって,小野寺の過失は認めることができ
  ない。」(第1審判決8頁23行目から9頁16行目まで)。
   「そして,前掲各証拠(甲第7号証,第10号証の2,第19号証(11頁,
  23頁,24頁))に弁論の全趣旨を併せると,玖珠警察署司法警察員は,本件
  事故は,再審原告が湯布院町方面から小国町方面に向けて進行中,見通しの悪
                 10/22
  い下り坂の左カーブを進行するに当たり,ハンドル・ブレーキ等の的確な操作
  を誤って対向車線に再審原告車を進出させたことにより発生したもので,小野
  寺には本件事故の原因となる過失がなく,道路交通法規に違反する事実も認め
  られず,小野寺に係る被疑事実はないと判断したことから,再審原告に対する
  道路交通法違反被疑事件について捜査をしたものの,小野寺について犯罪の捜
  査をしなかったものであり,したがって,小野寺に係る業務上過失傷害等の被
  疑事件を検察官に送致しなかったことは何ら違法ではない(刑事訴訟法189
  条2項,246条参照)。」(原判決3頁17行目から4頁1行目まで)。
 5 刑事訴訟法246条(司法警察員から検察官への事件の送致)は,司法警察
  員は,犯罪の捜査をしたときは,この法律に特別の定のある場合を除いては,
  速やかに書類および証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない,
  但し,検察官が指定した事件については,この限りではない,と規定する。
   ひとたび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑ある事件
  に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
  ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
  いのであり,司法警察員は,本条による場合は,事件を送致するか否かを決め
  る権限を与えられていない。本条は,司法警察職員の手による犯罪捜査の適否
  を公訴官である検察官に事後審査させ,もって刑罰権の適正な行使を期するた
  めの担保としての意味も有していることになる(大コンメンタール刑事訴訟法
  第3巻810頁・青林書店・1996年)。
 6 刑事訴訟法189条2項(一般司法警察職員と捜査)は,司法警察職員は,
  犯罪があると思料するときは,犯人及び証拠を捜査するものとすると規定する。
   「犯罪があると思料するとき」とは,特定の犯罪の嫌疑があると認められる
  ときをいう。その認定権は司法警察職員にある。犯罪があると思料するに至っ
  た原因を捜査の端緒という。捜査の端緒にはなんら限定はない。
   捜査の内容は,犯人を発見すること及び証拠を収集することである。「捜査
                  11/22
  するものとする」とは,単に「捜査する」というのと同じ意味である。捜査を
  するのが建前であるという意味であるが,捜査するかどうかが司法警察職員の
  自由裁量にゆだねられているわけではない。(前掲大コンメンタール刑事訴訟
  法第3巻40,41頁)。
 7 本件事故の捜査は,「バイクと大型車による接触事故,バイクの転倒により男
  性1名が負傷した」との玖珠署への届出の電話連絡(甲21)を端緒として,
  堀部警部補が,早水巡査長に対し事故現場に急行し事実調査と現場保存を行う
  よう指示した(甲20・11,12頁)時点で開始されたと解される。
 8 原判決は,「玖珠警察署の司法警察員は,小野寺に係る被疑事実はないと判断
  したことから,小野寺について犯罪の捜査をしなかったものであり,したがっ
  て,小野寺に係る業務上過失傷害等の被疑事件を検察官に送致しなかったこと
  は何ら違法ではない」と判示した。
 9 原判決は,小野寺には,道路交通法規に違反する事実も認められないと判断
  したことから,小野寺について犯罪の捜査をしなかったともいう。
   道路交通法70条は,車両等の運転者は,当該車両等のハンドル,ブレーキ
  その他の装置を確実に操作し,かつ,道路,交通及び当該車両等の状況に応じ,
  他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならないと規定す
  る。小野寺には,時速約40kmの速度で本件道路の自衛隊車進行車線を進行し
  て本件事故現場手前の右カーブに入った時点で,再審原告の過失の有無にかか
  わらず,道路交通法70条の安全運転の義務違反が生じる。(乙1・甲7・実況
  見分調書添付の現場見取図第3図)。
 10 本件事故は対向車同士の車道上での接触事故である。再審原告車の転倒位置
  は,自衛隊の現場見取図(甲13)では再審原告進行車線の中央付近で,堀部
  警部補作成の現場見取図(乙1・甲7)では中央線より再審原告進行車線側に,
  1.5メートルの地点としている。玖珠警察署警察官には,双方の車両の運転
  者について犯罪の捜査する責任があり,捜査をしなかった合理的理由はない。
                 12/22
   そもそも,小野寺について犯罪の捜査をしなかったら,小野寺に係る被疑事
  実の有無は判断できない。小野寺について犯罪の捜査をしないのは違法である。
 11 司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,犯罪の嫌疑がないことが明らかな
  事件でも検察官に送致しなければならないのであり,玖珠警察署司法警察員に
  は小野寺に係る被疑事件を検察官に送致しなかった違法がある。
 12 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。
                 13/22
第3点 実況見分調書(甲7)作成の放置
    犯罪捜査規範104条についての原判決の解釈の誤り
 1 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・ア)
   (ア)玖珠警察署の警察官は,平成11年10月7日に実況見分を行ったが,
  その作成を平成13年9月27日まで放置した。(第1審判決3頁18行目から
  21行目まで)。
 2 再審原告の請求原因について原判決の判断
   原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
   「証拠(甲59)によれば,第3訴訟の控訴審裁判所は,実況見分調書が作
  成されるに至る経過について,次のとおり認定したことが認められる。すなわ
  ち,堀部警部補らは,平成11年10月7日午後0時34分から午後1時20
  分まで本件事故現場の実況見分を実施し,本件道路に残された痕跡等から,加
  害者は本件道路の中央線を越えた再審原告であり,被害者は小野寺であると判
  断した,堀部警部補らは,再審原告立会いの下で本件事故の実況見分を実施し
  ようとしたが,再審原告は,退院後には玖珠警察署に出頭して実況見分に立ち
  会う旨約していたにもかかわらず,退院後神奈川県の自宅に帰ってしまい,堀
  部警部補らは再審原告に対し郵便で玖珠警察署に出頭するよう要請したが,再
  審原告はこれに応じなかった,この間,自衛隊等が,自衛隊車等に実質的な損
  害がないことなどから,再審原告の処罰を望まない旨申し立てたので,堀部警
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  部補らは,平成12年2月10日,後日紛議が生じた場合には,捜査を再開し
  て送致することを条件に本件事故捜査を一時保留処分とすることとした,堀部
  警部補らは,平成13年8月,再審原告が国に対して第1訴訟を提起したこと
  が判明したので,上記保留処分を解除し,送致準備を進めることとしたが,再
  審原告は,高齢と経済的な問題を理由に玖珠警察署への出頭に応じることがで
  きない旨主張し続けた,堀部警部補らは,日田区検察庁検察官の指示を受け,
  堀部警部補が,本件事故当時に作成していた現場メモに基づいて同年9月27
  日付けて実況見分調書を作成し,神奈川県まで赴き,再審原告の取調べを実施
  し,上記実況見分調書を示しながら被疑者供述調書を作成し,同年11月20
  日,再審原告に係る被疑事件を日田区検察庁検察官に送致した。
   上記の第3訴訟の控訴審裁判所の認定を覆すに足りる証拠はなく,証拠(甲
  10の1・2,59)によれば,上記のとおり認定することができる。
   これによれば,玖珠警察署の警察官が実況見分後直ちに実況見分調書の作
  成をしなかったことには,合理的理由があるというべきであり,実況見分調書
  の作成を放置していたということはできない。」(第1審判決6頁16行目から
  7頁16行目まで)。
 3 犯罪捜査規範104条(実況見分)は,「1犯罪の現場その他の場所,身体又
  は物について事実発見のため必要があるときは,実況見分を行わなければなら
  ない。2実況見分は,居住者,管理者その他関係者の立会を得て行い,その結果
  を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。」と規定する。
 4 実況見分調書(甲7)には,実況見分の立会人は小野寺,見分官は間ノ瀬巡査
  部長,補助者は堀部警部補及び早水巡査長と記載されている。見分官として本
  件事故の実況見分を行った間ノ瀬巡査部長は,その結果を実況見分調書に正確
  に記載しておかなければならない。間ノ瀬巡査部長が実況見分後に実況見分調
  書の作成をできなかった特段の事情,作成しなかった合理的理由はない。
   そもそも,小野寺立会いの実況見分調書を作成するにあたり,再審原告立会
                   14/22
  の実況見分の有無は関係がない。
 5 再審原告は,平成11年10月29日玖珠警察署に間ノ瀬巡査部長を訪ね本
  件事故について話を聞き(甲3),約3ヵ月の加療を必要とする見込みとの内
  容の診断書(甲23)を提出し,被害を届け出た。
   本件事故は交通切符では処理できない事案である。間ノ瀬巡査部長は,基本
  書式で,小野寺立会いの実況見分調書を作成しておかねばならない。
 6 調査嘱託書に対する平成19年3月26日付け玖珠警察署長の回答(甲10)
  は,「当該実況見分調書の作成日時が実施日時と異なった理由は,本件を一旦
  保留処分としていたところ,出羽から民事提訴がなされ,送致する必要性が生
  じたため,検事の指揮を受けた上で,事故当日の現場メモを基に実況見分調書
  を作成したという経緯による。」,「作成に際し用いた資料等は,堀部警部補が
  事故当日自ら記録した現場メモ」である。
 7 調査嘱託書に対する平成19年8月17日付け玖珠警察署長の回答(甲11)
  は,「(1) 実況見分調書に添付されている写真の撮影年月日,撮影場所及び撮
  影者;平成11年10月7日,事故現場にて撮影,撮影者;堀部警部補,(2)
  上記(1) の写真のネガの現存の有無;有,(3) 堀部警部補の現場メモの現存の
  有無;無,(4) 上記(1)の写真及び(3)の現場メモの他に,同調書作成の基とな
  った資料等の存在の有無;無」である。
 8 相手方は,第1審の平成20年11月12日付け準備書面で下記のとおり陳
  述して,堀部警部補自身の現場メモの他に,長谷部巡査部長が平成11年10
  月8日に作成していた交通切符様式の実況見分調書の存在を認めている。
   「平成11年10月8日,間ノ瀬巡査部長は,交通切符様式の実況見分調書
  を作成するとともに,小野寺に電話連絡をして10月12日に玖珠警察署に出
  頭するように要請した。平成11年10月12日,間ノ瀬巡査部長は,玖珠警
  察署において任意出頭した小野寺の事情聴取に当たった。(同書面8頁6行目か
  ら10行目まで)」。
                  15/22
   「本来であれば実況見分調書の作成は,見分官である間ノ瀬巡査部長が行う
  べきところ,間ノ瀬巡査部長は,平成13年5月1日付けで九州管区警察局高
  速道路福岡管理室に異動となっていたことから,当該実況見分に補助者として
  立会った堀部警部補が,基本書式で実況見分調書を作成することとし,間ノ瀬
  巡査部長が平成11年10月8日に作成していた交通切符様式の実況見分調書
  及び堀部警部補自身が作成していた現場メモ(図面)並びに事故当日に撮影し
  た車両の損傷状況・道路状況の写真に基づき,平成13年9月27日付けの基
  本書式の実況見分調書を作成した。(同書面13頁1行目から10行目まで)」。
 9 原判決は「堀部警部補らは,日田区検察庁検察官の指示を受け,堀部警部補
  が本件事故当時に作成していた現場メモに基づいて平成13年9月27日付け
  で実況見分調書を作成し,・・・」と認定した。(第1審判決7頁7行目から9
  行目まで)。
 10 原判決は,相手方が認めている,間ノ瀬巡査部長が平成11年10月8日作
  成したという交通切符様式の実況見分調書の存在を否定(看過)している。
 11 玖珠警察署司法警察員(間ノ瀬巡査部長)には,実況見分後速やかに基本書
  式で実況見分調書を作成する義務があり,作成しなかった合理的理由はない。
  玖珠警察署の警察官には,実況見分調書の作成を放置していた違法がある。
 12 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。
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35-3:再審訴状

