メルケル首相がギリシャを手放さない大きな理由
ユーロ圏緊急サミットきょう開催、側近は「離脱容認の用意あり」と言うが・・・
2015.6.22(月) Financial Times JB PRESS
欧州各地の首都と同じように、ベルリンでも政治家や政策立案者が、ことが起きた翌日について考え始めた。もしかしたら翌週か翌月、あるいは翌年と言うべきなのかもしれない。
いずれにせよ、第1段階は、ギリシャ政府がデフォルト(債務不履行)することを決めた場合の責任のなすり合いに備えることだ。
第2段階は、次に何が起きるのか問うことだ。ユーロからの離脱、そしてもしかしたら欧州連合(EU)からの離脱だろうか。
破綻しかけた国家が破綻国家と化すのか。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとってのバルカン半島の足場となるのか。
筆者はこの混乱の渦の中で、ドイツのアンゲラ・メルケル首相とその仲間のユーロ圏の指導者たち――3つ例を挙げるだけでも、スペイン政府、ポルトガル政府、アイルランド政府は、ギリシャに対してドイツ以上に強硬な路線を取っている――が、ギリシャにやれるものならやってみろと挑むべきだという妥当な理由を半ダースは聞いた。
それは独り善がりの感覚からでも罰や報いの精神からでもなく、交渉がより良い代替案を生み出していないからだ。
無駄になったチャンス
今年1月の選挙で勝利した後、ギリシャのアレクシス・チプラス首相には、語るに値しないでもない物語があった。ギリシャは債務減免を必要としていた。そして、急進左派連合(SYRIZA)率いる政府は、国の政治と経済を毒する恩顧主義を打ち砕くと有権者に約束していた。
客観的な観察者なら、良い取引を見いだしただろう。債務減免の約束と引き換えに、国家機関の抜本的な改革と、オリガルヒ(新興財閥)の抑制、ギリシャ国民を貧しくするカルテルやクローズドショップ制度の撃退、そして汚職に対する継続的な攻撃を遂行するのだ。
そんな善意は浪費されてしまった。SYRIZAの約束は無に帰した。排他的な派閥やカルテル、オリガルヒは、以前と同じように繁栄している。そして、ユーロ圏の債権団との協議で、ギリシャ政府は、尊大さとアマチュアリズム、露骨な欲得が入り混じったひどい態度を示してきた。
ギリシャのプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の黒字の正確な大きさや持続可能な年金制度を生み出すために必要な歳出削減に関する実務家たちの重箱の隅をつつくような議論はこの際忘れよう。
他国の指導者との対話の中で、チプラス氏は原理主義的な路線を取ってきた。
同氏は債権団と合意した現在のプログラムのすべての債務、責務からギリシャを解放できるだけの債務減免を望んでいる。そして、SYRIZAが自由な市場原理を否定しているため、これらのプログラムから抜け出したいと思っている。
不満を募らせるドイツ
そのため、近頃ではベルリンの廊下を歩くことが不満の高まりを感じることを意味するのは驚くには当たらない。首相府から財務省、外務省に至るまで、メッセージは、ギリシャの運命はギリシャ政府の手中にあるというものだ。
メルケル氏のキリスト教民主同盟(CDU)が最も大きな声を出しているとしても、連立パートナーであるドイツ社会民主党(SPD)もSYRIZAに対して抱いていた初期の共感は捨て去っている。
首相に近い人たちは、メルケル氏は断固、ギリシャがユーロから転がり出るの見届ける覚悟ができていると言う。
確かに財務省との間には違いがある。ヴォルフガング・ショイブレ財務相が、ドイツの第1の責務は、ルールをきちんと施行することでユーロ圏の長期的な未来を保証することだと主張しているのに対し、メルケル氏はもっと幅広い、政治的な視点に立っている。
その一方で、メルケル氏は、自らが財務相の路線から大きく逸れすぎた場合に起き得る党内の波乱を警戒している。首相が保身の技に習熟した指導者であることは、時々忘れられる。
ところが、だ。SYRIZAが堂々と崖っぷちから転げ落ちる決意を固めているように見え、パートナー諸国がユーロ圏はギリシャの転落のショックを乗り越えられると自信を持っているにもかかわらず、ギリシャにしがみつく1つの正当な理由は、他のどの指導者よりもメルケル氏が痛切に感じている。
メルケル氏の意見を変えさせるかもしれない理由は、経済以外にもたくさんある。
ギリシャがユーロから離脱すれば、欧州大陸の最も燃えやすい地域の1つがさらに不安定になる。
