浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

習近平は焦っている

2015-11-10 20:38:42 | 資料

これが世界の現実だ~日本の安保法制に真正面から反対する国は1つもない

2015.10.27 筆坂 秀世 JB PRESS

安全保障関連法案が成立した日の国会議事堂周辺の様子(2015年9月19日撮影、資料写真)。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO〔AFPBB News〕

 先の通常国会は、安保法制を巡って、とにもかくにも大いに盛り上がった。国会外では、60年安保以来とも言えるほど、安保法制に反対する人々が集結した。民主党の岡田代表や共産党の志位委員長、生活の党の小沢代表、社民党の吉田党首らが、国会前の集会で声をからして、「戦争法を廃案に」と訴えた。共産党や社民党は、その後も「戦争法を廃止」とこぶしを振り上げ続けている。だが国会前に集結した人々の熱は早くも冷め始めているようだ。

 ネット上で見た、北海道のある組織によるデモ行進は、8月には500人参加していたが10月には7人ほどしか参加者がいなかったという。「ふるえて眠れ、自民党」という横断幕を掲げているが、参加者が寒くて震えていたのではないかと心配になる。

 共産党の「国民連合政府」の提案を、朝日新聞や毎日新聞は大きく報道したが、予想通り、遅々として進んでいない。本来なら、あれだけの運動があったのだから、国会内の力関係で法案は成立したとはいえ野党がもっと元気になってもよさそうなものだが、そうはなっていない。

安倍首相、5カ国訪問で成果着々

 その一方で安倍首相は、10月22日から28日までの日程でモンゴルやトルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタンの中央アジア5カ国訪問を行っている。

 トルクメニスタンでは、産業高度化のための日本企業への期待が表明され、事業規模総額2兆2000億円に上る案件に合意がなされた。タジキスタンでは、給水の改善のため2億6500万円の無償資金協力に合意し、大いに歓迎された。ウズベキスタンでは、医療施設の改善のため6億8600万円の無償資金協力に合意した。

 中央アジアは、天然資源を豊富に産出し、ユーラシアの中心に位置する重要な地域である。これらの国々との協調関係を強化したことの意義は大きい。

 安倍首相は、これらの国々で安保法制や積極的平和主義について説明を行ったそうだ。反対の声などは、もちろんどこからも聞かれなかった。

安保法制に反対する国は1つもない

 そもそもアジアでも安保法制に反対する国など1つもない。

 まず東南アジア諸国はどうか。

 フィリピンのアキノ大統領は9月22日、ABS-CBNテレビとのインタビューで、日本で安全保障関連法が成立したことについて、「平和維持活動などさまざまな活動で(日本は)より優れたパートナーになった」と歓迎した。さらに、「ある時点で非常に攻撃的だったからといって、権利を抑制されるべきだろうか」と述べ、日本の安保法制を擁護している。

 ベトナムのズン首相も「高く評価する」と述べた。マレーシアのナジブ首相は、「日本の積極的平和主義の下での貢献への歓迎」を表明している。ラオスのトンシン首相は、「日本が地域と国際社会の平和の促進に多大な貢献をしていることを賞賛する」と述べている。どの国も安保法制を高く評価しているのが現実である。

 アメリカ政府が歓迎していることは言うまでもない。国務省報道官は、「地域および国際社会の安全保障に係る活動につき、積極的な役割を果たそうとする日本の継続した努力をもちろん歓迎する」と述べている。

 またドイツのメルケル首相は今年6月の日独首脳会談で、安倍首相の安保法制の説明に対して「日本が国際社会の平和に積極的に貢献していこうとする姿勢を100%支持する」と述べている。

中国や韓国はどうか。

 中国は、5月14日の中国外交部定例記者会見で、報道官が質問に答えて、「歴史の教訓をきちんと汲み取り、平和発展の道を堅持し、我々が共に暮らしているこのアジア地域の平和と安定、そして行動発展のため、多くの積極的かつ有益なことを成し、多くの積極的かつ建設的な役割を果たしていくことを希望する」と述べているだけで、こぶしを振り上げて反対するような態度はとっていない。

 韓国も、朝鮮半島有事の際に韓国政府の承認なしに日本が集団的自衛権を行使することがなければ、おおむね反対はしないという姿勢を示している。

 つまり、正面から反対し、批判している国はないのである。安保法制反対派は驚くかもしれないがこれが世界の現実というわけだ。

共産党が絶対に損しない「国民連合政府」構想

 野党の中で、野党らしく頑張っているのは共産党だけだ。上手くいくとは到底思わないが、「戦争法廃止、立憲主義を取り戻す」の1点で結束する「野党連合政府」構想は、それなりに考え抜かれたものだと思う。

 まずタイミングがよかった。一強多弱の政党構図の下で、野党の中で相対的に共産党の比重が高まっており、民主党などもまったく無視するわけにはいかない状況にあるからだ。これまで何度も暫定政権構想を発表してきたが、まったく無視されてきた過去とは、この点が大きく違っている。

 この提案の最大の特徴は、どう転んでも共産党は絶対に損をしないということにある。共産党は、自衛隊活用、日米安保凍結という方針も打ち出した。別段、特別のことではない。これまでも言ってきたことである。大方針転換のように言われているが、実はそんなこともない。

 共産党は、自衛隊についても、日米安保についても、「国民の合意があれば、自衛隊を解消し、日米安保を廃棄する」と言ってきた。しかし、こんな国民合意など、まずほとんど考えられない。このことは共産党も百も承知のことである。つまり、自衛隊活用、日米安保凍結という方針にならざるを得ないのである。ただそれだけのことだ。

 安保法制反対派からは、当然のように共産党の方針に歓迎が表明されている。決断を迫られるのは他の野党である。民主党内には、共産党との選挙協力に、選挙に強い議員を中心に否定的な声があるようだ。だが共産党との選挙協力なしに、今の民主党が自民党と対抗できるのか。無理であることが目に見えている。それどころか、協力しなければ安保法制反対派からの批判を受けることになるだろう。

 だが共産党は、「自らの主張をいったんは棚に上げても、安保法制廃止のために頑張った」という評価を受けるのである。選挙協力が実現しなくとも、おそらく共産党は次の国政選挙でも票を伸ばすことになるだろう。実に賢明な提案なのである。

あきれるしかない維新の党の分裂劇

 維新の党の分裂劇には、あきれる他はない。この党の離合集散は珍しくない。2014年6月には、石原慎太郎氏らの次世代の党と日本維新の会に分党している。同年9月には、江田憲司氏率いる結の党と合併し、維新の党となった。そして今回の分裂劇である。

 この人の発言を信じたことはないが、「政界を引退する」と明言した橋下徹大阪市長が今回も指揮をとって「おおさか維新の党」を作った。新代表は、馬場伸幸前国対委員長である。橋下氏の場合、何を言ってもどんでん返しがある。要するになんでもありなのだ。東京組と大阪組が互いに批判し合っているが、結局、中身は政党交付金の奪い合いなのだから程度の低い喧嘩である。

 橋下市長は、「永田町組の子ネズミ連中がまた飲み食いに使うから」と言って、政党交付金の振り込まれた銀行口座の預金と印鑑を持っている。しかし、「大阪組で前国対委員長の馬場伸幸衆院議員の金遣いの荒さが大問題になっているのだ。なんと毎月300万円もの党のカネを使って、連日連夜、飲めや歌えやのドンチャン騒ぎをしていたという」(10月3日付「日刊ゲンダイ」)との報道もある。こんな人物が代表なのだから、「おおさか維新の党」も人材がいないということだ。そう言えば、上西小百合という人騒がせな議員もいた。

 橋下氏が言うことにただただ従う議員だけを集めると、こういうレベルの低い人材しか集まらないということであろう。こんな党がいつまで存在し続けるのだろうか。そう長くはないような気がしてならない。

 それにしても安倍首相はついている。こんな野党ばかりなのだから。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45086

 ◆日中韓首脳会談、終わってみれば日本の圧勝だった!~中韓の焦りは想像以上。安倍首相はどっしり構えていればいい

2015年11月06日 長谷川 幸洋  現代ビジネス

具体的な成果よりも、なぜ開かれたのかが重要だ【PHOTO】gettyimages

習近平は焦っている

日本と中国、韓国の首脳会談が10月31日から11月2日にかけてソウルで開かれた。日中韓の首脳がそろって会談するのは3年半ぶりだ。時間の空白はなぜ生まれたのか。そして、なぜいま首脳会談だったのか。

会談を避けてきたのも再開に動いたのも、鍵を握っていたのは中国の習近平政権である。

マスコミは首脳会談について連日、大報道を繰り広げた。日中韓については「自由貿易協定(FTA)の交渉加速や首脳会談の定例化で合意」、日中は「東シナ海のガス田共同開発協議の再開を目指す」、日韓は「慰安婦問題で交渉加速」といった具合だ。

それぞれの合意内容や首脳たちの表情はそれなりに詳しく報じられた。だが、そもそも今回、会談がなぜ開かれたのか、逆にこれまでなぜ長い間、開かれなかったのかについての分析はまったく不十分だったと言わざるをえない。

それだけ長い間、開かれなかったのは、もちろん理由がある。その理由を探っていけば、これから3国の関係がどうなるか、日本はどうすべきかもおのずと見えてくるはずなのに、そんな問題意識はまるでないかのようだ。

私に言わせれば、3国が交渉加速で合意した日中韓FTAや韓国の朴槿恵大統領がこだわった慰安婦問題などはサイドストーリーにすぎない。そんなことより、ずっと3国首脳会談を避けてきた習政権が一転して再開・定例化に動いた意味のほうがはるかに重要である。

なぜ習政権が鍵を握っていたと言えるのか。中国に開く気がなければ、日中韓首脳会談は開けなかったからだ。よく知られているように、安倍政権は中国にも韓国に対しても、一貫して「日本はいつでも会談の門戸を開いている」という姿勢だった。日本が会談を避けた事実はない。

韓国はどうかといえば、朴大統領はここ数年、異常なほど中国にすり寄ってきた。これまで朴大統領は習主席と実に6回も首脳会談を開いている。直近は2015年9月に北京で開かれた対日戦争勝利70周年記念の軍事パレードを参観した際の会談である。

韓国が日本と緊張関係にあったのは事実だ。だからといって、中国が3国会談を開こうといえば、韓国は断れない。韓国は歴史的にも地理的にも、日中両国の狭間で生きてきた国だ。まして中国と異常接近している現状では、3国関係にかかわる主導権は中国が握っている。

つまり、3年半にわたって3ヵ国会談を開けなかった最大の理由は、中国が拒否してきたから、というシンプルなものなのだ。

中国はあまりに日本をナメすぎた

なぜ中国が拒否し続けたか。習政権は2012年11月の発足以来、米国との関係を最重視する一方、安倍政権については敵視あるいは軽視していたからである。

時系列でみると、事態が一層はっきりする。前回の日中韓首脳会談が開かれたのは、中国が胡錦濤政権だった2012年5月だ。その後、同年11月に習近平が中国共産党中央委員会総書記と党軍事委員会主席に就任して実権を握った。

習政権は発足すると直ちに「軍事闘争の準備を進めよう」と陸海軍に大号令を発した。実際、12月には初めて尖閣諸島付近で中国のプロペラ機が領空侵犯した。翌13年1月には中国海軍の艦艇が海上自衛隊のヘリコプターと護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射する事件が相次いで発生した。

これはほとんど交戦一歩手前の事態だった。交戦に至らなかったのは、日本の自衛隊側がぎりぎりの極限まで自制したからだ。

同6月になると習主席は訪米してオバマ大統領と会談した。このときの大テーマは米国との縄張り分割論である。習主席は「太平洋は米中両国を受け入れるのに十分広い」という有名な台詞を吐いて、オバマ大統領に太平洋の縄張り分割を提案した。

「ハワイを分岐点に東は米国、西は中国の縄張りにして互いに尊重しよう」ともちかけたのだ(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/36121)。

ところが、オバマ大統領は「日本が米国の同盟国であることを忘れるな」と釘を刺した。つまり縄張り分割案を拒否した。これは習主席にとって大きな挫折である。この後に起きたのが、同年11月の中国による防空識別圏の設定だった。

これは主として日本を標的にした仕掛けだったが、米国を強く刺激した。米国は直ちに大型爆撃機2機を「識別圏内」に飛ばして、中国の一方的な設定を無視する行動に出た。このあたりから米中関係はぎくしゃくしていく。

米国は当初、中国が提起した「新型大国関係」論にのりかかったフシがあったが、太平洋の縄張り分割論と防空識別圏設定をみて、警戒感を強めていった。ここまでの展開をみれば、当時の習政権の思惑ははっきりしている。

中国にとって肝心なのは、あくまで米国との関係だったのだ。縄張り分割論で米国を抱き込むことさえできれば、日本も、ましてや韓国など取るに足らない。米国が「ハワイから西は中国の縄張り」と認めてしまえば、自動的に日本も韓国も中国の縄張り内に入る。あとは煮て食おうと焼いて食おうと中国の勝手になる。そういう思惑である。

だからこそ、日中韓首脳会談など眼中になかった。「いずれ子分になる国との話し合いなど、する必要はまったくない」という話である。

付け加えれば、2012年11月の政権発足前後は、中国国内で反日運動が最高潮に達していた時期だった。9月11日に当時の野田佳彦政権が尖閣諸島の国有化を決めたからだ。

日本が尖閣諸島を国有化したのは間違っていないし、そもそも日本の領土の話だから、中国がいかに憤激しようと筋違いである。そうであったとしても、中国は「尖閣は中国のもの」と言い続けてきたから、国内で反日運動が予想以上に盛り上がってしまった。それもあって日本と首脳会談を開くわけにはいかなかったのだ。

本筋に話を戻すと、習主席が提案した縄張り分割論はオバマ大統領に拒絶されてしまった。防空識別圏の設定をきっかけに米中関係は冷ややかになっていく。そこで習政権としては対日戦略も練り直さざるをえなくなった。

その結果、どうなったか。それが14年11月の安倍首相との例の「仏頂面会談」である。

世界中に失笑された中国

アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開かれた初の安倍・習首脳会談は習主席にとってみじめな会談になった。ホスト国でありながら、ろくに言葉も交わさず礼を失した態度で安倍首相を出迎え、世界で失笑を買った。

なぜ、そんな無礼な態度で接したかといえば、中国が根本的な戦略練り直しを迫られたからだ。

自分が「日本などモノの数ではない」という態度をとり続け、とりわけ軍部に対しては政権発足直後から戦争準備をあおりたててきた手前、いまさらみっともなくて笑顔で首相を出迎えるわけにはいかなかったのである。

それが証拠に、それから5カ月経った15年4月の日中首脳会談では、習主席はうってかわって愛想笑いをふりまいた。「会うのも2度目なら、みっともなさも少しは薄まるだろう」という話である。肝心の米国が思うようにならない以上、なんとか日中関係を打開しないことには東アジア外交の主導権を握れないと悟ったのだろう。

それから何が起きたか。

まず日米両国は日本の安保関連法成立を先取りした形で防衛協力の指針(ガイドライン)を見直した。これは日米による南シナ海の警戒監視を視野に入れている(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43504)。そのうえで15年4月の日米首脳会談では、日米が中国の脅威に共同で対処する方針を確認した。

南シナ海における中国の人工島埋め立て・軍事基地化を念頭にオバマ大統領は「中国は間違っている」と国を名指しして批判し、安倍首相も「力による現状変更を許さない」と呼応した。その後、日本では安保関連法が成立した。これは中国の脅威に対抗するために日米同盟を強化するのが最大の目的である。

続く10月には懸案だった環太平洋連携協定(TPP)も大筋合意にこぎつけた。TPPは単なる貿易自由化協定ではない。中国によるアジア太平洋の主導権構築を許さないという、すぐれて安全保障上の戦略に基づく枠組みである。日米ガイドラインと日本の安全保障法制見直し、それにTPP合意が続き、アジア太平洋の国際秩序は大きく変わった。

日米を軸にした中国包囲網の完成である。今回の日中韓首脳会談は、こうした文脈の中で開かれたイベントなのだ。

向うから必ず歩み寄ってくる【PHOTO】gettyimages

実に単純な韓国の思考法

もうあきらかだろう。反日運動とともにスタートした習政権は「日本など取るに足らない、オレたちは米国と縄張りを仕切るんだ」と大風呂敷を広げてみたものの、米国の反撃に遭って自らつまづいてしまった。その挙げ句、面子を取り繕うために応じざるを得なくなったのが、今回の日中韓首脳会談なのだ。

南シナ海をめぐる米中間の緊張も、この延長線上にある。

かつてはアジア太平洋全域の縄張り分割という妄想にとりつかれていたが、いまは「南シナ海の支配」という少し縮小した妄想にとりつかれているのだ。だが、実態は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46130)で指摘したように、中国は米国の駆逐艦派遣に事実上、手も足も出ない状況に追い込まれている。

この核心部分を見過ごしてしまえば、首脳会談の意義は分からない。単に「3年半ぶりか、ようやく会ったのか」程度で終わってしまう。日本のマスコミ報道は大局観がまったく欠けている。

以上を踏まえたうえで、韓国に触れよう。韓国は情けない国だが、現実的な計算もできる国だ。解決済みの慰安婦問題をいつまでもぐだぐだと持ち出すのは情けない。だが自分を取り巻く大国である日米中の風向きを読んで、さっと軌道修正するあたりは現実的なのだ。

貿易で中国に依存する韓国は、中国が沈めば韓国経済も沈む関係にある。中国がバブル崩壊で沈んだ以上、自分たちが生き残るには日米重視に舵を切り替えざるを得ない。だからこそ環太平洋連携協定(TPP)にも入りたい。

もちろん、北朝鮮に対峙する韓国は安全保障面で日米に依存しているという根本的な事情もある。そんな実利的背景の下で慰安婦問題とは対日交渉で値段をつりあげる材料にすぎない。だから、安倍政権はじっと様子をみていればいい。黙っていて、焦るのは韓国である。

安倍政権は「TPPに入りたいなら慰安婦問題と水産品の対日輸入規制問題にケリをつけなさいよ」と言えばいいのだ。さらに言えば、韓国が「慰安婦問題を未来志向で最終的に解決したい」というなら、安倍政権は「世界中に作った慰安婦像を韓国政府の責任で撤去せよ」と要求すればいい。

韓国が慰安婦像撤去に応じないなら、韓国は口ではともかく、本音は慰安婦問題を終わりにする意図がないという話になる。慰安婦像撤去に応じるかどうか、少なくともその努力を約束するかどうかが、韓国政府の本気度を測るリトマス試験紙になるだろう。

この隙に日本は足場を固めればいい

中国も焦っている。足元の経済が崩壊寸前であるのに加えて、権力闘争は激化する一方だ。加えて南シナ海の人工島周辺に米国のイージス駆逐艦が進入してきた。それでも護衛艦を追尾するくらいしかできず、一歩間違えれば、国内のタカ派から政権批判が飛び出しかねない状況だ。

日中韓FTAの交渉促進を言い出してはみたものの、TPPが大筋合意した以上、FTA交渉が大きく前進する見通しは暗い。なぜかといえば、日本は当然、TPPを貿易自由化の基盤に据える一方、FTA交渉でもTPP合意の内容が事実上の基準になるからだ。

中国とFTAを結ぶとなれば当然、知的所有権保護や投資保護が重要テーマになる。パクリが横行している中国はTPP水準で知的所有権を保護できないし、投資保護はもっと難しい。

日本企業は対中投資促進どころか、バブル崩壊を目の当たりにして静かに中国からの撤退が始まっている。中国側は「逃げるなら事務所や工場はぜんぶ捨てていけ。撤退に伴う損害賠償も払え」と要求するケースまであるようだ。まさに「泥棒に追い銭」である。

そんな国とまともな投資保護交渉をするのは、どだい無理な話ではないか。そうであるとすれば、中国についても日本はじっと様子を見ていればいい。

いま喫緊の課題は南シナ海情勢である。日本は自分の足元を固めつつ、米国や東アジア諸国、オーストラリアなどと連携を強めていくべき局面だ。中韓と無理に歩調をそろえていく必要はさらさらない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46233

◆賄賂と宴会を禁じられて転げ落ちる中国経済
「反腐敗運動」のさらなる強化で金融危機が勃発か?

