山の天気予報

ヤマテンからのお知らせや写真投稿などを行います。

猪熊隆之の観天望気講座87

2016-08-22 21:20:24 | 観天望気

今回は、昨日(8月21日)から今日(8月22日)にかけて見られた雲について解説します。今日の昼頃、台風9号が関東地方に上陸しましたが、台風が接近する際には色んな雲が見られます。

雲は「空気の気持ち」つまり、空気の状態を表してくれますが、台風は空気が池だとして、池の中に大きな石を投げ込むようなもの。池に波紋が広がるように、空気にも波紋が広がり、それが空気の波となって色々な雲を作るのです。

さて、まずは台風襲来前日の雲です。

上の写真は、昨日の午後、長野県茅野市郊外で撮影したものです。画面奥の八ヶ岳にかかっているもくもくした雲の上方にある髪の毛をくしですいたような繊維状の雲があります。これは巻雲(けんうん)という雲で、雲の中でもっとも高い所に浮かんでいます。

巻雲には雨巻雲と晴れ巻雲があります。雨巻雲と晴れ巻雲については過去の観天望気講座をご参照ください(下記URL)。

http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/047f57fe1b62d34335c45c35a0661f1f

http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/712288252cf223bda87307278cfcfc84

今回は鉤状ではありませんが、湿った感じのする雨巻雲です。九州の西に低気圧があるとき、南海上に台風があるときにこのような雲が出るときは、翌日以降、天気が崩れることが多くなります。

上の写真は昨日の夕方、長野県茅野市郊外から南東方向を撮影したものです。台風が近づいてくると、上空に水蒸気が多くなり、空が綺麗に焼けることが多くなります。そして紅く染まっている巻雲がカーブしています。雲の上の部分と下の部分で風の強さや向きが違うときに、このような雲の形になります。空気が乱れている証拠です。

上の写真は同じ場所から、今度は北西方向を写したものです。うろこ状の雲は巻積雲です。こちらも空気が乱れている証拠です。台風が接近するとき、空は賑わい、美しい夕焼けや朝焼けが期待できます。

さて、いよいよ台風上陸当日です。

空も何やらただならぬ様子。まず、下の部分に層雲が現れてますが、雲の上端が右側になびいていて、風が下層(地面に近い所)から強いことが分かります。また、上の方には羊雲(高積雲)が見られます。昨日のうろこ雲(巻積雲)より一回り大きく、高度も下がってきています。空気の乱れが下方に伝わってきて、湿った空気も降りてきているのだと思います。

上の写真は本日9時頃のものです。全体に雲が厚みを増して隙間がなくなってきました。全天が高層雲で覆われてきています。つまり、台風本体の雲がかかってきたということですね。小雨が降り出しました。台風の雲は東側にあるので、東の空はどんどん暗くなっていきます。

一方で西の空はご覧の通り。つまり、長野県茅野市付近が雨と晴れの境い目にあるのです。

上の写真も同じ場所から東の空を見たものです。八ヶ岳の反対側(東面)から雲が湧き出ています。東風が山にぶつかって上昇することによってできた雲です。山はガスに覆われてきました。恐らく雨も降りだしたことでしょう。

上の写真は同じ場所から南東方向(甲斐駒方面)を写したものです。雲の底に丸いボツボツのようなものが出来てきていますね。これは上昇流だけだった雲の中に下降流が起き始めたことを表しており、下降流は雨が降ることによって生じるので、そろそろ雨が降り始めるというサインです。

ということで、ここでも雨が降り始めました。台風は雲の博物館。沢山の雲が見られる良い機会です。台風が接近するときは雲に注目してみると面白いですよ。

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

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雲から山の天気を学ぼう(第7回)

2016-08-22 18:39:17 | 観天望気

雲から山の天気を学ぼう(第7回)

天気が崩れていくときの雲partⅠ

低気圧の北側と温暖前線編

 

前回は、低気圧や前線が近づいてくるとき、つまり天気が崩れていくときに、最初に現れる雲について学びました。ただ、雨巻雲(あめけんうん)が現れても必ず天気が崩れる訳ではありません。天気図で低気圧や前線など、天気を崩す要素が見当たらないかを確認するとともに、その後の雲の変化を見ることが大切です。そこで、今回は、低気圧が近づいてくるときに、どのように雲が変化していくかを見ていきます。

春や秋の時期、日本付近を通過する低気圧は温帯低気圧と呼び、温かい空気と冷たい空気がぶつかり合うと発生します。暖気と寒気が共に強い場合には、低気圧は発達します。温帯低気圧は、温暖前線と寒冷前線という2つの前線を持つことが多いです。温暖前線は低気圧の進行方向前方に、寒冷前線は後方にあります。従って、低気圧が接近してくるときは、温暖前線が先に接近してくることになります。