バルカン半島ですでに不安定化と政権転覆を図っているプーチン氏は、この機会を逃さないだろう。ロシアの失地回復主義に立ち向かう欧州の立場は、深刻なまでに弱まる恐れがある。
地中海を渡ってくる移民を制限することは、さらに難しくなるだろう。キプロスにおける和解に向けた努力も行き詰まるだろう。ユーロ圏の長期的な未来に対する市場の信頼への影響に話が及ぶ前から、これだけの懸念が生じるのだ。
だが、筆者自身の推測では、夜中にメルケル氏の安眠を妨げているのは、そうした冷徹な計算よりもはるかに実体のないものであると同時に、計り知れないほど強力なものだ。
2つの信念の間で板挟み
メルケル氏はむしろ、ルールを守ることの重要性に対する強い信念――プーチン氏がルールを踏みにじったことが、ロシアのウクライナ東部侵攻に対するメルケル氏の強硬な対応を説明している――と、ドイツの欧州の使命というメルケル氏が大事にする強烈な感覚との間で板挟みになっているのだ。
メルケル氏は自らを欧州統合の守護者と見なしている。
フランソワ・オランド大統領率いるフランス政府が、かつて独仏エンジンという比喩を連想させた共通の指導的役割から退いてからは、なおのことだ。
ギリシャの離脱は歴史的な失敗になる。欧州共同体の脆弱さを認めることになり、統合プロセスがいずれ破綻し得るというシグナルを世界に発信することになるからだ。
上述のことはどれも、欧州統合に懐疑的な傾向を持つアングロサクソンにとってはそれほど意味はない。
だが、再統合された新しいドイツは、自国の未来がより一層緊密な欧州統合に根差しているという前提の上に成り立っている。
ベルリンを訪れる人は、これがヘルムート・コールの偉大な遺産だったことを思い出させられる。
あるイタリアの友人は先日、欧州はギリシャのことを、多くのイタリア人が長年、メッツォジョルノ(南イタリア)地域を見てきたように見ているのかもしれないと言った。
救いようがなく、非常にカネがかかるが、最終的には対価を支払うだけの価値がある、というのだ。
どう転んでもメルケル首相は敗者
メルケル氏はそこまではやらないと筆者は確信しているが、ギリシャを易々と手放すこともないだろう。
だが、ここに皮肉がある。どんな結果になろうと――それがグレグジットであれ、また別の救済のごまかしであれ――、ドイツの首相は恐らく大きな痛手を被るのだ。
By Philip Stephens
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ロシアは帝政初期に旧東ローマ帝国の皇女を嫁に迎えているから、コンスタンチノープルがオスマントルコに陥落させられたときいらい、東ローマ帝国の正当な後継者にして正教会の守護者を任じている。
だから現在のロシア連邦の国章は東ローマ帝国と同じ双頭の鷲だ。
そしてギリシァは冷戦時代に西欧陣営にあったが、文明的にいえば東ローマ帝国に属し、ロシアと同じ正教会である。
ロシアにとってギリシァを自陣営に取り込むことは、大きな地政学的メリットがある。ロシア黒海艦隊はNATO加盟国である東ローマ帝国を滅亡させた宿敵トルコのコントーロルするボスポラス海峡を通過しなければ地中海に出ることができない。ギリシァに基地を設けることができれば、その必要はなくなる。
旧西ローマ帝国=カトリックとその後継のプロテスタント=ラテン語文明圏の末裔同士の文明の衝突ということになる。
EUにとってこれ以上底なし沼の援助は難しいと成れば、新たな冷戦を生む可能性がある。最早腰抜けオバマにはどうすることも出来まい。イスラエルもサウジアラビアもエジプトも全部反米にしてしまった。
◆サウジ国防相、急遽ロシア訪問へ
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)6月18日(木曜日)弐
通算第4581号
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サルマン(サウジアラビア国防相)がモスクワへ飛んだ
米国不信に陥ったサウジの外交における鵺的行動は注意が必要かも
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サウジアラビアのサルマン皇太子兼国防大臣がモスクワを訪問した。
6月19日にはプーチン大統領との会談が予定されている。サルマン国防相は現国王サルマンの息子である。
表向きの理由は「経済協力」とされるが、過去半世紀にわたって敵対的関係にあった両国が、急速な歩み寄りをみせている背景には何があるのだろうか。
