平成21年11月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 金子 誠
平成21年(ネ)第3294号 国家賠償請求控訴事件
(原審・横浜地方裁判所平成20年(ワ)第3 3 7 1号)
判 決
横浜市00区0丁目00番00号
控訴人 出羽やるか
大分市大手町3丁目1番1号
被控訴人 大分県
上記代表者知事 広瀬勝貞
上記訴訟代理人弁護士 富川盛郎
上記指定代理人 小代義之
同 首藤元一
同 生野 敏
同 木戸重文
上記当事者間の頭書事件について,当裁判所は,平成21年10月8日終結した
口頭弁論に基づき,次のとおり判決する。
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人は,控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成20年9月6
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
-1-
2 被控訴人
主文と同旨
第2 事案の概要
1 控訴人は,大分県玖珠郡内で交通事故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察
官が当該交通事故に関する事件の捜査に当たり,実況検分調書の作成をしない
まま放置するなどの違法行為をしたことにより損害を被ったと主張し,上記違
法行為が原因で交通事故の加害者に対する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支
払を受けることができなかったことによる損害(交通事故による損害)255
7万8457円及び上記違法行為自体による慰謝料442万1543円の合計
3000万円の損害金のうちの一部請求として,10万円及びこれに対する訴
状送達の日の翌日である平成20年9月6日から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
原判決は,控訴人の請求を棄却した。控訴人は,原判決を不服として,控訴
の申立てをした。これが本件である。
2 前提事実及び当事者双方の主張は,後記3のとおり,当審における控訴人の
主張を付加するほかは,原判決の事実摘示(原判決2頁3行目から6頁14行
日まで)に記載のとおりであるから,これをここに引用する(ただし,原判決
2頁7行目の「道路」を「道路(以下「本件道路」という。)」に,16行目
の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に,17行目の「副検事」を「検
察官」に,5頁19行目から20行目にかけての「本件交通事故」を「本件事
故」に,22行目の「本件交通事故を」を「本件事故に関する控訴人に係る被
疑事件を」に,26行日の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に改め
る。)。
3 当審における控訴人の主張
一たび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑のある事件
に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
-2-
ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
いのであり,司法警察員は,事件を送致するか否かを決定する権限を与えられ
ていない。したがって,小野寺を業務上過失傷害等被疑事件の被疑者として検
察官に送致しなかった司法警察員の行為は違法である。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の本件請求は,理由がないからこれを棄却すべきである
と判断する。そして,その理由は,後記2のとおり当審における控訴の主張に
対する判断を付加し,次のとおり補正するほかは,原判決の理由説示(原判決
6頁16行目から9頁19行目まで)と同一であるから,これをここに引用す
る。
(1)原判決7頁7行目の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に,11
行目の「原告を被疑者として日田区検察庁に送致した。」を「控訴人に係る
被疑事件を日田区検察庁検察官に送致した。」に改める。
(2)原判決7頁24行目の「本件事故当時」の前に「証拠により」を加える。
(3)原判決9頁16行目の「したがって,」から17行目末尾までを次のとお
り改める。
「そして,前掲各証拠(甲第7号証,第10号証の2,第19号証(11
頁,23頁,24頁))に弁論の全趣旨を併せると,玖珠警察署司法警察員
は,本件事故は,控訴人が湯布院町方面から小国町方面に向けて進行中,見
通しの悪い下り坂の左カーブを進行するに当たり,ハンドル・ブレーキ等の
的確な操作を誤って対向車線に原告車を進出させたことにより発生したもの
で,小野寺には本件事故の原因となる過失がなく,道路交通法規に違反する
事実も認められず,小野寺に係る被疑事実はないと判断したことから,控訴
人に対する道路交通法違反被疑事件について捜査をしたものの,小野寺につ
いて犯罪の捜査をしなかったものであり,したがって,小野寺に係る業務上
過失傷害等の被疑事件を検察官に送致しなかったことは何ら違法ではない
-3-
(刑事訴訟法189粂2項,246条参照)。」
2 控訴人は,上記第2の3のとおり主張するが,この点に関する当裁判所の
判断は,上記引用に係る原判決説示(補正後のもの)のとおりであるから,
控訴人の上記主張は採用することができない。
3 以上の認定及び判断の結果によると,控訴人の本件請求は,理由がないか
らこれを棄却すべきところ,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であ
り,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判
決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官 渡邉 等
裁判官 橋本昌純
裁判官 山口信恭
-4-
これは正本である。
平成21年11月26日
東京高等裁判所第21民事部
裁判所書記官 金 子 誠 公印