下の図をご覧ください。これは上の図におけるA-Bの断面図です。温暖前線は冷たい空気が元々あったところに、温かい空気がやってくることで、その境界にできます。温かい空気は軽く、冷たい空気は重いので、温かい空気は冷たい空気の上を乗りあげていきます。つまり、前線は地上付近にのみあるのではなく、進行方向に向かって上空に延びています。

温暖前線の構造(山岳気象大全 猪熊隆之著:山と渓谷社より)

 

上昇気流が起きるところで雲は発生します。冷たい空気の上を温かい空気が乗り上げて上昇していますので、前線付近では地上近くで上昇気流が発生し、前線から離れるにつれて(Bに近づくにつれて)上空高いところで上昇気流が起きています。つまり、前線に近いほど低いところから雲ができ、前線から離れるにつれて高い雲になっていきます。

低気圧が接近すると、最初に高い雲が現れ、次第に低い雲に変わっていくのはそのためです。

典型的な雲の変化は以下の通りです。

①  巻雲(けんうん)→②巻層雲(けんそううん)、または③巻積雲(けんせきうん)→④高層雲(こうそううん)→⑤乱層雲(らんそううん)

 

 巻雲、巻層雲、巻積雲は「晴れ」、高層雲に覆われると「くもり」、乱層雲に覆われると「雨」ということになります。

 それでは、実際に低気圧や温暖前線が近づいていくときの雲の変化を見ていきましょう。

 

①    雨巻雲

②    巻層雲、薄雲

③    巻積雲(けんせきうん・うろこ雲)

時々、雨巻雲が現れた後に、巻層雲が現れず、全天に巻積雲が現れることがあります。このようなときは、低気圧が急激に発達したり、台風が近づいてくるなど大きな天候悪化が予想されるときです。特に注意しましょう。

④    高層雲(こうそううん・おぼろ雲)

巻層雲や巻積雲が高層雲に変わってきたら、山では数時間後に雨が降り出すことが多くなります。この雲に覆われてきたら、雨を覚悟した方が良いでしょう。

⑤  乱層雲(らんそううん・あまぐも)

雨や雪を降らす雲です。山ではあまり遭遇したくないですね。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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山の天気予報の表示不具合解消のお知らせ

2016-08-11 11:20:15 | おしらせ

平素より山の天気予報をご利用いただき、誠にありがとうございます。

本日(8月11日)、システムに不具合が発生したため、専門天気図が10日21時初期値のまま更新が停止しておりましたが、11時20分頃に復旧いたしました。

このたび、ご利用の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

安定した運用に努めてまいりますので、今後とも「山の天気予報」を何卒よろしくお願い申し上げます。

山の天気予報 システム担当

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【お詫び】一部の表示に不具合が発生

2016-08-11 08:33:33 | おしらせ

山の天気予報をご利用の皆様

平素より山の天気予報をご利用いただき、誠にありがとうございます。
現在、システムに一部、不具合が発生しており、専門天気図が正しく表示されておりません。
ご利用の皆様に深くお詫び申し上げます。
復旧の際には再度、メール及び山の天気予報トップページのお知らせ欄でお知らせさせていただきます。
なお、山頂の天気予報や大荒れ情報など他の情報の表示には問題はありません。

■障害内容
専門天気図:最新の情報に更新されておりません(10日21時初期値のものになっています)。

山の天気予報 システム担当

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猪熊隆之の観天望気講座86

2016-08-05 21:13:46 | 観天望気

今回は、先日の涸沢フェスティバルで見られた雲について紹介します。

2日目の朝は快晴でした。こんな朝を迎えると、山に来て良かったなぁ、と思いますよね。

ところが、陽が昇ると、屏風の頭と北尾根の鞍部から雲が流れ出してきました。滝雲になりかかりましたが、残念ながら完成系までには至らず。湿った空気の入りこみが弱かったからですね。

画面の右側が南の方角ですので、南からの湿った空気が入り込んでいることを示しています。この方角、つまり涸沢から見て北尾根の方角からどんどん雲が湧いてくるときは要注意。天気が崩れることが多くなります。

この日も次第にガスに覆われ、何とか田中陽希さんのトークショーまで雨は持ってくれましたが、夜中は土砂降りの大雨に。

なんと雨男がいるのか、北アルプス南部にだけ強い雨雲がかかっているではないか!これは飛騨側からの温かく湿った空気と、安曇野盆地からの湿った空気が北アルプスでぶつかり合い、上昇気流が強められたことが原因。このような地形性の雨の場合は状況が変わらなければ、雨は止みません。

翌朝も雨が残り、残念ながら朝の観天望気講座は中止になりました。さて、閉会式もまさかの中止!?と思っていたところ

風向きが飛騨側からの風に変わりました。東の空が明るくなり、常念山脈の上空には青空もも。つまり、雨雲を維持していた場が変わったのです。風下側から天気が回復してくるという山の天気で良く見られる光景がここでも見られました。

案の定、雨はどんどん止んでいき、何とか閉会式を終えることができました。

めでたし、めでたし。

※雨雲レーダー:気象庁提供

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

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