2015.11.6 藤 和彦 JB PRESS

中国の反腐敗運動はいつまで続くのだろうか。北京市内にはためく中国国旗(2015年7月9日撮影)。(c)AFP/GREG BAKER〔AFPBB News〕

 10月28日付のブルームバーグが、中国の反腐敗運動が金融界を狙い撃ちしていることを伝えている。

 中国の反腐敗運動を主導する共産党中央規律検査委員会は、10月23日に発表した声明で、中国人民銀行や中国工商銀行をはじめとする中国5大銀行、政府系ファンドの中国投資(CIC)、国家開発銀行、上海・深セン両証券取引所、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会(証監会)、中国保険監督管理委員会など31機関を、不正行為または汚職の可能性をめぐる検証の対象として挙げたという。

 2012年11月の習近平総書記就任直後から、党内の「腐敗分子」をあぶり出す反腐敗運動が開始された。「ハエ(小物)もトラ(大物)も叩く」との宣言どおり、元政治局常務委員の周永康や人民解放軍の最高幹部だった徐才厚らが摘発された。

 これまで「石油閥」や「電力閥」などにメスが入れられてきたが、金融業界が公式にターゲットになるのは初めてである。

 中央規律検査委員会は、第13次5カ年計画(2016~20年)について討議する第18期中央委員会第5回総会(5中総会)の開催直前という微妙な時期に、あえて声明を出した。国家行政学院の竹立家教授はそのことについて、「中国経済に対する下振れ圧力が強まる中、腐敗した金融システムは中国の経済的な安全保障を脅かす恐れがある」からだとしている。

反腐敗運動が中国経済の減速をもたらした

 中国政府は6月中旬からの株価暴落以降、その犯人捜しに躍起になっていた。8月末には、中国最大の証券会社である中信証券や証監会の幹部が株価暴落を招く不正行為を自供したとして拘束された。また、中央規律検査委員会が声明を発表した10月23日には、大手証券会社である国信証券総裁が自殺し、翌27日には証監会上海先物取引所の元理事長が職務怠慢などを理由に解任された(10月29日付「大紀元」)。

 江沢民一派の追い落としのための権力闘争との見方もあるが、金融業界にまで本格的な反腐敗運動を展開することになれば、中国の金融危機勃発のリスクがますます高くなってしまうのではないかと筆者は危惧している。

 そもそも中国経済が減速し始めた原因の一端は、反腐敗運動にある。

 習近平指導部がスタートして最初に迎えた春節期(1年を通して最も消費が活発になる期間)の飲食業界の売り上げは前年比8.4%増と過去10年で最も低い伸び率となった。高級ブランド品の買い控えはそれ以上であったと言われている。バブル経済を支えている共産党幹部が財布のひもを締めた結果である。その後、不動産投資などにも波及し、広範な経済活動に悪影響を及ぼした。

 中国政府は輸出主導型からサービス・消費主導型経済への構造転換を図ろうとしているが、専門家の間では「政府は国内に潤沢にある貯蓄(GDPの約5割を占める貯蓄率)を活用して必要なインフラ投資を進めないと、中国経済は失速しかねない」との懸念が高まっている(10月26日付ブルームバーグ)。公共事業など投資活動が低調だからだ。

 反腐敗運動の総元締めは王岐山 政治局常務委員である。王氏の下で、何万もの捜査官が役人や経営者を取り調べ、1日500人以上が処分される状況が続いている。その恐怖が官僚機構や国有企業の経営陣全体に広まり、多くの幹部たちは目立つことを恐れて重要な決定を下すことを避けてしまうようになってしまった。

 中国メディアによれば、「役人らは面従腹背で、裏で仕事をさぼっている。賄賂も宴会もダメなら仕事もしない。執務時間中は政治学習と称して小説を読んでいるため、公共事業の許認可の遅れや手続きの停滞を招いている」という。

世界最大の鉄鋼業界が深刻な危機に

 10月29日、中国銀行は「第3四半期決算はリーマン・ショック後初めての減益となった」と発表した。その要因は、中国の景気低迷と過去最大規模となる貸倒引当金の計上である。

 中国の銀行から欧米勢の出資引き揚げの動きが相次いでいる。著名な投資家であるマーク・ファーバー氏は「債務で警戒を要する中国の上場企業数が昨年の115から今年は200に急増している」ことに警告を発している(10月27日付ブルームバーグ)。上場企業数の債務総額は前年比で約23%増加しているが、この増加のペースはGDP成長率の3倍である。

 業種別に見ると石油・石炭などのコモデイテイ分野(92社)と鉄鋼などの工業分野(43社)がおおかたを占める。中国鋼鉄工業協会は10月28日の定例記者会見で、「業界では値崩れととともに需要が急落し、銀行が貸し渋り姿勢を強め、損失が積み上がっている」と、世界最大の鉄鋼業界が深刻な危機に見舞われていることを明らかにした。

 前述の5中総会は、内部意見の対立により例年より遅れて10月26日に北京で開かれたが、難産の末出てきたのが1979年以来続いてきた「一人っ子政策」の廃止である。

 2016年3月に開催される全国人民代表大会における法律承認の手続きを経ずして共産党が早急な政策変更を望んだのは、経済成長を支える生産年齢人口(15~59歳)の減少が危機的な状況にあることを示している。

 中国経済に見切りをつけた投資家たちが、当局の規制をかいくぐる形でいわゆる地下銀行を通じて海外へ資本を流出させるという動きも活発化している(10月29日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。前述のファーバー氏も、「私も中国国民が記録的なペースで国内から資金を移しつつあるとの見方に賭けたい」としている。人民銀行は11月2日に人民元の大幅引き上げを行ったが、資本流出がますます深刻化しているのではないだろうか。

中国経済が世界2位の座から陥落?

 旧ソ連が崩壊した一因として「クレムリンの役人たちが相互に連帯することなくサボタージュが同時多発的に発生した」ことを指摘する専門家がいる。中国が未曾有の金融危機勃発のとば口に来ている最中に、反腐敗運動の矛先を向けられ恐れをなした金融業界の役人や経営者達の間で大規模なサボタージュが起きたらどうなるのだろうか。

 ソ連崩壊後に7年間GDPが減少し続けたため、GDPは旧ソ連時代より44%減少したと言われている。現在の中国は資本主義国の体裁を擁しているが、その実態は共産党一党支配の計画経済国または計画型疑似資本主義国である。そのため、中国政府が発表するGDPは実績値ではなく計画値に過ぎない。本当のGDPの数字が分かるのは、中国で大規模な金融危機が発生し、旧ソ連の場合と同様に経済システム全体の見直しを余儀なくされる事態を経てからだろう。

 著書『やがて中国の崩壊がはじまる』で知られるゴードン・チャン氏は、「日本が成長しなくても中国が落ちるため、中国はいずれ世界経済第2位の座を日本に明け渡すだろう」としている(10月22日付大紀元)。今の中国は、それが「全くの空想話」として一笑に付せる状況ではなくなってきている。

在庫が積み上がる中国、米国の石油業界

 中国の石油業界は、鉄鋼業界と同様に過剰な債務に苦しんでいる。

 中国最大手の石油・天然ガス企業であるペトロチャイナ(中国石油)の第3四半期の純利益は、原油安が売り上げに悪影響を及ぼしたため、前年比81%減と予想以上に悪化した。アジア最大の石油精製企業であるシノペック(中国石油化工集団)の1月から9月までの純利益も、前年比48%の大幅減であった。

 10月23日に発表された統計によれば、9月末の中国の原油在庫は前月比2.4%増の3358トンとなり、景気減速の影響で国内のガソリン消費が低迷していることが明らかになった。10月30日付ウォール・ストリート・ジャーナルが「原油相場の反発、中国には期待するな」と報じているように、中国の原油輸入量の減少はいよいよ本格化するだろう。

 米国でも在庫の積み上がりの状況は深刻である。過去4週間に2260万バレル増加したため、原油在庫は10月としては1930年以来の高水準に達した。

 供給過剰に加え、この時期にしては比較的温暖な気候が原油・ガス需要を抑えている。米国の天然ガス価格は2012年4月以来の100万BTU当たり2ドル割れを記録し、原油価格にも下押し圧力となっている。

 アラブ首長国連邦(UAE)経済相は10月25日、「原油価格は1バレル=45ドルで底打ちした後、来年は60ドルまで上昇する公算が大きい」と予想した。だが、「大手石油会社にとって、原油価格1バレル=60ドルは魔法の数字になりつつある(10月28日付ブルームバーグ)。「原油価格は1バレル=36ドルに向かいつつある」とするのが市場関係者のコンセンサスだからだ。

 8月以来の原油価格1バレル=40ドル割れは、シェール企業のみならず大手石油会社にとっても打撃は大きい。このため米国の大手石油会社は、コストとリスクの高い超大型プロジェクトから撤退し、不安を抱える投資家らを納得させるためにより安全なシェール層掘削事業に軸足を移している。

 格付けの悪化を懸念するエクソン・モービルとシェブロンはシェールオイル事業により米国の原油生産を大幅に増やす計画を発表した(10月30日付ブルームバーグ)。

 石油稼動リグ数が578基にまで減少し、大手石油会社のシェール企業買収が本格化する兆しが見えてきているが、これによる金融市場に与える負のインパクト(ジャンク債市場の崩壊等)が心配である。

ますます苦境に陥るサウジアラビア

 前回のレポート(「原油価格下落で袋小路のサウジアラビア」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45069)でサウジアラビアの苦境を説明したが、イランメデイアによれば、10月26日、サウジアラビアの軍艦がイエメン南西部沿岸でイエメン側からのミサイル攻撃を受けて沈没するなど苦戦を強いられているため、サウジアラビア政府は米国の民間軍事会社であるブラックウオーターの支援を要請したという(イエメンで化学兵器を既に使用したとの噂もある)。

 また10月26日、サウジアラビアの王子がレバノン空港で過激派組織イスラム国との関係が疑われる薬物の密輸容疑で拘束されるというスキャンダルが発生した。さらに翌27日にはサウジアラビア主導の連合軍がイエメン北部にある「国境なき医師団」の病院を空爆し、国連の事務総長がこれを非難する声明を発表している。

 欧州議会は10月29日、優れた人権活動をたたえるサハロフ賞を、保守的なイスラム教国のサウジアラビアで言論の自由を訴える人権活動家であるバタウィー氏(現在服役中)に授与すると発表した(2011年には「アラブの春」に寄与した活動家達が受賞した)。

 こうした状況のなか、国際社会におけるサウジアラビアの立場が急速に悪化し始めている。

 中東原油の最大需要国である中国への原油輸出が減少するなど、サウジアラビア政府を支える原油収入の見通しも明るくない(米格付け会社S&Pは10月30日、原油安による財政悪化を理由にサウジアラビアの格付けを引き下げた)。

 9月に、中国のロシアからの原油輸入量は前年比42%増の404万トンだったのに対し、サウジアラビアからの輸入量は前年比17%減の395万トンだった。ルーブル安による生産コスト低下により、ロシアの10月の原油生産は日量1078万バレルと過去最高水準を再び更新した。ロシアの原油が中国市場におけるサウジアラビア原油のシェアをさらに奪う可能性が高い。

 最後に南シナ海だが、「米国と中国の『熱い平和(ホットピース)』時代に入った」と分析する専門家が出てきている。「ホットピース」とは「冷戦(コールドウオー)」の相対概念だ。地域的には直接衝突するが、その衝突は世界的には広がらない、とするものである。

 だが、南シナ海は年間約4万隻の船が通過する世界第2位の貿易航路である(貿易額は年間約5兆ドル)。この地域における米中の軍事衝突は、たとえ小規模であっても日本経済にとって致命的な打撃となる。サウジアラビアとともに今後の推移に要注意である。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45144


イラン核合意はオバマの敗北

2015-11-07 08:19:26 | 資料

中東の核拡散を助長しかねないイラン核協議最終合意
米国の歴史的誤算か?

2015.7.16 宮家 邦彦 JB PRESS

 イラン核協議をめぐり長らく懸念されていたことが現実となった。7月14日、イランと国連安保理常任理事国など6カ国が最終合意に達したからだ。

 早速、日本の一部メディアは「原油安定調達拡大」「エネルギー価格下落」や「日本企業進出」に期待が高まるなどと浮かれている。

 一体どこからそのような楽観論が生まれるのだろう。というわけで、久し振りの「一神教世界の研究」はイラン核開発問題を取り上げる。

「合意されたこと」と「されなかったこと」

 最終合意が発表された直後、米国のバラク・オバマ大統領は「核兵器へのすべての道は絶たれた(Every pathway to a nuclear weapon is cut off.)」と述べた。相変わらずのナイーブ発言だ。

 これに対し、イランのハサン・ロウハニ大統領も「イランが核兵器を作ることは決してない」と述べたそうだ。

 しかし、待てよ。もしかしたら、両大統領の発言は厳密には正確なのかもしれない。筆者の見立ては以下の通りだ。

 誤解のないよう申し上げる。外交で最も重要なことは最終合意文書に「書いてあること」では必ずしもない。むしろ「書かれていないこと」、すなわち「合意されなかったこと」こそが本質であることも少なくないのだ。

 ここからは内外メディアが報じる合意内容の概要とそれに対する筆者の独断と偏見をまとめてみた。これをお読みいただければ、筆者が悲観する理由をご理解いただけるだろう。

合意(1)イランの核開発は今後8~15年間、大幅に制限される

 イランは既存の遠心分離機を今後10年間、現在の約1万9000基を約6100基に減らす。新型遠心分離機の研究・開発は一定の制限下において継続が認められる。

 今後15年間、イランは濃縮度3.67%を超えるウランを製造しない。現在保有する10トンの低濃縮ウランは300キロにまで減らす。今後15年間、ウラン濃縮活動はナタンズ核施設に限定される。

 中部フォルドゥの地下核施設での濃縮ウラン製造は停止され、同施設は研究関連用に転換される。アラクの重水炉は兵器級プルトニウムが生産できないよう設計を変更し、同重水炉の使用済み核燃料は国外に搬出される。

筆者の見立て(1)

 ケリー米国務長官は、これまで「2~3カ月以内」に可能だったイランの核兵器レベルウラン濃縮が、最終合意により「1年以上」に伸びたと胸を張った。しかし、最終合意文書をいくら読んでも、イランは核兵器製造「能力」と「施設」までは放棄していない。

 言い換えれば、最終合意でも、イランは核兵器製造「能力獲得」を断念せず、米国は真実の時(moment of truth)を8~15年先延ばしただけなのだ。

 米国・イラン両大統領の言う通り、イランが「核兵器」そのものを獲得することは当面ないだろう。今イランが望んでいるのは核兵器の「製造」ではなく、いつでも、恐らくは(イスラエルのように)ごく短期間で、核兵器を製造・配備できる技術的・物理的能力を獲得・維持することだ。

 その意味で両大統領の発言に嘘はない。真の問題は米国がそのようなイランの「能力獲得」をもは阻止できないと事実上認めたことだろう。

合意(2)イランはNPT(核不拡散防止条約)に残り、かつIAEA(国際原子力機関)の厳しい査察を受け入れた

 確かに、IAEAの権限は拡大された。イランはIAEAの「追加議定書」を批准し、未申告核関連施設の調査や抜き打ちの査察を受け入れる。

 具体的には、IAEAは未申告核物質の存在など疑惑のある施設に検証のため立ち入りを求めることができる。さらに、査察につき意見が対立する場合、関係当事国からなる仲裁委員会が助言のうえ、イランは3日以内に必要な手段を取るという。

筆者の見立て(2)

 最終合意にはIAEAによる査察につきあれこれ書いてあるが、どうやら核開発疑惑のあるパルチン軍事施設など特定施設の査察にはイラン側の事前承認が必要らしい。されば、イランが軍関係施設へのIAEAの無条件査察を事実上認めない可能性もあるということだ。

 この点で我々には似たような経験がある。イランがイラクや北朝鮮と同じインチキ行為を繰り返さないという保証はない。 

合意(3)イランに対する経済制裁を段階的に解除する

 イランに対する経済制裁はIAEAがイラン側の核開発制限を確認した段階で一括して解除される。万一、イランが合意内容に違反すれば、65日以内に制裁を元に戻す。対イラン武器禁輸は、防衛目的武器の輸出入制裁措置が緩和され、5年後に完全に解除される。

筆者の見立て(3)

 これ自体曖昧な内容だが、より重大なことは、最終合意が現在中東各地でイランが行っている諸紛争への政治・軍事的介入につき何も触れていないことだ。当然だろう、今回の合意はイランの「核開発」を「阻止」すべく結ばれたものだからだ。

 逆に言えば、このまま経済制裁が解除されれば、イランの財政は大幅に改善し、米国が「国際テロ支援」と呼ぶイランの対外干渉は止むどころか、むしろ一層拡大するということ。

 イスラエルやサウジアラビアなど湾岸・アラブ諸国が最も懸念するのがこの点である。

的外れの各社社説

 以上を踏まえ、7月15~16日の主要日刊紙各社の社説をもう一度お読みいただきたい。紙面の都合もあり筆者の責任で要約させてもらった。詳細は全文を参照願いたい。

【朝日】イラン核合意―流れを確かなものに

○(イランの)核武装の悪夢は遠のいた。国際的な結束が欠かせない。
○隔たりを克服して合意にこぎ着けたのは、双方の理性の勝利と言えるだろう。
○エネルギー市場でのイランへの期待はかねて大きい。
○安倍首相はこの湾岸での機雷掃海を挙げるが、もはやそんな想定は難しい。
○発想の転換は、日本にも求められる。

【毎日】イラン核合意 中東安定への転機に

○難産の末に生まれた歴史的合意を大事にしたい。イランの誠実かつ厳密な履行が不可欠である。
○キューバとの関係正常化に続く外交得点。イランと米国の歩み寄りは確かに画期的である。
○核協議を足場に米・イランが協力関係を築ければ中東安定にはプラスになろう。
○イランと欧米が関係正常化へ向かうなら、日本は経済も含めてイランとの緊密化に努めたい。
○中東情勢を好ましい方向へ導く日本の役割を考えることも大切だ。

【日経】イラン核合意を中東地域の安定にいかせ

○イランに核兵器を持たせないようにする歴史的な合意である。
○合意を確実に履行し、中東地域の安定実現にいかすことを望みたい。
○粘り強く交渉を続けた双方の努力を評価したい。
○核合意を中東が混迷から脱する足がかりにしていきたい。
○イランの国際社会復帰を後押しすることは日本のエネルギーの安定調達にも寄与する。

【産経】イラン核合意 着実な履行で不信克服を

○イランの核武装阻止に道筋を付け、同時に国際社会への復帰を促す歴史的合意。
○軍事施設を例外としなかったのは評価できる。
○イランの歩み寄りは経済制裁の効果である。
○もろさを抱えた合意であることを認識すべきだ。
○イランが国際社会に復帰し、責任ある地域大国として中東の安定に役割を果たすことを期待したい。

 以上の通り、7月15日の各社社説は似たり寄ったりだ。各社とも申し合わせたかのように、「歴史的合意を評価」し、「イランの合意履行が必要」としつつ、「中東地域安定」と「エネルギー安定調達」への期待をにじませている。

 「コップは半分満たされている」と見るこれらの社説がいかに当たり障りのない、付け焼刃の論説に過ぎないかは繰り返すまでもないだろう。これに対し、7月16日の以下の社説は実に的を射ており、他社との違いは歴然だ。

【読売】イラン核合意 中東安定への転換点になるか

○イランは本当に合意を守るのか。楽観はできない。
○合意文書では、イランの核開発の能力や核施設は温存される。
○合意期限が切れる15年後以降は、何の制約も設けていない。
○イランへの経済制裁が解除されれば、原油の増産と輸出増が期待できる。
○日本も調達先の多角化を図るため、情報収集を強化したい。

