山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座88

2016-08-30 20:31:07 | 観天望気

今日は、先日唐松岳に行ったときに見られた雲について紹介します。

この日は、山麓の白馬村は朝から曇り空。山は雲に覆われて全く見えません。

山麓の天気予報は「曇りのち雨」、また、某民間気象会社の白馬岳の予報も「曇りか霧時々雨」でした。

今回は「雨だったら中止」という軟弱企画。はてさて出発するかどうか?

まずは、前日に確認した予想天気図(上図は当日9時の速報天気図だが、前日の予想天気図と大きな差がない)によれば、南海上に台風10号があり、一方、前日北アルプスに雨を降らした前線は東海上に抜けています。また、等圧線の向きから北アルプスでは南東風が卓越することが予想されます。

ということは、北アルプスにとっては弱い風!低気圧が接近しているなど天気を崩す要素がないときは南東風は陸からの風となり、南東側に中部山岳の山々があるので湿った空気が入りにくい。ただし、この日は山麓で低い雲が入っていることから、下層には湿った空気が入ってきているようです。

そこで、山の上が晴れているかどうかなのだが、これは大気の安定度だとか、中層の湿り具合だとか、下層と中層の風、目的の山岳の地形など色々調べなければ予想できません。

ところが、今は便利なものがあります。それは、ライブカメラと衛星画像!これらを使って稜線は晴れていることを確認しました。

ただし、俺らが稜線に出るまでにお天気が持たなければ意味がありません。何としてもお客様には唐松岳からの剱岳を見てもらいたい!

恐らく10時か11時頃までは持つだろうが・・・。その根拠はヒ・ミ・ツです。

今回は足の速いメンバーなので、2時間で稜線に到達するぞ!と出発しました。

 

リフトを乗り継いで到着した八方池山荘はガスガス。出発していくと、ガスが薄くなる時間があり、上空は少し明るい。このようなときは、雲が薄く、雲頂高度が低い証拠。つまり、雲のてっぺんが近づいてきているので、高度をあげれば晴れることが多いです。

それを期待して前進していくと・・・。

2,550m付近で雲の上に出ました!振り返ると信州側(東側)には雲海が広がっています。雲頂高度が一定で、この上に安定層があります。この安定層が破壊されたり、上にあがっていかなければ、お天気は持ちます。

しばらくすると、雲の上端がもくもくしてきています。安定層が破壊されつつある証拠です。

お客様には頑張っていただいて、2時間もかからずに稜線へ。山頂にも2時間で到着。おかげで剱岳や立山連峰を見ることができました!上の写真は唐松岳付近からの白馬三山方面(北側)です。白馬三山も晴れていますが、大分、雲の上端がもくもくとしてきています。

そして雲の高度もあがってきて、稜線の低い所を越えてきました。こうなると、天気が崩れるのは時間の問題です。

15分もすると、

こんな感じになりました。

雲を見ていくと、天気が崩れる様子やタイミングが分かります。

皆様も登山中に、雲海が見られたときは、その高度の変化と、雲のてっぺんの形に注意すると、今後の天気の変化が予想できますよ。

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之


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