サウジアラビアは石油減産に応じないため、過去2年間で原油代金は130ドル台から50ドル台に「暴落」した。これはロシア経済を直撃し、ルーブルは下落した。くわえてロシアに欧米が経済制裁をかしているため、苦境に陥った。
当初、観測筋はサウジの狙いは「米国とくんで」ロシア経済を苦境に立たせることにあると分析していた。「ロシアのシリア支援を緩慢なものとさせる」のも、目的の一つと考察された。
ところが、ロシアよりひどい惨状に陥ったのが、米国だった。
シェールガス革命と騒がれて米国のシェール鉱区開発はつぎつぎと頓挫し、倒産したファンドも目立った。サウジは「究極のライバルであるシェール鉱区開発つぶしにあった」というのが最近の分析で主流となった。
オバマ大統領はサウジアラビアを訪問してもサウジは減産に応じない。ケリー国務長官は二回、サウジを訪問したが、国王はつめたく迎えた。
とくにオバマ政権がイランとの核兵器開発問題の協議で大きく妥協したことにサウジは不安を募らせた。
サウジアラビアと米国は「鉄壁の同盟」の筈だった。ニクソン政権下、米国はサウジ王家を半永久的に守る見返りに石油代金のドル決済、そして余剰ドルを米国債購入に充てるという密約があり、これが揺れ始めていたドル基軸体制を「金兌換」から「ペトロダラー」というドル基軸体制に変質させた。「ブレトンウッズ体制の窯変」である。
サウジアラビアにとって最大の敵はイスラエルではない。イランである。
イランの核兵器に対抗するために、パキスタンに資金をあたえ、核兵器を開発させた。いま、パキスタンは核弾頭を八十基ほど保有している。サウジはいつでも適切な量の核兵器をパキスタンから回収するというのは国際政治の常識である。
▲サウジアラビアの狙いは複雑系
サウジアラビアとロシアは奇妙な関係である。
サウジ王家は、1930年にロシアと国交を樹立していたが、1938年にスターリンの命で断交した。
1990年に国交を復活させたのは湾岸戦争の関係で、イラクを支援したサウジはサダムフセインを追放した米国の戦略に不信を抱いたからだ。なぜならサウジの安全保障の見地からみれば、シーア派を押さえ込む防波堤がイラクの地政学的位置でもあったからだ。
爾来、遅々として歩みだったが、サウジとロシアはまがりなりにも外交関係を絶やさず、情報を交換したりしてきた。
なにしろサウジにとって、最大の脅威はイランである。そのイランが背後にあって、シーア派の跳梁跋扈が周辺国に拡大したおり、サウジはバーレーン、イエーメンに軍隊を派遣したが、米国はなにも協力しなかった。
そればかりか、「アラブの春」をワシントンは背後で支援してきた。
チュニジアのベン・アリ大統領の亡命をサウジは受け入れ、エジプトのムバラクを一時受け入れ、シリアのアサドを支援した。したがって欧米のシリア攻撃には不満を募らせてきた。ケリー国務長官、オバマ大統領がサウジを訪問しても嘗てのような熱狂的歓迎の風景はなくなった。そしてついにサウジは米ドル基軸一辺倒から離脱し、ユーロ決済ばかりか、一部に人民元、ルーブル決済をみとめる動きを見せている。
6月17日にサウジは証券市場を外国の機関投資家にも開放すると宣言した。
かくしてサウジアラビアは米国への依存度を急激に減らし、ロシアと中国へ異様な接近をみせていた。
ロシアとの関係強化を仲介したのはエジプトである。
ツアー時代のロシアは、東方正教会の支援のため、エジプトと外交関係を持っていたし、またナセル時代のエジプトの最大の保護者はロシアだった。このロシア・エジプト軍事同盟を覆えらせたのはサダト大統領、そして後継のムバラク時代だった。
▲ロシアの中東関与、米国外交の失敗、そして。。。
プーチンは先ごろ、カイロを訪問し、シシ大統領と会見、支援を再開するとした。ムシル・イスラム原理主義政権をクーデタで倒したシシは、米国からの軍事援助拡大を獲得し、同時にカイロはロシアとも手を組む。対米牽制の離れ業である。
三月下旬、シェルムエルシェイクで開催されたアラブ首脳会議で、シシ大統領は「プーチンからの親書を読みあげた。
「中東地域の平和をのぞみ、外国の干渉をはねのけて、関係諸国のさらなる安全と平和的な問題解決への努力をたたえる」というと、サウジ代表は「しれは偽善だ」と抗議し、「問題に介入し、複雑化させたのはロシアではないか」と発言する場面があったという(ワシントンポスト、3月30日)
「ロシアが中東の安定を攪乱しているではないか」というサウジの猜疑心は深まっていた。そこでプーチンは2007年に初めてサウジアラビアを訪問した。外交関係の密度が深まったのはこの頃からである。