合意は中東湾岸核拡散の始まり

 読売の社説は「コップは半分空だ」と指摘している。その通りだ。今回の最終合意の本質は、

(1)イランが核兵器開発能力獲得の意図を放棄せず
(2)イランが合意を完全に履行するかにつき懸念が残るにもかかわらず
(3)米国はそのようなイランを受け入れた

 すなわち、武力などによってイランのイスラム共和制の体制変更は行わないと事実上認めた、ということに尽きる。これは米国の歴史的誤算かもしれない。

 残念ながら、始まったのはイランの「非核化」ではなく、中東湾岸地域での「核兵器拡散」だ。これのどこが「米国とイランが歩み寄った結果」なのか。

 一部分析は、米国が中東安定化のためにイランを必要としており、米国とイランはIS(イスラム国)との戦いで「共闘」する可能性があるとまで書いている。これらが中東における戦略的問題と戦術的問題を混同した俗論であることは言うまでもないだろう。

 今回イランは最も守りたかったこと(核兵器開発技術獲得)を皮「一枚」どころか「何枚」も残して守る一方、最も取りたかったもの(政治体制維持と経済制裁解除)をほぼ手に入れた。

 今回はイランの粘り勝ちであり、オバマ政権は米国が「実力以下の外交」しかできないことを再び天下に晒したのだ。これ以外の解決方法はなかったとの反論は理解するが、それを言っても現実は何一つ変らない。

 頼みはイラン一般国民だが、今のところ彼らは沈黙を守ったままだ。テヘランとコムにいるイラン保守強硬派の高笑いが聞こえてくる。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44319?utm_source=rss&utm_medium=feed&utm_campaign=link&utm_content=link

◆イラン核合意、共和党が国務長官を痛烈批判 米上院公聴会

2015年07月24日  AFP

【7月24日 AFP】ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官は23日、上院外交委員会の公聴会に出席し、困難な協議を経てまとまったイラン核協議の最終合意を擁護した。ケリー氏がこの合意について議会で公式に発言したのはこれが初めてで、議員らからは同氏がイランに「言いくるめられた」「けむに巻かれた」と痛烈な批判が相次いだ。

 ケリー氏は懐疑的な姿勢を示す議員らを前に、「世界にとって良い合意」だと訴え、承認を要請した。

 前週オーストリアの首都ウィーン(Vienna)で結ばれたこの合意についてケリー氏は、「実際のところこのウィーン合意はイランの核計画を制限していく上で、これまで俎上(そじょう)に載せられた他のどんな選択肢よりも強力で包括的、持続的な措置となる」と述べた。

 さらに、履行されればイランを「永遠に厳しい監視」下に置くことができ、同国の核活動が「全面的に平和的なものであり続ける」よう国際社会も結束していけると付け足し、「これは世界にとって良い合意、米国にとって良い合意、地域における米国の同盟国と友好国にとって良い合意だとわれわれは信じており、議会からの支持に値するものだと考えている」と話した。

 しかし共和党議員らからは懐疑的な意見が相次ぎ、公聴会は4時間半に及んだ。ケリー氏は細い銀縁眼鏡の後ろに疲れたような目を見せていた。

 議会はこの合意を承認するかどうか、60日間の審査期間に入っているが、上下両院で特に共和党議員らから強い抵抗を受けている。

 議会は不承認の動議を可決することができるが、これに対しバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は拒否権を発動することができる。この拒否権を覆すには、上下両院のそれぞれで3分の2の票が必要となる。(c)AFP/Robert MACPHERSON

http://www.afpbb.com/articles/-/3055365?ctm_campaign=pcpopin

◆力の均衡が決定的に変化した

2015年10月20日 マスコミに載らない海外記事

Paul Craig Roberts
2015年10月10日

9月28日、ロシアのプーチン大統領が国連演説で、ロシアはもはや耐えることができないと述べて世界情勢の大転換が起きたことを世界は認識し始めている ワシントンの卑劣で愚劣で破綻した政策が解き放った混乱は、中東、そして今やヨーロッパを席巻している。二日後、ロシアはシリアの軍事情勢を支配して「イスラム国」勢力の破壊を開始した。

おそらくオバマ顧問の中にも、傲慢さに溺れておらず、この大転換を理解できるごく少数の人々はいる。スプートニック・ニュースは、オバマの安全保障担当幹部顧問の何人かが、アメリカ軍勢力をシリアから撤退させ、アサド打倒計画をあきらめるよう助言したと報道した。彼らは、ワシントン傀儡のヨーロッパ諸国を圧倒している難民の波を止めるため、ロシアと協力するようオバマに助言した。望んではいなかった人々の殺到で、アメリカの外交政策を可能にしておくことによる大きな犠牲に、ヨーロッパ人は気がつきつつある。顧問たちは、ネオコンの愚かな政策がワシントンのヨーロッパの帝国を脅かしているとオバマに言ったのだ。

マイク・ホィットニーや、スティーヴン・レンドマンなど、何人かの評論家たちが、「イスラム国」に対するロシアの行動について、ワシントンができることは何もないと正しく結論している。ロシアを追い出すための、ネオコンによるシリア上空の国連飛行禁止空域計画は夢物語だ。そのような決議が国連で行われるはずがない。実際、ロシアが既に事実上の飛行禁止空域を設定してしまったのだ。

プーチンは、言葉で脅したり、中傷したり一切することなく、力の均衡を決定的に変え、世界はそれを理解している。

ワシントンの対応は、罵倒、大言壮語や、更なるウソしかなく、しかもその一部を、更にいかがわしいワシントン傀儡がおうむ返しする。唯一の効果は、ワシントンの無能さの実証だ。

もしオバマに、多少の思慮分別があれば、政権からワシントンの力を浪費したネオコンの能なし連中を追放し、ヨーロッパやロシアと協力して、ヨーロッパを難民で困らせている、中東におけるテロの支援ではなく、破壊に注力するはずだ。

もしオバマが過ちを認めることができなければ、アメリカ合州国は、世界中で信頼性と威信を失い続けるだろう。

Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでい る。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/10/10/decisive-shift-power-balance-occurred-paul-craig-roberts/

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-9154.html

◆<イラン>核合意が発効 制裁解除は年末から16年1月か

毎日新聞 2015年10月18日

 【テヘラン田中龍士】イラン核問題を巡り、同国と国連安全保障理事会常任理事国(米英仏中露)にドイツを加えた6カ国が7月にウィーンで最終合意した「包括的共同行動計画」が18日、発効日を迎えた。米国と欧州連合(EU)は核関連制裁の解除に向けた準備に着手し、イランは核活動の抑制措置を始める。制裁解除は年末から来年1月とみられている。

 最終合意は7月14日に発表され、同20日に国連安保理で承認決議が採択された。採択から90日後の18日が「合意採択の日」として発効日となっていた。

 イランは18日、国際原子力機関(IAEA)に査察頻度の増加や抜き打ち的な査察が可能になる「追加議定書」の暫定適用を通告した。

 イランメディアによると、イランは合意前に保有していた遠心分離機約1万9000基を5060基の稼働に限定し、西部アラクの重水炉では兵器級プルトニウムが抽出できないよう改修に着手する。

 その後、IAEAがイランの措置の進捗(しんちょく)を確認した上で「合意履行の日」が設定され、制裁が解除される。また、IAEAはイランに関する過去の核兵器開発の可能性に関する調査を進め、天野之弥事務局長が12月15日までに最終報告する。

 イラン学生通信によると、イランのサレヒ原子力庁長官は18日、「履行の日は、おそらく2カ月ほど後になるだろう」と述べた。一方、ロイター通信によると、ドイツのシュタインマイヤー外相は同日、制裁は少なくとも来年1月まで続くとした上で「イランが合意事項を履行できることを示せるかが重要だ」と語った。

 イランの国会(定数290)は今月13日、最終合意を賛成161、反対59、棄権13で承認。米議会では野党共和党が最終合意に反対したが、オバマ政権は議会が不承認とする事態を9月に回避した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151018-00000058-mai-m_est

◆日本政府、イランへの経済制裁を解除へ

2015-08-11  企業法務ナビ

1 日本による経済制裁の概要
 イランは核開発を進めたことが原因で、2006年12月に国連安保理決議がなされて以降、国際社会による経済制裁が課されてきた。日本も、国連安保理決議を受けて、『外国為替及び外国貿易法(外為法)』に基づき、イランに対して経済制裁を課してきた。具体的には、日本企業によるイランのエネルギー分野への投資を禁止したり、核開発計画に関係する個人や会社の資産を凍結したりした。
 なお、外為法は、①国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、②国際平和のための国際的努力に日本として寄与する必要があると認めるとき等に、経済制裁を課すことができると規定する。国連安保理決議がなされた場合、上記①と②に該当する。
2 なぜ日本は経済制裁を解除するのか
今年の7月14日に、イラン核開発問題について協議をしていたアメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・ロシア・中国の6か国とイランが、最終合意に達した。その内容は、イランが核開発能力の制限と国際原子力機関(IAEA)による査察を受け入れる代わりに、国際社会が経済制裁を解除するというものである。これによって、外為法における①国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、②国際平和のための国際的努力に日本として寄与する必要があると認めるとき、という要件には該当しなくなったため、日本も経済制裁を解除することとしたのである。

3 イランの大きな可能性
 イランは、世界第4位の原油埋蔵量及び世界第1位の天然ガス埋蔵量を有する有数の産油国であり、経済制裁前には日本の主要原油輸入先であった。経済制裁の解除によって、日本はイランからの原油輸入を拡大することができ、原油調達先の多様化を実現することができる。これは日本のエネルギー安全保障上、非常に有益である。
 また、イランは人口が7740万人と多く、今後も増加が予測されている上に、経済制裁の解除によって経済が成長すれば、購買力も増す。そのため、イランは、市場としても魅力的なのである。

4 コメント
欧州諸国は、官民一体の訪問団を派遣し、イランとの関係強化の動きを強めている。これに対して、日本は出遅れ感が否めないという。
本件からいえることは、日本企業としては、経済制裁のようなある種の「法規制」の解除に対して、それを見据えた動きが鈍かったために、ビジネスチャンスを逃してしまうリスクに見舞われていることは否定できない。日本国内においても、規制緩和など「法規制」の解除が多方面で検討されているのであるから、情報感度を上げ、それを見据えた動きの迅速化が求められているといえる。

http://www.corporate-legal.jp/houmu_news1903/

◆日本企業の市場復帰歓迎 イラン石油相、経産副大臣と会談 

2015/8/9   日本経済新聞

 【テヘラン=共同】イラン訪問中の経済産業省の山際大志郎副大臣が9日、首都テヘランでザンギャネ石油相と会談した。石油省によると、ザンギャネ氏はイラン産原油や天然ガスの対日輸出に関し「日本がイランのエネルギー市場で制裁強化前のシェアを回復することは可能だ」と述べ、日本企業のイラン市場への復帰を歓迎する考えを表明した。

 石油省高官は、欧米など6カ国とイランの核協議が最終合意した後の7月20日、米国の制裁強化による影響で日本が2010年に撤退した南西部アザデガン油田の開発について「日本が復帰することは可能だ」との考えを示している。

 ザンギャネ氏は具体的なプロジェクトには言及しなかったが、油田の開発、生産の分野で「日本企業と話す準備がある」と述べ、日本からの技術移転に期待を示した。

 日本はかつて原油輸入量の約3割をイランに依存。だが1979年のイラン革命後の米国との関係悪化や、核問題による欧米の制裁に伴って輸入量を次第に減らし、近年は約5%にまで低下している。核問題の最終合意を受け、制裁解除後を見据えた関係強化のため、山際氏が企業関係者らと共に8日からテヘランを訪問した。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM09H3W_Z00C15A8000000/

◆イランは莫大な軍事地下基地を明らかにした

2015-10-16  世界のメディア・ニュース

イギリスの新聞「ガーディアン(The Guardian)」は2015年10月15日に、イランの国テレビは、ミサイルおよびカタパルトユニット役員が言ったことについて、より一杯にされた地下のトンネルを2015年10月14日水曜日に、前例がない映像を放送した。

これが使われえたなら、「敵は誤りを犯す」ことになると言った。

イランが、新しい長期のミサイルtは、米国言われる国連安全保障理事会決議を破ったかもしれないテストをしたちょうど3日後に、写真はリリースされた。

イランの議会が6つの世界能力と、2015年07月14日の核取引を承認した1日後に、映像はまた来た。

イランの役員は、核の協定が特にその弾道ミサイルプログラムというその軍隊の力に影響しないと言った。

ミサイル発射および地下の映像は、軍隊が取引により弱められなかったことを証明するために、議員からのプレッシャーに続いていた。

トンネル、長さ数百mおよび高さ約10mのであることは、ミサイルとハードウェアによって満たされた。

イスラム共和国の革命家国防の航空宇宙部門の司令官アミール・アリ・ハジザデー准将(Brigadier General Amir Ali Hajizadeh, commander of the Islamic Republic’s Revolutionary Guards)が多く言ったそのようなトンネルは深さ500メートルで、全国いたるところで存在した。

それはまるで1970年代の映画に出てくる地下基地で、スタートレックの世界であった。

http://blog.goo.ne.jp/jiten4u/e/70fbbca2c3a58c5afd56669ca4181178

◆イランから戦闘部隊が大挙シリアへ向かっている~ロシアの制空権の保護の下、シリア政権を擁護する目的か

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)10月16日(金曜日)
       通算第4685号   <前日発行>

 トルコの『ヒュリエット・ディリー』(10月15日)が伝えた。
 ヒズボラなど既存の戦闘集団にくわえて、イランからシリア支援に向かう戦闘員およそ数百がロシアの制空権確保という新状況下に、シリアの空港に到着し始めた。大挙しての戦闘部隊の移動は初めてである。

 シリアの反政府軍スポークスマンによれば、ヒズボラなど地上軍の存在は珍しいことではないが、ロシアの参戦以降、イランからつぎつぎと戦闘員が空路シリア入りし、アレッポなどの戦闘現場へ移動していることはこれまでに無かったという。

 いま、なぜこのタイミングでロシアが本格介入したかについてはウクライナ問題を反らず為、中東で主導権を握るためとか、様々な解釈があるが、ワシントンタイムズは、[ITIS OIL,STUPID]と論じた。
 ロシアの石油戦略は、原油値上げによる景気回復である。だからプーチンの戦略は、石油に立脚しているとの指摘である。

 ロシアはイランのガスパイプラインがシリアを経由しているルートの安全を確保し、さらにトルコ経由のガスパイプラインの欧州向け拠点つくりを本格化させる。露西亜空軍が空爆している地域はガスパイプラインの通り道でもあるという。

http://melma.com/backnumber_45206_6273001/

◆「ロスオボロンエクスポルト」:ロシアとイランはS300の契約作業を順調に進めている

2015年11月03日 Sputnik 日本

ロシアの国営兵器輸出企業「ロスオボロンエクスポルト」のアナトリー・イサイキン社長は、テレビ局「ロシア24」の番組で、地対空ミサイルシステム「S300」の供給に関するイランとの契約締結に関する作業は順調に進んでいると発表した。

イサイキン社長は、「我々は、この契約に関する作業を順調に進めている。私は、締結に向けて障害は一切生じないと思っている」と述べた。リア・ノーヴォスチ通信が伝えた。

「イラン・プレス」紙のエマド・アブシェナス編集長は、通信社「スプートニク」のインタビューで、新契約の交渉状況について、次のように語った―

「イランによるロシア製の地対空ミサイルシステム『S300』の購入は、2007年に締結された契約条件に基づいて行われている。しかしロシアには今、さらに近代化された地対空ミサイルシステムがあり、イランはその所有を望んでいる。そのため、契約には供給の特質に関する変更が加えられた。

双方は、イランがS300の他に、ロシアの他の地対空ミサイルシステムも購入することで合意した。これらはイランのMD(ミサイル防衛)システムの基盤になるばずだ。契約の微妙なニュアンスについての交渉プロセスは事実上終了し、技術的な実行段階に入った。私は、1-2か月後にも納入が始まるのではないかと思っている」。

http://jp.sputniknews.com/politics/20151103/1116920.html#ixzz3qULj8YQM

かって2006年にオバマ政府により日本のイラン石油開発をつぶされた

 内外のエネルギー資源開発をすすめる国策企業である国際石油開発帝石(筆頭株主・経産相)は、イランのアザデガン油田開発から撤退することをきめた。これはオバマ政府による圧力によるものである。アメリカ帝国主義は、イラン経済制裁を口実に、日本の独自の石油開発の芽をつぶしたのである。日本のアメリカからの経済的自立はいっさいゆるさないということである。

イランのアザデガン油田 経済制裁の対象に
 国際石油開発帝石は、国際石油開発(インペックス)と帝国石油が統合してできた一部上場の民間企業であるが、政府が指揮権をもっている国策会社である。同社は、主として海外のエネルギー資源の確保を目的に活動してきた。

 日本資本主義は全エネルギーの47%を石油に依存している。50%をわったとはいえ、石油は依然として利用エネルギーのなかで最大のものである。その石油の大半は中東の石油であり、石油輸入の87%をしめている。日本は大量の石油を中東から輸入しているにもかかわらず、主な油田の権益は米欧の石油メジャーに独占されている。日本は2000年にサウジアラビアのカフジ油田の権益をなくしていらい、イランのアザデガン油田が将来に期待のもてる唯一の油田であった。アザデカン油田はイラン南西部にあり、原油埋蔵量260億バレルといわれる世界有数の油田である。

 2000年にイランのハタミ大統領が来日し、日本政府と共同でアザデガン油田の開発をすすめることで合意した。この油田開発は日本にとっては希望であったが、アメリカにとっては当初から容認できないものであった。

 イランと日本の国家関係にはなんの障害もなかったが、アメリカはそうではなかった。アメリカは戦後、石油を国有化するモサデク政府を転覆し、親米パーレビ王制をつかってイラン人民を抑圧してきた。そのため、1979年にパーレビ王制を打倒したイラン人民と政府は反米斗争を堅持している。そこでアメリカ政府は、反米姿勢をくずさないイランにたいし、「核開発」を理由に経済制裁政策をとるなど露骨な敵視政策をとってきた。日本にたいしてもこれに同調するようせまり、イランの石油開発を中止するよう再三要求していた。

 こうしたなかイラン政府の対米姿勢がわずかにやわらいだところをねらって、2004年に国際石油開発を中心にした日本側の企業体はイランの国営企業とのあいだで油田開発の契約をかわし、75%の権益を得た。このときの計画では、日産26万の石油を生産することを目標にした。

 しかし、2005年に反米姿勢がより強固なアフマディネジャド大統領が就任すると、アメリカはふたたび開発中止を要請してきた。やむなく06年10月には、国際石油開発は権益を10%に縮小して開発を継続することにした。07年には同油田で生産が開始され、現在まで日産2万の石油を生産している。日本の投資額は100億円をこえている。

日本の重要な石油の供給国 イ ラ ン 

 日本とイランとの関係はアザデガン油田開発だけでなく、なによりもイランは原油の大口輸入先である。2009年の実績では、イランから日本への原油輸出量は日本の原油全輸入量の11.2%をしめ第四位(第三位のカタールとはわずかの差)である。また、イランにとっては日本が最大の輸出先である。イランからの原油輸入を維持するためにも、アザデガン油田開発はなんとかして継続したいというのが日本の政府・独占資本の願望であった。

 しかし、オバマ政府はそれをゆるさず、より強硬なイラン制裁法を成立させ、国際石油開発帝石を経済制裁対象の企業にリストアップすると最後通牒をつきつけてきた。こうして日本政府、国際石油開発帝石は、イラン油田開発からの撤退を余儀なくされたのである。