2010-05-22 11:40:30 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
第4点 再審原告が従前提起した3件の訴訟
   民事訴訟法115条についての原判決の解釈の誤り
 1 原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
   再審原告の請求は,その内容において,すでに提起された3件の訴訟の蒸し
  返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,再審原告が提出する甲号証
  は,今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,
  体裁から見て,従前の3件の訴訟に提出されたものと認めることができること
                   16/22
  からもいうことができる。(第1審判決9頁20行目から24行目まで)。
 2 上記3件の訴訟の控訴審は,各事案の概要(要旨)を下記のとおり判示した。
  (1) 第1訴訟(甲50・控訴審判決2頁7行目から14行目まで)
    センターラインが引かれた対向1車線の道路におけるヘアピンカーブの坂
   道において,下り車線を走行してきた再審原告運転の自動二輪車(被害車両)
   と登り坂を対向走行してきた自衛隊員小野寺秀和運転の自衛隊車両(加害車
   両)と接触し,被害車両が転倒した本件事故により,再審原告が受傷した。
   本件は,再審原告が,相手方(国)に対し,国家賠償法1条及び自動車損害
   賠償保障法3条に基づき,本件事故による損害賠償金2557万8457円
   及びこれに対する本件事故の日である平成11年10月7日から支払済みに
   至るまで民法所定の年5分の遅延損害金を求めた事案である。
  (2) 第2訴訟(甲56・控訴審判決2頁15行目から3頁2行目まで)  
    本件は,相手方(神奈川県公安委員会)が,平成16年4月20日に道路
   交通法101条の規定に基づき再審原告の運転免許証の有効期間の更新をす
   るに当たり,再審原告に過去5年以内に法70条(安全運転の義務)違反行
   為があり,一般運転者(法92条の2の表の備考一の3)に該当すると認定
   してその免許証の有効期間の更新をした(以下「本件更新」という。)のに対
   して再審原告は,再審原告には安全運転義務違反の事実がないと主張して,
   本件更新処分のうち,再審原告か「優良運転者」(法92条の2の表の備考一
   の2,道路交涌法施行令(以下「施行令」という。)33条の7)ではなく一
   般運転者に該当すると認定した部分(以下「本件認定部分」という。)は違法
   であると主張,本件更新処分のうちの本件認定部分の取消しを求める事案である。
  (3) 第3訴訟(甲59・控訴審判決1頁24行目から2頁12行目まで)
    本件は,再審原告が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,再審
   原告所有の普通自動二輪車(以下「再審原告車」という。)を運転中,大分県
                 17/22
    玖珠郡九重町大字湯坪県道別府一の宮線水分起点34.9キロメートル先付
   近路上(以下「本件道路」という。)において,自衛隊車両と接触事故を起こ
   し,これにより受傷したとして,国に対し,損害賠償請求訴訟(横浜地方裁
   判所平成13(ワ)第2714号,以下「別件訴訟」という。)を提起したが敗
   訴し,その後その判決が確定したが,同訴訟において,国の指定代理人浅香
   幹子(以下「浅香」という。)らが証拠資料を隠ぺい又は破棄して提出せず,
   証拠資料の捏造又は改ざんを行い,又は不法に作成された証拠を弁論に使用
   した違法があると主張して,相手方(国)に対し,国家賠償法第1条に基づ
   き,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及びこ
   れに対する上記不法行為後である平成17年11月9日から支払済みまで民
   法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 3 本件(以下「第4訴訟」という。)は,再審原告は,大分県玖珠郡内で交通事
  故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察官が当該交通事故に関する事件の捜査
  に当たり,実況見分調書の作成をしないまま放置するなどの違法行為をしたこ
  とにより損害を被ったと主張し,上記違法行為が原因で交通事故の加害者に対
  する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支払いを受けることができなかったこと
  による損害(交通事故による損害)2557万8457円及び上記違法行為自
  体による慰謝料442万1543円の合計3000万円の損害金のうちの一部
  請求として,10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年
  9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を
  求めている(原判決2頁4行目から12行目まで)事案である。
 4 既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,判
  決に当事者と記載された当事者に及ぶ。(民事訴訟法115条)。
 5 第1訴訟,第2訴訟及び第3訴訟の3件の紛争の相手方は,国(自衛隊),神
  奈川県公安委員会及び国(国の指定代理人)であり,本件の訴訟の相手方は大
  分県(玖珠警察署)である。
                   18/22
 6 再審原告の請求は,すでに提起された3件の訴訟の蒸し返しではない。
 7 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。
第5点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正
   民事訴訟法114条についての原判決の解釈の誤り
   同法1項は,訴訟物たる権利・請求権の存否を判断した過程である判決理由
  中の事実判断および法適用には既判力が生じないことを明らかにしている。
   原判決が証拠とする(甲50,55,58,59)はすべて別件訴訟の判決
  書であり,原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴
  訟の判決理由中の事実判断および法適用であり,既判力が生じないことは明ら
  かである。
 1 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・イ,ウ)
   (イ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に真実でない記載をした。
   すなわち,堀部警部補や間ノ瀬巡査部長は実況見分を行っていないにもかわ
  らず,見分官,補助者と記載し,実況見分の時間も不実である。
   (ウ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に実況見分時に撮影したものでな
  い写真を添付した。荷台から外されたはずの申立人の荷物が荷台にあること,
  申立人車でない自動二輪車が写っていること,当時なかった徐行の道路標示が
  あること,道路に停まっていたはずの自衛隊車が草地に移動されていること,
  当時なかった里程標かあること,実況見分調書にはタイヤ痕,擦過痕があると
  記載されているが写真には写っていないことなどから,実況見分調書に添付さ
  れた写真が実況見分時に撮影されていないことが判明する。(第1審判決3頁2
  2行目から4頁6行目まで)。
 2 申立人の請求原因(イ・ウ)について原判決の判断
   原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
   証拠(甲50,55,58,59)によれば,第1訴訟の控訴審裁判所は,
                  19/22
  実況見分調書の作成について,道路の車道幅員は,現場の状況において自動車
  が走行可能な最大幅を計測した結果として誤りはない,自衛隊車は,いったん,
  本件事故地点付近の道路外の草地に移動され,警察官の到着後に開始された実
  況見分に際して,道路上に移動されたなどと認定した上で,実況見分調書の内
  容に不自然不合理なところはなく,本件事故当日に警察官により実施された実
  況見分の内容を記載したものと認定し,現場事故写真についても,証拠により
  本件事故当時の里程標の存在を認めたこと,第2訴訟の第1審裁判所は,間ノ
  瀬巡査部長を見分官,堀部警部補及び早水巡査長を補助者として平成11年1
  0月7日午後0時34分から午後1時20分まで本件事故現場の実況見分が実
  施されたと認め,間ノ瀬巡査部長らが当日実況見分を行わなかったのではない
  かと疑うべき事情は存在しないと判断し,実況見分調書添付の写真についても,
  同一機会に撮影された一連のもので,本件事故直後の状況を撮影したものと理
  解するのが自然であるとし,「申立人の荷物」,「徐行」の道路標示,「里程標」
  が実況見分当時存在したことを疑うべき事情はないと判断したこと,第3訴訟
  の第1審裁判所は,第2訴訟の第1審裁判所と同様に間ノ瀬巡査部長らが上記
  日時に実況見分を実施したと認め,添付の写真も実況見分の際に撮影されたと
  認めたこと,とりわけ,「申立人の荷物」,「里程標」にねつ造・改ざんはないと
  判断したこと,第3訴訟の控訴審裁判所も,間ノ瀬巡査部長らが上記日時に実況
  見分を実施したと認め,実況見分調書に添付された写真についても,本件全証
  拠によっても,この写真がねつ造・改ざんされたと認めることはできないと判
  断したこと(第3訴訟の第1審裁判所は,当該訴訟において,申立人が実況見
  分調書に添付された写真が本件事故当日に撮影されたものでなくねつ造・改ざ
  んされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出したのに対し,申立人が
  挙げる種々の事情の大半は写真画面上の単なるコントラストの問題や個人の主
  観に基づいて不自然と論難しているにすぎず,ねつ造・改ざんがあったことを
  疑わせるような客観的な根拠となるものはないとも判示していること。)が認め
                   20/22
  られる。
   これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
  2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
  記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
  き,本件訴訟においても,これを疑わせるに足りる客観的証拠はない。(第1審
  判決7頁17行目から~8頁22行目まで)。
 3 民事訴訟法114条1項は,訴訟物たる権利・請求権の存否を判断した過程
  である判決理由中の事実判断及び法適用には既判力が生じないことを明らかに
  している。
 4 本件第1審第2回口頭弁論調書に,「原告(再審原告);次回期日までに書証
  (過去の判決正本)を提出する。」との記載がある。再審原告は,平成20年1
  1月27日証拠説明書(8) 記載のとおり,甲49号証~甲60号証として過去
  の判決正本(謄本)を提出した。
 5 原判決が証拠とする(甲50,55,58,59)はすべて別件訴訟の判決
  書であり,原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴
  訟の判決理由中の事実判断および法適用であり,既判力が生じないことは明ら
  かである。
第5 おわりに
 1 終局判決(民訴法243条)について旧法下での最高裁の判決は,「訴訟が裁
  判をするに熟したかどうかを判断して口頭弁論を終結することは,裁判所が自
  由裁量によって決することであり記録を調査しても右の判断に不当の点はなく
  又証拠の取捨判断は事実審である裁判所の自由心証によることであって,いず
  れも原裁判所の専権に属するから,原判決には所論のような違法はなく論旨は
  理由がないとして棄却するのが例である。
 2 再審原告は,原審の判断に不当な点があるとして5点に付き再審理を求めて
  いる。
   第5点では,原判決が証拠とする(甲50,55,58,59)はすべて別
  件訴訟の判決書であり,原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」
  は,別件訴訟の判決理由中の事実判断および法適用であり既判力が生じないこ
  とは明らかであるなど,再審原告の主張についての裁判所の判断を求めている
  のである。
再審訴状に綴じた別紙
 別紙1 調書(決定)平成22年(受)第561号)
            決定日 平成22年4月23日
 別紙2 「ミスターバイク」モーターマガジン社・平成22年12月号46頁
     自衛隊車両は「武器」?だから自賠責は適用除外
      インターネットの検索サイトで,「自衛隊,交通事故」と入力すると,
     『バイクでツーリング中,自衛隊車両と事故』というタイトルが上位に
     ずらっと登場します。これらのサイトを立ち上げているのは,神奈川県
     に住む出羽やるかさん(ペンネーム)という男性です。
      出羽さんは,九州のやまなみハイウエーをツーリング中,自衛隊のト
     ラックがけん引する炊事車両との衝突で重傷を負い,事故から10年経
     った今も,国を相手の裁判を闘い続けているのです。・・・・・。
附属書類
 1 再審訴状 副本 1通
        以上
               22/22

34:調書(決定)

2010-05-21 04:06:19 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
                                         裁判長認印 | 印     
------------------------------------------------------------------------------
                    調     書 (決定)
------------------------------------------------------------------------------
事 件 の 表 示 | 平成22年(受)第561号
------------------------------------------------------------------------------
決   定   日 | 平成22年4月23日
------------------------------------------------------------------------------
裁   判   所 | 最高裁判所第二小法廷
------------------------------------------------------------------------------
裁判長裁判官    | 竹内行夫
    裁判官    | 須藤正彦
    裁判官    | 千葉勝美
------------------------------------------------------------------------------
          | 申立人 出羽やるか
当 事 者 等 | 相手方 大分県
          | 同代表者知事広瀬勝貞
-------------------------------------------------------------------------------
原判決の表示 | 東京高等裁判所平成21年(ネ)第3294号平成21年11月26日判決
-------------------------------------------------------------------------------
裁判官全員一致の意見で,次のとおり決定。
第1 主文
 1 本件を上告審として受理しない。
 2 申立費用は申立人の負担とする。
第2 理由
   本件申立ての理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
  平成22年4月23日
    最高裁判所第二小法廷
     裁判所書記官 後藤照幸 印 
                    これは正本である。
                     同日同庁
                      裁判所書記官 後藤照幸 公印
--------------------------------------------------------------------------------                    

33:第1訴訟 被告 国(自衛隊)

2010-04-06 12:06:22 | 第1訴訟 被告国(自衛隊)
自衛隊の交通事故

第1訴訟の相手方,被告・国(自衛隊)の主張

第1訴訟の原告(やるか)の主張

玖珠警察署の実況見分調書

玖珠警察署間ノ瀬巡査部長とやるかの会話の録音内容

控訴理由書

上告理由書

上告受理申立て理由書

特別抗告理由書

32:記録到着通知書

2010-03-13 05:12:34 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
                       平成22年3月10日
〒000-0000
神奈川県横浜市00区000丁目0番0号
 出羽やるか殿
 平成22年(受)第561号

