浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

オバマは日本を守らない

2015-09-04 09:05:19 | 資料

中国を誰も止められない、南シナ海の人工島を2017年までに「完全武装」化も―豪紙

2015年9月1日 レコードチャイナ

2015年8月31日、中国・環球時報によると、30日付の豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドは同国政府消息筋の話として「中国は島しょ建設を完成させ、南シナ海争奪戦の第1ステージで勝利した。新たなステージでの中国の勝利をもはや誰も止められないだろう」と報じた。 

軍事専門家の分析によると、中国による南シナ海の島しょでの港湾、軍営、陣地、砲火、空港、レーダーなどの建設作業は、2017年に完成を迎える。南シナ海全域をカバーする軍事力が現実のものとなる。

 

中国外交部の報道官は、南沙(英語名スプラトリー)諸島および周辺海域について「中国は争いのない主権を有しており、いかなる島しょでの行動も主権の範囲内だ」と再三強調してきた。同諸島での建設についても「軍事的防衛の必要性に加え、多くは民間の需要を満たすためのものだ」と表明している。 

米国は今年5月、偵察機と艦船を中国の人工島の周辺12海里以内に入らせると宣言。オーストラリアも支持を表明した。だがいまだ実現していない。豪政府消息筋は「米国と豪を含むその同盟国は実際の行動を起こせていない」と指摘する。戦略アナリストも「中国に友好的なラオスがASEANの持ち回り議長国から外れ、米国の新政府の状態が整う、少なくとも2017年までは、中国の行動は大きな拘束を受けることはないだろう」との認識を示している。(翻訳・編集/柳川)

http://www.recordchina.co.jp/a117937.html

◆【世界を斬る】米海軍、新トップに“戦いの素人” 中国と対決できない「オバマ氏の暴挙」

2015.06.10 zakzak

 南シナ海の人工島をめぐって、中国が「米国が介入してきたら戦争だ」とわめいているとき、オバマ大統領は米海軍の最高指揮官に技術担当の海軍大将を任命した。海軍の新トップは、中国と戦うことなど全く考えていない。

 日本では、なぜか、「海軍作戦部長」と翻訳されている海軍総司令官に就任したジョン・リチャードソン海軍大将は海軍原子力推進局長で、海軍総司令官への昇進順位でいえば5番目だった。だから、今度の人事は大抜擢で、誰もが驚き、海軍関係者の間では懸念と不安が高まっている。

 米海軍を退役したばかりの元提督の友人は、こう言った。

 「オバマ大統領の今度の決定は、米海軍に魚雷攻撃をかけて沈没させてしまうようなものだ。海軍が中国と対決することはとてもできなくなる」

 オバマ大統領は2012年にも、太平洋防衛の最高指揮官である太平洋軍司令官に、中国に対する弱気で懸念されていたサミュエル・ロックリア海軍大将を任命した。ロックリア氏は、中国が米空母キラーとよばれるクルージングミサイルDF21を実戦配備しようとしたとき、いち早く西太平洋から米海軍を撤退させようとした超本人だ。

 私の知るかぎり米海軍の最高指揮官は長い間、第一線で活躍した提督ばかりだった。ブッシュ前大統領が任命したゲイリー・ラフヘッド海軍総司令官は長い間、駆逐艦の艦長として活躍し、私は仕事の上で何度も会ったことがある。戦う意志に溢れた海の男で「必要なら、米海軍はどこにでも乗り込んでいく」といつも言っていた。

 その後任のジョナサン・グリナート海軍大将も優秀な潜水艦乗りで、私とのインタビューでも、「中国の潜水艦などは米国の技術をもってすれば敵ではない」と中国をのんでかかっていた。

 一方、リチャードソン新海軍総司令官は、原子力エンジンの開発や整備に関しては世界的に知られている。空母や潜水艦を含む米海軍艦艇の原子力エンジンが過去64年間、事故を起こしたことがないのは、彼の功績とされている。

 だが、南シナ海では今、中国が不法な軍事行動をとり、核戦力を使ってでもアメリカと対決しようとしている。そんな現状で、原子力エンジンだけを仕事にしてきた技術担当の提督を、海軍の総司令官にする人事は、オバマ大統領の暴挙としか言いようがない。

 米海軍は現在、原子力空母を3隻、攻撃型原子力潜水艦を10隻あまり建造中で、潜水艦や機雷の能力を急速に向上させている。だが、肝心の最高指揮官が“戦いの素人”とあっては、米海軍と協力してアジア西太平洋の安全を維持しなければならない日本には、まことに気がかりなことだ。