 オバマ政府の、イランの核開発(原発やウラン濃縮など)禁止要求は、まったくダブルスタンダードである。原発どころか核兵器開発をおこなったイスラエル、インド、パキスタンなどにたいしては「核開発」をもって経済制裁をするなどのことはしていない。ことの中心問題は、反米か親米かであって、アメリカのいうことを聞くなら核兵器開発だって目をつぶるというものである。同時に、日本の中東原油権益の拡張のように、アメリカ覇権に脅威をもたらすようなことについては同盟国であろうと絶対にみとめないということである。
 オバマが署名したイラン制裁法案は、2006年の「イラン・リビア制裁法」を改定したもので、①イランにガソリンや石油精製品を輸出する企業の米国での取引制限、②革命防衛隊などと取引する金融機関にたいする米銀行との取引制限、③通信監視技術をはじめイランの人権侵害に利用される技術などを供給した企業を米政府調達から排除――などが柱となっている。

 イラン制裁法はイランに投資する外国企業への制裁をおこなうもので、2006年改定法をいっそう強化するものであり、特徴は金融的な制裁もくわえる点にある。日本の国際石油開発帝石はほそぼそと権益だけは維持するかたちでアザデカン油田開発の事業をつづけてきたが、ここにきて新法を成立させたオバマ政府から制裁対象企業のリストにはいることを告げられ、ついに事業中止をしいられた。アメリカに頭のあがらぬ民主党政府は、抗議することもなくイランの油田開発からの撤退をきめたのである。

 イラン制裁法は、反米的姿勢をとっているイラン政府に経済的打撃をあたえるために、外国企業による石油などの取引を禁止した法律である。同法は、アメリカの国内法にすぎないが、したがわなければ金融的な報復制裁措置をとるというもので、事実上、イランに投資しているすべての外国企業を同法の制裁にしたがわせるものであり、ヒットラー以上のファッショ的な手口である。

 オバマ政府は、平和的な互恵貿易の発展を破壊し、世界各地で対立をあおり、戦争の危機をひきよせている。とりわけ日本にたいしては資源エネルギーや食料などで自立・自給はゆるさず永遠にアメリカの奴隷になるよう強制している。

                  



欧州の難民問題はシリア強奪を欧米が諦めれば解決出来る

2015-11-04 13:12:18 | 資料

ヨーロッパはなぜロシアのシリア政策を支持する必要があるのか

2015年11月 4日 マスコミに載らない海外記事

Finian CUNNINGHAM
2015年11月1日 | 00:00
Strategic Cultural Foundation

ロシアは単純かつ簡潔に述べた。もし難民危機を解決したいのであれば、ヨーロッパはシリア紛争を終わらせる必要があると。統合的な解決は、外国に支援された政権転覆を狙う秘密戦争を打ち負かす、主権を有するシリア政府を尊重することを意味している。

これは、自らの政治的将来を決定するシリア国民の権利を尊重することを意味する。そして、またシリアのバッシャール・アル・アサド大統領を打倒するというワシントン、ロンドンとパリの違法な狙いを、ヨーロッパが拒否することを意味する。要するに、ヨーロッパが、シリアに対する政策で、ロシアと組むことを意味している。

ウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワに、ドイツのジグマール・ガブリエル副首相を迎え入れた際、シリアに対するロシアの立場を繰り返した。まるでモスクワ発言の重要性を強調するかのように、今週、欧州連合諸国間の関係で縫い目がほつれるような新たな展開をみせた。

未曾有の難民の人数を巡るEUバルカン諸国間の緊張は、緊密な文化的結びつきがある二大筋金入りEU加盟国であるドイツとオーストリアを反目させるほどにまで悪化した。国境を越えて流入する難民を規制するため、国境沿いに塀を作ることを予定している二番目のEU加盟国となったことを、オーストリアが発表した後に最近の口論がおきた。

ドイツのトーマス・デメジエール内相は、オーストリアの最近の動きを、“常軌を逸した行動”だと呼んで激しく攻撃した。ベルリンは、ドイツが引き受けるよう、オーストリアは、国境で“夕暮れの難民投棄”をしているとまで非難した。一方、ウィーンは、メルケル首相が、“門戸開放政策”で移民の流れを奨励しているとかみついた。

これは、主な根源がシリアにおける四年間の戦争に由来する移民である難民危機に起因するEU内部における関係悪化のもう一つの兆候だ。フランスの新聞ル・フィガロは、国境に塀を設置するというオーストリアの決定を、EU圏内での人々の自由な移動を保障する根本的な協定“シェンゲン協定を脅かす”ものだとして、強烈に非難した。

オーストリアの動きは、国境の塀を構築し、機動隊や軍の要員を配備するというハンガリー、スロベニア、クロアチアとブルガリアの決定に続くものだ。難民に対する高圧的な警備戦術の報道は、ブリュッセルで大きなろうばいを引き起こした。ドイツのドイチェ・ヴェレ新聞は今月始め、彼の反移民政策と受け取られるものに対して“忍び寄る独裁制”を監督していると、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相を非難する記事を載せた。

欧州委員会大統領ジャン=クロード・ユンケルは、そのような手段はEUの精神に反すると言って、難民を締め出す劇的な傾向を非難した。ヨーロッパの縫い目はほころびつつあるというのが、暗黙の了解だ。

一方ドイツ国内で、メルケルの与党キリスト教民主同盟は、有権者が余りに緩い難民受け入れ政策と認識するものを巡り、圧力を受けている。バイエルン、ハンブルクとドレスデンで反移民抗議行動が行われた。しかも激怒しているのは極右ペギーダだけではない。

世論調査では、中道派のドイツ人の間でさえ、ドイツにやってくる外国人の急増を巡り、不安が増大していることが分かっている。ある世論調査では、ドイツ人のわずか三分の一しかメルケルの亡命希望者への“門戸開放”政策を支持していないことが判明した。今年ドイツは、800,000人の新たな亡命希望者を処理すると報じられている。数値は150万人にのぼる可能性がある。一方イギリスとフランスは、それぞれ20,000人、30,000人という比較的取るに足りない人数を受け入れると発表した。しかも、こうした僅かな人数でさえ、UKIPと国民戦線のような反EU政党に選挙上の弾薬をたっぷり与えることになっている。

この観点から見れば、ヨーロッパは、シリア危機に対する解決を見いだす必要があるというロシアの忠告は極めて重要だ。もしシリア紛争が荒れ狂い続ければ、ヨーロッパを圧迫している難民の人数は増大し続け、それはやがてEU加盟国内の、実にとげとげしいいさかいや分裂を確実に招く。シリア紛争と、付随する難民危機が、文字通り、ヨーロッパを引き裂き、EU圏の存在そのものを危うくするという警告は誇張ではない。

難民に対する高圧的な警備や官僚の敵意は確かに遺憾ではあるが、同時に、未曾有の難民流入に直面する“最前線”のEU諸国における不満にも理由はある。比較的少ない人口と弱体な経済からして、スロベニアのように、わずか200万人しか国民がいない国々が、戸口に絶望的な人々が突然急増したのを、歓迎されざる難題と思うのは無理もない。

ハンガリーのオルバン首相も、トルコは安全な国なのに、一体なぜそれほど多数の難民が、領土を通過してヨーロッパに向かうのを、アンカラ政府によって許されるのだろうかという妥当な指摘をした。

しかも、歴史的人数の難民の源泉であるシリア紛争で、大半のヨーロッパ諸国は、その発生に全く関与していない。

イギリスとフランスは、十分な証拠によって、アサド大統領を打倒するためのシリアでの紛争を醸成し、油を注いでいると非難されている。ロンドンもパリも、中東における根気強い覇権の野望のため、ワシントンが率いる政権転覆計画を追求する上で。2013年に、元フランス外務大臣ローラン・デュマが、2009年、イギリス当局から秘密裏に、アサド政権打倒の秘密計画を持ちかけられたことを明らかにしたことを想起されたい。それは、欧米マスコミが組織的にウソをついてきた“民主主義志向の反乱”という装いの下、シリアで外国が支援する反乱が勃発する、少なくとも二年前のことだ。

過激派傭兵によって遂行されている欧米、アラブ諸国と、トルコが支援するシリアにおける秘密戦争の残忍な現実が、覆い隠すには余りにはっきりしてしまったため、“民主主義志向の抗議行動”という説明は雲散霧消した。

ワシントン、ロンドン、パリや地域同盟諸国が今週ウィーンでのシリア“和平交渉”で、ロシアやイランと共に集まったが、欧米諸国が政権転覆の狙いを放棄した兆しはない。

アメリカのジョン・ケリー国務長官と、イギリスの相手方フィリップ・ハモンドは、アサドは“退任すべきだ”という傲慢な要求から、放棄される権力の移行過程へと軟化したように見える。しかし狙いは依然として政権転覆だ。一方、フランスは、アサドの即時退任を要求し続けている。フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、ウィーンでの交渉前に“アサド退陣の明確な線表”を要求した。

だから、ワシントンとそのヨーロッパの同盟諸国がシリア危機の“解決”について語る際、彼らが意図しているのは、彼らが長年抱き続けてきたシリア政権打倒計画という最終結果を実現させることだ。これでは紛争の平和的解決を見いだす確約にはならない。更なる政治的手段による紛争の追求だ。しかも、これはシリアの国権に対する言語道断の侵害であることを指摘しなければならない。

アメリカが率いる狙いで確実なのは、シリアにおける紛争を荒れ狂い続け、難民の人数は増大し続けるだろうことだ。今週国連は人道支援が緊急に必要なシリア人の人数を1350万人に改めた。全国民の半分をはるかに上回る。更に一体何百万人が悲惨な人々に仲間入りするのだろう? 更に一体どれほど多くの人々が最終的にヨーロッパに向かうだろう?

ヨーロッパの運命は、その手が既にシリア人の血にまみれている二つのアメリカ追従国家、イギリスとフランスにまかせるべきではない。ヨーロッパの国々にとって、自らが招いたわけではない難民危機という結果を背負い込まされるのは受け入れ難い。

シリア紛争の解決には、ワシントンと同盟国が国際法を順守し、即座に彼らの不法な政権転覆計画と、シリア国内で、彼らの戦争の犬たちの吠え声を止める必要がある。それは難民危機に対する全体的解決でもある。国際法の順守。実に単純ではないか?

ロシアとイランは、シリアの国権は尊重されるべきだと主張して、この解決を明確かつ説得力をもって述べている。この政策で、ロシアとイランを支援し、ワシントン、ロンドンとパリという犯罪的政権転覆枢軸と縁を切って指導力を示すのは、ドイツや他の好戦的でないEU諸国次第だ。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/11/01/why-europe-needs-back-russia-syria-policy.html

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-2965.html

サウジアラビア、カタール、クウェートやアラブ首長国連邦等の湾岸アラブ諸国のシリア難民受け入れはゼロだ。

4年前、シリアの経済改革を要求して行われた“数百人”の抗議行動が、一体なぜ、恐ろしい宗派内戦へと悪化し、過激主義を煽り立て、現在、世界を悩ませ、世界で二番目に大きな難民危機を生み出しているのだろう?

マスコミは、シリアのバシャール・アサド大統領の樽爆弾を非難し、政治評論家達は更なる対ISIS空爆と、より厳しい対シリア経済制裁を呼びかけ、危機が始まって4年目なのに、大半の人々は、この戦争が、一体どのようにして始まったのか全く知らない。

この“内戦”は、宗教を巡るものではない

シリアへの外国の介入は、シリアでの反乱開始の数年前に始まった。ウイキリークスは、内戦を引き起こして、シリア政府を打倒するというアメリカの計画と、こうした命令を、テル・アビブから直接受けていることを明らかにするアメリカ国務省の2006年の漏洩電報を公表した。この漏洩は、サウジアラビア、トルコや、カタールや、エジプトの様な国々とのアメリカの協力関係同盟が、スンニ派と、シーア派の分裂を利用して、シリアを分割し、イランとヒズボラを弱体化する為、シリアを不安定化させるのに、宗派心を利用するためであることを暴露している。イスラエルも、ゴラン高原占領を拡張する石油採掘を増加する為、この危機を利用しようとしていることが明らかにされた。

BBCや、AP通信等の主要マスコミによれば、シリアで行われたとされる抗議行動は、わずか数百人の人々によるものだったが、更なるウイキリークスが公開した電報が、2011年3月という早い時期に、こうした抗議行動そのものを引き起こす為の、シリア国内でのCIAの関与を明らかにした。

抗議行動は、わずか数カ月後に、CIAとつながる何百もの武装抗議行動参加者と化し、デモが拡大し、シリア人でない武装反政府集団がシリアに押し寄せ、シリア全土を政府の厳しい弾圧が覆う中、アメリカ合州国、イギリス、フランス、カタール、サウジアラビアやトルコが、反政府派を組織し、武器を与え、資金供給して、自由シリア軍を形成する好機に飛びついたことが明らかになった。(わずか数カ月前、ウイキリークスが、サウジアラビアの諜報情報を公開し、2012年以来、トルコ、カタールとサウジアラビアが、シリア政府を打ち倒すべく、反政府派に武器を与え、資金を提供するのに協力して動いていたことをあきらかにした。)

“ヨーロッパに向けて、パイプラインを、東から西へ、イランとイラクから、シリアの地中海沿岸で通すか、あるいは、 カタールと、サウジアラビアから、シリアとトルコ経由という、より北回り経路にするかを巡って、戦いがおこなわれている。こう着状態のナブッコ・パイプライン、実際、南ガス回廊丸ごとが、アゼルバイジャンの埋蔵量しか裏付けがないため、ヨーロッパへのロシアの供給には決して拮抗できないことを悟り、サウス・ストリーム建設を阻止する為、欧米はペルシャ湾からの資源で置き換える必要にせまられていた。シリアはこの連鎖における主要リンクであり、イランとロシア寄りの傾向がある。そこで、欧米の首都で、シリア政権は倒して変える必要があると決定されたのだ。

石油、ガスと、パイプラインが問題なのだ!

実際、ヨーロッパのガス市場が、ロシアの巨大ガス企業、ガスプロムの人質に取られてしまうのではという懸念の中、ロシア、アメリカと欧州連合の間の緊張が高まった。ロシアから離れ、ヨーロッパのエネルギー供給を多様化するには、提案された、イラン-イラク-シリア ガス・パイプラインは、不可欠なのだ。

トルコは、ガスプロムの二番目に大きな顧客だ。トルコのエネルギー安全保障構造丸ごと、ロシアとイランからのガスに依存しているのだ。更に、トルコは、ロシア、カスピ海-中央アジア、イラクや、イランの石油、さらにはガスの、ヨーロッパへの輸出における戦略的分岐点になるという、オスマン帝国風な野望を抱いている。

2013年8月、ガーディアンは、こう報じた。

“アサドは、ヨーロッパ市場への供給目的で、重要なことに、ロシアを回避しながら、イランのサウスパース・ガス田と隣接しているカタールのノース・フィールドから、サウジアラビア、ヨルダン、シリアを経由し、トルコへ向かう、カタールと、トルコが提案したパイプラインの協定に署名することを拒否した。アサドの論理は、‘ヨーロッパへの天然ガスの最大供給国である [彼の同盟]ロシアの権益を守るため’だった”。

http://www.theguardian.com/environment/earth-insight/2013/aug/30/syria-chemical-attack-war-intervention-oil-gas-energy-pipelines

シリアが、自国のエネルギー戦略において極めて重要な部分であるのを理解しているトルコは、このイラン・パイプライン案は改め、 究極的に、トルコや湾岸アラブ諸国のガス供給支配の追求を満足させる、カタール-トルコ・パイプライン提案に協力するよう、シリアのバッシャール・アサド大統領説得を試みた。しかし、アサドが、トルコの提案を拒否した後、トルコと同盟諸国は、シリア“内戦”の主要計画立案者となった。

https://www.youtube.com/watch?v=G1p_tFnKqMA

現在進行中の戦略の多くは、さかのぼって、アメリカ軍が資金を提供している2008年のRAND報告書“長い戦争という未来を明らかにする”の中で記述されていた。

http://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/monographs/2008/RAND_MG738.pdf

アメリカ、フランス、イギリス、カタール、サウジアラビアと、トルコ - 別名、新“シリアの友人”連合が、公式に、ガス・パイプラインへの署名をアサドが拒否した後、2011年から2012年の間、シリアのバッシャール・アサド大統領打倒を、公式に呼びかけ、シリアを、人道的危機に押しやるいわゆる“穏健”反政府派に与えるべく資金と武器が、シリアに流入した。反政府集団は、あれやこれやの連中を組織したもので、その多くは外人戦士で、多くがアルカイダと同盟していた。

シリアは宗教的に多様なので、いわゆる“シリアの友”は、アサド打倒の為の“分割して統治”戦略の公式として宗派心を煽った。アメリカが支援する“穏健”反政府派による、アラウィー派が、スンニ派が多数派の国家を支配しているという主張が、スンニ派解放の主張となった。

この戦争は、大衆には、スンニ派-シーア派紛争として売り込まれているが、ISISや、 シリアのアルカイダ分派、アル・ヌスラ戦線等のいわゆるスンニ派集団や、“穏健派” 自由シリア軍までもが、無差別に、シリアのスンニ派、シーア派、キリスト教徒やユダヤ人を標的にしている。同時に、正に同じ諸外国が、国中をおおっている多数派のシーア派による民主主義推進抗議行動に対する暴力的弾圧で、スンニ派だと主張しているバハレーン政府を支援し、武器まで与えている。

シリア政府軍自身、80パーセント以上がスンニ派で、本当の狙いの動機は、政治的なものであって、宗教的なものではないことを示している。

これに加え、アサド一家は、大半のシーア派が、この二つは無関係であることに同意しているのに、マスコミが、シーア派とひとまとめにしているイスラム教の宗派、アラウィー派だ。更に、アサド一家は、非宗教的で、非宗教国家を支配しているとされている。アラウィー派を、シーア派として見なすのは、紛争の為に宗派的枠組みを押しつける一つの方法に過ぎない。それが、シリア-イラン同盟が実際は経済関係なのに、宗教に基づくものだという前提を許容してしまう。

この枠組みは,イランが、イラク、シリアとレバノンに広げているとされるシーア派の影響力から自らを解放する為のスンニ派革命として、入念に仕立てられたシリア紛争だ。

だが、真実は、シリアのスンニ派社会は分裂しており、多くの人々が、自由シリア軍、ISISやアルカイダ等の集団に加わる為にくらがえした。また先に述べた通り、80パーセント以上のアサド軍兵士はスンニ派である。

◆米露、シリア空爆の衝突回避策で合意

2015年10月21日 BBC News

ロシアがシリアに投入した戦力

ロシアと米国は20日、シリアで過激派勢力「イスラム国」(IS)に対して行う空爆で、両国軍機の衝突を回避する措置に合意した。

米国防総省のピーター・クック報道官は、ロシアの要請で合意文書は公表しないとしたが、両国の連絡方法や、地上にホットラインを設置することが決まったと述べた。ただし、空爆対象に関する情報は交換しないという。

クック報道官はさらに、今回の合意で両国軍機が「安全な」距離を保つことが保障されるとしたが、具体的な距離が設定されたかどうかは明らかにしなかった。

ロシア国防省のアナトリー・アントノフ次官は、合意文書には「米国とロシアの軍機の事故を防ぐための、多くのルールや規制が含まれる」と述べた。

ロシアは先月30日からシリアでの空爆を開始している。米国は先週、両国の軍機が目視できる距離(15~30キロメートル)まで接近したことがあったと発表した。

合意をまとめるまでに3週間かかっており、内容も限定的だ。空爆そのものや空爆対象について調整はせず、軍事情報も交換しない。ただ単に軍機が接近しすぎないようにするのを目指している。

発表文書では、合意には操縦士としてのプロフェッショナルな行動の要請や、交信につかう具体的な無線周波数、地上での通信線が盛り込まれた。地上での連絡はバックアップとして想定されている。

合意はシリア領空内のみを対象としており、トルコが懸念するロシア軍機によるトルコ領空の侵犯については触れていない。しかし、米国主導の有志連合とロシアの軍機が衝突するリスクを軽減している。双方が合意を守ればの話だが。