             最高裁判所第二小法廷
                 裁判所書記官  後藤 照幸  公印
           記録到着通知書
 原裁判所から下記事件記録の送付を受けました。今後は,当裁判所で審理
することになりますのでお知らせします。
 なお,審理する上で書面を提出してもらう必要が生じたときは連絡します。
その際には,提出する書面に当裁判所における事件番号(下記1)を必ず記
載してください。
               記
1 当裁判所における事件番号
  平成22年(受)第561号
2 当事者
  申 立 人     出羽やるか
  相 手 方     犬分県
3 原裁判所及び原審事件番号
 東京高等裁判所
 平成21年(ネ)第3294号

 当裁判所所在地  〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号
 電話 03-3264-8111(内線 0000・0000・0000)
------------------------

31:民事訴訟法244条

2010-03-05 09:37:37 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
第二四四条 裁判所は、当事者の双方又は一方が
 口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしない
 で退廷をした場合において、審理の現状及び当
 事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認める
 ときは、終局判決をすることができる。ただ
 し、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せ
 ず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、
 出頭した相手方の申出があるときに限る。
 (1) 本条新設の背景
 二四三条によると、裁判所は、訴訟が裁判をする
のに熟したときには、終局判決をすることになる。
すなわち、裁判所は、口頭弁論期日において、口頭
弁論を終結する旨を宣言し、終局判決言渡しの期日
を定め、その期日に終局判決を言い渡すのである。
この口頭弁論の終結宣言、判決言渡期日の指定は、
当事者がその口頭弁論期日に欠席(または出席しても
弁論を行わずに退席)した場合にも、行うことができ
るだろうか。なぜなら、裁判所が口頭弁論期日を開
いたことは、当事者の攻撃防御の展開がまだ十分で
はなく、したがって訴訟が裁判をするのに熟してい
ないと考えたために、口頭弁論期日を開いたのでは
なかったか。ところが、その期日に当事者は欠席な
どして、攻撃防御を展開する機会をもたなかった。
それにもかかわらず、裁判所が口頭弁論の終結を宣
言し、判決言渡期日を指定するとは、実は裁判所が
まだ裁判をするのに熟していないのに、終局判決を
するという違法をおかすのではないか。旧法下で
は、このことが議論の的とされた。しかし、裁判実
務では、裁判所がすでに訴訟が裁判をするのに熟し
たと考えているのに、念のために(当事者へのサービ
スとして)口頭弁論期日を開くことが少なくなく、
また、当事者がその期日に欠席などをしたこと自
体、もはや新たに攻撃防御を展開する資料をもって
いないのではないかという推測もさせる。そこで、
最高裁は、当事者双方が口頭弁論期日に欠席した場
合でも「訴訟が裁判を為すに熟するときは、裁判所
は口頭弁論を終結して終局判決をすることができ
る」という意見を示した(最判昭41・11・22民集二〇
巻九号一九一四頁)。本条は、この最高裁の見解を明
文化したものである。
 (2) 本条は制裁規定か
 ところで、右の最高裁判決が示された事案は、当
事者が裁判所の指定した口頭弁論期日に何度も何度
も欠席をした事案であった。そこで、右の最高裁判
決にみるような措置(当事者が口頭弁論期日に欠席し
たにもかかわらず、口頭弁論を終結し、判決言渡期日を指
定する)はそのような何度も何度も欠席する当事
者、訴訟追行に熱意を示さない当事者に対する制裁
として行われるのか(その他の場合には行われないの
か)、という疑問を生じた。本条もまた、「審理の現
状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認
めるとき」といい、二四三条のように「訴訟が裁判
をするのに熟したとき」という要件をあげていな
い。ことに「当事者の訴訟追行の状況」が掲げられ
ているのをみると、右のような疑問も成り立つ余地
が十分ある。そこで、次のような二つの見解が考え
られる。その一は、本条は右のような訴訟追行に熱
意を示さない当事者に対する制裁規定であって、裁
判所はその時までの審理の状況、当事者の提出した
攻撃防御方法、弁論の全趣旨などを総合し、さらに
主張責任・証明責任に関する法理を適用して、その
時点で可能な判決ができる旨を明らかにしたとする
見解、その二は、右の最高裁判決も「訴訟が裁判を
為すに熱するときは」といっていたし、訴訟追行に
不熟心な当事者に対する制裁としては、別に二六三
条が設けられ、旧民訴法(旧二三八)に比べてその
制裁が強化されているから、当事者に対する制裁は
それによるべきではないかとする見解、つまり本条
の場合にも「訴訟が裁判をするのに熟したとき」と
いう二四三条と同じ要件を必要とする見解である
(もっともこの見解でも、当事者が口頭弁論期日に欠席な
どしたことは、もはや新たに展開する攻撃防御の資料がな
いことを推測させ、右の要件があると判断させる有力な要
因となろう)。立案担当者は前者の見解に立っていた
ようである(二四三条と本条の差異を明らかにするため
には、この見解を適当としよう。鈴木正裕「新民事訴訟法
における裁判所と当事者」講座新民訴1五九頁)。
 (3) 当事者一方の不出頭‐‐相手方の申出
 当事者の一方が欠席などをした場合、相手方当事
者の申出があるときに限り、終局判決をすることに
している(本条但)。これは、現時点で終局判決が行
われると、自分にとって不利な判決がなされるので
はないか、もっと新しい攻撃防御を展開した後に終
局判決を受けたいという相手方当事者の気持ちに配
慮したものである。
  (4) 判決言渡期日への呼出し
  右に述べた最高裁判決の路線を踏襲した同じ最高
 裁の判決のなかに、「当事者双方欠席の口頭弁論期
 日で弁論を終結し、判決言渡期日を指定した場合、
 その言渡期日への呼出状の送達は必要でない」旨判
 示したものがある(最判昭56・3・20民集三五巻二号二
 一九頁)。この最高裁の判示どおりに処理されると、
 当事者は判決書(またはこれに代わる調書)の送達を
 受けるまで、口頭弁論終結の事実を知らず、今回の
 口頭弁論期日は欠席したが、次回の口頭弁論期日に
 は攻撃防御を展開しようとしても、その準備が無駄
 となるし、口頭弁論の再開(一五三)を申し立てて
 攻撃防御を展開する機会も失ってしまう。この最高
 裁判決の背景には、口頭弁論期日に欠席した当事者
 は、すぐに裁判所(書記官)に問い合わせて、その
 欠席した期日にどのようなことが行われたか尋ねる
 くらいの熱意をもつべきである、という考慮がある
 のかもしれないが、その考慮は、弁護士のついた訴
 訟はともかく、本人訴訟にとっては酷にすぎよう。
 呼出状の送達を行うべきであるとする見解がある
 (右最判に対する評釈、高橋宏志・法協九九巻一〇号一五
 六六頁。同教授は、当事者一方が不出頭の場合は別とし
 て、当事者双方が不出頭の場合に呼出状を送達しないこと
 は、重大な手続違反として上告〔受理〕理由になるとい
 う。民訴規一五六は、判決言渡期日の日時は裁判所書記官
 からあらかじめ当事者に通知すべきであるとしているが、
 その日時を〔当事者欠席の〕期日に告知したときは通知を
 要しない、としている)。
 (鈴木正裕・基本法コンメンタール民事訴訟法2 266‐267頁)
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30-1:訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルトキ

2010-02-21 07:33:52 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
「訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルトキ」について  
                       太田勝造
      一 はじめに
      二 裁判への成熟の二つの側面
      三 情報状態としての裁判への成熟
      四 手続保障の充足としての裁判への成熟
      五 おわりに
                    