 ■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150610/dms1506101550007-n1.htm

◆ヨーロッパを破壊するアメリカ

2015年8月11日 マスコミに載らない海外記事

Eric ZUESSE 
2015年8月7日 | 08:00
Strategic Culture Foundation

リビア、シリア、ウクライナや、ヨーロッパの周辺部や端にある他の国々で、アメリカのバラク・オバマ大統領は、不安定化政策や、爆撃や他の軍事援助を追求し、何百万人もの避難民を、こうした周辺地域から、ヨーロッパへと追い出し、移民排斥という極右の火に油を注ぎ、周辺諸国のみならず、遥か北ヨーロッパに到るまで、ヨーロッパ中で、政治的不安定化をもたらしている。

2015年8月3日「オフ-ガーディアン」の“シリア内のオバマ‘安全地帯’は、この国を新たなリビアに変えることを目指すもの”という見出しの記事で、シェイマス・クックは、オバマが、トルコの為、これまで法的強制力のなかった、シリア上空の飛行禁止空域でのアメリカによる航空支援を承認したと報じている。アメリカは、これから、シリア領土の広大な部分を占領したISISを含む過激派イスラム集団を標的とする、シリアのバシャール・アル-アサド大統領の、あらゆる飛行機を撃墜することになる。

クックはこう報じている。

“トルコは、シリア戦争が始まって以来、オバマに、この飛行禁止空域を要求してきた。紛争中ずっと、そしてここ数カ月間も、議論されてきているが、真の狙いは常にシリア政府だった。そして、突如、飛行禁止空域が実現しつつある - トルコがずっと望んでいたまさにその場所に - ところが、適切な名前 '反クルド・反シリア政府派用安全地帯”の代わりに、 '反ISIS' 派の安全地帯というレッテルを貼られている。

ニューヨーク・タイムズは、 7月27日こう報じている。"この計画は、比較的穏健なシリア武装反抗勢力が、アメリカと、おそらくはトルコの航空支援を得て、領土を得ることを目指している。”ところが、タイムズは、(いつも通り)お上の速記役で、アメリカ政府情報筋から(そして、アメリカ政府の宣伝活動の為に)こう報じている。“比較的穏健”を定義しそこねているが、全てのシリア“比較的穏健な武装反抗勢力”集団は、ISISと協力して、彼等が、そこにいるあらゆる非イスラム教徒を見つけ出し、斬首し、時には、人質に取って身代金を要求するのを手伝っている。アサドの下、シリアは聖職者支配国家ではなく、信仰の自由を享受しているが、アサド支配に反対するシリア反政府派は全て、世俗主義と無縁だ。今やアメリカは、これまで以上に、明らかに、反アサド、親イスラム主義者寄りだ。

セイモア・ハーシュは、ロンドン・レビュー・オブ・ブックスで、2014年4月17日に報じている。2011年のオバマ政権によるリビア爆撃作戦は、オバマが既に、リビアで、まんまとしでかした様に、サリン・ガスを、リビアから、シリアのアル=ヌスラ戦線へと移動し、一般市民に対する毒ガス攻撃を引き起こすのを手助けし、アメリカ政権が、アサドの罪になすり付けて、シリアを爆撃する口実とするという広範な計画の一環だった。二人の独裁者、カダフィとアサドは、ロシアと同盟しており、特にアサドは、カタールのガス供給にとってではなく、ロシア・ガス供給輸送ルートとし、ロシアにとって重要だった。 カタールは、ヨーロッパに対する最大のガス供給国としてのロシアの立場にとって、主要な潜在的脅威なのだ。

国際関係の、そして軍事政策のオバマの第一目標は、ロシア打倒であり、ロシアの政権転覆を強いて、ロシアをアメリカ帝国の一部にし、ワシントンの支配に抵抗する主要大国でなくすることだ。