(英語記事:US and Russia sign deal to avoid Syria air incidents)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151021-34589879-bbc-int

◆唯我独尊の米国には見えないロシアの乾坤一擲
シリア空爆と国連演説、プーチン大統領のしたたかな戦略

2015.10.22(木) W.C. JB PRESS

ニューヨークの国連本部で開かれた潘基文事務総長主催の昼食会合で、乾杯するウラジーミル・プーチン露大統領(右)とバラク・オバマ米大統領(左、2015年9月28日撮影)〔AFPBB News〕

 シリアの反政府勢力に対して、ロシアが空からの攻撃を始めてから3週間が経った。

 この攻撃開始に当たって米国へ仁義を切るために9月28日にニューヨークで行われた米露首脳会談の終了後、わずか一昼夜余の間に憲法に従う上院の対外軍事行動承認と、それに続くウラジーミル・プーチン大統領の爆撃指令を完了させ、9月30日には作戦が開始されている。

 ロシアはシリアへ、それまでに攻撃機50機以上、要員2000人前後をシリア政府の要請に基づく形で送り込んでいたとされる。

 この陣容による攻撃開始後の成果について、ロシア国防省は10月16日までの1週間だけで、攻撃機が394回出撃し、IS(イスラム国家)を称する占領者たちの通信・野戦施設ほか350カ所近くを破壊した、と発表している。

周到な準備を進めていたロシア

 カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのドミトリー・トレーニン所長によれば、ロシアがシリアへの直接介入に向かって舵を切ったのは、9カ月前の今年の始めだった。

 その時点ではまだ方向性の決定であり、実際にやるか否かはその条件が整い次第、であったのだろう。その方針の下で、米国も含めた対IS国際統一戦線結成が第1案、これが達成されない場合に第2案のロシア単独での攻撃開始、という筋書きが組まれていったものと思われる。

 どちらの案でもロシアの空爆実施が含まれ、これには大統領府長官のセルゲイ・イワノフ氏と国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ議長が関わった、と別のロシアの事情通は述べている。

 以下、諸報道によりその後の経緯を見ると、米国をはじめとする国々のバッシャール・アル=アサド大統領即時退陣の主張を何とか押しとどめ(見返りにロシアとイランも、彼の再選は認めないという点で譲歩)、その一方で軍事行動への準備も進めていった。

 アサド政権の命脈が尽きたのではないか、との見方が広まりつつあった6月に、イランの革命防衛隊とレバノンのヒズボラがシリアでの戦力を増強し、その後これに呼応するかのようにシリアのラタキアでロシアの空軍基地増強も進められたようだ。

 7月末にはプーチン大統領の10年ぶりとなる国連総会出席が関係先に通告され(その時点で多くの外交筋は、ウクライナ問題で精々いつもの対米批判をやるだけなのでは、と予想したのみ)、外交専門誌編集長のフョードル・ルキヤノフ氏は、遅くとも8月までには空爆実施具体案が準備され、それに対して米国がどう出るかをロシアは窺い、その結果、互いに干渉しない、という合意がなされたのだろう、とメディアに述べている。

 確かに、9月28日のバラク・オバマ大統領の対プーチン会談までには、米国も徐々にではあるがロシアの対IS攻撃開始を容認する方向に傾いていたようだ。

 ジョン・ケリー国務長官はアサド退陣時期については交渉の余地ありと発言し始め、アシュトン・カーター国防長官も3月の就任以来、初めてロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とシリア問題での電話会談を行っている。

 ロシアの描く筋書きは、遅くとも来年3月までにアサド政権の勢力を回復させ(人口が集中する地域と重要都市のアレッポを確保すれば十分で、国土の大部分を占める過疎地は当座の目標外)、反政府側(少なくともISは除く)との和平交渉に持ち込ませることに置かれている。

 その成否は、地上軍投入は行わないという前提のロシア軍の援助の下で、どこまでシリア政府軍が自力で失地回復を行うかにかかる、とされる。

米国の主張

 だが、9月28日の首脳会談を経て上述のようにロシアが即座に行動を起こし始めると、ロシアの攻撃対象がISではなく、米国やトルコ、湾岸諸国などが支援する「自由シリア軍」他の反政府勢力になっている、と米国は強く批判し始め、これに英仏独とサウジアラビア、カタール、トルコも同調する(ロシアはこれを否定したが、この点ではどうも分がよくない)。

 首脳会談へオバマ大統領がどのような姿勢で臨み、爆撃開始を通告するプーチン大統領に対して何と答えたのかは定かではないが、IS殲滅では合意できても、アサド政権をどれだけ延命させるかでは見解が一致していなかったのかもしれない。

 あるいは、米国側内部でプーチン大統領の動きに我慢ならんという面々が後になって突き上げたのだろうか。その真相がどうであれ、表に出ている動きだけで見れば、米露間の対立は深刻化の様相を呈し始めた。

 米側は次のように主張している。

●これまでに20万人以上の国民を殺戮したアサドを、欧米のみならずシリア国民の大多数や周辺国ももはや支持しておらず、彼に今後も国をまとめることなどできるはずがない。

●IS以外の反政府派の勢力を削いだりすれば、それだけISを拡大させ、ISへの転向者や結果として難民の数をさらに増やすだけとなる。

●アサド政権を助けようとするロシアの介入は、これまでの米国とその仲間による対ISへの攻撃とは趣旨が異なり、従ってシリア問題の政治決着と早期終結を困難なものにしてしまう。

 オバマ大統領は例によって、プーチン大統領への個人攻撃の形で、ロシアはこれまでの自分の戦略ではシリアを維持できないという、しょせんは弱い立場から首を突っ込んできたに過ぎず、こうした動きは必ず失敗する、とこき下ろす。

 米国は、ロシアに対抗する形でシリア内のクルド人勢力2万人ほかの反アサド派への武器供与を開始する。そして、ロシアが提案した反IS統一戦線結成への協力を拒み、この問題を協議しようとロシアが持ちかけたドミトリー・メドベージェフ首相を団長とする訪米団の受け入れも拒絶する。

 だがプーチン大統領は怯む気配を見せない。彼の基本的な立場は、日本で大して注目されなかったものの、9月28日の国連総会で行われたその演説に示されている。

 この演説については、すでに何人かの識者が触れておられるので(1、2)、本稿では詳細を避けるが、総会の演壇から、「アフガニスタン、イラク、リビア、そしてシリア、といった具合に、どれ一つまともな結果が出せていないではないか、『民主主義』革命の輸出でどれだけ多くの国を悲惨な状態に追いやったのかを、君たちはまだ分かっていないのか」と彼は欧米に詰め寄っている。2007年来の彼の持論となる、米国の一極支配思想への痛烈な批判である。

プーチンに差をつけられたオバマ

 そのうえでシリア問題を解決する道筋として、難民問題も発生地での正統政権の支配力を確立せねば止められるべくもない、として、これまでのアサド政権を相手にしないという欧米の手法が大きな誤りであったと指摘、そして今必要なのは、シリア内で正統政権を維持しつつ、ISなどのテロ集団へ国際的な統一戦線結成で対抗することである、と提言する。

 この演説の内容は、かなりメリハリが効いたものになっている。それを、プーチン演説に先立って行われたオバマ演説と比較すれば、シリアをはじめとする中東で現実に何が起こっているのかという認識力の面で、オバマ大統領はプーチン大統領に少なからず差をつけられてしまっているようでもある(プーチンはこの演説が行われている時に漸くニューヨークに到着したばかりで、直接これを聞いていない)。

 傍若無人に独り善がりの思想を力ずくで振り撒き、その結果の始末も自分でできていない――。

 なるほど、これまでイラクでもシリアでも米国は支持する側の軍の養成に失敗し、最近はアフガニスタンからの撤退政策も失敗に終わっている。どれもこれも、オバマ政権が結末をつけられずにいる課題として残ってしまった。

 そうなった理由を、オバマ大統領の中途半端な政策が中東での米国の存在感低下を生んだ結果に求める声もあるが、さらにその政策の根底まで突き詰めてみれば、欧米流の民主主義が世界の地域・民族を超えての至高の価値観とならねばならないと信じ込む米国の普遍主義思考に行き着く。

 その政策は、いわば信仰に発しているようなもので、これに敵への恐怖感(ヒラリー・クリントン氏は、恐怖ではなく事実に基づき議論をしよう、と論じる)が加わると歯止めも効かなくなる。

 しかし、それは世界各地域での特殊性への知見や注意をかき消すことで、現実にそぐわない発想や政策を結果として生んでしまう。

 例えば、シリアには過激な反体制派のISと穏健な反体制派とがあり、後者を援護してアサド政権を打倒すべきと米国は主張するが、そもそも反体制派(クルド、アルカイダ系組織、元シリア軍兵士等の「自由シリア軍」、IS、など)を綺麗に過激と穏健に分けることなど不可能以外の何物でもない、とロシアは指摘する(中東の専門家にも同様の見解が多い)。

 であれば、穏健派に供与したはずの武器が、いつ過激派の手に移ってもおかしくはない。○○派と称される面々が存在していても、次の瞬間に彼らは××派に衣替えしているかもしれない。それが現実であり、そもそも米が主張する「自由シリア軍」なるものすらが本当に存在するのかも疑わしい、と露側は論じる。

 こうした点について、米側も西側のメディアもこれまでまともな反論なり説明なりを行ってきているようには見えない。正邪の二元論では解きようもない連立方程式だからだろう。ISと戦っている限り、タリバンや9.11の犯人とされるアルカイダは米国の味方になるのか?

ソ連の失敗になぜ学ばないのか?

 かつてソ連はアフガニスタンで失敗したが、相手を共産主義と言うプリズムを通してしか見ずに舐め切ったことがその敗因だったとすれば、米国は今、民主主義という容器に相手の身体的特徴などお構いなしに無理矢理にでも押し込めようとして同類の過ちを犯している――。 プーチンにはそう見えるのだろう。

 総会の演説で彼は欧米に向かって、「なぜソ連が犯した誤りを学ぼうとしないのか」とすら言ってのけている。

 旧ソ連圏に「民主主義」革命の輸出を持ち込んでくることは、ロシアにとっても迷惑極まりない。しかし、プーチン大統領の対応を見ると、米国のやり方のナイーブさや無知に呆れて愛想を尽かしていることからの嫌悪感(あるいは侮蔑感)の方がむしろ強いのでは、とすら思える。

 対する米国は、ロシアの空爆開始直後の一斉批判に続く二の矢が継げていないようだ。それまでロシアを俎上に載せて批判した問題点の事実関係も、何やら曖昧になってきてしまっている。

 メドベージェフ首相の訪米団受け入れ拒否も、そのまともな理由が説明されていない。ロシアのメディアが評するように、今どうロシアに(ひいては中東問題に)対応すればよいのかが即座には分からずにいるようでもある。

 加えて、ロシアがイラン、イラク、シリアとの対IS共同戦線を結成したこと、特にイラクがこれに加わったことが米国には大きな衝撃だっただろう。これまで投入してきた膨大な人的・金銭的資源はいったいどこへ消えてしまったのか。

 イラクは米国の支援不足に十分過ぎるほど失望していたと言われる。その理由は西側のメディアが書くような強腰の軍事介入へのオバマの不作為だけではなく、中東情勢をどう扱ったらいいのかという点でのあまりに大きな米国の知見不足だったのではないだろうか。

 プーチン大統領の対米批判はそれとして、ロシアが今回の空爆参入に踏み切った直接的な動機や理由について、西側でも露側でも様々な解釈がメディアに登場する。

●アサド政権の救済と中東でわずかに残された自国の勢力圏・軍事基地の確保
●ウクライナ問題から関係者の目を自国のイメージアップによって逸らすこと
●国内の政権支持つなぎ止め
●CIS諸国・ロシアへのIS浸透阻止
●シリアをリビアの二の舞にしないことでロシアの世界での存在感を誇示

ロシアを見誤る米国

 米国では、これらのどの要素が主役なのか、そして、プーチン大統領が勝負に勝っているのかで、外交分析評価が分裂しているらしいが、実際にはどれも間違いではあるまい。

 これらのどれ一つをとってもロシアが考えていないはずはないし、そのいくつかが直接介入を現実的な検討課題に押し上げていったということなのだろう。

 そして、これらを満たしながらさらに先をプーチン大統領は見ているのではなかろうか。彼が狙うのは、ここで対米攻勢をかけて米の譲歩を引き出し、ウクライナ問題で始まった対ロシア経済制裁の解除や来るべき時代の露米関係への道筋確保、それにロシアの安全保障に関わる米国との合意(MD配置阻止や中東政策での共同歩調)といった大きな目標にあるように思える。

 皮肉なことに、オバマ大統領が弱腰で米外交を駄目にした、といった論が米国内で強まれば、それだけ余計にそれを打ち消すべく、次期米政権は恐らく対露強硬策を志向せざるを得なくなる。ネオコンの理論家たちも、再度表舞台に出るべく蠢動し始めたようだ。

 米国の新政権とさらに8年間も対立を余儀なくされるような状況を避けるためにも、強硬策には出て来ないと見られるオバマ政権を相手に一刻も早く話をつけてしまわねばならない。

 その米国と対ロシア、対中東政策で必ずしも歩調が揃っているわけでもない欧州は、ギリシャ問題の小康状態で一息つけるかと思いきや、怒涛の如き難民問題、さらにはVW(フォルクスワーゲン)の不祥事というオマケまでついてしまい、その体力も意思統一もヨレヨレの状態に瀕している。

 今なら、欧州を自分のペースに巻き込む可能性あり、とロシアは踏むだろう。

 急がねばならない理由はそれだけではない。空爆開始はロシアにとって相応のリスクも伴っている。

 まずは先立つもので、巡航ミサイルの投入は米国に戦闘能力で負けてはいないということを示す点で見栄えは良いものの、大変にお金がかかる。政府予算の緊縮に狂奔する財務省を押し倒して、2016年度政府予算で軍事費は唯一増額(Rb.1650億)項目となった。第一副首相のイーゴリ・シュヴァロフ氏は、これはシリア問題への介入とは関係ない、などと述べるが、それを信じる向きはいないだろう。

 IEA(国際エネルギー機関)や世銀は原油価格が2016年も低調に推移するだろうと予測しており、ロシア政府の台所は火の車に近づいている。どう転んでも長期戦に対応できる余力があるようには見えない。 

国内にスンニ派を多く抱えるロシアの事情

 戦闘が想定外に長引けば、国内での厭戦気分も高まるかもしれない。空爆に今は国民の7割近くが賛成していても、万一地上軍の派兵などに至れば、アフガン出兵の苦い記憶が呼び起されて、国民は簡単にはついて来なくなるだろう。

 特に2000万人とも言われるロシア内のイスラム(ほとんどがスンニ派)がこれからどう反応して動くのかも要警戒事項となる。露紙によれば、彼らはアサドがISよりマシなどとは全く見ていない。

 そのアサドを援護するということは、基本的には世のスンニ派を敵に回すことになるのだから、そのスンニの中のISという不良分子退治、という筋書きで辻褄合わせができる時間内で物事を処理しなければならない。

 クルドが絡んで複雑化するトルコとの関係をはじめとして、イスラエルやサウジアラビア、湾岸諸国と同時に関係を維持・強化するには、ビスマルクなみの業が必要とされるだろう。

 そして、最も重要なのは、米国をともかくはロシアとの協議のテーブルに着かせるという目的達成のために、間違ってもシリアを舞台とする米国との代理戦争にのめり込まないことである。

 こうした制約条件の中での作戦遂行である。

 オバマ氏のプーチン批判に同調する西側メディアの論調は、効果を得るためにロシアは長期戦に突入せざるを得なくなる、 結局は地上戦にも踏み切ることになる、それは米国と同じ誤りを犯すことでありソ連のアフガンの二の舞にもなる、どうせ失敗するに決まっている――とこぞって冷ややかである。

 だが、ブルッキングス研究所のリリア・シェフツォヴァ氏は、ソ連崩壊時も、エリツイン政権の結果についても、そしてリセットの行方についても、20年にわたって西側はロシアを理解し損ねてきた、と指摘する。今度も多くの論者の見解がその憂き目に遭うのかもしれない。

 ロシアは、米軍が2万人殺しても同じ数の兵士が流入してくるというISを独力で根絶するといった目標は、初めから持ってはいないだろう。中東を舞台に自ら軍事・政治の大冒険をやれるほどその中東を知り尽くしているとは思っていないし、イラクのISにまで攻撃を加える体制にもないはずである。

 何とか体裁の整ったシリア政府の再興(その結果でアサド大統領が退陣してもやむなし)と関係者の和平交渉に持ち込めれば(そして米国のこれまでの政策が誤っていたことを満天下に晒せれば)、それでことは成就するのである。

 換言すれば、民主主義の実現という米国の目標を批判はしても、それに代わる、来るべき中東社会のあるべき姿のロシア独自の像を持ち合わせているのかといえば、恐らくノーだろう。彼らにそれを求めても、返ってくる答えは「Inshallah(インシャ・アラー=すべてアラーの思し召し)」だけかもしれない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45051



シリア強奪に失敗したオバマの企てた謀略が次々と暴露される

2015-11-03 10:12:06 | 資料

アメリカは、シリアに侵略の損害賠償をするべきではないだろうか

2015年11月 2日  マスコミに載らない海外記事

Eric Zuesse
Global Research
2015年10月31日

10月30日、金曜日、アメリカのバラク・オバマ大統領は、シリアはアメリカの国家安全保障に対するいかなる脅威でもなく、いかなる国も侵略していないのに、アメリカ特殊部隊兵士50人を、シリア領土に派兵するつもりだと発表した。実際、シリアは、アメリカ合州国やヨーロッパにも脅威となっているイスラム聖戦士に対して戦っているのだ。

アメリカは、シリアの選挙で選ばれた、欧米同盟国の世論調査でさえ、いまでも大多数のシリア国民に支持されていることを示している大統領を打倒するため、シリア(最初は爆撃で、そして現在は、最初の軍隊によって)を侵略している。 2012年、アル-ヌスラ(シリアのアルカイダ)に資金提供しているアメリカ同盟国のカタール政権が、シリアを調査すべく、世論調査会社を雇った際に判明したのは、55%のシリア国民が、アサドにそのまま大統領でいて欲しいと考えていることだった。更に、2015年9月18日に私が報じた通り、“世論調査では、シリア人は圧倒的にISISはアメリカのせいだと考えていることを示しており”こうした最近の世論調査はギャラップとつながっているイギリス企業によるものだ。

ロシアは、アメリカと対照的に、シリアを全く侵略してはおらず、選挙で選ばれた政権から、侵略をしているイスラム聖戦士や、アメリカ爆撃機に対する防衛戦争を、支援するよう要請されたのだ。そして、ロシアは現在要求された支援を行っている。

シリアを侵略し、世論調査では、いまだ大多数のシリア・スンナ派にさえ支持されているシリアのシーア派大統領を打倒しようとしているスンナ派勢力を支援する、一体どのような権利をアメリカは持っているのだろう? 私は皆無だと思う。結果的に、シリア政府は、アメリカ合州国から損害賠償を要求すべきではあるまいか? そういう要求は一体いつ出されるのだろう? そういう要求は一体どのような出されるのだろう? アメリカ爆撃による、シリア・インフラの損害は既に莫大だ。

アメリカは‘民主主義’を支持していると主張するが、実際は、全体主義でも、神権政治でも、王政でさえない、アサド政権を打倒しようとしている、二つの独裁的な全体主義神権王政と同盟している。もっとも、もし彼の父親が作った政党が、シリアの指導者になるよう彼を選ばなかったら、現在の指導者(バッシャール・アル・アサド)は権力の座についていなかっただろう。しかし、それは、絶対君主制で、支配権が、もっぱら聖職者に依存している、サウジアラビアやカタールとは、決して同じものではない。ところがアメリカは、反アサドで、この両国と同盟しているのだ。

アメリカは、もちろん、サウジアラビアのサウド王家、カタールのサーニー王家というスンナ派の諸王家が、シリアにもスンナ派政権を据えつけ、シリアをカタール(あるいはサーニー家)のガスと、サウジアラビア(具体的には、サルマン王)の石油がEUへ流れるパイプライン経路にするのを支援している。アメリカ合州国がこれを望んでいるのは、アメリカ政府が、ロシアの(非常に人気のある)ウラジーミル・プーチン大統領を大統領の座から無理やり追い出そうとしているからで、それを実現するため、ロシア経済の息の根を止めようとしているのだ。ロシアのヨーロッパへの石油とガス輸出を止めるのは、この戦略の重要な一環だ。

アメリカの狙いは、ロシアがそれで同盟国を失うことになる、破綻したシリア国家だ。そこで、10月13日、ブランドン・ターバヴィルは、“ロシアがISISを爆撃するなか、アメリカはシリアの民間発電所を爆撃”という見出しの記事を書いた。アメリカは、シリアを破壊しようとしている。ロシアはシリアを救おうとしている。そこで、ロシアはISISや他の聖戦士を爆撃しているが、アメリカはシリアのインフラを爆撃している。国を一つにまとめるためのインフラがなければ、破綻国家だが、それが、アメリカの目標だ。

アメリカは、これが狙いだとは発表していない。そうではなく、アメリカは単に、バッシャール・アル“アサド・シリア大統領は辞任すべきだ”あるいは“バッシャール・アサド抜きの新政府”を作るべく“アサド大統領が辞任すべき時は来た”と言うばかりだ。これは、ジョージ・W・ブッシュの“イラクでの政権転覆”というしつこい要求と同じだ。様々な国の指導者を置き換え、こういうことをしていると主張しても、ナチスがニュルンベルクで絞首刑になった戦争犯罪、侵略戦争ではないにせよ、武力侵略という国際犯罪にならない権利を、一体誰がアメリカに与えたのだろう?