同時に中国がサウジへ最新鋭ミサイルを供与した。イランを射程にできるスグレモノで、これにより旧式のミサイルをサウジは軍事パレードで公開した。
http://melma.com/backnumber_45206_6223311/
◆ギリシャが財政破綻を余儀なくされた場合、ECBが致命的な政治的ダメージに見舞われる危険性
2015-02-19 今日の覚書、集めてみました
ギリシャがデフォったらドイツ人は直ぐに知ることになるでしょう…自分達の知らない間に、しかもドイツ議会の承認もなく突っ込まれていた巨額の資金が泡と消えたことを。
ヨーロッパでギリシャ電波を拡散させる政治的「手榴弾のピン」は、ユーロ圏の中銀共が帳尻合わせに使っているなんだかよくわかんないメカニズムです。
ギリシャがギスギスした状況でユーロを蹴り出された場合(僕悪くないもん戦略的エラーなんてしてないもん、とコア債権国がヤダヤダ言い続けてることを考えると確率は五分五分ですかね)、この国はユーロ支援機構からの借金を踏み倒すだけでなく、「Target 2」を通じたECBからの借金も踏み倒すことになります。
普通の時ならTarget 2の調整機能はルーチンかつ自律的に働きます。
マネーがユーロ圏内で動くと自動調整します。
FRBにも地域全体で帳尻を合わせるための似たような内部システムがあります。
で、通貨同盟が崩壊すると、これが地雷になります。
ギリシャ中銀のTarget 2を通じたECBに対する「債務」は、12月に490億ユーロまで急増しました。
Syrizaが勝つかもという心配で、資本逃避が加速したからです。
これまでに650-700億ドルくらいになってるんじゃないかな。
ギリシャがデフォったら(グレギジット・シナリオなら回避不可)、これが具体化するでしょう。
ドイツ人は直ぐに、自分達の知らない間に、しかもドイツ議会の承認もなく突っ込まれていた巨額の資金が泡と消えたと知ることになるでしょう。
政治家はECBの南部欧州支援の本当の影響について嘘吐いてるんじゃない?とか、ギリシャでおしまいってことには絶対なんないんじゃない?とか、皆が前から疑っていたことが、色んなことが起こって確認されちゃうことでしょう。
しかも、アンチ・ユーロ政党のAfDが政治舞台に派手に登場して、4つの地方選挙で大勝して、まるでドイツ版UKIPがアンゲラ・メルケルの足に喰い付いてるって時にこれですよ。
ミュンヘンにある独IFO経済研究所のハンス=ヴェルナー・シン氏は、Target 2は債務国のための「秘密救済」だ、ドイツ中銀とドイツの納税者は途方もない債務を背負わされることになるであろう、と薄気味悪いワーニングを出してドイツのメディアでカルトになりました。
彼をディスるために猛烈な努力が行われました。
彼の擁護も益々強力になるでしょうね。
オランダとフィンランドでも、瓜二つな議論が巻き起こっています。
でも、金額でいけばドイツがダントツなのです。
ドイツ中銀がECBの決済システムでTarget 2を通じた債権額は、7月の4,430億ユーロから1月31日の5,150億ユーロまで跳ね上がっています。
このほとんどはギリシャの銀行から資金が、直接送金かスイス、キプロス、英国を経由した間接送金で、ドイツの銀行へと雪崩れ込んだからです。
グレギジットはこのシステムを爆破するでしょう。
「このリスクは突然現実化して、ドイツで政治的大嵐を引き起こすだろうよ」とリールにあるIESEGビジネス・スクールのエリック・ドール氏は言います。
「その瞬間だよ、ドイツ議会が、そもそもユーロ・プロジェクトってどうよ?って言い出すのは。デカいリスクだね」
ドール氏曰く、Target 2、ギリシャ債のECB保有分、二国間融資、EFSFからの融資など、あらゆる類の借金を全部まとめると、ギリシャがデフォると総額2,870億ユーロを踏み倒すことになるそうです。
マーケットはのほほんとしたままです。
ポルトガル、イタリア、スペイン国債の金利は不気味に落ち着いています。
投資家は、ECBなら月間600億ユーロのQEを開始すれば影響を食い止められるし、食い止めてくれるよね、ユーロ危機国の債券市場をカバーするだけだもんね、と予想しています。
これは偉大なるアンノウンを無視してますよ。
ドイツ議会とかオランダ議会とか、他の債権国の議会とか、ギリシャでこのシステムが爆発しても、自国の中銀が無制限にTarget 2を通じてラテン陣営に金を貸し続けるのを放置プレーすると思います?