2011年に、アメリカがリビアを爆撃するまで、リビアは平和で繁栄していた。2010年、一人当たりGDP (収入)は、IMFによれば、12,357.80ドルだったが、我々がリビアを爆撃し、破壊した年、2011年には、わずか5,839.70ドルへと急落した。(ヒラリー・クリントンがこう大言壮語したのは有名だ。“来た、見た、彼は[カダフィ]死んだ!”) (しかも、アメリカの同盟国サウジアラビアとは違って、一人当たりGDPは、驚くほど平等に分配されており、教育も医療も公営で、全員が享受できていた。貧しい人々さえも。) より最近、2015年2月15日、NPR記者のレイラ・ファデルは“油田を攻撃されている、リビアの経済的将来性は暗い”と全段見出しで報じた。“生産担当の人物が、将来が暗いことを知っている。 '我々は生産できない。我々は生産の80パーセントを失っている。' と、リビア石油公社総裁ムスタファ・サナッラは語る”のを彼女は公表した。ワシントンの指示により、2011年以降、IMFのリビアのGDP数値報告は信頼できなくなり、現地の状況は、迅速に正常に復帰した(正常以上に良くなった。2012年、一人当たり13,580.55ドル GDP)だとしているが、誰もがそれがウソであることを知っている。NPRでさえも、実際、それは真実ではないと報告している。2012年、リビアの一人当たりGDPを、不合理にも、23,900ドルと、CIAは推計し、(彼等は、その年以前の数値は全く示していない)、リビアの一人当たりGDPは、その後、ごく僅か落ちたと言う。アトランティック・カウンシルは、2014年1月23日付けの、リビア経済に関する最新の体系的報告に、“リビア: 2014年、経済崩壊に直面”という見出しを付けて、少なくとも事態を正直に説明しようと努力しているが、公式推計で信頼できるものは皆無だ。

リビアは、ヨーロッパにとって大問題だ。何百万人ものリビア国民が、リビアの混乱から逃げ出している。彼らの中には、地中海を渡り、南イタリアの難民キャンプにたどり着く人々もいる。ヨーロッパの他の場所に避難している人々もいる。

そして、今やシリアは、ロシアを征服する為に破壊されつつあるもう一つの国なのだ。プロパガンダ活動があからさまな、ニューヨーク・タイムズですらも、その‘ニュース’報道で認めている通り、"トルコも、シリア武装反抗勢力も、シリアのバシャール・アル-アサド大統領打倒を最優先事項と考えている。”そこで、ロシアの同盟者バシャール・アル-アサドを打倒し、彼の非宗教政府を、イスラム教政権と置き換える為に、アメリカ爆撃機が、シリアの一部に、飛行禁止空域を設けたので、 '反ISIS'云々は、うわべだけなのだ。PRであり、プロパガンダなのだ。大衆は、ロシア打倒なぞより、遥かにISIS打倒を期待している。ところが、アメリカ支配層のものの見方は違うのだ。彼らの狙いは、アメリカ帝国の拡大だ -彼等自身の帝国拡張だ。

同様に、2014年2月、オバマは、‘イスラム・テロに反対する’やら、だまされやすい連中をけむに巻くのに、アメリカ政府が良く使う文句の様なインチキ偽装の代わりに、‘民主主義’デモというインチキ偽装によって、ウクライナで、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチの中立的な政権を打倒し、猛烈な反ロシア、人種差別主義者-ファシスト、つまりナチス政府を、ロシアの隣国ウクライナに、アメリカが据えつけ、支援した。アメリカが侵略し破壊するまでは、リビアが平和だった様に、アメリカとトルコが侵略し破壊するまでは、シリアが平和だったのと同様、ウクライナも、アメリカがクーデターをしでかし、ナチスを据えつけ、民族浄化作戦を実施し、ウクライナも破壊してしまう前は平和だったのだ。

カダフィ打倒前のリビア、あるいは、アサドを打倒しようという現在の取り組み前のシリア、あるいは、より最近では、ウクライナの民主的に選出されたヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領の見事な打倒と同様、全てが、ロシア打倒を目指しているのだ。

オバマや他のアメリカの保守派、帝国主義者に、押しつけられた惨状を、ヨーロッパの全てが、共有している事実は、ワシントン DCの権力者にとっては、ほとんどどうでも良いことだが、万一、彼等にとって、何か意味があるとすれば、それはおそらく、この広範な作戦の魅力的な側面だろう。中東の国々のみならず、ヨーロッパの各国を弱体化させることによっ、オバマの対ロシア戦争は、アメリカが引き起こす混沌と破壊が終わった後、アメリカが“最後まで生き残った男”になるのを確実にするのだ。

結果的に、例えばアメリカ国際戦略からすれば、対ロシア経済制裁が、ヨーロッパ諸国経済に大変な損害をもたらしているという事実は、悪いことではなく、良いことなのだ。

あらゆる競技で勝利の道は二つある。一つは、自らの能力を向上させることによるものだ。もう一つは、何としてでも競争相手の能力を弱体化させることによるものだ。アメリカ合州国は、現在、もっぱら後者の戦略に依存している。