      一 はじめに
 民事訴訟法一八二条は「訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決ヲ為ス」と規定し、いかなるときに
口頭弁論を終結して判決をなすかの基準として、「裁判をなすに熟するとき」という概念を用いている。この基準
は一部判決・中間判決においても用いられている(一八三条・一八四条)。以下では便宜上この概念を「裁判への成
熟」と表現することにする。
 ところで、この裁判への成熟の判断はちょうど事実の認定における「自由ナル心証」二八五条)と同様に裁判
官の内心の判断であり、実務の知恵に委ねられていた面が少なくなかったと思われる。しかし、審理の終結に際し
ては、正しい裁判、迅速な裁判の要請と手続保障要求をめぐって、裁判所、原告ならびに被告の三者間、さらには
当事者とその訴訟代理人を区別しての五者間で利害の一致と対立が複雑に入り組むのであり(多数の当事者をもつ
訴訟では一層複雑となる)、裁判への成熟とはそれら各人の利害の調整という役割を担った概念であるということが
できるのである(後述)。そこで、本稿は、そのような裁判への成熟という概念について、その意義と機能を検討
しようとするものである。
      二 裁判への成熟の二つの側面
 「訴訟が裁判に熟するとき」という概念は、旧民事訴訟法(二二五条~一二七条)においても、さらに、テッヒョ
ー草案(三七一条~二七三条)においても同様に用いられており、ドイツ民事訴訟法に由来するとされる。しかし、
日本の立法者がこの概念をいかなる内容として考えていたかを知るてがかりは乏しい(1)。むしろ、あまりに当然
明白な内容であるとして問題にもされていなかったといえよう(2)。
 学説においても、裁判への成熟は自由心証と同じく裁判官の内心の判断であり、具体的事案に即して裁判所の自
由裁量で判断されるべきことがらであるとされているので、そもそも理論的検討の対象として正面から取り上げら
れる可能性も少なかったといえよう。
 このようなわけで、裁判の成熟の内容についての直接的な議論はそれほど展開されているわけではなく、むしろ、
従来の議論は、裁判に熟するときについての判断が原則としては裁判所の裁量・専権事項であると前提し(3)、その
裁判所の判断に対する当事者の関与・介入をどこまで、そしてどのような形で手続的に認めるかを議論していたと
評価することができよう。弁論終結の可否の判断に対する当事者の介入・関与の形態としては、弁論再開の申出や、
審理不尽・釈明権不行使の違法を根拠とした上訴の方法などが考えられる。また、弁論の終結そのものをめぐって
は、たとえば、双方当事者の欠席の期日にそのまま弁論を終結することができるかとか、双方当事者に訴訟追行の
熱意が見られないような場合に弁論を終結して判決をなしうるかというような形で、裁判への成熟に対する原審の
判断の妥当性が問題とされうるであろう。このような、裁判への成熟の判断を前提とする手続追行の各場面で、当
事者の権利をどこまで認め、裁判所と当事者の間の役割分担をどのように規整するかという形で議論されていたと
考えられるのである。
 まず、従来の説明としては、たとえば兼子博士は、
 「審理の結果、訴え(又は上訴)の不適法であること、或いはその適法である場合には、原告の請求(又は上訴
人の不服の主張)の当否に関して終局的な判断が可能な状態に到達したことを指す。そのためには、当事者の提出
した攻撃防禦の方法を審査し(訴訟要件にして職権探知をすべきものは、職権探知に基づく資料をも加えて)、こ
れにより確定し得ない資料の不足は、主張責任及び挙証責任の分配の原則で補って判断する。当事者においてそれ
以上新たな攻撃防禦の方法を提出すれば、その結論が左右される可能性のあることは、裁判に熟したことを妨げる
ものではない。(現代仮名使い・用字に改めた)(4)
と述べられ、また、小室教授は兼子博士と同趣旨の説明に続けて、
 「当事者がそれ以上の新たな攻撃防禦方法を提出すれば、その結論が左右される可能性のあることは、裁判に熟
したことを妨げるものではないが、それは攻撃防禦方法を提出する機会がありながら当事者が提出をしない場合か、
釈明権の行使により提出を促したにもかかわらず提出しない場合のことである。……裁判をするに熟するには、提
出された事実関係を、場合によっては釈明権の行使によって(一二七〔条・筆者〕)、完全に解明することが、必要に
して十分な条件である……訴訟判決の場合と本案判決の場合とでは多少の差異があり、前者の方が比較的容易に判
明する場合が多い。」(5)
と述べられる。
 このような従来の説明から、筆者には、裁判への成熟という概念の内容に二つの側面を区別することができるよ
うに思われる。すなわち、事案を完全に解明すること、あるいは訴訟資料の充実という面の説明から窺われるとこ
ろの審理の結果たる情報状態としての側面と、釈明権の行使や攻撃防禦方法の提出の機会が論及されていることか
ら窺われるところの審理における手続保障としての側面の二つを区別することができると思われる。
 双方当事者が欠席の期日にそのまま弁論を終結しうるかをめぐる議論においては、手続進行における裁判所の職
権性や訴訟促進の要請と、当事者の手続保障の要請とをどのように調整するかが問題とされる。裁判への成熟が訴
訟の情報状態のみを問題とするのであるなら、訴訟促進の要請から、裁判所が裁判をなすに熟すると判断するかぎ
り、実質的な口頭弁論が一回も開かれなくても直ちに弁論を終結して判決をすることができることになろう。しか
し、学説も実務も一般にこのような考え方はとらず、双方欠席での弁論の終結には、当事者に訴訟進行の熱意がな
いような場合であることを要請している(6)。たとえば、井上(正)教授は、
 「要するに、具体的な訴訟運営の上で、両当事者欠席のまま行なう弁論終結は、無闇に抜ぎ放ってはならぬ『伝
家の宝刀』と見るべきものである。したがって、これを用いうるのは、すでに十分な主張・立証がつくされて後に
当事者双方が欠席した場合、あるいはまた、当事者双方が何度か欠席し、十分な主張・立証がつくされたわけでは
ないけれども、新たな攻撃防禦方法が補充されるとも思えぬ場合などに限られ、しかも、いずれの場合も、他に示
談等が進められているわけでなく、当該訴訟の判決によらねば紛争は解決できぬ、と見られる事例に限られねばな
らない。」(7)
と述べられる。当事者双方の欠席での弁論終結とは、当該訴訟に最も直接の利害を持つ両当事者が望んでいないに
もかかわらず裁判所の判断のみで終結に踏み切ることであり、単に事案が解明されたという意味で裁判に熟してい
るだけではなく、それ以外の、審理の機会を裁判所が一方的に打ち切ることを正当化するような事由、たとえば両
当事者に訴訟追行の熱意がないなど、を要求しているのが学説の暗黙の前提といえそうである。ただし、この場合、
用語として裁判への成熟に手続保障としての側面を含めず、裁判に熟するとともに手続保障にも反しないという形
で要件を掲げる場合も見られる(8)。
 終結した弁論の再開(民訴一三三条)の判断は裁判所の専権事項とされ、当事者には弁論再開の申立権はないと
解されてきた(9)。裁判への成熟の判断が裁判所の裁量に委ねられていると解されていることのコロラリーである。
なぜなら、再開の中立権を当事者に認めることは、弁論終結の判断、すなわち裁判に熟するとの裁判所の判断に対
する当事者の関与・介入を認めることになるからである(ただし、もし再開申立権を認めても、その要件を口頭弁論終
結後の事由ないしそれと同視しうる事由に基づく場合のみに限定するなら、論理的には終結時の裁判所の裁判への
成熟の判断自体に対する異議申立権を認めたことにはならない)。
 ところが、最近、当事者の弁論再開申請を無視して弁論の再開をしないことが違法となる場合があることを認め
る最高裁の判決が出て(10)、議論が展開し始めている。弁論再開制度の趣旨を立法当時の学説のように弁論終結後、
裁判所が事案の解明が不十分である、裁判をなすに資料が不足していると判断したとぎに、さらに審理を続けるた
めだけの制度であると考える場合には(11)、弁論終結の判断、ひいては裁判への成熟の判断の内容は訴訟の情報状
態としての解明の程度が十分であるか否かのみであることになる。しかし、従来学説においては、一定の場合には
弁論の再開をしなくてはならない場合かあるとの主張もなされていた。たとえば、第一審において当事者が弁論期
日に欠席したので、裁判所は一四〇条三項を適用すべきものとして弁論を終結した場合、当事者から再開の申立を
し、その理由として期日に欠席したのは病気、汽車の事故等正当の事由によることを主張してこれを疎明したよう
な場合には裁判所は再開をなすべきであるとの主張があった(12)。
 前記の最高裁判決でも、弁論を再開しないことが、明らかに民事訴訟における手続的正義の要求に反する場合に
は弁論の再開をなすべきであると判示した。事案は、土地の所有者が無権代理人を通じてその上地を購入した被告
に対して所有権登記・抵当権設定登記等の抹消登記を求めた訴訟で、控訴審の口頭弁論終結直前に原告が死亡し、
無権代理人が原告を包括承継して原告の地位についたが、訴訟代理人がいたため訴訟は中断せず終結され、その後
に被告は原告の死亡を知って弁論再開を申請したが原審はそのまま被告敗訴の判決を言い渡したというものである。
最高裁は、いったん終結した弁論を再開すると否とは当該裁判所の専権事項に属し、当事者は権利として裁判所に
対して弁論の再開を請求することができないが、この裁判所の裁量権も絶対無制限のものではなく、弁論を再開し
て当事者にさらに攻撃防禦の方法を提出する機会を与えることが明らかに民事訴訟における手続的正義の要求する
ところであると認められるような特段の事由がある場合には弁論を再開すべきであると一般論を展開したうえで、
被告の再開申請の理由(原告が死亡し、無権代理人が相続すると無権代理人自ら法律行為をしたのと同様の法律関係
を生ずるとの主張)は判決の結果に影響を及ぼす可能性のある重要な攻撃防禦方法であり、これを提出する機会を与え
られないまま敗訴すると既判力により被告は登記の回復をはかることができなくなるが、被告が原告の死亡を知ら
ず、かつ、知らなかったことにつき責めに帰すべき事由はないのであるから、被告にこの主張を提出する機会を与
えないまま被告敗訴の判決を言い渡すことは民事訴訟における手続的正義の要求に反すると判断した。この「民事
訴訟における手続的正義の要求」を基準に弁論再開の要否を判断するということは、弁論の終結における裁判への
成熟の判断において、当事者の手続保障が十分なされたといえるかの点も事案が解明されたかの判断とともに考慮
されるべきことになろう。
 これらの学説・判例を受けて最近、以下の場合に弁論再開の申立権を認める論稿が出ている(13)。すなわち、
 ①釈明義務を尽くさなかった場合など裁判所が自己のなすべき手続上の義務をたったため、当事者に適正な弁論
をする機会を失わしてしまった場合、
 ②裁判所が口頭弁論終結後、不明な点を職権による嘱託調査手続(民訴法二六二条)によって調べ、その結果を
斟酌しようとする場合、
 ③審理を担当した裁判官が、口頭弁論終結後、判決原本完成前に、死亡ないし更迭された場合、
 ④当事者が再審事由を主張して弁論再開を申請する場合、
 ⑤判決の遮断効の及ばない事実を主張して弁論再開を申請する場合、
 ⑥口頭弁論終結後、故意または重大な過失なくして主張しえなかった新事実を主張するため弁論の再開を申請す
る場合、
 これらの場合には、裁判所に弁論を再開すべき義務が生ずると論ずる。ここにおいても訴訟の情報状態たる解明
の程度が不十分であることだけではなく、当事者の弁論の機会を保障する必要かおる場合など、手続保障の要素も
重視されており、これらが弁論再開要件であるとすることは、逆に弁論終結要件である裁判への成熟の判断の内容
としてもこれら二つの側面から考えるべきことになろう。
 そこで、これら二つの側面を以下では筆者なりに若干敷衍してみたいと思う。