現実の問題として、ECBそのものにも火が点くわけで。
ECBの「キャピタル・キー」によると、Target 2の損失はシェアされなくちゃいけないそうで。
ドイツ中銀27%、フランス中銀20%、イタリア中銀18%、とかなんとか…でも、これって未知の領域ですから。
「ドイツ人がドイツ中銀やECBが負債を抱えるのを放置するとは思えないね。資本再編を要求するだろうし、これをドイツ政府にとっての直接的痛手とみなすだろうね」とドール氏。
だとしたら、メルケル首相は厄介なことになりますね(今まで回避してきましたが)…穴埋めのためのキャッシュをお願いするためにドイツ議会に行かなきゃなんないっていう。
財政目標達成のために、他の予算を削らなくちゃいけなくなりますな。
Syrizaのアレクシス・ツィプラス首相は思ったより強い切り札を持ってますね。
しかも平気で切っちゃう人ですし。
火曜日夜に行ったギリシャ議会でのスピーチは強烈な反抗でした。
「僕らはギリシャの人達にした約束から一歩たりと退かない。妥協もしない。最後通告も受け容れない」
「新政権の公約破りは慣行だ。僕らは趣向を変えて、この選挙公約を実行するつもりだ」と82%ものギリシャの有権者から支持を集める首相は言いました。
ブリュッセルに提出予定の新ギリシャ・プランは、ユーロ圏財務相に月曜日に却下された提案と殆ど変りません。
追加緊縮財政はNOというのが基本的な要求です。
ここは変わっていません。
基礎財政収支の黒字は2014年の対GDP比1.5%よりも高くしろ、今年は3%、来年は4.5%だ、とユーログループは言い張っています。
ノーベル賞受賞者のポール・クルーグマン先生は、あいつら、もう6年も不況でヘロヘロになってる国(未だに50%近い失業率)にこれから何十年も海外の債権者に借金を返済するためだけに黒字を3倍にしろって迫ってるんだからなあ、と仰ってます。
債権国は、西側同盟国が1919年にベルサイユで敗戦国ドイツに対してやったことを、ギリシャに対してやっているんですね。
つまり、払いようのない、しかも双方にとって破壊的な賠償金を打ちひしがれた国に押し付けてるわけです。
北部欧州が危惧しているのは、ギリシャが妥協を勝ち取ったら緊縮財政の規律が南部欧州全域で崩壊するかも、ってことですが、崩壊こそ、ヨーロッパが債務デフレ・トラップを脱出して第二次失われた十年を回避するために必要なんでしょ。
「緊縮財政を巡るイデオロギー・バトルになっちゃったよね。保守政権は何が何でも質素倹約政策でGO!したいわけ」とSven Giegold欧州議会議員(ドイツ緑の党)は言います。
Syriza攻撃の多くはバカバカしいものです。
ギリシャ政府は公務員を増やしたりしてないし。
「不当にクビにされた」3,500人を再雇用するけど、別のところで減らして相殺してるし。
「民営化については、政府はなんでもありだから」とヤニス・バルファキス財務相は言います。
「僕らはメリットだけで各プロジェクトの評価をするつもりだし、喜んでそうするし。マスコミはピレウス港湾の民営化がリバースされたとか言ってるけど、全く何言ってんだかって感じ」と彼はユーログループの同僚達に言いました。
Syrizaが絶対にやらないこと、それは崩壊したマーケットで資産を格安で「投げ売り」することです。
債務免除の噂も怪しいもんで…。
ギリシャはそんなこと頼んでませんから。
バルファキス財務相は、将来の経済成長率とつなげた「GDP連動」債に切り替えたいって言ってるんですよ。
借入期間を長くして金利支払いを低くしようとするかもしれませんけど。
重要なのは基礎財政収支の黒字です。
債権国は歴史の審判なんてかんけーねーと有り金全部絞り取るために、ユーロ崩壊とそれに続く諸々のリスクを冒したいってこと?