調査ジャーナリスト、歴史研究者のEric Zuesseは新刊「彼らは全然違う: 民主党対 共和党の経済実績、1910-2010」および「キリストの腹話術師:キリスト教を生み出したイベント」と「封建主義、ファシズム、リバタリアニズムと経済学」の著者。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/08/07/us-is-destroying-europe.html

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-05ee.html

◆アメリカの「世界の警察官退任」発言に対する歴史的教訓

2015年1月24日 グローバル・アメリカン政論

バラク・オバマ大統領がアメリカはもはや世界の警察官ではないと発言した際、それを歓迎する声はほとんど聞かれない。イラク戦争を「傲岸不遜」として反対した者達さえも、あまりに唐突な一言に当惑している。重要な問題は、アメリカが本当に世界の警察官から本当に降りる気なら、その責任の一部でも分担できるパートナーを指名する必要があるということだ。歴史を振り返れば、アメリカはベトナム戦争後に国際的な関与を弱めると表明した。今日と同様にアメリカ国民の間には長い戦争に対する厭戦気運が広まっていた。しかしベトナム戦争後のアメリカを率いたリチャード・ニクソン氏はバラク・オバマ氏よりもはるかに責任ある行動をとっていた。

まずニクソン・ドクトリンについて述べたいが、これは1969年にニクソン大統領が戦争のベトナム化を表明したものである。当時、世界各国のオピニオン・リーダー達はアメリカの衰退を語り、アメリカが世界の安定の礎であり続けるかどうかにさえ疑問を呈した。現在のオバマ大統領と同様にニクソン大統領も同盟諸国に広まるポスト・アメリカ世界への不安を宥めるため、アメリカは条約上の遵守し、同盟国が死活的な安全保障上の権益を脅かされれば支援をしてゆくというメッセージを発した。他方でニクソン氏は、アメリカは敵の脅威に直面している国を背後から支援し、自国の防衛に第一の責任を持つのはそうした国々だと強調した。これらの点はオバマ政権の外交政策と方向性が似ている。しかし超大国がその地位を降りるあるいはその責任を他の国に委譲するというなら、そのためのパートナーが負担を分担できる能力を持てるように支援する必要がある。この点に関する限る、オバマ政権はニクソン政権よりもはるかに稚拙である。両者の顕著な違いが見られるのは中東政策においてである。

ニクソン大統領が自らのドクトリンを公表してからほどなく、パーレビ王政下のイランがペルシア湾の憲兵として台頭するための支援に乗り出した。このことが典型的に表れているのは、ニクソン政権がイラン帝国空軍の強化に対して行なった好条件で迅速な支援である。1970年代初頭のイランはソ連による領空侵犯に悩まされていた。特に高速で飛行するミグ25戦闘機はイラン空軍のF4戦闘機でも侵入を阻止できず、イランはソ連空軍のなすがままに偵察され放題であった。イランは自国の主権下にある領土を守るためにも、最先端の戦闘機を必要としていた。そのため、モハマド・レザ・パーレビ国王は1973年7月にワシントン郊外のアンドリュース空軍基地でニクソン大統領と会談した。ニクソン氏はF14かF15のどちらでもイランの防空に好ましい方を選ぶようにと、同基地での飛行デモストレーションにシャーを招待した。両機の飛行を見たシャーが躊躇なく選択したのはF14である(“Thirty minutes to choose your fighter jet: how the Shah of Iran chose the F-14 Tomcat over the F-15 Eagle”; Aviationist; February 11, 2013)。

帰国したパーレビ国王は翌年1月に30機のF14を発注すると、6月には矢継ぎ早に50機のF14をAIM54フェニックス・ミサイルとともに発注した。ニクソン政権の迅速な行動によりイランは1976年1月に最初のF14を受け取り、それとともにイラン空軍のパイロットもアメリカから集中的な訓練を受けた(“Grumman F-14 Tomcat#Iran”; Wikipedia)。その結果は目覚ましい成果となった。1977年8月にはイラン空軍のF14がフェニックス・ミサイルの発射テストで無人機を撃墜し、ソ連の侵入に対するイランの防空能力を誇示した。それ以来、恐るべきミグ25がイランの領空に飛来することもなくなった(“Aircraft/Jet fighters/F-14”; IIAF.net)。ニクソン氏が公約を果たしたと言えるのは、シャーが自国を充分に防衛できるだけでなく、ペルシア湾の憲兵としてアメリカの代役を務められるほど軍事力を備えるなでになったからである。この件から我々が学ぶべき重要な教訓は、アメリカが世界への軍事的な関与を削減できるのはその地域に強固で信頼性の高いパートナーがある場合だけだということである。