30-2:訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルトキ

2010-02-21 06:47:54 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
        三 情報状態としての裁判への成熟
 筆者はかつて、「裁判に熟すとは、必要とされる審理結果の確実性(解明度)に達したことである。」と述べ
た(1)。その際、「解明度」について以下のような例で説明した。
 (a) 原告XはA市で赤いバスに追突されて怪我をした。
 (b) 事故当時A市内のバスは数社が運行していたが、赤いバスの内の九〇%は被告Y社の所有であった。
 原告がこの二つの事実のみを主張立証しているとき、誤判の危険率から見るとXを勝たせた方がYを勝たせた方
より、正しい判決である確率は九対一で大きいであろうが(弁論主義の下では、この段階ではA市のバスの九〇%は
Y所有であったということしか判断材料とならず、資料に基づかずにかってにYが加害者である確率を六〇%や四〇%
などに変更することはできないはずである)、そこで得られた心証と、さらに目撃者、Y社のバスの修理についての調査、
事故当日のY社のダイヤグラム、その他予想される証拠の有無や証拠調べなどを尽くした後の心証とでは、たとえ
確率的には結果として同じ九〇%となろうと、その内容は大きく異なっているであろう。審理が尽くされて訴訟に
おける情報状態が豊かになるほど判断は確実なものとなろうと論じ、そのことを「審理結果の確実性(解明度)」
が高くなったのだと表現した。そして、裁判に熟すとはこのような意味において審理が十分に尽くされて、審理結
果の確実性が高まり、必要とされる訴訟の情報状態が達成されたことであると述べたのであった(2)。
 現在では、筆者は以下に述べる二つの点て、裁判への成熟と審理結果の確実性を同視することについては一部修
正すべきであると考えている(3)。まず第一点は、上記の解明度の説明では、形成された争点についての事実認定
の過程のみを対象としているが、審理を尽くすという解明度の内容には、ほかに、主張を尽くして争点を網羅し、
明確にして整理するというレベルでの審理を尽くすということがあると思われる。さらに、審理を尽くしたとは、
法律構成の点でも十分に検討を尽くしているということも意味するはずである。筆者は、この法律構成と争点形成
とは、不即不離な関係にあると考えている。訴訟における争点形成とは、法律要件に該当する具体的事実を主張し、
それが相手方によって争われて争点が形成されるのであるから、いかなる法律構成をとるかの決定は争点決定の過
程と重なり合う場合が多いのであり、逆に法律構成なくして争点はありえないといえるであろう。この法律構成・
争点形成(事実の主張)・証拠調べの三つのレベルで審理が十分に尽くされたときが必要とされる解明度が達成され
たとき、すなわち裁判に熟したときと一応いうことができると考える(一応と述べる理由は第二点を参照)。この点
で、解明度(裁判における情報状態)は審理結果の確実性(事実の存否についての心証の確実性)と法律構成の検討・
争点形成(事実主張)の十分さを包括する概念であり、裁判への成熟の中心的内容であると考える。
 修正を要すると考える理由の第二点は、上記の裁判への成熟の定義が、裁判所の情報状態という裁判所の側から
の観点のみで構成されている点で、不十分ではないかと思われるからである。すなわち、訴訟が裁判に熟したとし
て弁論を終結し判決をなすことができるかの判断においては、当事者主義を原則とする民事訴訟であるから当事者
の手続保障がなされたかの考慮も不可欠であると思われ、裁判所の獲得した情報状態のみを基準とすることは十分
でないと考えるのである。この点は後に節を改めて論じることにする。
 以上のように修正され、留保を付した限度で、裁判への成熟とは、審理が尽くされて裁判所に十分な情報が獲得
された状態、すなわち十分な解明度が達成されたときであると考えることができよう。
 では、どれほどの解明度の達成が裁判への成熟には必要とされるのであろうか。まず、法律構成と争点形成のレ
ベルでの必要とされる解明度については次のように考えている。審理不尽・釈明権不行使の違法とは、弁論を終結
すべきではなかった、釈明をするなどしてさらに審理を尽くすべきであったという判断であるから、審理不尽に該
当するかどうかあるいは釈明権不行使の違法となるかどうかが必要とされる解明度の判断においてある程度の基準
を提供するのではないかと思われる。新堂教授は審理不尽の判例分析において、「裁判官にしても、当事者にして
も、事件のストーリーをみながら、とりあえずどんな法律構成が考えられるか、適用されるべき法条はなにかを想
定し、そこから、認定すべき必要な事実を定めていくことになる。そこでは、まず第一に、問題にすべき法律構成
が違えば、結論を出すために必要な、認定すべき事実も当然異なってくる。第二に、法律構成が定まったとして、
その法律構成に関連する法規の要件事実の存在、不存在を判断するには、具体的に主張されている事実のうちどの
部分が確認されれば必要にして十分かを判断しなければならない。……このいわば争点形成段階におけるいわゆる
あてはめの作業においても法の解釈が違えば、認定すべき必要な事実の範囲も当然異なってくるはずである。」
と述べられ、審理不尽とは、この法律構成が誤っている場合と争点形成段階での誤りの場合とであると指摘され
る(4)。また、十分な検証は後日に譲らねばならないが、釈明権不行使の違法とされる場合においても、裁判所が
請求の定立や法律構成・争点形成段階での当事者の訴訟追行に不明確さや不十分さのあることを知りあるいは知り
えたはずであるのに釈明によって事案の解明に努めることを怠った場合が多いのではないかと筆者には思われ
る(5)。このような分析から、必要な解明度が達成されたとは、可能な法律構成、適用可能な法条・要件事実を十分
に検討し尽くし、予想されうる主張や証拠の提出が尽きていることであるということができるのではあるまいか。
 次に、事実の認定のレベルでの必要とされる解明度についてぱ、筆者は、訴訟に必要な時間的物質的な費用と紛
争の重大性の比較衡量によって判断されるべきであると考える。たとえば、少額の訴訟で、何年も審理を続け何十
万円もかけて証拠を調達するなど不要であろうし、逆に、人の生命や重大な社会的利益が問題とされている訴訟の
場合には十分に審理を尽くし、高い解明度を達成することが要求されるであろう(6)。
      四 手続保障の充足としての裁判への成熟
 弁論の終結をめぐっては、裁判所・原告・被告の間での訴訟追行における利害が複雑に入り組むであろう。すな
わち、迅速な裁判や審理の充実については、抽象的一般的には裁判所も当事者も共通の利益を有しているとはいえ
るが、現実には訴訟促進をはかる裁判所によって審理が切り詰められたり、当事者の訴訟追行上の手続保障がない
がしろにされるおそれがあるし、逆に、当事者が手続保障の名の下に訴訟の引き延ばしや馴合い訴訟をはかること
もありうるのであり、また、当事者間には当然ながら利害の対立が生じるとともに、たとえば準備不足の訴訟代理
人同士が馴合って引き延ばしをはかる場合のように(1)、裁判所と当事者と代理人の間で利害が対立することも考
えられ、具体的な訴訟追行と紛争の在り方によって極めて複雑な利害関係が生じうる。
 裁判所はこのような複雑な利害関係を調整して訴訟が裁判に熟しているかを判断して弁論を終結しなければなら
ないのである。その利益衡量の結果、情報状態としては裁判に熟しているといえるが、当事者の手続保障を実現す
るために審理を続ける必要のある場合や、逆に、解明度は不十分でも裁判に熟したとして弁論を終結して判決をな
さなくてはならない場合もあるであろう。裁判への成熟の判断においてはこのように当事者の手続保障の観点から
も考察する必要があると考えられる。
 ここでは、紙面の都合上、手続保障の一般論に立ち入ることは避け、弁論の終結の基準としての裁判への成熟を
考えるための若干の指摘をするにとどめる。まず、これだけあれば手続保障は十分だとその内容を積極的に定義す
ることは困難であるが、少なくともこれらが満たされないなら手続保障として不十分であると消極的にいうことな
らある程度はできよう。その意味で考えると、手続保障には当事者が第一次的な手続の支配者として主体的に自己
の責任において訴訟追行できることが不可欠であろうから、まず第一に、法律構成・争点形成といった訴訟状態の
現状について裁判所と両当事者の間に共通の認識があることないし共通の認識がありうるような保障があることが
手続保障の前提であるといえよう。次に、各当事者は手続の結果に対して自己に有利に影響を与える機会と可能性
が保障されていなくてはならないであろう。第三に、各当事者は訴訟追行の在り方に自己の意見を反映させる機会
と可能性が与えられていなくてはならないであろう。第四に、以上のようないわば結果に関係付けられた手続保障
とは別に、各当事者の訴訟追行に有する手続固有の利益が保障される必要があるであろう。第一の点からは、釈明
権・義務の機能として、前節で述べたような訴訟の情報状態の充実をはかる機能だけでなく裁判所・両当事者間の
訴訟状態についての理解の一致をはかるという、手続保障の前提を準備する機能が評価されるべきであろう(2)。
第二の手続結果への影響力は、結果の実体的正当性を目指すとともに、手続保障があった以上たとえ真実に反する
結果となってもそれは自己の責任となるという従来の既判力正当化理論の主要部分を形成するものである(3)。第
三の手続への影響力は、当事者に訴訟追行の熱意のない場合に裁判に熟すとして弁論を終結する裁判例(4)などか
ら推認される考慮である。また、処分権主義・弁論主義のもと、訴訟を判決によらずに終了したり、自白や争わな
いことで事実の審理をしないでおく権利を当事者に認めながら、逆に弁論の終結という場面では審理を続けたいと
いう当事者の意思を裁判所が無視しうるとすることは裁判の公益性を考慮にいれても均衡を逸していないかという
問題意識を導くこともできよう(5)。第四の手続固有の価値としては、たとえば、訴訟の場で紛争当事者が平和裡
のコミュニケーションの機会を持つことの効用、相互理解の涵養などを例に挙げることができよう(6)。
 以上の私見は裁判への成熟をめぐる手続保障を試みに論じた極めてプリミティヴなものであるが、全くの的外れ
の議論ではないとするならば、このような手続保障の考慮から、訴訟の情報状態は十分でも当事者の訴訟追行の意
欲と利益を考慮して審理を続けるべき場合や、逆に、訴訟の情報状態は不十分であっても、それは当事者の責任と
して裁判に熟すと弁論を終結すべき場合などを個別事案にそって判断すべきであるということができると思われる。
        五 おわりに
 裁判所の内心の裁量的判断であるとして、従来それほど正面から検討を加えられていなかった「裁判に熟すると
き」という概念について、筆者なりの考えを試論として述べたものである。御批判を戴ければ幸いである。
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「訴訟カ裁判フ為スニ熟スルトキ」について 太田勝造 名古屋大学助教授
特別講義民事訴訟法(法学教室全書)429頁~444頁
昭和63年2月5日第1版第1刷発行 編集者新堂幸司 発行所 有斐閣
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29:上告受理申立理由書p1-11