一体どういう権限で、アメリカはこうしたことを行っているのだろう? 国際刑事裁判所は、一体なぜ公式に(大いに公式に)これを調査しようとしないのだろう?

掲載するようお送りしたのに、そのどれも掲載されなかった、私のニュース報道や解説を受け取ったアメリカのニュース編集者(100人以上だ)の一人でも、是非とも、各自のニュース報道で、公にこの疑問に答えていただけないだろうか? 私はここで各編集者の方々に問いたい。もしもアメリカが、こういうことをする権利を有しているとお考えであれば、公開で、一体なぜなのかをご説明いただけるだろうか?

あるいは、もし説明頂けないのであれは、読者なり視聴者なりの方々に、この疑問をお考え頂けるよう、この疑問を呈しているこの記事を是非掲載してもらえるだろうか?

この記事は、事実上、全てのアメリカ報道機関に送付されている。いずれかが掲載してくれるか、あるいは、彼らが一体なぜアメリカのシリア侵略を支持するのかを説明してくれるかどうか、見ようではないか。

調査ジャーナリスト、歴史研究者のEric Zuesseは、新刊「彼らは全然違う: 民主党対 共和党の経済実績、1910-2010」および「キリストの腹話術師:キリスト教を生み出したイベント」と「封建主義、ファシズム、リバタリアニズムと経済学」の著者

本記事の最初の発表元はGlobal Research

記事原文のurl:http://www.globalresearch.ca/shouldnt-the-u-s-compensate-syria-for-invading/5485716

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-1a3c.html

◆オバマのシリア強奪が生み出す難民たち

http://blog.goo.ne.jp/yamanooyaji0220/e/47fc645e7f170eee472e254093ce97bc

シリアの内戦は宗教を巡る戦いではない。

シリアへの外国の介入は、シリアでの反乱開始の数年前に始まった。ウイキリークスは、内戦を引き起こして、シリア政府を打倒するというアメリカの計画と、こうした命令を、テル・アビブから直接受けていることを明らかにするアメリカ国務省の2006年の漏洩電報を公表した。この漏洩は、サウジアラビア、トルコや、カタールや、エジプトの様な国々とのアメリカの協力関係同盟が、スンニ派と、シーア派の分裂を利用して、シリアを分割し、イランとヒズボラを弱体化する為、シリアを不安定化させるのに、宗派心を利用するためであることを暴露している。イスラエルも、ゴラン高原占領を拡張する石油採掘を増加する為、この危機を利用しようとしていることが明らかにされた。

2012年シリア人でないCIAとつながる何百もの武装反政府集団がシリアに押し寄せ、シリア全土を、アメリカ合州国、イギリス、フランス、カタール、サウジアラビアやトルコが、反政府派を組織し、武器を与え、資金供給して、自由シリア軍を形成する好機に飛びついたことが明らかになった。(わずか数カ月前、ウイキリークスが、サウジアラビアの諜報情報を公開し、2012年以来、トルコ、カタールとサウジアラビアが、シリア政府を打ち倒すべく、反政府派に武器を与え、資金を提供するのに協力して動いていたことをあきらかにした。)

◆深刻化する米欧の亀裂

2015年10月14日  岡崎研究所 WEDGE Infinity

9月8日付の米フォーリン・アフェアーズ誌のサイトで、米サウス・カロライナ大学のKonrad H. Jarausch教授が、近年の米欧間には齟齬が累積しているので、関係緊密化への努力が必要である、と説いています。

 すなわち、米欧間は一見、うまくいっているように見える。相互の観光客、留学生は多いし、貿易額も伸びている。しかしその陰で、米欧は相互に欲求不満を感じている。西欧はオバマ政権のパフォーマンスに不満であり、米国は西欧諸国の動きの鈍さに苛立っている。これらの不満は、この数十年にわたって累積されてきたものである。

 現下の摩擦要因としては、TTIP交渉が停滞していること、米諜報機関が西欧諸国指導者を盗聴していたこと、他方米国には西欧諸国がギリシャ救済に吝嗇すぎるように見えることなど、そしてより基本的には、オバマ政権がアジア、アフリカの方を重視する姿勢を示したこと、米国社会の多民族化が進行して西欧に祖先を持つ者の比率が減少したこと、一方西欧の方では保護者面をする米国を煙たがっていることがある。

 西欧諸国がシリアやウクライナについて、軍事介入より政治的な解決を好むことも、米欧間の齟齬の一因である。また移民社会の米国は個人主義を前面に出すのに対して、西欧は社会保障を重視することも、齟齬の一因である。米国での銃砲の横溢や囚人の数の多さ、そして格差の大きさも西欧人の反感を買う。

 米国は「9.11」のテロ事件以降、PATRIOT法を採択して個人の権利を一部制限する動きに出ているが、西欧ではナチズムや共産主義の悪夢から生じたプライバシーを守ろうとする意識が強く、インターネットでの「忘れられる権利」を提唱したりしている。

 しかし、米欧は世界最大の経済関係を有する他、双方とも勤勉さや所有権保護という価値観を共有する。米欧の協力は、ウクライナ問題、プーチンの攻勢への対処、地球温暖化問題、イランの核兵器開発防止、そして移民問題の解決などにおいて、重要な意味を持っている。

 今や米欧間対話を活発化させるべき時である。双方の有識者は、21世紀の人権とはどのようなものであるべきか、自国民の人権だけでなく他国の人間の人権まで気にかけなければいけないのか等、議論すべきである。また、米国における欧州研究、欧州における米国研究は促進されなければならない。

 米欧は利害と価値観を共有している。双方は、協力して、世界の諸問題を解決しなければならない。双方の未来はその努力にかかっている、と述べています。

出 典:Konrad H. Jarausch ‘The Divisions that Damage the U.S.–EU Relationship’(Foreign Affairs, September 8, 2015)
https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2015-09-08/continental-drift

* * *

 普段、日本人はあまり意識しませんが、緊密な米欧関係は、世界の安全、繁栄、そして近代的価値観の維持のために最も重要な要素です。来年のG7首脳会議の議長国として、日本は、理念を固めておく必要があり、この論文は頭の整理に有用です。

 米欧同盟(NATO)は、欧州における米軍のプレゼンスを通じて、欧州の安全保障を担ってきました。米欧同盟はまた、産業革命後の近代文明・価値観を体現するものでもあります。そして、米欧同盟が瓦解すれば、米国の超大国としての立場は失われ、世界の政治・経済体制は戦前と同様の流動的状態に陥るでしょう。

 冷戦が終結し、ソ連が崩壊し、ドイツが再統一したことで、欧州の「へそ」とも称し得るドイツには、選択の余地が出てきました。在独米軍に撤退を求め、ロシア、中国と関係を深めて地域覇権を確立することも可能になってきたからです。メルケル政権は「NATO、EUの一員としてのドイツ」という立場を堅持していますが。

 他方、米国もNATOの決定はコンセンサスを要することに業を煮やし、アジアと同様、二国間ベースの安保取決めをバルト諸国、中東欧諸国と結び始めています。これら諸国にとっては、ロシアが未だ安全保障上の脅威だからです。

 日本にとっては、米欧関係が瓦解して米国が孤立し、世界の体制が流動化するより、米欧結束が維持され、グローバルなルールが保持されている方が利益にかないます。自由、民主主義、市場経済などの近代の価値観も、日本の社会に適合したものだと思います。

 米欧関係はすぐどうこうという状態にはありませんが、来年のG7首脳会議では先進国経済の底堅さを確認するとともに、この論文の言う「21世紀の人権」について意識の摺り合わせを行い、それによって日米欧の結束を固めることができれば、日本外交にとって得点となるでしょう。途上国の人権向上については、「民主派」に資金援助をするよりも、経済開発を助けることでその国の中産階級の比率を増加させるのが王道でしょう。日本のこれまでのODA・直接投資は、いくつかの国でまさにそのような効果を生んできました。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5447

◆Times:シリアを救えるチャンスは米国よりロシアに大きい

2015年10月19日  Sputnik 日本

ロシアはシリアのアサド大統領を支援することにより、シリア紛争に終止符を打ち、難民の流れを止めることが出来るかもしれない。ワシントンタイムズの社説にそう記された。

同紙には次のようにある。
オバマ大統領が欧州諸国首脳とともに手をこまねいて、緊張した眼差しで状況を注視している一方、プーチン大統領は、アサド大統領支援を通じて、状況を変え、紛争に終止符を打ち、シリア人も自国にとどまるようになるかも知れない。
ロシアはシリア作戦を開始し、米国の不決断によって形成された中東における政治的空白を補填する固い決意を示した。ロシアの行動は、多数のシリア難民に過激派が紛れているかもしれない、との恐れに基づくものだ。シリアとロシアの距離はシリアとドイツの距離の半分だ。

なぜ米国はロシアと協力してテロと戦わないのか
© SPUTNIK/ ALEXEY NIKOLSKY

なぜ米国はロシアと協力してテロと戦わないのか
自国の国益に対する冷たい打算を根拠に行動するプーチン氏がシリア紛争に終止符を打つというのは現代のパラドックスである。これは、局外にとどまったままロシアが中東の尻拭いを買って出たことを不承不承首肯するだけの米国の「平和な大統領」の理解を超えることだ。
米紙は以上のように記した。

http://jp.sputniknews.com/politics/20151019/1049496.html

◆アフガニスタンの泥沼にはまり込んだオバマ大統領
出口の見えない辛い旅路

2015.10.20  Financial Times   JB PRESS
(2015年10月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

アフガニスタンの首都カブールで撮影された治安部隊〔AFPBB News〕

 故リチャード・ホルブルック氏によると、バラク・オバマ大統領はアフガニスタンについて議論する際にベトナム戦争に言及することを一切禁じた。オバマ氏の「アフパック*1」特別代表として2010年に仕事中に倒れて死去したホルブルック氏は、米HBOの感動的なドキュメンタリー番組「ザ・ディプロマット」で墓場から戻ってくる。

 来月の初公開は、時折あるタイミングの皮肉だ。ホルブルック氏は、オバマ氏が決めたアフガニスタンへの期限付き米軍増派はうまくいかないと明言していた。

 国を安定させるには、米軍駐留の期間が短すぎ、部隊が手を広げすぎることになる、というのがその理由だった。ホワイトハウスはホルブルック氏を排斥した。

 ところが先週、オバマ氏は暗黙のうちにホルブルック氏の主張を認めた。米軍はオバマ氏の大統領の任期が終わった後もアフガニスタンに残ることになった。これがどこで終わるのかは誰にも分からない。

ベトナム戦争との類似点

 ベトナム戦争との対比は大げさかもしれない。1968年のベトナム戦争のピーク時には、米国は50万人以上の兵士をベトナムに配備していた。一方、アフガニスタンには現在9万8000人の米兵が駐留しており、オバマ氏はほぼ来年いっぱい、この水準を維持する構えだ。ベトナムで6万人近い米兵が命を落としたのに対し、アフガニスタンでの死者数はこれまでで2500人足らずだ。

 だが、厄介な類似点もある。サイゴンでは、カブールと同様、米国はゲリラ戦を繰り広げる一途な敵を相手に、成果を出せない文民政権を支えるのに苦労した。アシュラフ・ガニ大統領率いるアフガニスタン政府は、前任のハーミド・カルザイ氏の政府ほど腐敗していないかもしれないし、腐敗の度合いでは、サイゴンで米国が支援した歴代指導者よりはるかにましかもしれない。

 だが、いまだに、言及に値するようなアフガニスタン空軍は存在しない。一方、米国が訓練を施したアフガニスタン軍では、相変わらず任務放棄が多発している。誰もタリバンを訓練していないのに、タリバンはアフガン全土で領土を奪還し続けている。

*1=AfPakはアフガニスタンとパキスタンを合わせた造語。米国の外交政策関係者の間で使われ、両国を1つの作戦区域として指す言葉

 それ以上に重要なのは、オバマ氏の新計画に確かな終盤戦のプランがないことだ。この頭痛の種は、オバマ氏の後継者に受け継がれることになる。ベトナムとの類似点が最も著しいのは、ここだ。

 ホルブルック氏がキャリアのスタートを切ったのは、南ベトナムだった。

 押しの強い若手外交官だった同氏が上司らに言い続けたように、米国は、何千人もの人命喪失は国益によって正当化されないということを理解するのを拒んだ。

 外国勢力、特にソ連と中国がベトコンの反乱を煽るのを食い止めない限り、米国は負ける、と同氏は主張した。

 同じことがアフガニスタンにも当てはまる。パキスタンを正真正銘のパートナーに変える計画がなければ、それが書かれた紙より価値のあるアフガン戦略は存在しない。ホルブルック氏は、自分の仕事は両国を含んでおり、アフパックには均等に重点が置かれなければならないと主張した。オバマ氏は15日の演説で、アフガニスタンを28回引き合いに出した。これに対し、パキスタンに言及したのは2度だった。

アフガニスタンは新たなシリアと化すのか

 では、この最新のアフガン計画はなぜ、過去の計画より大きなインパクトを与えるのか。与えない、というのがその答えだ。最新の計画はそもそも、そのように意図されていない。オバマ氏の部分的な方針転換は、14年間の米軍駐留のひどく脆い成果を支えることを目指している。大統領の決断は、米軍の司令官、特にアフガニスタン駐留米軍トップのジョン・キャンベル司令官の圧力を受けたものだった。

 キャンベル司令官は今月米議会で、タリバンが支配領土を拡張していると述べた。

 また、アフガニスタンで急速にフランチャイズ組織を広めている「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」を撃退するために、イランが今、タリバンに資金を供給していることを示す証拠もある。そうなると、イランは味方なのか、敵なのか。これは答えるのが難しい問題だ。

 それが何であれ、アフガニスタンは新たなシリアと化す恐れがある。ただし、1つ異なる点は、ここに地上部隊を派遣しているのが、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアではなく米国だということだ。

3つの教訓

 アフガニスタンはオバマ大統領に厳しい教訓をいくつか与えた。1つ目は、アフガニスタンは米国の政治的な思惑に一切配慮しないということだ。オバマ氏は、アフガニスタンとイラクでの戦争を終わらせるという公約に基づいて政権の座を手に入れた。米軍の兵士は全員帰国すると約束していた。先週、大統領はこの公約を撤回し、勇気を見せた。オバマ氏が退任する時、アフガン、イラク両国に数千人の米兵がいることになる。

 イラク、アフガン両政府の脆さ、および双方を脅かすイスラム過激派の強さを考えると、次期大統領もオバマ氏の約束を果たすことはないだろう。

 オバマ氏の大統領在任期間はむしろ、イスラム主義との世代的闘争における――善意から出たとはいえ――混乱した小休止として記憶される可能性が高い。

 第2に、アフガニスタンは大部分において、問題の症状にすぎない。パキスタンは、それよりはるかに大きな問題だ。オバマ氏は今週、パキスタンのナワズ・シャリフ首相と会談する。パキスタンは相変わらず複雑怪奇だ。一方では、パキスタンは自らが生み出したタリバンというフランケンシュタインの犠牲者と化した。昨年のペシャワルの軍営学校に対する野蛮な襲撃事件が1つの転換点となった。

 その一方で、シャリフ氏の率いる文民政権は依然、パキスタン軍の掌中にあり、その軍部はシャリフ氏の場当たり的な実績に苛立ちを募らせている。パキスタン軍はまだ国家内国家だ。パキスタンの軍部は、国内ではイスラム主義勢力にあまり寛容ではないかもしれないが、アフガニスタンではいまだに「戦略的縦深性」に固執している。

 パキスタン軍がアフガニスタンのタリバンへの支援をやめたと考える人は誰もいない。オバマ氏には、パキスタン情勢を変える計画がない。そんな計画は誰も持っていない。その間にも、パキスタンは核兵器の生産を増強している。これが1面のニュースになっていないということ自体、気がかりなことだ。

 第3に、ホルブルック氏の歴史的な対比は筋が通っている。ベトナム戦争の教訓は今日的な意味を持っている。2001年以降のアフガニスタンから得られる教訓も同様だ。「どんなことも可能に思えた、タリバンが去った後の黄金期に、米国は我々がここで何をしているのか説明しなかった」。ホルブルック氏は映画の中でこう語る。

 米政府はまだこれをはっきり説明していない。米軍が引き続き、決断を主導している。タリバンは勢力圏を拡大している。そして米国の指導者たちは依然、自分たちがコントロールする力をほとんど持たない出来事に翻弄されているのだ。

By Edward Luce
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45034

◆米国が、友好国へのスパイを止めるはずがなかった!?