上記の歴史的事例と比較すると、オバマ大統領が世界の警察官から降りると発言したことは著しく思慮を欠いていた。ニクソン政権と違い、オバマ政権には中東の地域安全保障でアメリカの責任を委譲できるほど信頼できるパートナーはない。特にイラク政策は稚拙をきわめ、ISISの台頭に見られるように地域の不安定化を深めている。ニクソン政権はパーレビ王政下のイランが地域の警察官を担えるほどの軍事力強化を支援したが、オバマ政権はイラクの治安部隊の再建も行なわずに撤退してしまった。湾岸戦争勃発時にサダム・フセインが空軍機の多くをイランに疎開させ、残りの空軍機もイラク戦争で破壊されてしまったので、イラク空軍は実質的に存在しなかった。よってアメリカとの安全保障合意を結んで地上のテロリストを掃討するためにも、イラク空軍の地上攻撃能力の再建は必要不可欠であった(“Iraq to Have Some Air Strike Capability, U.S. Says”; Assyrian International News Agency; December 6, 2007)。

このため、イラクはF16戦闘機とアパッチ攻撃ヘリコプターの購入を決断した。マリキ政権はブッシュ政権末期にF16の購入を検討し始めた(“Iraq Seeks F-16 Fighters”; Wall Street Journal; September 5, 2008)。彼らが決断を下したのはオバマ政権の発足から数ヶ月後である(“Procurement: Iraqis Put Up The Bucks For F-16s”; Strategy Page; April 9, 2009)。イラクは2011年にまず36機を発注することでアメリカとの間で最終的に合意に達したが、UPI通信の報道によればそれでもイラク全土をカバーするには不十分だという(“Iraq F-16 Order Finally Confirmed”; Iraq Business News; December 7, 2011)。問題はサダム・フセインが政権の座を追われてからイラクにはジェット戦闘機がなかったので、そのような先進機器を使いこなせるパイロットがほとんどいないということである(“Iraq Has Brand New F-16s, But Can't Use Them Against ISIS Yet”; International Business Times; June 12, 2014)。さらにISISの攻撃から教官とイラク軍パイロットの安全を期すため、F16の飛行訓練地はイラク北部のバラド空軍基地からアリゾナ州ツーソンに変更された。そのうえ、イラク軍パイロットには長時間の集中的な訓練が必要である。よってF16がイラクに引き渡されるのは2017年になるという(“Islamic State threat delays delivery of F-16s to Iraq”; Military Times; November 10, 2014および “Iraqi F-16 pilots need years more training in U.S.”; Military Times; December 11, 2014)。イラク議会はF16の引き渡しがさらに遅れる事態に苛立ちを募らせている(“Iraq urges US to explain delay in F-16 jets delivery”; Islam Times; 25 December, 2014)。

イラクがアメリカから輸入しようとした地上攻撃用の航空兵器にはAH64アパッチ・ヘリコプターもある。しかしオバマ政権がイラクとの合意に達すると、民主党のボブ・メネンデス上院議員が委員長を務めていた上院外交委員会は、シーア派のマリキ政権がISISや反乱分子との戦闘よりも少数派のスンニ派への抑圧にアパッチを利用するのではないかとの懸念を提起した(“Agreement Reached to Sell Apache Helicopters to Iraq”; Defense News; January 27, 2014)。合意には何とか達したものの、イラク政府は両国で合意した24機に加えて6機のリースを要求した。最終的にイラクはその合意を破棄した(“Iraq passes on Apache buy”; Jane Defence Weekly; 25 September, 2014)。F16の場合と同様に、オバマ政権はイラク政府が要求してきた機数を迅速に引き渡すことができなかった。

上記のような失敗を重ねたためにイラクはISISだけでなくイランに対しても脆弱になった。オバマ政権はISISとの戦いでイランに協調を依頼しながら難しい核交渉を行なう羽目になった。さらにイランはイラクでは南部のシーア派を通じて影響力を浸透させている厄介なアクターである。今やイラク政府はシーア派民兵への依存度を高めている。オバマ氏はイランとの反ISIS提携を一時的なものと考えているかも知れないが、それではイラクの治安には長期的な悪影響を及ぼす。イランは依然としてシリアのアサド政権を支持している。また、シーア派民兵はスンニ派住民を自分達の周囲から追い出そうとしている。そうした宗派間の亀裂を克服する唯一の方法は、中央政府があらゆる民族と宗派を取り込んだ強固な治安部隊を作り上げることである(“The U.S. and Iran are aligned in Iraq against the Islamic State — for now”; Washington Post; December 27, 2014)。