2010-01-16 00:40:38 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
平成21年(ネ受)第1007号
(原審・東京高等裁判所平成21年(ネ)第3294号)
申立人(第1審原告,第2審控訴人)  出羽やるか
相手方(第1審被告,第2審被控訴人) 大分県
        上告受理申立理由書
                        平成22年1月14日
最高裁判所 御中
                         申立人 出羽やるか
  頭書事件について,申立人は,次のとおり,上告受理の申立理由を提出する。
  なお,略称等は原審の例によるものとし,原判決が引用した第1審判決説示を
 含めて原判決説示という。
第1 事案の概要
 1 申立人は,大分県玖珠郡内で交通事故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察
  官が当該交通事故に関する事件の捜査に当たり,実況見分調書の作成をしない
  まま放置するなどの違法行為をしたことにより損害を被ったと主張し,上記違
  法行為が原因で交通事故の加害者に対する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支
  払を受けることができなかったことによる損害(交通事故による損害)255
  7万8457円及び上記違法行為自体による慰謝料442万1543円の合
  計3000万円の損害金のうちの一部請求として,10万円及びこれに対する
  訴状送達の日の翌日である平成20年9月6日から支払済みまで民法所定の
  年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。(原判決2頁3行目から
  12行目まで)。原判決は,申立人の請求を棄却した。申立人は,原判決を不
  服として,上告受理の申立てをした。これが本件である。
 2 前提事実
   申立人が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,大分県玖珠郡九重
  町大字湯坪の県道別府一の宮線水分起点34.9km先付近道路(以下「本件
                1/21
  道路」という。)を普通自動二輪車(申立人車)で走行中,申立人車と小野寺
  秀和(小野寺)が運転する国(陸上自衛隊)所有の大型貨物自動車(自衛隊車)
  に牽引されたフルトレーラーが衝突ないし接触する事故(本件事故)が生じ,
  申立人は,右肘脱臼開放骨折,右第3・4指中節骨骨折等の傷害を負った。
   申立人は,本件事故後,熊本市にある熊本赤十字病院に搬送され,同月30
  日まで同病院に入院した。(申立人の傷害につき,甲23)(第1審判決2頁
  6行目から14行目まで)。
第2 上告受理申立の理由
   以下に述べるとおり,本件は法令の解釈に関する重要な事項を含み,それに
  ついての原判決の判断には,重大な誤りがあるので,上告を受理した上,原判
  決は破棄されるべきである。
第3 上告受理申立理由 目次
   第1点 小野寺の業務上過失傷害等の被疑事件・・・・・・・・・・・3頁
       刑事訴訟法189条2項,246条についての原判決の解釈の誤り
       司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,速やかに書類及び証拠物
      とともに事件を検察官に送致しなければならない。
   第2点 実況見分調書(甲7)の作成の放置・・・・・・・・・・・・・7頁
       犯罪捜査規範104条についての原判決の解釈の誤り
       実況見分は,居住者,管理者その他関係者の立会いを得ておこない,
      その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
   第3点 申立人が従前提起した3件の訴訟・・・・・・・・・・・・11頁
       民事訴訟法115条についての原判決の解釈の誤り
       既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について
      生じ,判決に当事者と記載された当事者に及ぶ。
   第4点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正・・・・・・・・・・・13頁
       民事訴訟法114条についての原判決の解釈の誤り
                2/21
       確定判決は,主文に包含するものに限り,既判力を有する。
   第5点 終局判決の手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17頁
       民事訴訟法243条及び244条についての原判決の解釈の誤り
       裁判所は,訴訟が裁判をするのに熟したときは,終局判決をする。
       当事者の一方が口頭弁論期日に不出頭の場合には,出頭した相手方
      の申出があるときに限り終局判決をすることができる。
第1点 小野寺の業務上過失傷害等の被疑事件
    刑事訴訟法189条2項,246条についての原判決の解釈の誤り
 1 本件事故の受理(当事者間に争いがない事実)
   本件交通事故は,110番通報で熊本県警本部に入ったものであるが,事故
  の発生場所が大分県警察本部管内であったことから,熊本県警察本部から 大
  分県竹田警察署に110番通報が転送された。さらに,本件事故が,「大分県
  玖珠郡九重町大字田野県道別府一宮線水分起点34.9㎞先路上での自衛隊車
  両とバイクとの交通事故」と判明し,平成11年10月7日午前11時25分
  頃,竹田警察署から玖珠警察署に電話連絡された。
   本件電話連絡を受けた堀部警部補は,本件事故が,玖珠警察署長者原駐在所
  の管内で発生したものであったことから,同駐在所勤務の早水巡査長に対し事
  故現場に急行し事実調査と現場保存を行うよう指示した。
   同日午前11時50分頃,早水巡査長は,駐在所配備の警ら用自動車(いわ
  ゆる「ミニパト」)で現場に到着したが,申立人は,早水巡査長が現場に到着
  すると直ぐに救急車で病院に向け搬送された。(甲20・11頁16行目から
  12頁6行目まで)。
 2 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・エ)
   (エ)小野寺は,フルトレーラーを牽引した自衛隊車を運転して,雑草等が
  あり,双方からの見通しが不良な半径25mのカーブを通過する場合,カーブ
  の手前でスピードを落とし他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転し
                3/21
  なければならない義務があったのに,最高速度と指定された毎時40kmのまま
  本件道路のヘヤピンカーブに進入した過失があった。この結果本件事故が生じ
  たのであり,申立人は約3か月の加療を要する傷害を負ったのであるから,小
  野寺は人身事故の加害者である。
   しかるに,玖珠警察署の警察官は,小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者
  として検察官に送致しなかった。(第1審判決4頁7行目から15行目まで)。
 3 原審における申立人の主張
   一たび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑のある事件
  に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
  ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
  いのであり,司法警察員は,事件を送致するか否かを決定する権限を与えられ
  ていない。したがって,小野寺を業務上過失傷害等被疑事件の被疑者として検
  察官に送致しなかった司法警察員の行為は違法である。(原判決2頁24行目
  から3頁4行目まで)。
 4 申立人の請求原因(エ)についての原審の判断
   原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
   「証拠(甲49,50,55,58)によれば,第1訴訟の第1審裁判所は,
  本件事故につき,自衛隊車が毎時40kmの速度で進行車線をはみ出すことなく
  走行していたところ,申立人車が急にコントロールを失って対向車線に入り込
  み,小野寺がブレーキをかける間もなくフルトレーラーに衝突して発生したも
  のと認定し,小野寺には,本件事故の原因となる速度違反や対向車線ヘのはみ
  出しその他何らの過失もなかったと認定したこと,第1訴訟の控訴審裁判所も
  同様の認定をし,本件事故は申立人の過失に基づく結果であり,小野寺には何
  ら過失がないとの判断を示したこと,第2訴訟の第1審裁判所は,本件事故に
  つき,小野寺は時速約40kmの速度で本件道路を自衛隊車進行車線を進行して
  本件事故現場手前の右カーブに入ったが,申立人車がコントロールを失って左
                4/21
  右に大きく振れ,自衛隊車の運転席の横を通り過ぎてフルトレーラーに衝突な
  いし接触したと認定したこと,第2訴訟の控訴審裁判所も,申立人は申立人車
  のハンドル・ブレーキの操作を誤り,バランスを崩して中央線を越え対向車線
  に進出させたためフルトレーラーに衝突したと認定したこと,第3訴訟の第1
  審裁判所は,本件事故の態様につき,第2訴訟の第1審裁判所の上記認定と同
  様の認定をしたことが認められる。
   上記の各裁判所の認定及び証拠(甲16 ,17,19 ,乙3)によれば,
  本件事故の原因は,申立人車のハンドル・ブレーキの的確な操作を怠った申立
  人の過失にあると認められるのであって,小野寺の過失は認めることができな
  い。」(第1審判決8頁23行目から9頁16行目まで)。
   「そして,前掲各証拠(甲第7号証,第10号証の2,第19号証(11頁,
  23頁,24頁))に弁論の全趣旨を併せると,玖珠警察署司法警察員は,本
  件事故は,申立人が湯布院町方面から小国町方面に向けて進行中,見通しの悪
  い下り坂の左カーブを進行するに当たり,ハンドル・ブレーキ等の的確な操作
  を誤って対向車線に申立人車を進出させたことにより発生したもので,小野寺
  には本件事故の原因となる過失がなく,道路交通法規に違反する事実も認めら
  れず,小野寺に係る被疑事実はないと判断したことから,申立人に対する道路
  交通法違反被疑事件について捜査をしたものの,小野寺について犯罪の捜査を
  しなかったものであり,したがって,小野寺に係る業務上過失傷害等の被疑事
  件を検察官に送致しなかったことは何ら違法ではない(刑事訴訟法189条2
  項,246条参照)。」(原判決3頁17行目から4頁1行目まで)。
 5 刑事訴訟法246条(司法警察員から検察官への事件の送致)は,司法警察
  員は,犯罪の捜査をしたときは,この法律に特別の定のある場合を除いては,
  速やかに書類および証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない,
  但し,検察官が指定した事件については,この限りではない,と規定する。
   ひとたび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑ある事件
                5/21
  に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
  ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
  いのであり,司法警察員は,本条による場合は,事件を送致するか否かを決め
  る権限を与えられていない。本条は,司法警察職員の手による犯罪捜査の適否
  を公訴官である検察官に事後審査させ,もって刑罰権の適正な行使を期するた
  めの担保としての意味も有していることになる(大コンメンタール刑事訴訟法
  第3巻810頁・青林書店・1996年)。
 6 刑事訴訟法189条2項(一般司法警察職員と捜査)は,司法警察職員は,
  犯罪があると思料するときは,犯人及び証拠を捜査するものとすると規定する。
   「犯罪があると思料するとき」とは,特定の犯罪の嫌疑があると認められる
  ときをいう。その認定権は司法警察職員にある。犯罪があると思料するに至っ
  た原因を捜査の端緒という。捜査の端緒にはなんら限定はない。
   捜査の内容は,犯人を発見すること及び証拠を収集することである。「捜査
  するものとする」とは,単に「捜査する」というのと同じ意味である。捜査を
  するのが建前であるという意味であるが,捜査するかどうかが司法警察職員の
  自由裁量にゆだねられているわけではない。(前掲大コンメンタール刑事訴訟
  法第3巻40,41頁)。
 7 本件事故の捜査は,「バイクと大型車による接触事故,バイクの転倒により
  男性1名が負傷した」との玖珠署への届出の電話連絡(甲21)を端緒として,
  堀部警部補が,早水巡査長に対し事故現場に急行し事実調査と現場保存を行う
  よう指示した(甲20・11,12頁)時点で開始されたと解される。
 8 原判決は,「玖珠警察署の司法警察員は,小野寺に係る被疑事実はないと判
  断したことから,小野寺について犯罪の捜査をしなかったものであり,したが
  って,小野寺に係る業務上過失傷害等の被疑事件を検察官に送致しなかったこ
  とは何ら違法ではない」と判示した。
 9 原判決は,小野寺には,道路交通法規に違反する事実も認められないと判断
                6/21
  したことから,小野寺について犯罪の捜査をしなかったともいう。
   道路交通法70条は,車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキ
  その他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、
  他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならないと規定す
  る。小野寺には,時速約40kmの速度で本件道路の自衛隊車進行車線を進行し
  て本件事故現場手前の右カーブに入った時点で,申立人の過失の有無にかかわ
  らず,道路交通法70条の安全運転の義務違反が生じる。(乙1・甲7・実況
  見分調書添付の現場見取図第3図)。
 10 本件事故は対向車同士の車道上での接触事故である。申立人車の転倒位置は,
  自衛隊の現場見取図(甲13)では申立人進行車線の中央付近で,堀部警部補
  作成の現場見取図(乙1・甲7)では中央線より申立人進行車線側に,1.5
  メートルの地点としている。玖珠警察署警察官には,双方の車両の運転者につ
  いて犯罪の捜査する責任があり,捜査をしなかった合理的理由はない。
   そもそも,小野寺について犯罪の捜査をしなかったら,小野寺に係る被疑事
  実の有無は判断できない。小野寺について犯罪の捜査をしないのは違法である。
 11 司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,犯罪の嫌疑がないことが明らかな
  事件でも検察官に送致しなければならないのであり,玖珠警察署司法警察員に
  は小野寺に係る被疑事件を検察官に送致しなかった違法がある。
 12 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。
第2点 実況見分調書(甲7)作成の放置
    犯罪捜査規範104条についての原判決の解釈の誤り
 1 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・ア)
   (ア)玖珠警察署の警察官は,平成11年10月7日に実況見分を行ったが,
  その作成を平成13年9月27日まで放置した。(第1審判決3頁18行目か
  ら21行目まで)。
                 7/21
 2 申立人の請求原因について原判決の判断
   原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
  「証拠(甲59)によれば,第3訴訟の控訴審裁判所は,実況見分調書が作
  成されるに至る経過について,次のとおり認定したことが認められる。すな
  わち,堀部警部補らは,平成11年10月7日午後0時34分から午後1時
  20分まで本件事故現場の実況見分を実施し,本件道路に残された痕跡等か
  ら,加害者は本件道路の中央線を越えた申立人であり,被害者は小野寺である
  と判断した,堀部警部補らは,申立人立会いの下で本件事故の実況見分を実施
  しようとしたが,申立人は,退院後には玖珠警察署に出頭して実況見分に立ち
  会う旨約していたにもかかわらず,退院後神奈川県の自宅に帰ってしまい,堀
  部警部補らは申立人に対し郵便で玖珠警察署に出頭するよう要請したが,申立
  人はこれに応じなかった,この間,自衛隊等が,自衛隊車等に実質的な損害が
  ないことなどから,申立人の処罰を望まない旨申し立てたので,堀部警部補ら
  は,平成12年2月10日,後日紛議が生じた場合には,捜査を再開して送致
  することを条件に本件事故捜査を一時保留処分とすることとした,堀部警部補
  らは,平成13年8月,申立人が国に対して第1訴訟を提起したことが判明し
  たので,上記保留処分を解除し,送致準備を進めることとしたが,申立人は,
  高齢と経済的な問題を理由に玖珠警察署への出頭に応じることができない旨主
  張し続けた,堀部警部補らは,日田区検察庁検察官の指示を受け,堀部警部補
  が,本件事故当時に作成していた現場メモに基づいて同年9月27日付けて実
  況見分調書を作成し,神奈川県まで赴き,申立人の取調べを実施し,上記実況
  見分調書を示しながら被疑者供述調書を作成し,同年11月20日,申立人に
  係る被疑事件を日田区検察庁検察官に送致した。
   上記の第3訴訟の控訴審裁判所の認定を覆すに足りる証拠はなく,証拠(甲
  10の1・2,59)によれば,上記のとおり認定することができる。
   これによれば,玖珠警察署の警察官が実況見分後直ちに実況見分調書の作
                8/21                   
  成をしなかったことには,合理的理由があるというべきであり,実況見分調書
  の作成を放置していたということはできない。」(第1審判決6頁16行目か
  ら7頁16行目まで)。
 3 犯罪捜査規範104条(実況見分)は,「1犯罪の現場その他の場所,身体
  又は物について事実発見のため必要があるときは,実況見分を行わなければな
  らない。2実況見分は,居住者,管理者その他関係者の立会を得て行い,その
  結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。」と規定する。
 4 実況見分調書(甲7)には,実況見分の立会人は小野寺,見分官は間ノ瀬巡査
  部長,補助者は堀部警部補及び早水巡査長と記載されている。見分官として本
  件事故の実況見分を行った間ノ瀬巡査部長は,その結果を実況見分調書に正確
  に記載しておかなければならない。間ノ瀬巡査部長が実況見分後に実況見分調
  書の作成をできなかった特段の事情,作成しなかった合理的理由はない。
   そもそも,小野寺立会いの実況見分調書を作成するにあたり,申立人立会の
  実況見分の有無は関係がない。
 5 申立人は,平成11年10月29日玖珠警察署に間ノ瀬巡査部長を訪ね本件
  事故について話を聞き(甲3),約3ヵ月の加療を必要とする見込みとの内容
  の診断書(甲23)を提出し,被害を届け出た。
   本件事故は交通切符では処理できない事案である。間ノ瀬巡査部長は,基本
  書式で,小野寺立会いの実況見分調書を作成しておかねばならない。
 6 調査嘱託書に対する平成19年3月26日付け玖珠警察署長の回答(甲10)
  は,「当該実況見分調書の作成日時が実施日時と異なった理由は,本件を一旦
  保留処分としていたところ,出羽から民事提訴がなされ,送致する必要性が生
  じたため,検事の指揮を受けた上で,事故当日の現場メモを基に実況見分調書
  を作成したという経緯による。」,「作成に際し用いた資料等は,堀部警部補
  が事故当日自ら記録した現場メモ」である。
 7 調査嘱託書に対する平成19年8月17日付け玖珠警察署長の回答(甲11)
                9/21
  は,「(1) 実況見分調書に添付されている写真の撮影年月日,撮影場所及び撮
  影者;平成11年10月7日,事故現場にて撮影,撮影者;堀部警部補,(2)
  上記(1) の写真のネガの現存の有無;有,(3) 堀部警部補の現場メモの現存の
  有無;無,(4) 上記(1)の写真及び(3)の現場メモの他に,同調書作成の基とな
  った資料等の存在の有無;無」である。
 8 相手方は,第1審の平成20年11月12日付け準備書面で下記のとおり陳
  述して,堀部警部補自身の現場メモの他に,間ノ瀬巡査部長が平成11年10
  月8日に作成していた交通切符様式の実況見分調書の存在を認めている。
   「平成11年10月8日,間ノ瀬巡査部長は,交通切符様式の実況見分調書
  を作成するとともに,小野寺に電話連絡をして10月12日に玖珠警察署に出
  頭するように要請した。平成11年10月12日,間ノ瀬巡査部長は,玖珠警
  察署において任意出頭した小野寺の事情聴取に当たった。(同書面8頁6行目
  から10行目まで)」。
   「本来であれば実況見分調書の作成は,見分官である間ノ瀬巡査部長が行う
  べきところ,間ノ瀬巡査部長は,平成13年5月1日付けで九州管区警察局高
  速道路福岡管理室に異動となっていたことから,当該実況見分に補助者として
  立会った堀部警部補が,基本書式で実況見分調書を作成することとし,間ノ瀬
  巡査部長が平成11年10月8日に作成していた交通切符様式の実況見分調
  書及び堀部警部補自身が作成していた現場メモ(図面)並びに事故当日に撮影
  した車両の損傷状況・道路状況の写真に基づき,平成13年9月27日付けの
  基本書式の実況見分調書を作成した。(同書面13頁1行目から10行目まで)」。
 9 原判決は「堀部警部補らは,日田区検察庁検察官の指示を受け,堀部警部補
  が本件事故当時に作成していた現場メモに基づいて平成13年9月27日付け
  で実況見分調書を作成し,・・・」と認定した。(第1審判決7頁7行目から
  9行目まで)。
 10 原判決は,相手方が認めている,間ノ瀬巡査部長が平成11年10月8日作
                10/21
  成したという交通切符様式の実況見分調書の存在を否定(看過)している。
 11 玖珠警察署司法警察員(間ノ瀬巡査部長)には,実況見分後速やかに基本書
  式で実況見分調書を作成する義務があり,作成しなかった合理的理由はない。
   玖珠警察署の警察官には,実況見分調書の作成を放置していた違法がある。
 12 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。
第3点 申立人が従前提起した3件の訴訟
   民事訴訟法115条についての原判決の解釈の誤り