2010年に(ギリシャのエリート共の共謀で)ギリシャに押し付けられた融資パッケージをフェアだと思ってる連中は、IMFCの新興国出身メンバー全員から出てる抗議を読んだら良いよ。
若干の違いはあるけど、全員、ギリシャは最初っから債務救済が必要だったんであって、火に油を注ぐような新規ローンじゃない、って言ってますから。
全員、あの支援はユーロにファイヤーウォールがなかった時代に外資系銀行とユーロそのものを救済しようとしたものであって、ギリシャを救済しようとしたものじゃない、って言ってますから。
「金融政策のオフセットもないあの規模の財政削減とか前代未聞でしょ」と元IMFCメンバーのインド人、Arvind Virmani氏は言います。
「この国にはとても耐えられないような途方もない負担だから。たとえ支援策の実施が成功したとしても、それでデフレ・スパイラルが発動されて、いずれは支援策そのものを邪魔する雇用減少と歳入減少につながったのは間違いないし」とのこと。
で、正にこうなったと。
欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は遠回しに、ギリシャはヨーロッパに文句を言う正当な道徳的権利があると認めています。
フランスが密かにユーログループ内のバランス調整を助けているように、彼は密かにSyrizaを助けています。
対ギリシャ連合戦線は交渉しようよのポーズです。
プレッシャーがかかれば崩れるでしょう。
ギリシャの財布が空になる前に(カティメリニ紙の報道だと一週間以内)、ーロ主要国陣営が自分達の深い溝を埋められるかどうか、それはまだわかりません。
ゴールドマン・サックスのフランチェスコ・ガルザレッリ氏は、ユーロ危機ぼっ発以来今ほど「心配したことはない」と言います。
「交渉で誤算が起きるリスクはまだまだ高いし、今から月末の間にピークを迎えるだろう。万が一、ギリシャがユーロ離脱ってことになれば、そのリスクはシステミックになる。主要市場ですら無傷でいられないんじゃないの」
全てを勘案致しますと、殆ど確信はありませんが、メルケル首相が遂に借金取りを圧倒して、ドイツの60年に亘る戦後欧州の外交秩序への投資を守るために、譲歩するんじゃないかしらん。
ロンドン大学の法理論学者、グンナー・ベック博士みたいなドイツ人EU懐疑派も同じ意見です。
「ドイツの指導者にギリシャのユーロ離脱を認められるわけがない。ギリシャはそれがわかっている。彼らはユーロ防衛のために死ねる。これは僕らの東部戦線であり、クルスクの戦いだ。残念だけど、これはドイツの無条件降伏で終わると思うね」と仰っています。
http://blog.goo.ne.jp/kitaryunosuke/e/dfe8f3f3c17d4fcdd151bfab35fa892a?fm=rss
◆ロシアへの経済制裁がもたらすEUのエネルギー危機
米国がロシアに譲歩、EUは梯子を外される形に
2015.05.22 藤 和彦 JB PRESS
「ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならば、その時点で欧米がロシアに課している制裁を解除することもありうる」
こう述べたのはケリー米国務長官である。5月12日にウクライナ危機以降初めてロシアを訪問し、プーチン大統領・ラブロフ外相と8時間にわたり会談を行った。
会談後ケリー長官は、「特に今日のように複雑で流動的な時期には、主要な政策決定者と直接対話する以外の良策はない」と語った。「フィナンシャル・タイムズ」(5月12日付)が「ケリー米国務長官の訪露はロシアの外交的勝利」と報じているとおり、冷戦後最悪と言われていたロシアとの関係から脱するために、「ロシアとの話し合いのパイプを閉ざさない必要がある」と判断した米国側の譲歩であることは間違いない。
ケリー長官は「ISILなどの暴力的な過激主義に対処する上でロシアは極めて重要なパートナーだ」と強調した。CNNが4月23日に発表した世論調査によれば、米国民の68%がISIL(いわゆるイスラム国)を非常に深刻な脅威と受け止め、ロシアに対する懸念(25%)を大きく上回っている。米国は現在、イラクやシリアでISIL拠点に空爆作戦を進めている一方、国内ではISILの「浸透」を防ぐべく対応を迫られており、ロシアとの協力が不可欠になっているのだ。
今回の会談では米露首脳会談実現に向けた調整は行われなかったとされているが、「11月のトルコ南部アンタルヤで開催される20カ国・地域(G20)首脳会談などの場で両首脳が接触するのではないか」との観測も出ている。
経済制裁を仕掛けているEUにも打撃