イラク国内でアメリカの重要な同盟者であるクルド自治政府は多国籍軍の空爆によってISISの脅威は相対的に封じ込められたが、シーア派民兵を通じたイランの影響力の浸透に非常な危機感を募らせている。それら民兵の内でもアサイブ・アール・ハクとバドル民兵がクルド人にとっては重大な脅威で、双方ともイラン革命防衛隊と緊密な関係にある。シーア派勢力が最も活発なのはクルド地域とイランとも境界を接するディヤーラー県で、彼らはさらに北のキルクークにまで進出している(“Forget ISIS: Shia Militias Are the Real Threat to Kurdistan”; National Interest; January 7, 2015)。そうした問題にもかかわらず、オバマ政権は核交渉のためにイランに対する政策を緩和しようとしている。それは一般教書演説で議会の反発を呼び、オバマ氏はイランの脅威を理解しているのか疑問視される有り様である(Unanimity at last: Obama is delusional on foreign policy”; Washington Post; January 21, 2015)。そうした批判は当然のことで、オバマ氏はまるで中東の安全保障をイランに委任しているかのようにさえ見える。

アメリカがイギリスの覇権を引き継いで以来、その力は好調な時期も不調な時期もあった。ニクソン政権とオバマ政権の歴史的背景はきわめてよく似ているが、それに対応する政策には著しい違いがある。オバマ政権は世界の警察官という責任を投げ出してアジア転進政策をとろうとしているが、その準備は何もしていない。多くのコメンテーターが表面的なアメリカの衰退を議論しているが、本当に問題なのはリーダーシップの質である。ニクソン氏とは違いオバマ氏には外交政策のビジョンがない。パーレビ国王にはニクソンおよびフォード政権との相互信頼があったが、マリキ氏もアバディ氏もオバマ氏との信頼関係にはない。ニクソン氏にはヘンリー・キッシンジャー氏がいたが、オバマ氏には頼るべき外交政策の助言者がいない。両大統領の歴史的な比較によって、今日のアメリカ外交に多大な示唆を与えてくれるものと信じている。

http://newglobal-america.tea-nifty.com/shahalexander/

◆オバマ政権も海軍も 中国と波風を立てたくない米国
リムパックに再び招待?米軍と中国軍の関係がますます緊密に

2015.9.3  北村 淳  JB PRESS

リムパック 2014 に参加した各国軍艦(写真:米海軍)

 安倍首相の「70年談話」が国内世論を考慮して中国側の予想より“トーンダウン”していたため、人民日報、環球時報などの英文ウェブ版を中心とした対米プロパガンダマシンも騒ぎ立てることができなかった。

 そこで、それらの中国英文メディアは「70年談話」の代わりに「抗日戦勝70周年パレード」の準備状況に関する話題を連日写真入りで報道しまくっていた。もちろんパレード開催後しばらくはパレード成功の模様を流し続けるものと思われる。

歴史を歪める中国の「抗日戦勝70周年」行事

「抗日戦勝70周年パレード」に関する宣伝報道に関しては、もちろん人民解放軍の動向を注視している米軍関係者たちの関心は高い。ただし、どの国の軍隊がパレードで行進するのか? どの国の政府首脳がパレードを観覧するのか? といった話題よりは、あたかも中国人民解放軍が日本軍を打ち破ったごときイメージを作り上げ、国際社会に定着させようとしている情報戦の進行状況に注目し、危惧しているのである。

 さすがに台湾では軍首脳などから、中華人民共和国が日本に勝利したようなプロパガンダに対して反発する声が上がっている。日本軍との正規の交戦主体は中華民国軍であって、抗日戦争時に中華人民共和国は存在していなかった。だが、国際社会における中国の強力な情報戦の前には、台湾からの正論は全く気にもかけられなといった状況だ。

 台湾軍部と同様に、太平洋戦争だけでなく大東亜戦争の経緯を学んだことのあるアメリカ軍関係者たちも、中国の「抗日戦勝70周年」には下記のように大きな疑義を呈している。