                11/21

29:上告受理申立理由書p11-21

2010-01-15 09:16:04 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
第3点 申立人が従前提起した3件の訴訟
    民事訴訟法115条についての原判決の解釈の誤り
 1 原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
   申立人の請求は,その内容において,すでに提起された3件の訴訟の蒸し返
  しにすぎないといわざるを得ない。このことは,申立人が提出する甲号証は,
  今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,体裁
  から見て,従前の3件の訴訟に提出されたものと認めることができることから
  もいうことができる。(第1審判決9頁20行目から24行目まで)。
 2 上記3件の訴訟の控訴審は,各事案の概要(要旨)を下記のとおり判示した。
  (1) 第1訴訟(甲50・控訴審判決2頁7行目から14行目まで)
    センターラインが引かれた対向1車線の道路におけるヘアピンカーブの坂
   道において,下り車線を走行してきた申立人運転の自動二輪車(被害車両)
   と登り坂を対向走行してきた自衛隊員小野寺秀和運転の自衛隊車両(加害車
   両)と接触し,被害車両が転倒した本件事故により,申立人が受傷した。本
   件は,申立人が,相手方(国)に対し,国家賠償法1条及び自動車損害賠償
   保障法3条に基づき,本件事故による損害賠償金2557万8457円及び
   これに対する本件事故の日である平成11年10月7日から支払済みに至る
   まで民法所定の年5分の遅延損害金を求めた事案である。
  (2) 第2訴訟(甲56・控訴審判決2頁15行目から3頁2行目まで)
    本件は,相手方(神奈川県公安委員会)が,平成16年4月20日に道路
                11/21
   交通法101条の規定に基づき申立人の運転免許証の有効期間の更新をする
   に当たり,申立人に過去5年以内に法70条(安全運転の義務)違反行為が
   あり,一般運転者(法92条の2の表の備考一の3)に該当すると認定して
   その免許証の有効期間の更新をした(以下「本件更新」という。)のに対し
   に申立人は,申立人には安全運転義務違反の事実がないと主張して,本件更
   新処分のうち,申立人か「優良運転者」(法92条の2の表の備考一の2,
   道路交涌法施行令(以下「施行令」という。)33条の7)ではなく一般運
   転者に該当すると認定した部分(以下「本件認定部分」という。)は違法であ
   ると主張,本件更新処分のうちの本件認定部分の取消しを求める事案である。
  (3) 第3訴訟(甲59・控訴審判決1頁24行目から2頁12行目まで)
    本件は,申立人が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,申立人
   所有の普通自動二輪車(以下「申立人車」という。)を運転中,大分県玖珠
   郡九重町大字湯坪県道別府一の宮線水分起点34.9キロメートル先付近路
   上(以下「本件道路」という。)において,自衛隊車両と接触事故を起こし,
   これにより受傷したとして,国に対し,損害賠償請求訴訟(横浜地方裁判所
   平成13(ワ)第2714号,以下「別件訴訟」という。)を提起したが敗訴
   し,その後その判決が確定したが,同訴訟において,国の指定代理人浅香幹
   子(以下「浅香」という。)らが証拠資料を隠ぺい又は破棄して提出せず,
   証拠資料の捏造又は改ざんを行い,又は不法に作成された証拠を弁論に使用
   した違法があると主張して,相手方(国)に対し,国家賠償法第1条に基づ
   き,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及びこ
   れに対する上記不法行為後である平成17年11月9日から支払済みまで
   民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 3 本件(以下「第4訴訟」という。)は,申立人は,大分県玖珠郡内で交通事
  故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察官が当該交通事故に関する事件の捜査
  に当たり,実況見分調書の作成をしないまま放置するなどの違法行為をしたこ
                12/21
  とにより損害を被ったと主張し,上記違法行為が原因で交通事故の加害者に対
  する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支払いを受けることができなかったこと
  による損害(交通事故による損害)2557万8457円及び上記違法行為自
  体による慰謝料442万1543円の合計3000万円の損害金のうちの一
  部請求として,10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20
  年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
  払を求めている(原判決2頁4行目から12行目まで)事案である。
 4 既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,判
  決に当事者と記載された当事者に及ぶ。(民事訴訟法115条)。
 5 第1訴訟,第2訴訟及び第3訴訟の3件の紛争の相手方は,国(自衛隊),
  神奈川県公安委員会及び国(国の指定代理人)であり,本件の訴訟の相手方は
  大分県(玖珠警察署)である。
 6 申立人の請求は,すでに提起された3件の訴訟の蒸し返しにすぎないとはい
  えないといわざるを得ない。
 7 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。
第4点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正
    民事訴訟法114条についての原判決の解釈の誤り
 1 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・イ,ウ)
   (イ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に真実でない記載をした。
  すなわち,堀部警部補や間ノ瀬巡査部長は実況見分を行っていないにも
  かわらず,見分官,補助者と記載し,実況見分の時間も不実である。
  (ウ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に実況見分時に撮影したものでな
  い写真を添付した。荷台から外されたはずの申立人の荷物が荷台にあること,
  申立人車でない自動二輪車が写っていること,当時なかった徐行の道路標示が
  あること,道路に停まっていたはずの自衛隊車が草地に移動されていること,
                 13/21
   当時なかった里程標かあること,実況見分調書にはタイヤ痕,擦過痕があると
  記載されているが写真には写っていないことなどから,実況見分調書に添付さ
  れた写真が実況見分時に撮影されていないことが判明する。(第1審判決3頁
  22行目から4頁6行目まで)。
 2 申立人の請求原因(イ・ウ)について原判決の判断
   原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
   証拠(甲50,55,58,59)によれば,第1訴訟の控訴審裁判所は,
  実況見分調書の作成について,道路の車道幅員は,現場の状況において自動車
  が走行可能な最大幅を計測した結果として誤りはない,自衛隊車は,いったん,
  本件事故地点付近の道路外の草地に移動され,警察官の到着後に開始された実
  況見分に際して,道路上に移動されたなどと認定した上で,実況見分調書の内
  容に不自然不合理なところはなく,本件事故当日に警察官により実施された実
  況見分の内容を記載したものと認定し,現場事故写真についても,証拠により
  本件事故当時の里程標の存在を認めたこと,第2訴訟の第1審裁判所は,間ノ
  瀬巡査部長を見分官,堀部警部補及び早水巡査長を補助者として平成11年1
  0月7日午後0時34分から午後1時20分まで本件事故現場の実況見分が実
  施されたと認め,間ノ瀬巡査部長らが当日実況見分を行わなかったのではない
  かと疑うべき事情は存在しないと判断し,実況見分調書添付の写真についても,
  同一機会に撮影された一連のもので,本件事故直後の状況を撮影したものと理
  解するのが自然であるとし,「申立人の荷物」,「徐行」の道路標示,「里程標」
  が実況見分当時存在したことを疑うべき事情はないと判断したこと,第3訴訟
  の第1審裁判所は,第2訴訟の第1審裁判所と同様に間ノ瀬巡査部長らが上記
  日時に実況見分を実施したと認め,添付の写真も実況見分の際に撮影されたと
  認めたこと,とりわけ,「申立人の荷物」,「里程標」にねつ造・改ざんはないと
  判断したこと,第3訴訟の控訴審裁判所も,間ノ瀬巡査部長らが上記日時に実況
  見分を実施したと認め,実況見分調書に添付された写真についても,本件全証
                 14/21
  拠によっても,この写真がねつ造・改ざんされたと認めることはできないと判
  断したこと(第3訴訟の第1審裁判所は,当該訴訟において,申立人が実況見
  分調書に添付された写真が本件事故当日に撮影されたものでなくねつ造・改ざ
  んされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出したのに対し,申立人が
  挙げる種々の事情の大半は写真画面上の単なるコントラストの問題や個人の主
  観に基づいて不自然と論難しているにすぎず,ねつ造・改ざんがあったことを
  疑わせるような客観的な根拠となるものはないとも判示していること。)が認め
  られる。
   これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
  2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
  記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
  き,本件訴訟においても,これを疑わせるに足りる客観的証拠はない。(第1
  審判決7頁17行目から~8頁22行目まで)。
 3 民事訴訟法114条1項は,訴訟物たる権利・請求権の存否を判断した過程
  である判決理由中の事実判断および法適用には既判力が生じないことを明らか
  にしている。
 4 原判決が証拠とする(甲50,55,58,59)はすべて別件訴訟の判決
  書であり,原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴
  訟の判決理由中の事実判断および法適用であり,既判力が生じないことは明ら
  かである。
 5 申立人は,これらの別件訴訟の判決理由中の認定,判断を疑い,本件訴訟に
  おいて,平成20年10月27日付け準備書面(2),平成20年10月27日付
  け準備書面(3),平成21年1月7日付け準備書面(5)を提出し,実況見分調書
  (甲7)の見分者,見分時間,調書添付の写真等の不真正につき弁論した。
 6 申立人は,実況見分調書添付の写真(甲8)はすべて,平成11年10月7
  日午後0時34から午後1時20分までの間には撮影されていないと主張し,
                 15/21
  争点として下記の10点をあげた。(上記準備書面(5)8頁)
  第1点 申立人車の荷台に固縛された荷物(甲8①,②,③,④)
     実況見分時には,申立人車の荷台に固縛された荷物はない。
  第2点 自動二輪車のスポーク(甲8⑩,甲25,甲26,甲27)
    写真(甲8⑩)に写っている自動二輪車(バイク)は,申立人車ではない。
 第3点 間ノ瀬巡査部長に同行している自衛官(甲8①,⑦,⑩,⑪,⑫)
    自衛隊が本件事故処理に関与している。
 第4点 「徐行」の道路標示(甲8⑦,甲28)
    この「徐行」の道路標示は事故当日には存在しない。
 第5点 炊事車の衝突痕(甲8④,⑨,甲33⑩,⑪)
    申立人車の前輪右側ホークと炊事車の右輪のホイールナットが接触した。
 第6点 草地の上の自衛隊車(甲8⑤,⑥,⑦,⑧,⑨)
    事故当日,本件自衛隊車が道路外に移動された事実はない。
 第7点 KP34.9の里程標(甲8⑪,甲29)
    この里程標は事故当日には存在しない。
 第8点 KP34.9の警戒標識(甲8⑪,甲29・甲8⑩,甲27)」
    この標識は北行きの車から真正面に見え,南行きの車からは見えない。
 第9点 申立人車のタイヤ痕及び擦過痕(甲8⑫,⑬,⑭,⑮,⑯)
    道路面だけが写され,タイヤ痕,擦過痕及び測定基準が写っていない。
 第10点 路面にかかれた「バイク」の文字及び記号(甲8⑮,⑯)
    堀部警部補はこれらのマークについて言及していない。
 7 第1審は争点整理手続きをとらず,人証を採用せず,実質審理を行わないま
  ま,予告なしに弁論を終結した。
 8 原審も人証申請を採用せず,相手方が欠席した第回2口頭弁論期日に,審理
  不尽のまま,唐突に弁論を終結した。
 9 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
                16/21
  決は破棄を免れない。
第5点 終局判決の手続き
    民事訴訟法243条及び244条についての原判決の解釈の誤り
 1 申立人は平成21年6月26日付け期日呼出状を東京高等裁判所第21民
  部ロろ係の書記官から受領した。裁判所のウェブサイトの東京高裁の裁判所
  担当裁判官一覧の民事21部の欄には,渡邉等,橋本昌純,西口元,山口信恭
  の記載があった。平成21年8月27日第1回口頭弁論調書には,裁判長裁判
  官渡邉等,裁判官西口元,裁判官山口信恭の氏名が記載されている。
 2 第1回口頭弁論調書の弁論の要領等の欄に,裁判長;控訴理由書13頁「第
  5点」で原審(第1審)における人証についての経過が述べられているが,当
  審では人証申請をしないということでよいか。申立人;相手方の答弁書を待っ
  ていたのだが,受領したのは昨日であった。当審においても人証申請したい。
  裁判長;申立人は9月4日までに証拠申出書を,相手方はそれに対する意見が
  あれば意見書を9月18日までに,それぞれ提出すること。続行,との記載が
  ある。
   次回期日は,平成21年10月8日(口頭弁論)と指定された。
 3 上記控訴理由書第5点は下記のとおりである。
   第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
  (1) 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成した
   堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人と
   して過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
  (2) 相手方は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日まで
   に堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が不
   安定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
    当日の調書には「被告(相手方);次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
   の各陳述書)を提出する」と記載された。
                 17/21
  (3) 相手方は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の証
   人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残ってい
   ないことなどを挙げた。
    当日の調書には「当事者双方;次回期日までにすべての書証及び証拠申出
   を提出する」と記載された。
  (4) 申立人は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間ノ
   瀬巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,第1審は平成21年3月12日
   第4回口頭弁論期日に不採用とした。
  (5) 相手方が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は提
   出されないまま,第1審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,唐
   突に弁論を終結した。
  (6) 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」
   はさておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実
   性」が重要な争点となっている。
  (7) 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
   本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠であ
   る実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
  (8) 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく真実発見,適正な裁判とい
   う点でも効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
  (9) 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用
   されている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判
   所は事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の
   認識をもて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実
   に役立つ。
  (10)第1審判決は,「原告(申立人)の請求は,その内容において,すでに提
   起された3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,
                 18/21
   申立人が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,
   その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の訴訟に提出されたもの
   と認めることができることからもいうことができる(第1審判決9頁20行
   目から24行目)」と判示した。
  (11)前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
   相手方が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査部
   長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
  (12 )申立人が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため
   申し出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
 4 原審(第2審)において,申立人は平成21年9月4日に3名の証人(堀部
  警部補,間ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)の証拠申出書を,相手方(被控訴人)
  は平成21年9月16日付けで,証拠申請に対する意見書を提出した。
   相手方の意見書には,「記;控訴人(申立人)は,証明すべき事実として,
  警察官に1ないし4の違法行為があるとして,本件事故の実況見分に関わった
  当時の玖珠警察署の署員3名につき,証拠申請をなしている。1の事実は,甲
  59の判決により,2,3の事実については,甲50,甲55,甲58,甲5
  9の各判決により,4の事実については,甲49,甲50,甲55,甲58の
  各判決により,いずれも玖珠警察署の警察官に違法行為がないことが明らかで
  あり,控訴人(申立人)申請の3名の証人としての採用は,不必要であると考
  える。」と記載されている。
   申立人は,平成21年10月8日,開廷前に,尋問事項書関係メモと称する
  書面を提出した。内容は事故当日及び事故後の関係者の動静の時系列表と関係
  する証拠説明書で,証人尋問時使用を予定したものである。
 5 平成21年10月8日第2回口頭弁論調書には,裁判長裁判官渡邉等,裁判
  官橋本昌純及び裁判官山口信恭の氏名が記載されている。出頭した当事者は控
  訴人(申立人)のみで相手方(被控訴人)は欠席した。弁論の要領等欄に,出
                19/21
  頭当事者;従前の口頭弁論の結果陳述,証拠関係別紙のとおり,裁判長;弁論
  終結,との記載がある。申立人が申請した3名の証人は必要性なしとして採用
  されなかった。
   次回期日は,平成21年11月26日(判決言渡し)と指定された。
 6 平成21年11月26日第3回口頭弁論調書(判決言渡)には,裁判長裁判
  官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官西口元の氏名が記載され,出頭した当事者
  等は(なし),弁論の要領等の欄には,裁判長;判決原本に基づき判決言渡し,
  と記載されている。申立人は同日判決言渡し直後判決正本を受領した。
   申立人が申請し受領した平成21年12月3日付け判決謄本には,裁判長裁
  判官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官山口信恭の署名押印がある。
 7 民事訴訟法243条1項は,裁判所は,訴訟が裁判をするのに熟したときは,
  終局判決をする,と規定する。
   「裁判をするのに熟したとき」とは,当事者にその「訴訟」に関して十分な
  攻撃防御を展開させたが,もはやこれ以上それを展開させても,今までに得ら
  れた審理の結果が覆るおそれがなくなったという心証(判断)に裁判官が到達
  したとき,を指すといわれている(太田勝造「『訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルト
  キ』について」特別講義民事訴訟法429頁以下・有斐閣・1988年)。
   本件の場合,申立人が提出した唯一の証拠調べ(玖珠警察署の署員3名の証
  人申請)を採用せず,弁論を終結したことは,十分な攻撃防御を展開させたと
  はいえず,申立人の弁論権を奪ったことになり,許されない。
   申立人はなお主張・立証を提出する意思を有しているのであるから,裁判所
  としては,さらに攻撃防御方法提出の機会を与え,また必要に応じ釈明権を行
  使して,事案の完全な解明に努めるべきである。
 8 民事訴訟法244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日
  に出頭せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当
  事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることが
                20/21
  できる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
  いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定する。
   そもそもの立証趣旨が不熱心訴訟に対する対処ということであるので,出頭
  当事者が望んでいないのに,相手方の当事者が出頭しないことによって,出頭
  している当事者の主張立証の機会を奪うのは不当なので,一方が出頭している
  ときは,その当事者の意向を聞いて終結するかどうかをきめる,ということに
  した(研究会新民事訴訟法318頁柳田幸三の発言・有斐閣1999)という。
 9 出頭当事者である申立人の申出がないのに,申立人の意向も聞かず弁論を
  終結した原審の手続きは違法である。
 10 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
  決は破棄を免れない。
                                   以上
                 21/21