ロシアのラブロフ外相が「現存する多くの喫緊の問題が解決するかどうかは、米露が国際舞台で十分に調整し協働していけるかどうかにかかっている」と応えたように、両国の間には「通常の協力関係に戻ることが必要」との理解が生まれた兆しが見てとれる。
ケリー長官は、欧米諸国がロシアに課した経済制裁の緩和・解除に言及した。今後、それをどう実現させていくかが、今後の両国関係を占う大きな試金石となる。
経済制裁は、対象国が国外から入手していた物質等を欠乏させることによって国内的な問題が生じることを狙った措置である。外交的な圧力では不十分だが武力の行使までは考えにくいという状況で使い勝手のよい政策手段であるとされている。米国政府は冷戦終結後の1990年代から経済制裁を多用するようになった。
だが今回は、「プーチン大統領の対ウクライナ政策を最終的に変えさせることができるコストの安い政策だ」と即断して、そのデメリットを十分検討しないままロシアに対する経済制裁に踏み切った可能性がある。
経済制裁の最大のデメリットは「仕掛けられる側に加えて、仕掛けている側も損をする可能性が高い」ということである。
ロシアのメドベージェフ首相は、4月23日、欧米の経済制裁によりロシアが被る損失額は約1067億ドルに相当することを明らかにした。外国貿易総額は今年の最初の2カ月間で約30%減少、最大の貿易相手であるEUとの貿易額は3分の1以上縮小したという。
米露の経済関係は対露制裁の下でも深まりを見せ、昨年の貿易額は前年比5.6%増の292億ドルだった。しかし、欧州諸国では甚大な被害が発生している。
EU第1の経済大国、ドイツからロシアへの投資額は200億ユーロに達し、6300社の企業が生産や営業活動の拠点を設立している。貿易額も欧州1位である。だが、ドイツの2015年1月のロシア向け輸出は前年比35.1%急減した。2009年10月以来最大の落ち込みであり、欧米の対露制裁とルーブル安が予想以上に深刻な影響を及ぼしていることが浮き彫りになった。今年のロシアへの輸出額の減少はドイツ商工会議所の予想(最大15%減少)を大きく上回る可能性がある。ドイツのシュミット元首相は4月20日、国営テレビのインタビューの中で「ロシアは理解せねばならない隣人であり、ロシアと対立することは誤りである」と、ドイツの対露外交を非難した。
EU第2の国であるフランスも、ウクライナから地理的に遠い上に、ユーロ危機による不況の影響を克服するためにロシア市場は欠かせない。米国との協調をアピールする英国でさえ、ロシアの富豪たちの投資を逃したくないため、本音では経済制裁に消極的である。
(ただし、ウクライナに国境を接するポーランドや、かつてロシアに併合されていたバルト3国では「ロシアに対し厳しい制裁措置を取るべきだ」という声が依然強い。2015年7月に期限を迎える対露制裁の緩和に向けたEU全体の足並みは揃わない状況にある)
米国の変化で梯子を外されそうな欧州
ロシアへの厳しい制裁を続ける欧州は、対露関係を大きく転換させようとする米国に「梯子を外される」危険が高まっている。筆者が最も懸念するのは、EUのエネルギー危機である。
ウクライナ問題を契機に、2014年4月に当時ポーランド首相だったトウスク大統領がロシアへのエネルギー依存の低下を図るために提唱した「エネルギー同盟」は、同年6月のEU理事会で採択され、EUはロシア依存からの脱却を図るための具体的な取り組みに着手した。しかし、その取り組みへの悪影響が既に出始めている。
まず第1に挙げられるのは、ロシアがウクライナを迂回するためブルガリアを通って欧州に天然ガスを輸送するために計画していた「サウスストリーム」の挫折である。
2014年末、プーチン大統領はEUの反対を理由にサウスストリーム計画を撤回し、ロシア制裁に加わっていないトルコを経由するパイプラインで中東欧にガスを運ぶ構想(「トルコストリーム」)を発表した。
その後、EUは態度を一変させて、ロシアに対しサウスストリームの建設を要請したが、ロシアはこれを聞き入れず、プーチン大統領はギリシャに対してトルコストリームへの参加を打診するなどの外交活動を展開した。今月に入り、ガスプロム(ロシアの半国営による天然ガス生産企業)はトルコストリームの建設に着手(完成は2019年の予定)したが、トルコストリームで輸送される天然ガスの最終的な仕向地が欧州になるとは限らない。
さらに深刻な問題がある。4月22日、EUの欧州委員会は、ロシア産天然ガスに大きく依存する中東欧諸国の天然ガス市場で「ガスプロムが独占的な地位を乱用して競争を妨げた」との判断を示し、EU競争法(独占禁止法)違反の疑いがあると警告した。EUは、ガスプロムがブルガリアの天然ガス購入者にサウスストリームの建設への参加を強制したことも競争法違反に当たるとした。