2015-10-25 世界のメディア・ニュース

AFPは2015年10月25日に、ドイツのニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)は2015年10月24日に、NSA(National Security Agency/米国家安全保障局)が関与した新たなスパイ活動が行われていた疑いがあるとして、ドイツ連邦検察庁が捜査を開始したと伝えた。

http://time-az.com/main/detail/52868

シュピーゲルによると、捜査対象は「諜報活動」に関してこれまで知られていなかった複数の人物で、「レジン(Regin)」と呼ばれるスパイ・ウイルスに感染していたとされ、ドイツ首相府高官の個人用ノートパソコンが捜査の焦点になっていると報告している。

気の小さな米国が、むやみやたらに盗聴し、スパイをすることを止めるなどと考えていなかった。
とくに、スパイで経済復興していた米国が、スパイを止めたら、第2の平成経済大恐慌が起こる。

レジンは「トロイの木馬(Trojan Horse)」タイプのマルウエア(悪意のあるソフトウエア)で、昨年高官のノートパソコンで発見された。
これを使用すると、コンピュータに入力された全てのデータを監視し、感染させた当事者にデータを転送できるようになるという。

http://blog.goo.ne.jp/jiten4u/e/da22d21dcea865d5fdd5f48b6532c5db

◆TPP、大筋合意でも実効されない可能性大 大国・米国の自己都合

2015.10.27   小倉正行  Business Journal

 10月5日まで会期を延長したTPP閣僚会合(米国アトランタ)は、難題のバイオ医薬品のデータ保護期間や乳製品、自動車の原産地規則について合意が得られたとして、大筋合意の記者会見を行って終了した。
 今回の大筋合意によりTPP交渉は基本的には終了し、舞台は米国政府による米国議会への通告3カ月後の、早くても1月20日以降に予定される加盟12カ国による正式調印と、各国の議会承認手続きに移ることになる。
 TPPは条約なので、基本的には、加盟国のすべての議会で承認されて初めて発効することになる。ただし、議会承認国の合計GDPが加盟国全体の85%を上回った場合は、その時点で発効するとの規定が盛り込まれており、日米含めて6カ国で承認されれば成立するという異例の条約となっている。逆にいえば、GDPが1国のみで15%を超えている米国と日本のどちらかで承認がなされなければ、TPPは発効しないことになる。

米国議会

 なかでももっとも注視されているのが、米国議会で承認されるかどうかという点である。

 10月20日現在、米国政府から米国議会に対してTPP合意の通知はなく、TPP協定調印は前述のとおり来年1月20日以降となる。そのため、米国議会での審議開始は、協定調印から2カ月後の3月20日以降になる。

 米国議会は来年1月から始まるが、2月1日からは大統領選挙の予備選挙(アイオワ州党員集会)が始まり、3月1日がスーパーチューズデー、3月15日がオハイオ州、フロリダ州予備選挙と大統領予備選挙が最高潮に達し、その後も予備選挙は6月まで続き、7月18日〜21日の共和党全国党大会、7月25日からの民主党全国党大会での正副大統領候補決定と続くのである。

 また、大統領選挙と同時に、米国議会下院議員選挙(全員)と米国議会上院議員選挙(定数の3分の1改選)も同時に行われる。米国議会では、選挙期間中は休会となり、それは「レームダック会期」(Lame Duck Sessions of Congress)と呼ばれ、1980年代から現在に至るまで続いている。そのため、2月から始まる予備選挙から11月までの大統領選出まで、議会は開会されていても事実上の休会状態になるのが通例である。

 つまり、TPPは調印をしても米国議会での承認手続きが進行しない可能性が高い。仮に大統領選挙を無視して無理やり議会承認手続きに入ったとしても、今回のバイオ医薬品のデータ保護期間の問題については、米国医薬品多国籍企業は当初から保護期間12年を要求しており、今回の「実質8年」という合意内容に不満を持っている。これらの企業は議会に対して強い影響力を持っているだけに、議会の承認手続きが難航することが予想されている。

カナダでは早くも批准難航

 また、米国議会は今回のTPP交渉について、議会の一括承認手続きを定めているTPA法案を6月の上下両院で可決したが、それも賛否ギリギリで可決しただけでなく、議会が内容上問題があると判断したときは否認することができるという規定が盛り込まれたのである。それだけに、議会で否認されたならば、TPPは最大の推進国である米国が条約承認できないことになる。TPP承認が大統領選挙後になるか、否認されるか、いずれにせよTPPは発効できないまま推移する可能性があるのである。

 民主党の大統領候補を争っているクリントン元国務長官は、TPP反対を表明した。また、対する共和党も自由貿易推進政党であり、いずれの政党の大統領が選出されても、大筋合意のTPPをそのまま受け入れるかどうかも疑問である。
 
 10月19日投票のカナダ総選挙も、その結果はTPP大筋合意を受け入れたハーパー首相率いる与党保守党が敗北し、自由党との政権交代という事態になった。これで、カナダにおけるTPP批准も難航することが想定されている。
 TPPの前途には、暗雲が垂れ込めているのである。
(文=小倉正行/ライター)

http://biz-journal.jp/2015/10/post_12114.html

◆ISの最重要スポンサーは麻薬マフィア、しかし「金づる」は他にも

2015年11月01日  Sputnik 日本

テロ組織「イスラム国(IS)」による石油の密売を米国は阻止できていない。リア・ノーヴォスチの取材に応え、テロ組織の資金調達法に詳しいノートルダム大(インディアナ州)の法学教授ジミー・ギュルレ氏が述べた。

「先週、米国務省は、ISがいかにして闇市場に石油を販売しているかについての情報に対し、500万ドルの懸賞金をかけた。これすなわち、米国はISによるグローバル規模の石油売却・輸送がどうやって行われているのか、よく分かっていないということだ。仲介者の存在や、犯罪組織の暗躍が示唆されているが、具体的に誰が仲介役を担っているのかについては依然よく分かっていない」とギュルレ氏。

ISの「ドル箱」原油取引、米らの空爆でも被害なし

イラン紙「イラン・プレス」編集長エマド・アブシェナス氏は500万ドルの懸賞金を受け取るチャンスがあるかも知れない。スプートニクのインタビューに応えた中で、氏はISの石油売却先を明確に名指ししてみせた。

「ISの活動は世界的石油安の主因の一つである。テロ組織はトルコ、ヨルダンの闇ブローカーに国際標準の半額という安値で石油を販売している。トルコにはそうした石油を今度はイスラエルに転売する業者がいる。この3カ国の石油密売人らが石油を第3国に不法に売却する。しかし、ISによる石油密売が最も盛んに行なわれているのは、やはりトルコである」。

ISの石油密売ルートはトルコ領内、元CIA職員の判断

米国の専門家らによれば、ISは毎日5万バレルの石油を売却し、年間5億ドルの利益を上げている。
ISはさらに大きな、年間10億ドルという利益を、自らの支配領域における麻薬輸送の通行料という形で上げている。麻薬マフィアこそがISの最重要スポンサーなのだ。これはロシア麻薬流通監督庁長官ヴィクトル・イワノフ氏が、28日開かれた中央アジア麻薬取締4者会議で語ったことだ。支配領域における麻薬輸送の規模について、イラン紙「イラン・プレス」編集長エマド・アブシェナス氏は次のように述べた。

「ISの支配領域では、麻薬販売は日常茶飯事だ。またIS戦闘員は強い向精神薬を常用している。つい最近も嘆かわしい事件があった。レバノンでサウジアラビアの王子たちが逮捕された。IS戦闘員らに売却し、拡散させるために、カプトゴンと呼ばれる麻薬を密輸しようとしたのだ。ISが得られた資金で新たな犯罪を行っただろうことは疑いない」。

アブシェナス氏も指摘する通り、ISは国際法に違反する様々な手段で収入を得ようとしている。文化財の不法売却もそのひとつだ。

ユネスコによれば、シリアでは文化財の組織的強奪が行われている。博物館から文化財が持ち出され、闇市場に売却されているという。

ロシアによるシリアでの対「IS」空爆開始後 アフガンに戦闘員押し寄せる

「シリアの文化財の売却から得られる莫大な利益がイスラム過激派に流入している。彼らはその金で、武器や装備を買い、戦闘員に給料を支払っている」。「ロシア新聞」の取材に応え、ユネスコのイリーナ・ボコワ事務局長が述べた。ユネスコは今後もISによるシリア文化財の密売という問題に取り組む、とボコワ氏。
エマド・アブシェナス氏はスプートニクの取材に応え、組織の結成にあたってISがどこから資金を得ていたのかについて、次のように述べた。

「ISという組織はアルカイダの一部が分離独立するという形で形成された。また、イラク戦争の経験者や、フセイン時代のバース党支持者、さらにはフセイン政権陥落後に形成されたイラク反体制派内のスンニ派アラブ人もそこに加わっていた。従って、フセイン時代から蓄えられた一定の活動資金が、当初からこのグループにはあったのだ。ほかにも、アルカイダからの資金援助もあったし、さらには、ペルシャ湾岸の一部アラブ国家からの資金援助もあった」。

もっとも、ペルシャ湾岸諸国が今もISを直接的に支援しているかどうかは断言できない。湾岸諸国は国内不一致を来しており、指導者層も一枚岩ではないからだ。

IS誕生については米国も一定の役割を果たしていた、と言われる。一年前のことだが、トルコ誌「ラジカル」の取材に応じ、CIAの上級分析官グラム・フラー氏は、「何も米国がIS創設を企んだわけではないが、中東への介入とイラク戦争による不安定化がIS誕生の要因になった」と述べている。

パキスタンにもISを間接的に米国が支援しているとする声がある。今年のはじめ、パキスタンにおけるISの幹部とされるユザフ・アル・サラフィなる人物がラホールで逮捕された。「尋問でサラフィ氏は、米国経由の資金で青年のリクルートを行い、またシリアにおける軍事行動を行っていた、と述べた」と当時、パキスタン紙「ザ・エクスプレス・トリビューン」が匿名情報として報じた。その消息筋は、さらに、「米国はいつもISの活動を非難するが、自国から同組織へ資金が流れることを止めようとしない」と語った。

http://jp.sputniknews.com/opinion/20151101/1106167.html#ixzz3qHDJdeXt

誰が考えてもISISに石油の生産や精製が出来るわけがない。

中東の石油産業を支配してきたアメリカがその気になれば、ISISが石油を生産、精製、輸送、販売することは不可能に近い。ISISの販売を請け負っている会社はARAMCO、つまりSOCAL(スタンダード石油カリフォルニア)、テキサコ、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー、ソコニー・バキューム(後のモービル)が出資している巨大企業だと言われ、トルコやイスラエルも輸送や販売に協力していると伝えられている。


窮地のアンゲラ・メルケル首相 

2015-10-29 11:25:32 | 資料

ドイツ:難民危機が揺さぶるメルケル首相のイス
シリア難民への門戸開放が生んだ軋轢、欧州最強の指導者に正念場

2015.10.29  Financial Times  JB PRESS
(2015年10月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

欧州最強の指導者の座を固めたドイツのアンゲラ・メルケル首相(右)。難民危機への対応が命取りになる可能性が出てきた〔AFPBB News〕

 支持者から深く慕われるのが普通であるだけに、ドイツ東部の町シュクロイディッツで先日開かれた地方党大会はアンゲラ・メルケル首相にとってまさに衝撃的だった。

 メルケル氏の率いる保守政党・キリスト教民主同盟(CDU)の党員たちが、難民に「門戸を開く」同氏の政策をこれ以上ない厳しい言葉で非難したのだ。

 「どんな人が来るのか分からない」。集まった忠実な支持者1000人の前である代議員が発言した。「何人来るのかも分からない。すでに何人来ているのかも分からない」

 メルケル氏のリーダーシップを批判する参加者もいた。ある代議員は次のように言い切った。「『あんな首相はもう支持できない』と私に言ってくる市民がますます増えている」

 一方、メルケル氏が「これは私が首相として直面する最も大きな課題である。状況が厳しいことは承知しているが、私はあきらめない」と語り、「難民歓迎」の方針を貫くと誓うのを耳にして喝采を送る人もいた。

 しかし、シュクロイディッツで見た風景のうち脳裏にこびりついて離れなかったのは、次のような文句が書かれたプラカードだった。「難民による混乱を止めよ、メルケルは退陣せよ」

欧州最強の指導者に前例のない逆風

 欧州最強の指導者にそんな侮蔑の言葉が投げかけられたという話は、これまで聞いたことがない。だが同時に、この難民危機自体も過去に例のない規模になっている。

 問題を小さく切り分けることで知られるメルケル氏は、自身にとって最大の難問に真正面から取り組んでいるが、事態を収拾できるかどうかは誰にも分からない。何しろ、押し寄せてくる亡命申請者の数は1日当たりで最大1万人に達しており、その合計は昨年の実績の5倍超に当たる100万人の大台をも突破しそうなのだ。流入は2016年になっても続くだろう。

 メルケル氏から見れば、最近行われたほかの地方党大会はシュクロイディッツのそれよりもはるかに順調に進んでいた。しかし、難民の流入ペースを遅くしたり、党内で強まる反対論を抑え込んだり、加速する支持率の低下を食い止めて反転上昇させたりする時間はあまりない。

 「今がメルケルの正念場だ」。マインツ大学のユルゲン・ファルター教授(政治学)はこう指摘する。「彼女には国民から信頼されているという大きなバッファー(緩衝材)があるが、それも縮小しつつある」

 懸念はほかの欧州連合(EU)加盟国にも広がっており、メルケル氏の難民政策を批判する向きは、ドイツ国内でのメルケル批判を見聞きして意を強くしている。ベルリン選出のある国会議員は、EUにはメルケル氏の苦境を見て喜ぶ人もいると話している。

 メルケルの退陣後はどうなるのかという話も、今となってはばかげているとは言えないようだ。高級紙「フランクフルター・アルゲマイネ」の政治担当エディター、ギュンター・バナース氏は言う。「政策に対する疑問から、首相としての能力についての疑問へと話が発展している。それ以上のところにはまだ進んでいないが、絶対に進まないとは言えない」

 61歳のメルケル氏はもう10年近く首相の座にあり、その間にかなりの量の政治資本を蓄積している。ユーロ圏への脅威を乗り越え、経済成長を維持し、かつ外国から忍び寄る危険を回避してきた実績は国民から評価されている。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナを侵攻して欧州の安定を揺さぶった時には、EUにおけるメルケル氏の中心的な役割が強化された。前回のギリシャ救済にあたって見せた非情なスタンスは国外で批判を招いたものの、ドイツ国内では受け入れられている。

 しかし、CDUとその姉妹政党でバイエルン州を本拠地とするキリスト教社会同盟(CSU)の支持率は下がっている。調査会社INSAの最新の調べによると、保守のCDU・CSUの支持率はこの夏以来7ポイント低下し、2012年以来の低さになっている。とはいえ、下がる前の支持率は42%と高かった。国会議員の任期半ばの与党の支持率としては、なかなか見られない高水準だ。

ドイツ南部ミュンヘンにある列車の駅に到着した、アンゲラ・メルケル独首相の写真を持つ難民〔AFPBB News〕

道義的信念に駆り立てられて

 難民危機は想定外の出来事だった。その勢いに圧倒された現地当局の職員らが助けを求め始めた8月の終わりごろには、首相の通常の対応――慎重さ――ではもう間に合わなくなっていた。

 メルケル氏は、ドイツはすべてのシリア難民を受け入れると表明し、シリアからやってきた亡命申請者を最初に入ったEU加盟国(普通はギリシャ)に送還する権利の行使も一時見合わせると発表して欧州諸国を驚かせた。

 メルケル氏はこれと同時に、申請を認められなかった亡命希望者の送還手続きを厳格にする計画も打ち出した。しかし、メディアが大きく取り上げたのは「シリア人歓迎」の約束であり、さらに多くの難民がドイツに押し寄せることになった。

 政界の盟友たちによれば、メルケル氏は道義的信念に駆り立てられ、難民を助けようという大勢のドイツ人ボランティアの姿にも心を打たれ、教会の指導者からドイツ最大の販売部数を誇る大衆紙「ビルト」に至るいろいろな人や組織に励まされたという。

 また評論家たちは、ドイツがユーロ圏危機で見せた厳格な現場監督のような顔ではなく優しい顔を見せるチャンスを、そしてナチスの過去からさらに遠ざかるチャンスをメルケル氏は恐らく見いだしたのだろうとの見方を示した。

背後には現実的な計算も

 しかし、メルケル氏の対応は現実を見据えたものでもあった。同氏はほかの対策――国境で難民の流入を制限する――のは実際的なやり方ではないと素早く結論づけていた。警備隊が武力を使うことは、最後の手段としても認めるわけにはいかなかった。だが、武力を使えないとしたら、どうすれば人々の流入を止めることができるのだろうか。「あれは計算だった」。ある政府高官はそう打ち明ける。

 メルケル氏の対応は、集中的な外交努力を中心に行われている。まずシリアでの和平を要求し、トルコには人々の流出を制限するよう圧力をかけている。EUと非EU加盟国との国境管理強化を望み、難民の影響を比較的受けていないEU加盟国には難民受け入れの拡大と、ドイツやオーストリア、スウェーデンなどが多めに被っている負担の共有を促している。

 メルケル氏はこうした施策の助けになるように、亡命申請者に支給する現金の額を制限するという緊急策も講じている。手続きの速度向上と亡命を認められなかった人々の送還の迅速化にも努めている。しかし、まだ人数を減らすには至っていない。新しい国内ルールが適用できるか否かは、記録的な数に達している難民を急かされながらさばく職員の能力に決定的に依存している。

 国外に目を向ければ、シリアはまだ戦争状態にあり、トルコはわざとぐずぐずしている。欧州に突きつけた経済支援要求にドイツとEUがなかなかイエスと言わないからだ。一方、東欧諸国は、難民を再配分する計画に反対の声を上げている。

 そんなことをしている間にも、亡命を希望する人々は次々にやって来る。支援提供の最前線に当たる地方の議会は困窮している。リベラル派さえ反対の声を上げる始末だ。

欧州を目指して海を渡る難民、移民は後を絶たない(写真は10月27日、ギリシャのレスボス島に到着した少年たち)〔AFPBB News〕

 バーデン・ビュルテンベルク州テュービンゲン市のボリス・パルマー市長(緑の党所属)は、フェイスブックにこう記している。

 「もしこの状況が続けば、ドイツの人口は今後12カ月の間に365万人増えることになる。申し訳ないが、それを認めることはできない。政府は行動を起こさなければならない・・・さもなければ、社会の秩序が崩れてしまうだろう」

 多くのドイツ国民は、自分たちのアイデンティティーが脅かされると懸念している。この国は1980年代から、つまりドイツは移民に門戸を閉ざしていると国民が思っていた時代から大変な変化を遂げてきた。

 この国では労働力人口の高齢化が進んでおり、これを若返らせるために若い人々を必要としていたし、ベルリンの壁が崩れた後には東欧からの移民も入ってきたことから、国は大きく変わった。

 今日では国民の5分の1が、移民の第1世代か第2世代で占められている。

アイデンティティーの危機

 この多様性を称賛する人たちでさえ、その規模には耐えられないと感じている。CDUに所属し、ドイツ議会外交委員会の委員長を務めるノルベルト・レトゲン氏は言う。「これは基盤に影響を与える。国家と我々のアイデンティティーの問題だ。多くの人は、両方が脅かされていると思っている」

 それと同時に、政治的な右派が勢力を伸ばしている。党内の分裂にもかかわらず、超保守派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は世論調査で全国的な支持率が8.5%と過去最高をつけ、2013年の選挙当時の4.7%から大きく伸長している。

 ドイツ西部より反移民感情がずっと強い元共産圏のドイツ東部では、同党の支持率は12%に上っている。

10月19日、ドレスデンでデモ集会を開く、移民受け入れに反対する団体「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(PEGIDA)」の支持者ら〔AFPBB News〕

 東部の街ドレスデンのポピュリズム運動で、定期集会に何千人もの参加者を引き寄せる「ペギーダ(PEGIDA)」は今月、強制収容所がもう機能していないのが残念だと述べた講演者を集会に招いた。

 さらに悪いことに、外国人嫌いの暴力が広がっている。今年に入ってから難民収容施設に対する襲撃事件が500件あり、2014年に通年で記録された170件の2倍以上に上っている。メルケル氏の盟友のトマス・デメジエール内相は「危ない急進化」について警鐘を鳴らした。

 こうした出来事を打ち消しているのが、ボランティアのネットワークに支えられ、難民を支援するために時間外労働をこなす何千人もの公務員たちだ。多くのドイツ人は、危機がドイツの一番いいところを引き出していると考えている。だが、そう思っている人でさえ、この状況がどれほど続き得るのか自問している。

 1991年に反移民暴動が起きたが、今では難民を受け入れているドイツ東部の街ホイエルスヴェルダのトマス・デリン副市長は「短期的にもっと大勢の人を受け入れるのは難しい」と言う。

 政府はことの緊急性を理解しており、年末までに難民の流入を減らしたいと考えている。CDU・CSU連合の議員らは、首相はこの約束を果たすのに「数カ月ではなく、数週間」の時間しかないと話している。

 左に目を向けると、メルケル氏が直面する困難は少ない。連立相手の社会民主党(SPD)と、議会の野党勢力である緑の党と極左の左派党はそろって、首相の開放的アプローチを支持している。問題は右側だ。