「8月15日から9月2日(米国時間)に日本が公式に降伏した時点では、アメリカ軍が主導した太平洋戦域では日本海軍は壊滅しており、太平洋の数多くの島嶼守備隊やフィリピンの日本軍も完全に敗北していた。ビルマからインドにかけての戦線でも日本軍は壊滅していた。そして満州にはソ連軍が侵攻したため関東軍は壊滅し満州国は崩壊してしまった」

「しかし、中国戦線では支那派遣日本軍は敗北してはおらず、中華民国軍との間で膠着状態が続いていた。ただし、本国との補給を絶たれ、満州からもソ連軍が南下してくる状況では、支那派遣日本軍の命脈も長くは持たなかったであろう」

「もちろん日本という国家が連合軍に降伏したのであるから、中国戦線の日本軍も中華民国軍に結果的に敗北したことには変わりはない。しかしながら、日本軍の投降を受け入れたのは中華民国軍であって、中国共産党の八路軍でも新四軍でもない。人民解放軍は、連合軍から対日戦の勝利を横取りし、独り占めしようとしているようである」

 支那事変勃発以降の中国での戦争は、交戦主体が日本軍対中国軍というように単純な国家間戦争の様相を呈していないため、上記のようないきさつを知る人々は、英語圏では軍事関係者たちの間でも少数である。もっとも歪んだ歴史教育のせいで日本でも少数派かもしれない。

 したがって、中国政府が華々しく「抗日戦勝70周年パレード」をぶちあげて、「抗日戦勝」を繰り返し国際社会に向け発信し続けていけば、そう遠くない将来には、従軍慰安婦と同様に中国バージョンの「抗日戦争史」が世界の歴史のスタンダードになりかねない。

アメリカ軍と人民解放軍の関係はより緊密に

 軍事専門家たちだけではなく、政治家などの中にも「抗日戦勝70周年」プロパガンダに眉をひそめている人々は少なくない。そのため、さすがのオバマ“親中”政権といえども、政府高官を「抗日戦勝70周年パレード」に列席させるわけにはいかなかった。

 しかしながら、その代わりとしてスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官を北京に派遣して、習近平国家主席や人民解放軍首脳たちとの会談がとり行われた。アメリカでの国家安全保障担当大統領補佐官の位置づけと派遣のタイミングから判断すると、オバマ政権の中国重視ぶりが如実に示された出来事である。

 ライス大統領補佐官は、中国による南シナ海での人工島建設やアメリカに対するサイバー攻撃などに懸念を表した。それに対して習主席は、中国もアメリカもそれぞれの「核心的利益」を尊重しあい、両国間の意見の相違を縮小し、大局的立場で両国関係を発展させるように提案した。

 要するに、良好な米中関係の維持は最大限に重視しているものの、「核心的利益」すなわち南シナ海問題と東シナ海問題では妥協する気がない旨を改めて表明したのだ。

 一方、ライス長官と人民解放軍首脳との会合では、アメリカ軍と人民解放軍の関係をより緊密にすることが確認された。両軍が相互理解を深め、互いの違いを認識することで、とりわけ海軍や航空戦力の間における思わぬ誤解に基づいた軍事衝突が避けられ、両国関係の安定に寄与することになる。そのため米中両軍は、より一層首脳レベルでの密接な交流や、共同訓練などの様々な形での軍事交流を推し進める、ということで合意した。

米海軍首脳部はリムパックへの中国海軍の参加を容認

 ライス補佐官が中国指導部と「米中間の新たな軍事交流の推進」を確認し合っていた頃、アメリカでは海軍作戦部長(アメリカ海軍における軍人のトップ)のグリーナート提督が、人民解放軍海軍(以下「中国海軍」)トップとのビデオ電話会談でのやり取りを語った。

「中国海軍は、強くリムパック(RIMPAC:環太平洋合同演習)2016への参加を望んでいるようである。米海軍は中国海軍との間で、互いの誤解にもとづく衝突を防止するための様々な努力を重ねてきている。今後もそのような努力を続け、中国海軍や中国海警とアメリカ海軍との間に不測の事態が起こらないようにすべきである」

 このように提督は、暗に米海軍首脳部はリムパック2106への中国海軍の参加を容認するような発言をした。

 リムパックとはアメリカ太平洋艦隊が主催してアジア太平洋地域の海軍や海兵隊などが参加して行われる“世界最大規模”の海洋軍事演習である。2年ごとにホノルルを中心としたハワイ海域で行われており、日本は1980年以降毎回参加している。昨年のリムパック2014には中国海軍が初めて参加し各国海軍の注目を集めた(本コラム「リムパックで特等席を与えられた自衛隊『いせ』」参照)。

