おばばの独り言 from Another World

なんかのご縁で中国の福建省へ。
そして今度はデカン高原の小都市へ。
そして日本に帰って、今はきまぐれな野菜作り!

女の人の “やわらかい” 日本語 が憧れ 

2014-11-26 18:52:41 | 日本語
出席番号7番で、「なな(七)」と呼ばれている女子学生がいる。最初名前を聞いたとき「なな」だというので、どういう意味なのかを聞いた。「出席番号が七番だからです。」との答え。日本人の私は自然に「ちゃん」を付けて、「ななちゃん」と呼び始めた。

ある時、ななちゃんより一年先輩の女子学生が私に聞いてきた。「彼女のことを、私たちは『ナッナッー』と強く呼びつけるのに、先生は『ななちゃぁん』と優しく呼ばれます。どうしてですか?」

そんなことは考えたこともなかった私は面食らった。自分が「ななちゃぁん」と優しい声で呼んでいる(?)ことにも気がついていなかった。この先輩は、私が優しい性格だから、話し方も優しいと思っているのではないかと思われた。そんなことはないのは、本人の私が一番よく知っている。

今年の7月、アモイ大学で、日本の早稲田大学の戸田貴子先生の「日本語の発音指導」の講義があり、聴講させていただいた。そこで、戸田先生が、「日本人女性のやわらかい話し方」と何回か言われた。その時には、どんな話しかたが「やわらかい」のか分からなかった。

この頃思うに、「中国人の学生は『ナッナッー』と強く呼びつけるのに、日本人の私は『ななちゃぁん』と優しく呼ぶ」というのは、話し手が中国人か日本人かという「人」の問題ではなく、中国語か日本語かという「言語」の問題ではないのだろうか。つまり、ふたつの言語の発声の仕方の違いから来るのではないだろうか。中国語は、喉のあたりを緊張させて、いわゆる声門閉鎖をして音を出すことが多いようだ。そういう音を聞くと、突然「パッ」と音が出て、強く言っているように聞こえる。それに対して、日本語は喉を楽にし大きく開いて、喉の奥から「はぁー」と発声するようだ。だから、やわらかく息を出しているように聞こえる。

決して、話し手が優しい人だから、優しく呼んでいるわけではないのではなかろうか。

成人になってから外国語を学習し、ネイティブと聞き間違うほどの発音をものにした人の話を聞くことがある。戸田先生のご講義の中でも、そういう人の日本語の録音を聞いた。そういう人は、外国語の表面上の発音を完璧にマスターしただけでなく、発声の仕方も完璧に自分のものにしたのだろうと思う。生まれつき耳がよく、加えて大変な努力をした人でなければ、達成できない”偉業“と言えよう。






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こちらを立てればあちらが立たず 中国人学生の悩み(1) ta da た だ  

2014-11-24 08:08:08 | 日本語

毎年11月に、福建省の大学の日本語スピーチコンテストが開かれる。朗読部門とスピーチ部門に分かれていて、大学を代表して出場することになった学生は、日本人教員に発音指導を頼んでくる。もちろん、コンテスト担当の中国人の先生方の指導も受ける。中国語母語話者が日本語を学ぶ時、清音、濁音の聞き分けや発音の仕分けに苦労することが多い。「私は、もともとアルバイトはしたくなかったんだ。」という文が「わだじは、もどもどアルバイドはしだぐながっだんだ。」に近く発音されるケースが多い。

今年度の出場者、Aさんが私のところにやってきて、「たたかい(戦い)」を「ただがい」に近く発音したので「たたかい」に直させようとした。彼女は戸惑ったようすで、「さっき中国人の先生に、『ただがい』にするように言われたばかりです。中国では、清音の『た』は語頭では「た」、語中では『だ』と発音するように教えられます。」と言う。直されたばかりのところへ、私が逆にするように迫って、「たたかい」が正しいというものだから、わけが分からなくなるらしい。

試しに、私が「たたかい」と言ってみて、2音めと3音目の「たか」が、二人にどう聞こえるかを調べてみた。中国人のAさんには、「だが」に聞こえ、日本人の私には「たか」と聞こえることが分かった。つまり、同じ音が中国語話者と日本語話者には違う音に聞こえているというわけだ。

本来なら、発音指導する私が、中国語の”ta” “ da” と日本語の「た」「だ」の4つの音の違いを音声学理論に基づいてきちんと説明しなければならないのだと自覚はしている。だが、中国語では有気音、無気音として息の出し方の違いに注目するところを、日本語では清音、濁音として声帯を震わせないか震わせるかに注目している。だから、”ta”と”da”の比較、「た」と「だ」の比較はできるが、4つの音全部の出し方や出た音の比較は難しい。教える側が分かっていないのだから、教わる側も分からないのも無理はない。

昨年から、学生のボランティアに中国語を習っている。発音で一番苦手なのは無気音だ。どの学生先生も私の無気音には首をかしげ、何度もやり直しさせる。5回、10回と発音してもダメで、やけくそになって日本語の濁音でやると大抵OKになる。中国語母語話者の耳には、無気音と濁音は似て聞こえるのだろうか。

この頃、天敵の無気音は、「空気を出さない音」と考えるよりも、「声門閉鎖音」と考えた方が私にはわかりやすいと思うようになった。例えば、”da” を発音するには、まず促音の「っ」を出す構えをして喉で息を止めておく。次に、突然強く、スタカットで「タッ」と言う。つまり、「っタッ」という感じだ。すると、中国語の無気音”d”が出る(ような気がする)。そう考えると、日本語の「た」「だ」の子音部分は、声門閉鎖しないで発声するので、有気音ということになる。4つを声門閉鎖なしの有気音か、声門閉鎖ありの無気音かで分けると、”ta”、「た」「だ」の子音部分が有気音、”da”の子音部分が無気音だと考えられる。

いろいろ考えはするが、まだこの4つの音の関係がよくつかめない。当然、うまく説明できない。学生が、どうしていいか分からなくて、中国人の先生のところへ行ったら「ただがい」風にいい、日本人の先生のところでは「たたかい」というというような、自分が、はっきりと自分を持たない卑怯で卑屈な人間に思えてしまうような、情けない思いをしなくてすむようにしてやりたいのだが。






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