 保守派の有権者からの圧力とAfDの台頭の圧力にさらされ、CDUとCSUの議員の間では、政策変更、さらには180度の方針転換さえ求める人が増えている。

 批判が最も明白なのがCSUだ。ホルスト・ゼーホーファー党首の下で新しい国境管理を求める圧力が奏功しており、メルケル氏は国境中継施設を設置するというCSU主導の提案を支持している。難民手続きを現在のようにドイツ国内ではなく、国境で行えるようにする仕組みだ。

 もっと攻撃的に首相を批判する向きは、首相はさらに踏み込み、移住者が中継地帯を迂回するのを食い止めるためにフェンスを設置しなければならないと主張している。

 だが、そうした人でさえ、国境警備隊が武力を使ってはならないのだとしたら、どうやってフェンスを守るのか説明するのをためらっている。

 政治調査会社テネオ・インテリジェンスは、批判派にある程度譲歩するメルケル氏の戦略と中東外交が「やがて首相の支持率を安定させる助けになる可能性は十分ある」と言う。しかし、配下の議員たちは待てるだろうか。最近の世論調査での支持率低下が2017年の次回選挙で繰り返されたら、CDU・CSU連合の311人の議員のうち60人前後が議席を失うことになる。

我慢の限界

 久々にメルケル氏の指導者の地位に疑問符がついている。来年3月の地方選挙は簡単に、メルケル氏の難民政策――そして同氏の首相の座――を巡る国民投票と化してしまう恐れがある。

 ファルター教授はまだ、メルケル氏が首相の座にとどまり、2017年にCDU・CSU連合を率いていると見ている。だが、その確率は75対25程度だとしている。不人気なEUの指導者なら、そのような確率を喜ぶかもしれない。だが、欧州の女帝は違う。

 メルケル氏にとって幸いなことに、自然と後を継ぐ人はいない。最も有力な候補はタカ派の財務相、ヴォルフガング・ショイブレ氏だろう。同氏は難民政策を批判することは避けたが、急激に膨れ上がるコストに言及し、自分が抱く懸念を示唆した。だが、73歳という年齢からすると、同氏は多くの議員にとって一時しのぎの候補でしかない。

 国内の圧力はEU内でもメルケル氏を傷つけている。東欧諸国の指導者はメルケル氏の難民政策に抵抗しただけではない。ハンガリーのビクトル・オルバン首相はドイツに介入までしてみせた。

 ゼーホーファー氏を訪ねた注目の会合で、ハンガリーの反移民フェンスを築いたオルバン首相は自身のことを「バイエルンの国境警備隊長」と呼んだ。

 難民の受け入れを渋る態度は、多くを物語っている。問題は東欧の人たちだけではない。英国はEU全域での難民再分配計画に参加するのを拒んだ。フランスはささやかな貢献しかしていない。

反対勢力には慣れているが・・・

 前出のレトゲン氏にとって、この協調の欠如はEU全体にとっての挫折だ。「難民に関して連帯を示せないことは、これまでで最大の欧州の敗北であり、将来の欧州の安定に影響する」と同氏は言う。

 メルケル氏にとって、反対は何ら目新しいことではない。何しろ彼女は、自身の属する党の重鎮たちの敵意にもかかわらず、権力の座に就いた控えめな東ドイツの牧師の娘だ。新しいのは、彼女が直面するリスクだ。すぐにでも事態を掌握できなければ、メルケル氏の地位が危うくなりかねないのだ。

By Stefan Wagstyl
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45122

アンゲラ・ドロテア・メルケル(ドイツ語: Angela Dorothea Merkel)

1954年7月17日ハンブルク生まれ
ポーランド系ドイツ人
エカチェリーナ2世を尊敬しており、オフィスに彼女の絵が飾られている
2000年よりキリスト教民主同盟 (CDU) 党首
第8代ドイツ連邦共和国首相(女性としては初)
1977年ウルリッヒ・メルケルと結婚4年後離婚
東ベルリンにある科学アカデミーに就職し、理論物理学を研究
1986年博士号取得(物理学者)
1989年ベルリンの壁崩壊
・現在の夫ヨアヒム・ザウアー(フンボルト大学ベルリン教授で量子化学者)と1998年結婚
・1990年12月2日の連邦議会選挙で故郷メクレンブルク=フォアポンメルン州から出馬して初当選
初当選議員ながら、第4次コール政権の女性・青少年問題相に抜擢され、1991年1月18日に就任
・1994年10月の連邦議会選挙により成立した第5次コール政権では環境・自然保護・原発保安担当大臣に就任
・2000年4月の党大会で承認されCDU党首に就任
・2005年11月22日、第8代連邦首相に51歳で就任

2014年3月、習近平国家主席と会談した際、古地図を贈った。この地図は、宣教師がもたらした情報を元に描かれたもので、1735年時点での清朝の領域を示している。新疆、チベット、内モンゴル、尖閣諸島は、清朝の領域外となっている。しかし、一部の中国メディアは、地図をすげ替え、贈呈されたものとは違う古地図を掲載し、報じた。

かなりのサッカー好きであり、「ドイツ代表12番目の選手」を自認している。

【語録】

・「私は体育の授業の間ずっと飛び込み台の板の上に立っていて、45分経ってようやく飛び込むタイプの人間です」(2000年)
・「多文化主義は見事に失敗した」(2004年)
・「窓ですね! こんなに頑丈で美しい窓を作れる国はないですから」(2004年、「ドイツと聞いて連想するものは?」と聞かれ)
・「赤緑連立(SPD+同盟90/緑の党)が治めていない一日一日が、ドイツにとってのいい日です」(2005年)
・「ドイツに仕えます」(首相候補に指名されての第一声)
・「女子代表はもう世界一になりました。女性に出来て男性に出来ない理由などないと思います」(翌年のワールドカップを控えて、2005年末の国民向け挨拶で)
・「ミュンヘンの人が『ベルリンへ行こう!』と叫ぶのは、何か素晴らしいことだと思う」(ワールドカップ中の2006年6月、ミュンヘンでドイツ代表がスウェーデン代表を下し、歓喜するファンが「決勝戦の行われるベルリンへ行こう!」と叫んでいるのを受けて。聞きようによっては、この前年メルケル内閣への入閣を拒否したシュトイバーへの嫌味とも取れる)
・「ヨーロッパがキリスト教クラブでないというのは正しい。しかしヨーロッパが人権と市民権を基本とするというのもまた事実です。そしてここドイツでは、人権と市民権をキリスト教的人間像に重ねているのです」(2006年のCDU党大会で)
・「中華人民共和国は、我々の様に知的財産権を尊重することを学ばねばならない。なぜなら、それを簡単にコピーすることは窃盗だからです」(2006年)
・「私の愛車はフォルクスワーゲンです」(2007年2月12日付の『フィナンシャル・タイムズ』紙ドイツ語版で、ドイツの野党議員の発言が切っかけに巻き起こった『日本車賛美論争』で発言)
・「私は時にリベラル、時に保守、時にキリスト教社会主義です。それこそがCDUをなしているのです」(2009年9月、ARDの番組にての発言)
・「国家は破綻する筈が無いという噂があります。この噂は正しくありません」(銀行家との会合での発言。『デア・シュピーゲル』誌、2009年第5号)
・「あなた方ハンガリー人は、ドイツ人の自由への意志に翼を与えました。あなた方の勇気が、ベルリンの壁を崩壊させる決定的な一撃となったのです」(2009年8月19日、汎ヨーロッパ・ピクニック20周年記念演説の一節)
・「『さあ、多文化社会を推進し、共存、共栄しよう』と唱えるやり方は、完全に失敗した」(2010年10月16日、自党の青年部会議における発言。)
・「シュタージの様だ」(2013年、アメリカ合衆国のNSAに、PRISMで携帯電話を盗聴されていた事に関して)。

公式サイト
http://www.angela-merkel.de/

(Wikipedia)

◆独情報機関、秘密裏に米やEU諸国の情報収集か 米国の諜報活動批判のメルケル政権 窮地に

2015.10.15 産経ニュース

 【ベルリン=宮下日出男】独誌シュピーゲル(電子版)は14日、ドイツの対外情報機関の連邦情報局(BND)が2013年まで長年に渡って、米国のほか、フランスなど欧州連合(EU)加盟国の大使館や関係当局から秘密裏に情報を収集していたと報じた。

 ドイツはこれまで米当局による情報収集活動に反発してきたが、報道が事実であれば、自国機関も同盟国の情報を集めていたことになり、苦しい立場に立たされる可能性がある。

 報道によると、収集された具体的な情報の内容は不明だが、BNDは13年秋まで監視システムを通じて、膨大な情報を傍受していたという。

 情報収集問題をめぐっては、独連邦議会(下院)の特別委員会が調査してきており、BNDの今回の活動については政府側が14日、特別委に報告したという。特別委は今後、情報収集を誰が指示していたかなどについて、関係者から事情を聴いて調査する方針だ。

 独メディアは今年4月、BNDがフランスの政府関係者や防衛企業の情報を収集して米側に提供していたとも伝えていた。

http://www.sankei.com/world/news/151015/wor1510150030-n1.html

◆独当局、情報機関機密資料暴露のジャーナリストを国家反逆容疑で捜査 メディアは「報道の自由への攻撃」と反発

2015.8.2  産経ニュース

 【ベルリン=宮下日出男】ドイツ情報機関の機密資料をインターネット上のサイトで暴露したとして、独当局が国家反逆容疑でジャーナリスト2人の捜査を始め、波紋が広がっている。独メディアは、政界とメディアを揺さぶった50数年前の「シュピーゲル事件」と重ね、報道の自由への圧力であるとして批判を強めている。

 捜査の対象となっているのは、ネット上の人権などに関する報道で知られるサイト「ネッツポリティク」の主宰者ら2人。7月30日に自らのサイトで、連邦検察庁から捜査の通知を受けたことを明らかにした。

 問題とされたのは、今年2月と4月の記事2本。情報機関の連邦憲法擁護庁が国内の過激派対策のため、ネット上の監視強化を図っているとの情報を内部文書の抜粋とともに報じ、擁護庁が検察庁に告訴した。

 ドイツでは近年、米当局などの情報収集活動が問題化し、当局側は機密漏えいに神経をとがらせている。だが、メディアは「報道の自由への攻撃」(独ジャーナリスト協会)と一斉に反発。検察は31日、容疑に該当するか、専門家の鑑定を待つ考えも明らかにした。

 最大で終身刑が科される国家反逆罪をジャーナリストに適用するのは異例。1962年、軍事機密を報じた独有力誌シュピーゲルをめぐる事件では、同容疑で拘束された編集者らは証拠不十分で釈放されたが、報道の自由への介入との批判が高まり、当時の国防相が事実上、引責辞任した。

 シュピーゲル(電子版)は捜査について「62年を想起させる」とした上で、「再び記者が標的にされた」と懸念を示した。南ドイツ新聞も62年の事件に言及し、当局は情報提供者やメディアへの警告のため「小さなサイトを狙った」と批判した。

http://www.sankei.com/world/news/150802/wor1508020025-n1.html

◆メルケル、トルコを悪魔的に抱擁

2015年10月27日  マスコミに載らない海外記事

Finian Cunningham
公開日時: 22 Oct、2015 16:18
"RT"

ドイツのアンゲラ・メルケル首相と、トルコのタイィップ・エルドアン大統領 Tobias Schwarz / Reuters

EU難民危機を緩和する“代償”として、シリア国内に“安全地帯”を作るよう、トルコはドイツに圧力をかけている。これは、NATO軍が結局、ロシア軍と対立することになり、シリア紛争をエスカレートさせかねない悪魔的契約だ。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、先週末大急ぎでイスタンブールにでかけ、トルコが強く望んできた欧州連合加盟に関する大転換で締めくくった。僅か数週間前、トルコ加盟反対を繰り返したのに、驚くべき動きで、トルコのEU加盟推進を支持するとメルケルは発表した。

“トルコが切り札を全部持っている”とドイツ・マスコミのドイチェ・ヴェレは述べた。第二次世界大戦以来、最大の人々の大規模移動である、ヨーロッパの移民危機におけるトルコの極めて重要な役割を考えれば、これには同意せざるを得ない。国際移住機構によれば、今年だけで、約600,000人の難民がEU国境に到来した。

大半の大移動は、現在250万人の難民を擁するトルコからのものだ。その大半は、トルコの南国境、シリアの約5年間にわたる紛争から生じている。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とアフメト・ダウトオール首相は、この危機がもたらした好機を、EUに、難民の流れを止めるには“トルコが必要”だということを認めさせるに利用しようとしている。これこそ、メルケルや他のEU高官が、先週、アンカラ政権に、一体なぜ新たに芽生えた気遣いを示したかという理由だ。

先週日曜、エルドアンとダウトオールと会うため出発する前、ドイツ首相は“あらゆる選択肢が議題だ”と述べた。後に、指導者たちは“行動計画”を作り上げたと語り、計画は、ベルリンとアンカラで計画されている、よりハイ・レベルの会合で、今後数週間でまとめられる予定だ。

分かっていることは、今やメルケルが、28か国のEUへのトルコ加盟を巡る交渉復活を支持していることだ。2005年以来 トルコの人権問題実績と、少数派クルド住民に対するアンカラの弾圧を巡るEUの懸念から、交渉は棚上げになっていた。

メルケルが確認したもう一つの明らかなEUの譲歩は、トルコが現在世界で最大と言われる大量難民を受け入れていることに対する支援として、30億ユーロ(34億ドル)の支払いだ。アンカラは国内にいる難民の面倒を見るため、既に80億ドル費やしたと主張している。

アンカラがEU要求にしている三つ目の妥協は、北シリアに“安全地帯”を設定するという以前からの要求の受け入れだ。メルケルは、ダウトオールと記者会見を行った際、その話題については留保したが、トルコ首相はこの問題について抑えようとはしなかった。

“シリア国内での安全地帯設置は、トルコの絶対要求だ”とダウトオールは述べた。“シリアに安全地帯を設置し、難民をシリア国内に止めておく必要性を、私が繰り返す理由だ”と彼は補足した。

ドイツ、ベルリンの保健社会局(LaGeSo)前の敷地で、登録のために並ぶ移民 Fabrizio Bensch / Reuters

戦争が2011年3月に勃発して以来、トルコは、北シリアに、いわゆる安全地帯を設置することを強硬に主張している。しかしワシントンもヨーロッパ同盟諸国も、この考え方にはしり込みしている。本質的にシリア政府軍の排除を意味する、シリア国内のそのような緩衝地帯を維持するには、欧米諸大国による大規模軍事介入が必要になるからだ。実際、それを実施するには、アメリカとNATO戦闘機と地上軍を必要とする飛行禁止空域なのだ。

しかし、悪化する移民危機が情況を変え、トルコに決定的影響力をもたらしているようだ。特にメルケルは、難民の奔流を止めるよう圧力を受けている。彼女のこれまでの亡命希望者に対する“門戸開放政策”は、他のEU加盟国が更なる負担を分け合うことを拒否して、まずい結果を招いている。

今週ドイツでは、右翼のペギダ運動が開催した反移民抗議集会があった。しかも、それが動員しているのは、極右だけではない。多くがメルケルのキリスト民主党の中核的支持者である中道派ドイツ人すら、難民流入をめぐる懸念で増えている。ある最近の世論調査では、メルケルの受け入れ姿勢を支持するドイツ人は、わずか三分の一しかない。

ハンガリー、クロアチアとスロベニアが国境検問所を閉鎖したため、冬が近づく中、何万人もの難民が地獄のような状態に直面しており、多くがオーストリアとドイツへ向かう必死の旅に向かっている。ぬかるむ野原で凍えている移民家族が機動隊と争っている、マスコミ映像で、EUのイメージは国際世論の非難の的になっている。危機がどうしようもなくなり、メルケルは明らかに、それに関して何かするよう強いられたのだ。

トルコは好機に更につけこもうとしているようだ。メルケル出国後、ダウトオールは、トルコは決して“強制収容所”にはならないと警告した。

首相はトルコ・マスコミにこう語った。“‘お金をくれれば、彼らをトルコに留まらせる’というような考え方は受け入れられない。”ダウトオールは、挑戦的に、こう補足した。“メルケル首相にも言った。トルコがあらゆる難民が暮らす強制収容所のような国になるのを受け入れる人などいない。”

国連難民機関UNHCRは、トルコを出て、ギリシャに行き、更にヨーロッパへと向かう移民の数は、ここ数週間で増えていると報じている。これは、トルコ当局が、結果として生じる移民の流れで、EUに対するアンカラの交渉力が強化できることを知って、難民のヨーロッパ移動を開放するという暗黙の政策を活用している可能性を示唆している。

もしEUが、メルケルの指揮のもと、北シリアに安全地帯を設定するというトルコの要求に応じれば、それは良からぬ影響をもたらすだろう。トルコはかつて、こうした地域を、戦略的に重要な北部の都市アレッポ近くまで侵入させることを要求していた。安全地帯は“反政府戦士”の避難所としても利用されよう。トルコや欧米の同盟諸国は、こうした反政府派を“自由シリア軍”“穏健派”戦士と呼んでいる。しかし自由シリア軍は、様々なアルカイダ集団や「イスラム国」過激派聖戦士に対する虚構の偽装であるのは公然の秘密だ。

エルドアンとダウトオールのトルコ政府は、欧米のシリア政権転覆秘密作戦における過激派傭兵の主要支援者と見なされている。トルコの野党やシリア政府によれば、トルコは、外人聖戦士と武器の主要輸送路として機能している。

アンカラが“安全地帯”の設置を主張するのは、紛争で難民になった一般市民を支援するのが主な動機だというが、政権転覆用の傭兵に、シリア政府軍による軍事攻撃からの援護を与えることが本当の狙いであるのは明らかに思える。

ロシア戦闘機が シリア政府を支援し、様々な過激派軍団を現在激しく攻撃しているので、トルコ国境沿いに設置される飛行禁止空域は、NATO軍をロシア軍と直接紛争させることになる。

シリアのバッシャール・アル・アサド大統領に対するあからさまな計画を遂行するというトルコの狙いを、ドイツ政府が感じている可能性はある。しかし、ヨーロッパ移民危機が激化するにつれ、メルケルは、言いなりになっているかのように見える。特に自国民の間で不満が増大しているため、彼女は早急に難民危機を食い止める必要に迫られている。

しかしながら、もし彼女がアンカラの“安全地帯”要求に譲歩すれば、今度はNATOがロシアと対抗することになり、シリア紛争は計り知れないレベルにエスカレートされる。

ずっと単刀直入で効果的な代案がある。シリアのアサド大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が打ち出したものだ。つまり、ワシントンと、トルコを含む同盟諸国が、犯罪的な政権転覆策謀をやめて、シリア政府の主権を尊重することだ。

Finian Cunningham(1963年生まれ)は、国際問題について多く書いており、彼の記事は複数言語で刊行されている。アイルランドのベルファスト生まれの農芸化学修士で、ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。20年以上、ミラーや、アイリッシュ・タイムズや、インデペンデント等の大手マスコミ企業で、彼は編集者、著者として働いた。現在は、東アフリカを本拠とするフリーランス・ジャーナリストで、RT、Sputnik、Strategic Culture Foundationや、Press TVにコラム記事を書いている。

本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。

記事原文のurl:https://www.rt.com/op-edge/319416-merkel-turkey-migrants-syria/

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-ccd7.html

◆【速報】ドイツ・メルケル首相 フォルクスワーゲンの不正を知っていながら隠蔽していた

アンゲラ・メルケルは昨日フォルクスワーゲン騒動に巻き込まれました。 
>ドイツの野党政治家が彼女の政府が放出結果を浪費している会社を前もって知っていたと発言。 
ドイツの緑の党は、排出検査で不正を行っているフォルクスワーゲンについて大臣がすでに夏に知っていた。 
しかし、『不正操作と詐欺』が『ウィンクで受け入れられた』と言いました。 
http://www.dailymail.co.uk/news/article-3246844/Did-Merkel-cover-Volkswagen-scandal-car-maker-s-boss-quits-German-leader-accused-accepting-trickery-wink.html 

引用元:http://hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/news/1443223074