中国海軍を「二度と招待するな」という声

 しかしながら、太平洋艦隊や太平洋海兵隊などリムパックのホスト部隊では、依然としてリムパック2016に中国海軍を招くことに反対する意見が多い。

 昨年のリムパックでは中国海軍は演習に参加する艦艇以外にも情報収集艦を演習海域に派遣し、米海軍空母をぴったりマークするなどしてスパイ活動を展開した(本コラム「ホノルル沖に出現した招かれざる客、中国海軍のスパイ艦『北極星』」参照)。そのため、当時の太平洋艦隊司令官ハリス提督(現在は太平洋軍司令官)をはじめとする主催者側は、国際信義にもとる行為と中国を批判した。また、米連邦議会でも中国封じ込め派の議員たちから「友好国の海軍合同演習には二度と人民解放軍など招待すべきではない」という声が上がった。

 アメリカ海軍の“中国招待反対派”の人々は、アメリカ政府のみならず海軍首脳部も中国招待に傾いていることに失望を隠せない。そして、次のように反発を強めている。

「確かに海軍軍人、とりわけ海軍首脳にとっては、他国海軍との“予期せぬ衝突”を何としてでも避けたい、というのは職責上当然のことである。したがって中国海軍も含めてCUES(アメリカ、日本、中国などを含むアジア太平洋地域21カ国の海軍間で合意された取り決めで、海洋上での予期せぬ軍事衝突を防止するための行動指針)を締結し、さらにそれに中国海警をも取り込んで、南シナ海でアメリカ海軍が中国側と不測の事態に陥らないよう努力しているのは理解できる」

「しかし海軍作戦レベルで考えると、リムパックは自衛隊のような同盟軍や友好国の海軍が集まって共同作戦の指揮統制を身につける貴重な場である。海軍行動の指揮統制をある程度共有する訓練は、まさに“親密な友人”だけの間の訓練でなければならない。そのような場に、中国海軍を加えて、将来の不測の事態を回避しよう、などというのは本末転倒と言わざるをえない」

 また、対中強硬派のフォーブス議員などは、「リムパック2014への中国海軍の参加や、その後の米中両軍の相互交流の努力などによっても、中国エンゲージメント(取り込み)政策などは全然進展していないではないか!」と、中国をリムパック2016へ招待することには強く反対している。

結局、中国海軍は参加することに?

 しかし、前述したようにライス補佐官と中国最高指導部との会談では米中間の軍対軍関係の密接な交流促進が特に強調されたし、9月下旬に国賓として訪米する習主席も、改めて人民解放軍とアメリカ軍の友好的関係の強化を話題にするはずである。

 世界最大規模の多国籍間軍事演習であるリムパックに人民解放軍を招待することは、両国軍の関係緊密化を謳い上げるシンボルとしてこの上もない意味を持っている。

 何よりもリムパックに招待する海軍を最終的に決定するのは、太平洋艦隊司令官でもアメリカ海軍作戦部長でもなく、ホワイトハウスである。したがって、オバマ政権の判断は「結局呼ぶことになる」と考えている人々が多い。

日米同盟だけにすがりついていてよいのか

 日本では、安倍政権が「安全保障法制」を成立させ、また辺野古埋め立てを開始して、いわゆる普天間移設問題を解決することで日米同盟が強化されるとしている。日本政府には確固たる自主防衛戦略が欠落しており、そのような戦略を構築しようともしていない。そんな日本にとっては、日米同盟の強化、そして日米同盟にすがりつくことだけが、日本を中国などの軍事的脅威から守るための切り札と認識されているようである。

 しかしながら、アメリカは中国との間に直接領域紛争を抱えているわけではない。また、アメリカ(少なくともオバマ政権)にとっては同盟国である日本はもちろん大切であるが、同盟国ではなくとも軍事大国である中国は軍事的には日本以上に大切なのだ。

 そのことは、ホワイトハウスが「抗日戦勝70周年パレード」に政府高官は出席させない代わりにパレードの直前にライス大統領補佐官を習主席のもとに派遣したことや、アメリカ海軍のトップと中国海軍のトップがしばしばビデオ電話会談を実施して意思疎通を図っていること、などが物語っている。

 日本政府にとっては日米同盟“だけ”が国防の決め手であるかもしれない。しかし、アメリカの国防にとっては、日米同盟はあくまでも多数あるツールのうちの1つにすぎない。我々はそのことを肝に銘じておかねばなない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44673

            目覚めよ日本!