28:上告受理申立書

2010-01-11 14:15:14 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
         上告受理申立書
                  平成21年12月3日  受付日付印
最高裁判所 御中
                   申立人 出羽やるか
 申立人 
 住所  〒000-0000 横浜市00区000丁目00番00号
 氏名                   出羽やるか 印
           電話・FAX 045-000-0000
 相手方
 住所  〒870-0000 大分市大手町3丁目1番1号
 氏名  大分県 代表者 知事 広瀬勝貞
 
 訴訟物の価額  10万円  貼用印紙  2000円
   
  上記当事者間の東京高等裁判所平成21年(ネ)第3294号
 国家賠償請求控訴事件につき,同裁判所が平成21年11月26日に言渡した判決は,
 不服であるから上告受理の申立てをする。
          控訴審判決の表示
   1 本件控訴を棄却する。
   2 控訴費用は控訴人の負担とする。
          上告受理申立ての趣旨
   1 本件上告を受理する。
   2 原判決を破棄し,更に相当の裁判を求める。
          上告受理申立ての理由
     上告受理申立理由書を追って提出する。
------------------------------------------------------
http://www.courts.go.jp/tokyo-h/saiban/tetuzuki/syosiki/




27:第3回口頭弁論調書(判決言渡)

2009-11-27 12:00:00 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
                                裁判長認印
-------------------------------------------------------------    
    第 3 回 口 頭 弁 論 調 書 (判決言渡)
-------------------------------------------------------------
事 件 の 表 示 | 平成21年(ネ)第3294号
-------------------------------------------------------------
期      日  | 平成21年11月26日 午後1時20分
----------------------------------------------------------
場所及び公開の有無| 東京高等裁判所 第21民事部法廷で公開
-------------------------------------------------------------
裁判長裁判官 | 渡邉 等
裁  判  官 |橋本昌純
裁  判  官 |西口元
裁判所書記官 |若林裕子
------------ -------------------------------------------------
出頭した当事者等 | (なし)
           
--------------------------------------------------------------
指 定 期 日 |
-------------------------------------------------------------
            弁論の要領等
-------------------------------------------------------------
 
 裁判長
    判決原本に基づき判決言渡し
               裁判所書記官 若林裕子 印
--------------------------------------------------------------

26:控訴審判決

2009-11-27 06:31:48 | 第4訴訟 第2審 被告大分県
平成21年11月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 金子 誠
平成21年(ネ)第3294号 国家賠償請求控訴事件
 (原審・横浜地方裁判所平成20年(ワ)第3 3 7 1号)
           判    決
横浜市00区0丁目00番00号
    控訴人           出羽やるか
大分市大手町3丁目1番1号
    被控訴人          大分県
    上記代表者知事     広瀬勝貞
    上記訴訟代理人弁護士 富川盛郎
    上記指定代理人     小代義之
    同              首藤元一
    同              生野 敏
    同              木戸重文
 上記当事者間の頭書事件について,当裁判所は,平成21年10月8日終結した
 口頭弁論に基づき,次のとおり判決する。
          主    文
        1 本件控訴を棄却する。
        2 控訴費用は控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
  (1)原判決を取り消す。
  (2)被控訴人は,控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成20年9月6
   日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (3)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
                  -1-     
 2 被控訴人
   主文と同旨
第2 事案の概要
 1 控訴人は,大分県玖珠郡内で交通事故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察
  官が当該交通事故に関する事件の捜査に当たり,実況検分調書の作成をしない
  まま放置するなどの違法行為をしたことにより損害を被ったと主張し,上記違
  法行為が原因で交通事故の加害者に対する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支
  払を受けることができなかったことによる損害(交通事故による損害)255
  7万8457円及び上記違法行為自体による慰謝料442万1543円の合計
  3000万円の損害金のうちの一部請求として,10万円及びこれに対する訴
  状送達の日の翌日である平成20年9月6日から支払済みまで民法所定の年5
  分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
   原判決は,控訴人の請求を棄却した。控訴人は,原判決を不服として,控訴
  の申立てをした。これが本件である。
 2 前提事実及び当事者双方の主張は,後記3のとおり,当審における控訴人の
  主張を付加するほかは,原判決の事実摘示(原判決2頁3行目から6頁14行
  日まで)に記載のとおりであるから,これをここに引用する(ただし,原判決
  2頁7行目の「道路」を「道路(以下「本件道路」という。)」に,16行目
  の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に,17行目の「副検事」を「検
  察官」に,5頁19行目から20行目にかけての「本件交通事故」を「本件事
  故」に,22行目の「本件交通事故を」を「本件事故に関する控訴人に係る被
  疑事件を」に,26行日の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に改め
  る。)。
 3 当審における控訴人の主張
   一たび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑のある事件
  に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
                  -2-
  ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
  いのであり,司法警察員は,事件を送致するか否かを決定する権限を与えられ
  ていない。したがって,小野寺を業務上過失傷害等被疑事件の被疑者として検
  察官に送致しなかった司法警察員の行為は違法である。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,控訴人の本件請求は,理由がないからこれを棄却すべきである
  と判断する。そして,その理由は,後記2のとおり当審における控訴の主張に
  対する判断を付加し,次のとおり補正するほかは,原判決の理由説示(原判決
  6頁16行目から9頁19行目まで)と同一であるから,これをここに引用す
  る。
  (1)原判決7頁7行目の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に,11
   行目の「原告を被疑者として日田区検察庁に送致した。」を「控訴人に係る
   被疑事件を日田区検察庁検察官に送致した。」に改める。
  (2)原判決7頁24行目の「本件事故当時」の前に「証拠により」を加える。
  (3)原判決9頁16行目の「したがって,」から17行目末尾までを次のとお
   り改める。
    「そして,前掲各証拠(甲第7号証,第10号証の2,第19号証(11
   頁,23頁,24頁))に弁論の全趣旨を併せると,玖珠警察署司法警察員
   は,本件事故は,控訴人が湯布院町方面から小国町方面に向けて進行中,見
   通しの悪い下り坂の左カーブを進行するに当たり,ハンドル・ブレーキ等の
   的確な操作を誤って対向車線に原告車を進出させたことにより発生したもの
   で,小野寺には本件事故の原因となる過失がなく,道路交通法規に違反する
   事実も認められず,小野寺に係る被疑事実はないと判断したことから,控訴
   人に対する道路交通法違反被疑事件について捜査をしたものの,小野寺につ
   いて犯罪の捜査をしなかったものであり,したがって,小野寺に係る業務上
   過失傷害等の被疑事件を検察官に送致しなかったことは何ら違法ではない
                  -3-
  (刑事訴訟法189粂2項,246条参照)。」
 2 控訴人は,上記第2の3のとおり主張するが,この点に関する当裁判所の
  判断は,上記引用に係る原判決説示(補正後のもの)のとおりであるから,
  控訴人の上記主張は採用することができない。
 3 以上の認定及び判断の結果によると,控訴人の本件請求は,理由がないか
  らこれを棄却すべきところ,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であ
  り,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判
  決する。
   東京高等裁判所第21民事部
      裁判長裁判官 渡邉 等
         裁判官  橋本昌純
         裁判官  山口信恭
                    -4-
    これは正本である。
     平成21年11月26日
      東京高等裁判所第21民事部
       裁判所書記官 金 子  誠 公印
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