本件は2012年から調査が進められていたが、エネルギー専門家の間では「この問題は中東欧諸国の輸送インフラ不足が主原因であり、EU側が独占禁止法違反と認定するのは無理がある」との見方が強かった。欧州委員会から、独占禁止法違反を是正する手続きの第1段階である異議通知書を送られたガスプロムは、直ちに反論する構えである。しかし、最終的に違反だと判断されれば、巨額の制裁金の支払いを命じられることになる(同社の利益に10%相当の数千億円)。2014年決算が前年比86%減益となったガスプロムにとっては「泣き面に蜂」であり、欧州へ天然ガスを輸出する意欲が大いに削がれることだろう。
EUがロシアへのエネルギー依存から脱却するために最も期待しているのはカスピ海に面した国、トルクメニスタンである。EUは、トルクメニスタンの天然ガスをイランを経由して欧州に供給する「南回廊パイプライン」を計画している。だが、トルクメニスタンの天然ガスは中国へ大量に輸出されることが決まっており、当分の間はロシアからの天然ガスの代替先にならないだろう。
ロシア産ガスへの依存度低下を図るため、欧州でもシェールガスの開発が進められているが、不発に終わっている。ポーランドは欧州で最も水圧破砕法の採用に積極的だが、掘削コストが高い等の理由から、米エクソンモービルやシェブロン、英蘭シェルなどスーパーメジャーは計画を断念している。また、欧州は日本と同様に米国のシェールガスをLNG化して輸入する計画を有しているが、米国のシェールガスは天然ガス価格の低迷により今後生産が鈍化する可能性が高いため、当てにできないのが現状である。
ロシアへのエネルギー依存を脱却するのは正しい選択なのか
政治的な理由から頑なにロシアへのエネルギー依存の低下を進める動きに対して、産業界からは「欧州のエネルギー安全保障を劣化させる恐れがある」との懸念の声が高まっている。
2014年7月、フランスの総合エネルギー企業トタールのCEOは、「欧州のロシアガスへの依存度を下げるといった考えは捨てて、これらの輸送の安全をより確実にすることに注力すべきである」との意見を表明している。
2013年のEUの天然ガス輸入量に占めるロシアからのシェアは36%に達した(供給量は前年比25%増)。EUへの大手輸出国であるアルジェリア、ノルウエーがアジア向けを増産し、EU向けを減産したからである。その中にあってロシアの供給安定性は群を抜いていた。その後、ウクライナ危機が発生したが、その6割がウクライナを通過するパイプラインにより輸送されている。現在に至るまで、ロシアからの欧州への天然ガス供給はなんら支障が生じていない(ウクライナへはガス料金未払いのため供給を停止した)。
政治主導の「エネルギー同盟」は、1973年から40年におよぶソ連・ロシア産ガス輸入の実績を無に帰そうとしているとしか筆者には思えない。
ソ連から欧州へのパイプラインに政治的な要素がなかったことは、ソ連が崩壊した際にもガス輸出が通常通り行われたという事実が何よりも雄弁に物語っている。ガスプロムにとっては、共産党政権の帰趨よりも、自らの利益を守るために消費地に対する供給責任をまっとうすることの方がはるかに重要だったからだ。
米国は、いわゆるネオコンが政権中枢に参加したレーガン政権時代から、欧州のロシア依存について断続的に警告しているが、今回の「エネルギー同盟」はEUのバルト3国、ポーランドなどの対露強硬国がウクライナ危機に乗じて悪のりしているとしたら言い過ぎだろうか。
日本がとるべき道はサハリンからのパイプライン敷設
翻って日本国内では2030年の電源構成(エネルギーミックス)に関する議論に注目が集まっているが、電力がエネルギーの最終消費に占める割合は23%に過ぎない(2012年)ことはあまり知られていない。日本のエネルギー安全保障にとって最大の問題は、エネルギーの最終消費に占める天然ガスの割合が11%と先進国平均の20%と比べて異常に低いことにある。
不安定なウクライナ情勢を背景に5月にドイツハンブルクで開かれていた先進7カ国(G7)エネルギー担当相会合では、緊急時に天然ガスを融通し合うことなどが議論された。日本が輸入する天然ガスの3割を占める中東地域の地政学的リスクも高まっている。
日本は「欧州の間違った道」に惑わされることなく、サハリンと首都圏を結ぶパイプラインを敷設する道を選ぶべきであろう。ロシアからの天然ガス輸入のシェア(現在約1割)を拡大することにより、エネルギー供給源および供給先の多様化を図り、エネルギー安全保障の向上を図ることが喫緊の課題である。
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