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平成21年(ネ)第3294号 国家賠償請求控訴事件
(原審・横浜地方裁判所平成20年(ワ)第3 3 7 1号)
判 決
横浜市00区0丁目00番00号
控訴人 出羽やるか
大分市大手町3丁目1番1号
被控訴人 大分県
上記代表者知事 広瀬勝貞
上記訴訟代理人弁護士 富川盛郎
上記指定代理人 小代義之
同 首藤元一
同 生野 敏
同 木戸重文
上記当事者間の頭書事件について,当裁判所は,平成21年10月8日終結した
口頭弁論に基づき,次のとおり判決する。
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人は,控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成20年9月6
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
-1-
2 被控訴人
主文と同旨
第2 事案の概要
1 控訴人は,大分県玖珠郡内で交通事故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察
官が当該交通事故に関する事件の捜査に当たり,実況検分調書の作成をしない
まま放置するなどの違法行為をしたことにより損害を被ったと主張し,上記違
法行為が原因で交通事故の加害者に対する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支
払を受けることができなかったことによる損害(交通事故による損害)255
7万8457円及び上記違法行為自体による慰謝料442万1543円の合計
3000万円の損害金のうちの一部請求として,10万円及びこれに対する訴
状送達の日の翌日である平成20年9月6日から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
原判決は,控訴人の請求を棄却した。控訴人は,原判決を不服として,控訴
の申立てをした。これが本件である。
2 前提事実及び当事者双方の主張は,後記3のとおり,当審における控訴人の
主張を付加するほかは,原判決の事実摘示(原判決2頁3行目から6頁14行
日まで)に記載のとおりであるから,これをここに引用する(ただし,原判決
2頁7行目の「道路」を「道路(以下「本件道路」という。)」に,16行目
の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に,17行目の「副検事」を「検
察官」に,5頁19行目から20行目にかけての「本件交通事故」を「本件事
故」に,22行目の「本件交通事故を」を「本件事故に関する控訴人に係る被
疑事件を」に,26行日の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に改め
る。)。
3 当審における控訴人の主張
一たび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑のある事件
に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
-2-
ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
いのであり,司法警察員は,事件を送致するか否かを決定する権限を与えられ
ていない。したがって,小野寺を業務上過失傷害等被疑事件の被疑者として検
察官に送致しなかった司法警察員の行為は違法である。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の本件請求は,理由がないからこれを棄却すべきである
と判断する。そして,その理由は,後記2のとおり当審における控訴の主張に
対する判断を付加し,次のとおり補正するほかは,原判決の理由説示(原判決
6頁16行目から9頁19行目まで)と同一であるから,これをここに引用す
る。
(1)原判決7頁7行目の「日田区検察庁」を「日田区検察庁検察官」に,11
行目の「原告を被疑者として日田区検察庁に送致した。」を「控訴人に係る
被疑事件を日田区検察庁検察官に送致した。」に改める。
(2)原判決7頁24行目の「本件事故当時」の前に「証拠により」を加える。
(3)原判決9頁16行目の「したがって,」から17行目末尾までを次のとお
り改める。
「そして,前掲各証拠(甲第7号証,第10号証の2,第19号証(11
頁,23頁,24頁))に弁論の全趣旨を併せると,玖珠警察署司法警察員
は,本件事故は,控訴人が湯布院町方面から小国町方面に向けて進行中,見
通しの悪い下り坂の左カーブを進行するに当たり,ハンドル・ブレーキ等の
的確な操作を誤って対向車線に原告車を進出させたことにより発生したもの
で,小野寺には本件事故の原因となる過失がなく,道路交通法規に違反する
事実も認められず,小野寺に係る被疑事実はないと判断したことから,控訴
人に対する道路交通法違反被疑事件について捜査をしたものの,小野寺につ
いて犯罪の捜査をしなかったものであり,したがって,小野寺に係る業務上
過失傷害等の被疑事件を検察官に送致しなかったことは何ら違法ではない
-3-
(刑事訴訟法189粂2項,246条参照)。」
2 控訴人は,上記第2の3のとおり主張するが,この点に関する当裁判所の
判断は,上記引用に係る原判決説示(補正後のもの)のとおりであるから,
控訴人の上記主張は採用することができない。
3 以上の認定及び判断の結果によると,控訴人の本件請求は,理由がないか
らこれを棄却すべきところ,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であ
り,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判
決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官 渡邉 等
裁判官 橋本昌純
裁判官 山口信恭
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これは正本である。
平成21年11月26日
東京高等裁判所第21民事部
裁判所書記官 金 子 誠 公印
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